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二人の関係

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あれから、アタシたちは無事に想いを伝え合って、見事付き合うことになった。

アタシは、もちろん速攻でセフレは全員切った。
いろいろ言ってくる輩もいたけど、そこはほら…愛の力♡という名の剛腕で黙らせた。

「いいけどさ、ほんとにそのノンケとで満足出来るのか?」

そんなこと言ってくる長く続いたセフレもいた。

「当たり前でしょ?だって、二十年の片想いが叶ったのよ。これ以上の幸せなんてあるはずないじゃない」

アタシは、初恋の成就に舞い上がっていた。
周りの忠告なんて、1ミリも耳に入らない程に。

「そういうことじゃないんだけどな…」

「あ~っ!幸せ♡」

こうして、身辺をスッキリ綺麗にしたのは良いけれど。


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「「…………」」

今はデート中だ。
でも、なんでか本屋で二人で立ち読みしてる。
え?中学生?

「あ、俺、ちょっと読みたい本があってさ。寄っていい?」

アタシが予約したオシャレなレストランで食事をした帰り道。
馬場に言われて二人で本屋に寄る。
恋人同士の二人なら、どこだってアミューズメントパーク♡


「「…………」」

で、はや二時間。

「ねぇ、そろそろ行かない?」

「んー、もう少し」

気のない返事で、アタシは待ちぼうけ。
ぼんやりと本屋の壁を眺めていた。

「あのぉー、お兄さん、一人ですかぁ?」

女のコ二人組に声を掛けられる。
いや、すぐ隣に彼氏いるけど。

「もし、暇だったらぁ、お茶でもどうですかぁ?」

ちらり、と隣を見る。
馬場と目が合う。
あ、目を逸らした。
何も言わずに、ススス、とアタシから離れて行った。
おまぇっ!!
アタシと無関係決め込む気かーーーっ!!!

「ごめんねぇ、今、彼氏とラブラブデート中だから♡」

ぐいんっと馬場の腕を強引に引っ張って、唖然とする女のコ達を尻目に、そのまま店の外まで連れて行く。

「なっ、なんだよ!まだ、本見てて」

ガスンっと脳天にチョップする。

「あだっ!!」

「あだっ!じゃねぇ。このアタシがナンパされてんのに無視するたぁ、どういう了見だ」

「そっ、そんなの、いつものことだろ?お前は、その、モテるし…」

尻つぼみに小さくなってく声にイライラが募る。

「あっそ。アタシが、あの女のコ達とお茶しにいってもいいわけ」

「そ、それは…その…」

もちょもちょ喋るんじゃねぇ!
お前も男だろーが!!
玉ついてんのか?!

「そのまま、どっかにシケこんでもいいわけ」

「なんだよ、それ!それとこれとは、話が別っていうか、大体、お前はその、ゲイだし…」

ブツブツ言いながら俯いていく額を人差し指で、下からズンズンズンズン突き上げて、視線が合うまで上を向かせる。

「アタシ、女とも付き合ったことあるけど?」

「え……」

そんな顔するくらいなら、言い訳なんかすんじゃねえ。
こっちが悪いみたいだろーが。
胸が痛むわ。

「はぁ…で?これからどうすんの?」

「え?あ、これから?えーっと、とりあえず、もう遅いから帰るだろ?あー、電車?それとも」

ズガンっと頭突きしてやった。

馬場の目から星が出てるけど、無視して帰ってやった。

子供か!!!
アタシもお前も、アラフォーだぞ!!


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「はぁーっ…はあぁーあ…はぁーーっ」

溜息が止まらない。

バーのカウンターでスマホをずっと見ているけど、何の通知もない。

「なーにぃ?ママったら、恋煩い?モテモテのママに限って、まさかねぇ?」

ウザ絡みの常連は無視して、ツマミを投げて渡す。

「はぁ?ちょっとー、アカネママが冷たい~」

ワアワアキャアキャアしてる奴らと話す気になんてなれない。

あれから、馬場から連絡が来ない。
別に本気で怒ったわけじゃない。
ああいう時は、追いかけて謝るのが普通でしょ?
だって、アタシたち恋人同士になったのよ?
しかも、二十年の時をかけて。
喧嘩して、謝って、許して、そうやって愛が深まっていくんじゃないの?
ねぇ、アタシたち付き合い始めて、まだ1ヶ月だよ?
もっと、毎日連絡取って、モーニングコールとか、おやすみメールとか…

モヤモヤしながら仏頂面で酒を作っていると、例の元セフレがカウンターに座った。

「どう?例の彼とは上手く行ってんの?」

「…まあね」

余計なことは言うつもりはない。
もう、とっくに切れたセフレに弱味は見せたくないし。

「アカネママねぇ、恋煩いみたいよぉ?溜息ばっかりついてて、落ち込んでるの。邪魔しちゃ悪いわぁ。ね?あっちで飲みましょ~」

ウザ絡みの常連客が彼の腕に擦り寄って、カウンターから連れて行く。

「なにかあれば、連絡して」

小声で囁かれるけど、無視。
なにかって何だよ。
そんなの起きねぇよ。

スマホは結局、今日も鳴らなかった。



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『ねぇ、なんで連絡してこないの?』

ついに我慢しきれなくて、アタシからメールを送った。
アタシからね?

『特に用事無かったから』

馬場は、元々そういう奴だ。
そんなの分かってる。
アイツは何も変わって無い。
良くも悪くも昔から。

でも、アタシは不安で仕方なかった。
相手はノンケだ。
男相手に付き合うことになって、戸惑ってるんじゃないか。
もしかして、もう後悔してるんじゃないか。
一緒に歩いているところを人に見られたくないんじゃないか。

別れたいんじゃないか。


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「それで?アカネママは、どうしたいんですか?」

まさか、アタシがコイツらに恋愛相談する日が来るなんて。

「どうって、そりゃ…このまま付き合っていきたいわよ。だって、ようやく、こ、恋人になれたんだし?」

アンタ達みたいに、とは言わなかった。
それはアタシのプライドが許さない。

「うーん、どう思う?唯人」

そのバカに振るな。
変態バカストーカーの意見など、何の参考にもならん。

「えと、僕は…彼に会うといいと思う」

「はぁ?そりゃ、あのバカに会えればいいけど、でも」

健吾がアタシの前にビシッと人差し指を立てる。

「でももカカシも無いです。会いたいなら、会わなきゃ」

「うっ、でも…」

ツン、と額を突付かれる。

「でも、なんて言ってる間に俺たち死んじゃいますって!ね?」

「…そうね」

アタシは、メールを送った。
あっちのバカに。


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「ごめんごめん、仕事で遅くなっちまったー」

いつもの脳天気地味ダサリーマンが待ち合わせ場所まで汗を流して走って来た。

「いや、待ってないし…ううん、待った!めちゃくちゃ待った!」

「はあ、ごめん?で、用事って?」

アタシは腕組みして真正面から、よーく馬場を見る。
ほんっと、冴えないわー。
確かに、アタシと歩いてても絶対に連れだと思われないし、ましてや恋人同士になんて絶対に見えない。
良くて付き人。

「よし!行きましょ」

「うん?どこに?」

「アンタを改造するに決まってるでしょ、クソ地味リーマン」



悔しいけど、あの唯人からのアドバイスが役に立ちそう。

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