12 / 28
大海の朱い一滴
②
しおりを挟む
勢いのまま「運転は俺がやりますんで!」と捲し立て、司馬さんにNoという間を与えず急かす。
少し面倒そうな顔をしながらも、司馬さんは特に反対せず、しぶしぶ着替えてくれた。
俺は近くのカーシェアを急いで予約し、ついでに司馬さんにジャージを借りて着替える。
肩や袖が少し余るのが気になったけど――まあ、そこは気にしないでおこう。
二人で司馬さんの家を出て、車を取り、乗り込んだ。
「車を運転するのは久しぶりです。
大学生のときは、サークルで出かける時なんかに交代で運転したりしてたんですけど。
彼女とは就職前に別れたっきりなので、ドライブデートもしたことないですし。」
営業なので、仕事で車を使うことはあると研修で説明を受けたが、俺はまだその機会はない。基本的に電車移動だ。
「……僕も、仕事以外で車に乗るのは久しぶりだ。
なんなら、プライベートで助手席に乗るのは、初めてかもしれない。」
「えっ、そうなんですか!?」
たしかに司馬さんなら、営業でも自分で運転しそうだ。
――ちょっと、からかってみようか。
「じゃあ、“助手席のルール”とか、知らない感じです?」
「……なんだ、それは。」
「助手席の人は、車で流す音楽を決めていいんですよ。」
……まあ、うちの家族と友人の中だけのローカルルールなんだけど。おそらく。
話を聞いた司馬さんは、どうしたものかと少し慌てた様子だった。
見ていて面白かったけれど、ちょっと気の毒なので「迷ったらラジオでいいですよ」と伝えると、素直にラジオを選んでくれた。
ちょうど夏の歌特集をやっていたので、タイミングはばっちりだ。
「あっ、この曲好きなんですよね。
海に行くときに聴くと、テンション上がるんです。」
「そうか。」
「司馬さんって、好きなアーティストとかいるんですか?」
「特にいないな。」
「えー、通勤中とか、音楽聴いたりしないんですか?」
「しない。大抵ニュースを見ている。」
「さ、流石。俺も見習いたいです。
やろうとは思ってるんですけど、ついゲームとか動画に逃げちゃうんですよね……。」
こんなふうに、取り止めのない話をポンポン投げかけていく。
司馬さんを退屈させないように。
でも、話しすぎて疲れさせないように、間には沈黙も挟みながら。
司馬さんは根が真面目だから、ちゃんと問いかければ答えてくれた。
土曜なので渋滞が心配だったが、思ったより道は空いていて、2時間もかからず目的地に着いた。
助手席側の窓の外、青くひらけた海を眺めながら車を走らせる。
ちらりとそっちを見ると、司馬さんも静かに、海を見ていた。
――この人、本当に、イケメンだな。
黒髪に、透けるように白い肌。長いまつ毛に、高い鼻。
今日は仕事モードじゃないから、服もラフで、髪もセットされていない。
それでも、いや、だからこそかもしれない――思わず目を奪われそうになる。
運転に集中しないといけないと、俺は慌てて前に向き直った。
少し面倒そうな顔をしながらも、司馬さんは特に反対せず、しぶしぶ着替えてくれた。
俺は近くのカーシェアを急いで予約し、ついでに司馬さんにジャージを借りて着替える。
肩や袖が少し余るのが気になったけど――まあ、そこは気にしないでおこう。
二人で司馬さんの家を出て、車を取り、乗り込んだ。
「車を運転するのは久しぶりです。
大学生のときは、サークルで出かける時なんかに交代で運転したりしてたんですけど。
彼女とは就職前に別れたっきりなので、ドライブデートもしたことないですし。」
営業なので、仕事で車を使うことはあると研修で説明を受けたが、俺はまだその機会はない。基本的に電車移動だ。
「……僕も、仕事以外で車に乗るのは久しぶりだ。
なんなら、プライベートで助手席に乗るのは、初めてかもしれない。」
「えっ、そうなんですか!?」
たしかに司馬さんなら、営業でも自分で運転しそうだ。
――ちょっと、からかってみようか。
「じゃあ、“助手席のルール”とか、知らない感じです?」
「……なんだ、それは。」
「助手席の人は、車で流す音楽を決めていいんですよ。」
