α上司の最善ではない恋

空気綺麗

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小さな変化

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「もしや羽鳥ちゃん、司馬くんのこと…」
 
「やめてください、そういうの。セクハラですよ?
そうじゃなくて、憧れです。」
 
ツンと羽鳥さんが返す。
 
「ごめんって、冗談だよ。でもさ、こういう変化ってさ、きっと“アレ”関係じゃない?」
 
そう言い小野寺さんは小指を立てる。
また恋愛関係か、とでも言いたげに羽鳥さんはため息をついた。
 
「でもまぁ、確かにあり得ますね。」

「だろ?それに司馬くんはαだから。ほら、運命の番のΩと出会ったαがまるで別人のように変わること、よくあるらしいじゃない。」

 ……そこまで深読みされているとは。
 一体、司馬さんは普段どんな印象を持たれていたんだろう。

 話が妙な方向に飛躍していくのを聞きながら、思わず吹き出してしまった。

 俺の笑い声に、二人が同時にこちらを振り向く。
 盗み聞きしていたのがバレたので、もう開き直って会話に割り込むことにした。

「すみません、つい耳に入ってしまって。そんなに言われるほど変わったんですか?」

 困ったように、羽鳥さんははにかむ。
 

「すみません、つい耳に入っちゃって。そんなに変わったんですか、司馬さん?」

 羽鳥さんは、少し困ったようにはにかむ。

「別に、元が嫌だったとかじゃないだよ? 前からちゃんと話を聞いてくれる人だし。
 でも、なんていうか……いつも聞き役に徹していて、司馬さん自身の話は全然してくれないなって思ってたの。」

 ――確かに。
 俺が配属されたばかりの頃から司馬さんについて回っているが、営業ではひたすら相手の話を引き出すスタイルだった。
 取引先とのアイスブレイクでも、まずは相手の趣味や近況から入るのが常だった。

 羽鳥さんは俺に向けて話を続ける。

「この間、司馬さんに“奏ペリ”グッズのことで声をかけられた時も、最初は部下との雑談のために、わざわざ見てくれたのかなって思ったくらいなんだけど」

 ……まあ、俺がほぼ強制的に見せたようなもんだけど。

「でも、その時落としたのがこのファイルで」

 羽鳥さんは机の端から、件のファイルを取り出す。

 あれ?俺が見たグッズはこれじゃない。
 というか……
「これ、"奏ペリ"のグッズなんですか?」

「やっぱり分からないよね。
 これ、主人公がいつも楽譜を入れてるファイルを再現したグッズなの。よっぽど細部まで見ていないと、アニメグッズって気づかないよね?
 それに、司馬さんの“推しキャラ”まで教えてくれて」

「えっ、司馬さん推しとかいるんですか?!」

 ……なにそれ、俺聞いてないんだけど。

「ね? 私もびっくりして。
 流行ってるから話を合わせるために見始めただけかもしれないけど、あの司馬さんが推しの話なんてしてくれると思わなかったから、嬉しくなっちゃって。
 それでつい、色々話しちゃってるの。」

 そう言い、羽鳥さんは両手で頬を押さえ、恥ずかしそうに笑った。
 ――少しだけ、小野寺さんの気持ちがわかった。
 意外と司馬さんと羽鳥さん、お似合いかもしれない。
 趣味が少ない司馬さんも、何かと熱中しやすい羽鳥さんとなら、話が途切れなさそうだ。


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