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大海の朱い一滴
①
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さて、まずは何から始めようか。
“勝つ気のない相手に負けない”ことは簡単だ。
でも、感情の勝負で「勝ち」と断言するのは、そう簡単じゃない。
特に相手が、あのネガティブの権化・司馬さんとなると。
手っ取り早いのは、司馬さんに恋人を作ることだ。
恋人――愛し合うのが前提の関係なら、司馬さんが“好かれている”と簡単に証明できるはず。
けど、現実はそんなに甘くない。
司馬さんはΩに苦手意識がある。
おまけに自分に厳しく、ネガティブで本音を隠しがちだ。
紹介したところで、自分をさらけ出すどころか、自ら傷ついて終わりだろう。
そんなことを考えながら司馬さんに目を向けると、「なんだ」と低い声が返ってきた。
「司馬さん、普段の休日ってどう過ごしてるんですか?」
唐突な質問だったけれど、司馬さんは少し面倒くさそうにこちらを一瞥して答える。
「……特に何も。ほとんど家にいる。たまにジムに行ったり、ビジネス書を読んだりするくらいかな」
うん、想像通りだ。
この人は、人と休日を過ごすことがあまりないらしい。
もちろん、一人の時間が悪いわけじゃない。
でも、一人きりの時間が長くなりすぎると、考えが自分の中だけでループしやすくなる。
司馬さんの思考がここまで極端になってしまったのも、もしかしたらそれが一因かもしれない。
――だったら。
その“休日”に、誰かがちょっとだけ入り込んでみるのはどうだろう。
「――ねぇ、司馬さん。しばらくの間、休日は俺と過ごしません?」
司馬さんが顔をしかめる気配を感じながらも、続ける。
「もちろん毎回じゃなくて、お互いに用事がない日だけでいいんです。
この勝負、職場に持ち込むのは違う気がしますし、だったら休日に色んな経験してみるのがいいかなって」
司馬さんが困惑した表情を浮かべるが、これは押せば何とかなりそうだ。
「ほら、もう勝負にOKしちゃったんですし、観念してください!」
しばし沈黙のあと、司馬さんは深く小さくため息をついた。
「……好きにしろ」
きっと司馬さんは素直に言うことが出来ないのだ、ということにする。
「じゃあ、早速今日から!
せっかく晴れてますし、どこか出かけましょう!」
考え直される前に、話を進めてしまおう。
さて、何をしようか。
初日からインドアは勿体無いが、人の多いところは司馬さん嫌がりそうだな。
張り切った場所は、俺の服がないから駄目だし……。
そうだ、と思いついた案をそのまま口にする。
「海とかどうですか?
まだ海開き前だから人も少ないし、静かでいいと思います!
俺、そっちが地元なんで穴場のルートも知ってますし!」
“勝つ気のない相手に負けない”ことは簡単だ。
でも、感情の勝負で「勝ち」と断言するのは、そう簡単じゃない。
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手っ取り早いのは、司馬さんに恋人を作ることだ。
恋人――愛し合うのが前提の関係なら、司馬さんが“好かれている”と簡単に証明できるはず。
けど、現実はそんなに甘くない。
司馬さんはΩに苦手意識がある。
おまけに自分に厳しく、ネガティブで本音を隠しがちだ。
紹介したところで、自分をさらけ出すどころか、自ら傷ついて終わりだろう。
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「司馬さん、普段の休日ってどう過ごしてるんですか?」
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――だったら。
その“休日”に、誰かがちょっとだけ入り込んでみるのはどうだろう。
「――ねぇ、司馬さん。しばらくの間、休日は俺と過ごしません?」
司馬さんが顔をしかめる気配を感じながらも、続ける。
「もちろん毎回じゃなくて、お互いに用事がない日だけでいいんです。
この勝負、職場に持ち込むのは違う気がしますし、だったら休日に色んな経験してみるのがいいかなって」
司馬さんが困惑した表情を浮かべるが、これは押せば何とかなりそうだ。
「ほら、もう勝負にOKしちゃったんですし、観念してください!」
しばし沈黙のあと、司馬さんは深く小さくため息をついた。
「……好きにしろ」
きっと司馬さんは素直に言うことが出来ないのだ、ということにする。
「じゃあ、早速今日から!
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「海とかどうですか?
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