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巡る想い

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「あら、昨日は六本木に行ったの?のん先生にしては珍しいわね。」

エミリー先生がホットコーヒーを冷ましながら聞いた。

望美はOL時代に都内港区にある大企業で働いていた。

確かに港区は華やかでキラキラとして、いろんなお店もあり楽しい街である。

しかし望美にとっては辛いOL時代を思い出す街で、自らあまり足を運ばない場所なのだ。

むしろ望美は港区どころか、最近では多摩川を越える頻度も少なくなっている。

最近は職場とお家の往復しかしていないのだ。

エミリー先生はそのことを知っていて望美に聞いた。

「雄司さんの車に乗ってから行き先を聞いたんです。もう港区は行きたくないと思ってましたけれど、久しぶりの東京は普段見れない世界を見れたので楽しかったです。」

「そりゃ、あの『レオナルド』に会えたのだから楽しかったに決まっているわ。私も『レオナルド』に会いたかったわ。」

エミリー先生が大きな身振りで自分の身体を抱きしめる素振りをした。

そして何かを思い出したかのように、ポケットからスマホを急いで取り出して何かを検索し始めた。

「『レオナルド』といえば、昨日のネットニュース観た?『マネージャー高橋』も超イケメンなのよ。」

エミリー先生がスマホで検索したネットニュースを見せてくれた。

そのネットニュースの記事には、レオナルドのマネージャー高橋がSNSへの初登場で推しであるレオナルドの愛を語る、といった内容である。

この記事によると、マネージャー高橋の初登場によってネット上のレオナルドファンが大盛り上がりしたという。

高橋のスラっとしたビジュアルと推しを愛するオタク精神、そして推しのマネージャーという職業が女性ファンの心を掴んだのだろう。

記事の最後には、高橋が語ったマネージャーと推し活を両立して頑張るという意気込みで締めくくられていた。

「昨日、この方にもお会いしましたわ。とても良い人そうです。」

望美はニュースの内容には驚かなかったが、レオナルドのSNSに高橋が出演したことと、高橋が有名になることの早さに驚いた。

「羨ましい~。あのレオナルドと高橋クンの2人に会えるっていいじゃな~い。こんなことだったら昨日の永田町の議員からの鑑定依頼なんて断って、のん先生押しのけて王子の車に乗り込めばよかったわ。」

エミリー先生が冷ましたホットコーヒーを飲みながら言った。

「彼らの悩みなんて、いつでも選挙のことばかりでくだらないのよ。私もイケメン拝みたかったわ~。」

エミリー先生のグチはいつも言いづらい事をはっきりと言ってくれるので望美は好きだ。

占いの館のオープン時間まではまだ少しある。

望美は昨日の雄司とのことを相談したくなりエミリー先生に話した。
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