26 / 28
恐れ
⑦
しおりを挟む
そんな俺の様子に司馬さんは戸惑ったものの、言葉を続けてくれた。
「そうだな、数回しか会ったことのない相手の話を引き出せるのは、君特有の才能だと思う。
それに、初めての一人での仕事にだって恐れず飛び込める勇気もある。
そして、人の気持ちを受け止めようとする優しさもある。
他にも……って、何を言っているんだろうな。」
初めは真剣に俺を褒めちぎっていた司馬さんだったが、ポカンと見つめる俺と目が合うと、恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「つまり!何が言いたいかというと、相川の良さは、経験を積めば良い営業になると思うし、いや、営業以外でも色んな職種で役立つだろうから、経験不足による些細な失敗で、悩み過ぎないで欲しいんだ。」
恥ずかしそうに顔を赤らめ、しどろもどろになりながらも、司馬さんは堂々と言った。
その真っすぐさに思わず息が詰まる。
「……αの司馬さんに比べたら、大したことないですよ。」
つい刺々しい口調になってしまった。
だが、司馬さんは気にした様子もなく、少し呆れたように笑う。
「αとか関係ない。僕の方が歳上で、経験を積んでいるんだから当然だろう。
これで同じだったら、上司として君に何を教えればいいんだ。
相川が今の僕と同じくらい経験を積めば、同じように出来るようになる。
いやむしろ、君の方が営業としての才能があると思うよ。」
目の前が、チカチカ光ったような気がした。
それは、俺がずっと欲しかった言葉だった。
ずっと、君は出来るって、誰かに言って欲しかった。
それを、自分よりずっと上の存在だと思っていた司馬さんがくれたから。
気づくと、俺の頬を涙が伝っていた。
「……って、どうしたんだ?!何か、気に障ることを言ってしまっただろうか……。」
「ち、違うんです。むしろ、嬉しくて……。」
焦る司馬さんに平気だと言わないといけないと思うものの、上手く言葉が出て来ない。
なのに、心のうちから色んな感情が溢れてきて、涙が次々と込み上げてくる。
「……あの、司馬さん。
一回、ハグしてもいいですか?」
ギョッとしたように目を見開いた司馬さんだったが、泣いている俺に強く言えなかったのか、しばらくして小さく頷いてくれた。
椅子から立ち上がり、つられるように立った司馬さんに近づいて、肩に頭を乗せるように抱きつく。
涙が司馬さんの肩を濡らしたが、前にゲロで服を汚されたことを思えば、このくらい許してもらえるだろう。
司馬さんはどうしていいか分からないといった様子で少し迷ったあと、ぎこちなく背中をポンポンと叩いてくれた。
その暖かさが、胸の奥に沁みわたる。
数十秒ほど静かな時間が流れたが、さすがに迷惑かなと思い、顔を上げて席に戻った。
司馬さんの顔を見るのが恥ずかしくて、冷めかけたカレーを静かに食べる。
部屋には言葉もなく、時計の針の音と、自分の鼓動だけがやけに大きく聞こえていた。
――でも、この気持ちを隠しておくことの方が、きっとずっと恥ずかしい。
ふと、口から言葉が零れ落ちた。
「……俺、司馬さんのこと、好きかもしれないです。」
「そうだな、数回しか会ったことのない相手の話を引き出せるのは、君特有の才能だと思う。
それに、初めての一人での仕事にだって恐れず飛び込める勇気もある。
そして、人の気持ちを受け止めようとする優しさもある。
他にも……って、何を言っているんだろうな。」
初めは真剣に俺を褒めちぎっていた司馬さんだったが、ポカンと見つめる俺と目が合うと、恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「つまり!何が言いたいかというと、相川の良さは、経験を積めば良い営業になると思うし、いや、営業以外でも色んな職種で役立つだろうから、経験不足による些細な失敗で、悩み過ぎないで欲しいんだ。」
恥ずかしそうに顔を赤らめ、しどろもどろになりながらも、司馬さんは堂々と言った。
その真っすぐさに思わず息が詰まる。
「……αの司馬さんに比べたら、大したことないですよ。」
つい刺々しい口調になってしまった。
だが、司馬さんは気にした様子もなく、少し呆れたように笑う。
「αとか関係ない。僕の方が歳上で、経験を積んでいるんだから当然だろう。
これで同じだったら、上司として君に何を教えればいいんだ。
相川が今の僕と同じくらい経験を積めば、同じように出来るようになる。
いやむしろ、君の方が営業としての才能があると思うよ。」
目の前が、チカチカ光ったような気がした。
それは、俺がずっと欲しかった言葉だった。
ずっと、君は出来るって、誰かに言って欲しかった。
それを、自分よりずっと上の存在だと思っていた司馬さんがくれたから。
気づくと、俺の頬を涙が伝っていた。
「……って、どうしたんだ?!何か、気に障ることを言ってしまっただろうか……。」
「ち、違うんです。むしろ、嬉しくて……。」
焦る司馬さんに平気だと言わないといけないと思うものの、上手く言葉が出て来ない。
なのに、心のうちから色んな感情が溢れてきて、涙が次々と込み上げてくる。
「……あの、司馬さん。
一回、ハグしてもいいですか?」
ギョッとしたように目を見開いた司馬さんだったが、泣いている俺に強く言えなかったのか、しばらくして小さく頷いてくれた。
椅子から立ち上がり、つられるように立った司馬さんに近づいて、肩に頭を乗せるように抱きつく。
涙が司馬さんの肩を濡らしたが、前にゲロで服を汚されたことを思えば、このくらい許してもらえるだろう。
司馬さんはどうしていいか分からないといった様子で少し迷ったあと、ぎこちなく背中をポンポンと叩いてくれた。
その暖かさが、胸の奥に沁みわたる。
数十秒ほど静かな時間が流れたが、さすがに迷惑かなと思い、顔を上げて席に戻った。
司馬さんの顔を見るのが恥ずかしくて、冷めかけたカレーを静かに食べる。
部屋には言葉もなく、時計の針の音と、自分の鼓動だけがやけに大きく聞こえていた。
――でも、この気持ちを隠しておくことの方が、きっとずっと恥ずかしい。
ふと、口から言葉が零れ落ちた。
「……俺、司馬さんのこと、好きかもしれないです。」
3
あなたにおすすめの小説
サークル合宿に飛び入り参加した犬系年下イケメン(実は高校生)になぜか執着されてる話【※更新お休み中/再開未定】
日向汐
BL
「来ちゃった」
「いやお前誰だよ」
一途な犬系イケメン高校生(+やたらイケメンなサークルメンバー)×無愛想平凡大学生のピュアなラブストーリー♡(に、なる予定)
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
♡やお気に入り登録、しおり挟んで追ってくださるのも、全部全部ありがとうございます…!すごく励みになります!! ( ߹ᯅ߹ )✨
おかげさまで、なんとか合宿編は終わりそうです。
次の目標は、教育実習・文化祭編までたどり着くこと…、、
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
総愛され書くのは初めてですが、全員キスまではする…予定です。
皆さんがどのキャラを気に入ってくださるか、ワクワクしながら書いてます😊
(教えてもらえたらテンション上がります)
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
⚠︎書きながら展開を考えていくので、途中で何度も加筆修正が入ると思います。
タイトルも仮ですし、不定期更新です。
下書きみたいなお話ですみません💦
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
ステッドファスト ー恋に一途な僕らの再会ー
ブンダバー
BL
中学の頃から、橋本はずっと鏑木だけを想い続けてきた。
一方の鏑木も、橋本に特別な感情を抱いていながら、モデルとして生きる彼の未来を思い、その一歩を踏み出せずにいた。
時が経ち、広告代理店に勤める社会人となった鏑木と、人気モデルとして芸能界で活躍する橋本は、仕事をきっかけに偶然の再会を果たす。
――あの頃、言えなかった気持ち。
――守りたかった距離。
大人になった今だからこそ、再び動き出す両片想い。
恋も、仕事も、簡単じゃない。それでも不器用に前へ進もうとする
青年たちの、芸能界を舞台にした再会ラブストーリー。
果たして、二人が想いを伝え合える日は来るのか――。
そんな2人を見守る幼馴染サブカップルにも注目!
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる