α上司の最善ではない恋

空気綺麗

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はじまりは偏見から

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 そして迎えた月曜日。
 いよいよ本配属初日――俺は、重たい足取りで出社した。
 

 人事に案内されて向かった先で待っていた人物は、会った瞬間に
「あ、この人が噂の室長だな」
 と分かるほどの存在感だった。

 180cmは確実に超えていそうな高身長に、俳優のように整った顔立ち。
 スーツの着こなしも完璧で、賢さと信頼感が滲み出ている。
 想像以上であり、俺は一瞬、言葉を失い見惚れてしまった。

「君が相川君だね?DX推進室、室長の司馬だ。どうぞよろしく」

 差し出された手にようやく意識が戻り、俺はとっさに考えてきた挨拶を口にした。

「…あっ、はい! 本日より配属になりました相川涼太です。至らない点が多々あるかと思いますが、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします!」

 差し出された手を慌てて握り返すと、司馬さんは少しだけ笑った。

「そんなに硬くならなくていいよ。私は中途入社だし、他の課長に比べたら経歴も浅いから。といっても、相川君から見たらオジサンかもしれないけどね」

 その言葉に思わず緊張が緩み、肩の力が抜けた。
 俺の様子を見て、司馬さんはさらに言葉を続けた。

「早速だけど、うちでは毎週月曜の朝にグループミーティングをやってるんだ。
今週の仕事内容を全体で把握するためのものでね。相川君はまだ分からないことが多いと思うけど、まずは自己紹介して、他の人がどんな仕事をしてるか聞いてみて。」

 俺が頷くと、司馬さんは会議室へ案内してくれた。



 部屋に入ると、5人ほどのメンバーがすでに席についていた。
 司馬さんは俺を連れて空いている椅子に腰掛け、軽く手を叩いた。

「お待たせ。それじゃあ始めようか。早速だけど、今日から配属された新卒の相川君だ。みんな、よろしく頼むよ。」
「じゃあ相川君、一言お願い。」

「ほっ、本日より配属になりました、相川涼太です。至らない点が多々あるかと思いますが、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします!」

 ……挨拶のパターン、1種類しか用意してなかった。
 だが、パチパチと拍手が起き、何とか乗り切れたようでホッとする。



 その後は、各自の業務報告。
 司馬さんが的確にアドバイスや補足を入れていたが――

 正直、何を話してるのかまったく分からなかったので、ここは割愛する。
 
 ミーティング終了後、他の人が部屋から出ていく中、司馬さんは俺に話を続けた。
「どうだった?と聞いてもおそらくほとんど分からなかっただろうね。これからの業務だけど、しばらくは私についてもらおうと思ってる。それで仕事内容を学び、ある程度分かってきたら私の担当を一部引き継いでやってみて、最終的には独り立ちして欲しい。そんな感じでいいかな?」

「はっはい!むしろ室長直々に仕事内容を見せてもらえるなんて有難いです。よろしくお願いします!」

 正直言うと、この人と一緒なのはやりづらいなと感じたが、初日からそんなことは言えない。
 暗い思いを抱えながら、俺の社会人生活が始まった。
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