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小さな変化
④
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「いやぁ、オジサン嬉しいよ。まさか司馬くんの浮いた話を聞く日が来るとはな」
小野寺さんが、どこか遠い目をして語り始める。
「司馬くんがこの部署に来たとき、正直焦ったんだよ。αなんて入ってきたら、女の子みんなそっちに夢中になるんじゃないかって」
羽鳥さんと俺で同時に冷めた視線を送ったが、小野寺さんは怯むどころか、得意げに話を続けた。
「でも、入ってきたのはあの仕事人間の司馬くんでさ。出世は先越されたけど、嫉妬も何もなかったよ。ほら、司馬くんってαらしいけど、αらしくないっていうか」
「……まぁ、言いたいことは分かります」
小説やドラマのαといえば、頭が良くて、真面目で、仕事ができて、誰にでも優しい――そんな超人像が定番だ。仕事中の司馬さんはまさにそれに近い。
だが、実際に接してみると、世間のα像とは違う面も見えてくる。確かに頭は切れるし仕事もできるが、α同士の関係だけを重視して、βには見向きもしないαも少なくない。
「新入社員でαが入ってきたけど、仕事が全然できないくせに上から目線」――そんな愚痴は、βの中年たちの飲み会で定番の話題だ。もちろん嫉妬も混ざっているから、話は少し盛られているだろうが。
極端な例では、有名なαの経営者が「部下のβが使えないから全員解雇した」とSNSに投稿し、大炎上したこともあった。
そこまで行くとさすがに稀だが、βの話をきちんと聞いてくれるαの上司は、実際そう多くないらしい。
……配属前、不安になって「α 上司」でネット検索しまくった俺の調査結果では。
「相川くんのOJTって、司馬くん直々に担当してるよね?彼女が出来たとか、聞いてたりしないの?」
……そう言われても、何と答えればいいやら。
俺と司馬さんがほぼ毎週末会っている、というか俺が押しかけていることは、別に意図的に隠している訳ではない。
だが、司馬さん的にはあまり知られたくないだろうと思い、言わないようにしている。
今も言う必要は無いだろうと思い、「えー?知らないですよ」と濁した。
「盛り上がっているようだが、何の話をしているんだ?」
凛とした声が聞こえたので振り返ると、背後に司馬さんが立っていた。……マズい状況だ。
「ちょうど司馬くんの話をしていたんだよ!
最近いい意味で変わったねって。」
俺と羽鳥さんが固まっていた一方で、小野寺さんが飄々と話を続ける。流石、年上なだけある。
司馬さんは頭を押さえ、やれやれとため息をついた。
「後輩に変な話をしないでください、小野寺さん。
次の営業の打ち合わせがあるから、相川を借りていきますね。」
そういい、俺を連れて会議室へ向かい移動する。
悪い話はしていないつもりだが、それでも陰口を叩いていたみたいに見えてしまったかも知れない。
フォローするべきだろうか。
そう悩んでいたら、ふいに司馬さんが話しかけてきた。
「……君は、みんなと仲がいいな。」
小野寺さんが、どこか遠い目をして語り始める。
「司馬くんがこの部署に来たとき、正直焦ったんだよ。αなんて入ってきたら、女の子みんなそっちに夢中になるんじゃないかって」
羽鳥さんと俺で同時に冷めた視線を送ったが、小野寺さんは怯むどころか、得意げに話を続けた。
「でも、入ってきたのはあの仕事人間の司馬くんでさ。出世は先越されたけど、嫉妬も何もなかったよ。ほら、司馬くんってαらしいけど、αらしくないっていうか」
「……まぁ、言いたいことは分かります」
小説やドラマのαといえば、頭が良くて、真面目で、仕事ができて、誰にでも優しい――そんな超人像が定番だ。仕事中の司馬さんはまさにそれに近い。
だが、実際に接してみると、世間のα像とは違う面も見えてくる。確かに頭は切れるし仕事もできるが、α同士の関係だけを重視して、βには見向きもしないαも少なくない。
「新入社員でαが入ってきたけど、仕事が全然できないくせに上から目線」――そんな愚痴は、βの中年たちの飲み会で定番の話題だ。もちろん嫉妬も混ざっているから、話は少し盛られているだろうが。
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そこまで行くとさすがに稀だが、βの話をきちんと聞いてくれるαの上司は、実際そう多くないらしい。
……配属前、不安になって「α 上司」でネット検索しまくった俺の調査結果では。
「相川くんのOJTって、司馬くん直々に担当してるよね?彼女が出来たとか、聞いてたりしないの?」
……そう言われても、何と答えればいいやら。
俺と司馬さんがほぼ毎週末会っている、というか俺が押しかけていることは、別に意図的に隠している訳ではない。
だが、司馬さん的にはあまり知られたくないだろうと思い、言わないようにしている。
今も言う必要は無いだろうと思い、「えー?知らないですよ」と濁した。
「盛り上がっているようだが、何の話をしているんだ?」
凛とした声が聞こえたので振り返ると、背後に司馬さんが立っていた。……マズい状況だ。
「ちょうど司馬くんの話をしていたんだよ!
最近いい意味で変わったねって。」
俺と羽鳥さんが固まっていた一方で、小野寺さんが飄々と話を続ける。流石、年上なだけある。
司馬さんは頭を押さえ、やれやれとため息をついた。
「後輩に変な話をしないでください、小野寺さん。
次の営業の打ち合わせがあるから、相川を借りていきますね。」
そういい、俺を連れて会議室へ向かい移動する。
悪い話はしていないつもりだが、それでも陰口を叩いていたみたいに見えてしまったかも知れない。
フォローするべきだろうか。
そう悩んでいたら、ふいに司馬さんが話しかけてきた。
「……君は、みんなと仲がいいな。」
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