……まあ、うちの家族と友人の中だけのローカルルールなんだけど。おそらく。
話を聞いた司馬さんは、どうしたものかと少し慌てた様子だった。
見ていて面白かったけれど、ちょっと気の毒なので「迷ったらラジオでいいですよ」と伝えると、素直にラジオを選んでくれた。
ちょうど夏の歌特集をやっていたので、タイミングはばっちりだ。
「あっ、この曲好きなんですよね。
海に行くときに聴くと、テンション上がるんです。」
「そうか。」
「司馬さんって、好きなアーティストとかいるんですか?」
「特にいないな。」
「えー、通勤中とか、音楽聴いたりしないんですか?」
「しない。大抵ニュースを見ている。」
「さ、流石。俺も見習いたいです。
やろうとは思ってるんですけど、ついゲームとか動画に逃げちゃうんですよね……。」
こんなふうに、取り止めのない話をポンポン投げかけていく。
司馬さんを退屈させないように。
でも、話しすぎて疲れさせないように、間には沈黙も挟みながら。
司馬さんは根が真面目だから、ちゃんと問いかければ答えてくれた。
土曜なので渋滞が心配だったが、思ったより道は空いていて、2時間もかからず目的地に着いた。
助手席側の窓の外、青くひらけた海を眺めながら車を走らせる。
ちらりとそっちを見ると、司馬さんも静かに、海を見ていた。
――この人、本当に、イケメンだな。
黒髪に、透けるように白い肌。長いまつ毛に、高い鼻。
今日は仕事モードじゃないから、服もラフで、髪もセットされていない。
それでも、いや、だからこそかもしれない――思わず目を奪われそうになる。
運転に集中しないといけないと、俺は慌てて前に向き直った。
3
あなたにおすすめの小説
サークル合宿に飛び入り参加した犬系年下イケメン(実は高校生)になぜか執着されてる話【※更新お休み中/再開未定】
日向汐
BL
「来ちゃった」
「いやお前誰だよ」
一途な犬系イケメン高校生(+やたらイケメンなサークルメンバー)×無愛想平凡大学生のピュアなラブストーリー♡(に、なる予定)
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
♡やお気に入り登録、しおり挟んで追ってくださるのも、全部全部ありがとうございます…!すごく励みになります!! ( ߹ᯅ߹ )✨
おかげさまで、なんとか合宿編は終わりそうです。
次の目標は、教育実習・文化祭編までたどり着くこと…、、
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
総愛され書くのは初めてですが、全員キスまではする…予定です。
皆さんがどのキャラを気に入ってくださるか、ワクワクしながら書いてます😊
(教えてもらえたらテンション上がります)
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
⚠︎書きながら展開を考えていくので、途中で何度も加筆修正が入ると思います。
タイトルも仮ですし、不定期更新です。
下書きみたいなお話ですみません💦
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
ステッドファスト ー恋に一途な僕らの再会ー
ブンダバー
BL
中学の頃から、橋本はずっと鏑木だけを想い続けてきた。
一方の鏑木も、橋本に特別な感情を抱いていながら、モデルとして生きる彼の未来を思い、その一歩を踏み出せずにいた。
時が経ち、広告代理店に勤める社会人となった鏑木と、人気モデルとして芸能界で活躍する橋本は、仕事をきっかけに偶然の再会を果たす。
――あの頃、言えなかった気持ち。
――守りたかった距離。
大人になった今だからこそ、再び動き出す両片想い。
恋も、仕事も、簡単じゃない。それでも不器用に前へ進もうとする
青年たちの、芸能界を舞台にした再会ラブストーリー。
果たして、二人が想いを伝え合える日は来るのか――。
そんな2人を見守る幼馴染サブカップルにも注目!
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる