2度死んだ王子は今度こそ生き残りたい

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第二部

事件

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 午前の授業を終え、午後に挑むための英気を養おうと食堂へ向かった。
 食堂といっても大衆食堂のような雑多さはなく、貴族たちが当然のように通う本格的なレストランだ。 白いクロスが掛けられたテーブル、磨かれた銀食器、控えめに香るスープの匂い──どれも「学園の食堂」という言葉からは程遠い。

 席に着いて待っていると、ウェイターが羊肉のポタージュを運んできた。 湯気の向こうで、淡い香りがふわりと立ち上る。

 ……正直、こんな格式ばった場所じゃなくて、町の酒場みたいな気楽な店でいいんだけどな。 作法に気を遣うだけで疲れる。

「昼から羊肉ですか。贅沢ですね」

 隣の席に、とある少女が腰掛けた。

「リーナ」

 この食堂は相席が珍しくない。丸机に四席、そこに別々の生徒が座るのは日常だ。

「俺が固い黒パンを食べたところで、誰かが食べられる食物が増えるわけじゃないからな」

「それはそうですね」

 最初から皮肉のつもりではなかったのか、リーナは眉一つ動かさずメニューをめくる。 ウェイトレスを呼び、注文しようとした──その瞬間。
 どん、と腹の底に響くような衝撃音が食堂全体を揺らした。
 ざわめきが一気に広がる。 「雷か?」「魔物か?」と、あちこちで憶測が飛び交う。
 そんな中、騒ぎの中心から来たらしい生徒が、息を切らしながら扉を乱暴に押し開けた。 制服は泥と葉で汚れ、肩で息をしている。

 彼の話によると──第二校舎近くの林で、貴族らしき男が暴れているらしい。 木々をなぎ倒しながら。
 ただ事ではない。
 俺は近くの生徒に学園警備隊と憲兵団への連絡を頼み、すぐさま現場へ向かった。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 林に着くと、そこにいたのは「人間」というより「魔物」に近い男だった。 折れた木を片手で軽々と振り回し、周囲の並木はすべて薙ぎ倒され、地面には放射状のひびが走っている。

 ひどい光景だ。
 被害者が出る前に止めないと。

 身構えながら相手を凝視すると──どこかで見た顔だと気付く。
 ああ、こいつ。 この前、部室棟で難癖をつけてきた悪徳貴族だ。
 あの時も大柄だったが、せいぜい190cm程度。 だが今目の前にいるのは、どう見ても3m近い巨体。 短期間で何があったんだ?

 思考が一瞬逸れたその時、視界の端に別の影が映った。
 逃げ遅れた女生徒が、腰を抜かしたまま震えている。 目の前の怪物を見上げ、声も出せない。

 俺が彼女に気付いたのと同時、男は女性目掛けて飛び出し手に持った木を思い切り振り下ろした。

 全速力で駆け、なんとか男より先に女生徒へ辿り着く。 次の瞬間、振り下ろされた木を左手で受け流し、軌道を逸らす。 衝撃で腕が痺れたが、二人とも無事だ。
 乱入者がいるとは思わなかったのか、男が一瞬固まる。 その隙に、思い切り股間を蹴り上げた。

「ッ~~~!!!」

 3mの巨体でも、急所は急所らしい。 男はうずくまり、苦悶の声を漏らす。
 その隙に女生徒を抱えて距離を取り、彼女を安全な場所へ下ろすと、再び前線へ戻る。
 男は怒り狂い、全身を使って攻撃を繰り出してきた。 幸いどれも大振りで、避けるのは難しくない。

 革命時、兵士たちを相手に逃げ回った経験は伊達じゃない。 舐めるなよ。
 攻撃が当たらないことに苛立ったのか、男は子供のように地団駄を踏む。 だが、3mの巨体が踏み鳴らすそれは、軽い地鳴りだ。

「うわっ」

 思わず体勢が崩れた。
 その隙を逃さず、砲弾のような拳が飛んでくる。 腹に直撃し、数メートル吹き飛ばされた。

「がはっ」

 転がりながらも、足を震わせ立ち上がろうとする。 怪物はにやりと笑い、止めを刺すべく腕を振り上げた。

 ──その瞬間。
 男の全身が、轟々と燃え上がる火柱に包まれた。悲鳴を上げる暇もなく黒焦げになり、地面へ崩れ落ちる。

「大丈夫ですか、兄上殿?」
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