元社畜、スキル『おっさん』で快適な異世界ライフを送る~全てのおっさん(達人)のスキル使い放題はチート過ぎる!!~

荒井竜馬@書籍発売中

文字の大きさ
4 / 63

第4話 『おっさん剣士』

しおりを挟む
「さてと、サクッと倒すとするか」

 俺はそう言って切っ先をクマのような魔物に向ける。サクッと倒すとは言ってしまったが、剣なんて初めて持つ俺がどこまでできるのかは分からない。

 分からないはずなのに、体が剣の使い方と立ち回り方を理解しているようだった。

 確か、少年がこのクマのことをワイルドベアと言っていたっけ?

 見た目はクマのようではあるが、随分と気性が荒いみたいだ。

「ガアア……」

 魔物は俺との距離を測っているだけで、中々突っ込んでこようとはしなかった。きっと、『おっさん剣士』のことを警戒しているのだろう。

 俺が短く息を吐くと、しびれを切らしたワイルドベアが勢いよく俺に向かって突っ込んできた。

 巨体なのに移動スピードは速く、どんどんと俺との距離を詰めてくる。

 本来の俺ならば、クマに突進されてきたというだけで卒倒してしまっていたかもしれない。

 それなのに、俺の体は逃げるどころか剣を構えて、魔物が間合いに来るまでじっと静かに待っている。

 スキル『おっさん』のせいか、魔物に対する恐怖心もまるでなく、呼吸が偉く落ち着いている。

「ガアアア!!」

 そして、魔物が俺の間合いに入ったと思った瞬間、最小限の動きから繰り出される鋭い一太刀がワイルドベアの腹部を襲った。

 ザシュッ!

「ガアアアッアアッ」

 ワイルドベアは俺に突っ込んできた勢いをそのままに、上半身を引き裂かれてズルッと地面に体を打ち付けた。

 え? クマが真っ二つになった? そんなことできるのか?

 そんなことを考えてしまうが、俺の足元には俺が切ったクマのような魔物の上半身と下半身が別々で倒れていた。

 走ってきたクマを剣で真っ二つにするって……おっさんというか、達人やんけ。

 俺は一瞬で終わったワイルドベアとの戦いを振り返って、そんなことを思うのだった。

「すげーな、おっさん! ワイルドベアが一撃って、マジかよ!」

 すると、少年が興奮気味にそう言って俺のもとに駆けよってきた。羨望の眼差しを向けられてしまい、俺は照れ臭くなって頭を掻く。

 やっぱり、かっこいいものが好きって言うのは男の子全般に言えることだよな。

「おっと、そうだった。この剣ありがとうな」

「いやいや、礼を言うのはこっちだって! おっさんいなかったら、うち死んでたかもしれないし!」

 少年の言葉を聞いて、俺が駆け付けるまで少年が一人で魔物と戦っていたことを思い出した。

 辺りを見渡して見るが、周りに大人がいるようには見えない。

「そういえば、君は一人でこんな所で何してたんだ?」

 俺がそう聞くと、きょとんとした顔をした。

「何って、依頼だよ。うち冒険者だし」

「冒険者? いや、まだ子供じゃないか」

「別に、うちくらいの歳なら珍しいことでもないぜ」

 少年は当たり前のようにそう言ってから、首を傾げる。どうやら、少年の中では俺が変なことを言ったということになって言うらしい。

「この歳で冒険者をやるのか。すごいな異世界は」

「異世界?」

「い、いや、こっちの話だ」

 俺は咄嗟に漏れそうになった言葉を誤魔化した。

 いや、別に隠しておく必要はないのかもしれないが、必要以上に喋る必要もないだろう。

 下手に喋って色んな人に広まってしまったら、色々と面倒くさそうだしな。

 俺はそう考えて、意識を再び目の前にいる少年に戻す。

「とりあえず、色んなところ怪我してるみたいだし、今日は街に帰ったらどうだ?」

「おっさんも街に行くのか?」

「お、おう。そのつもりだ」

 嫌味っぽさも感じられないし、別に悪意があるわけではないのかもしれないけど、未だに面と向かっておっさんと呼ばれると少し抵抗があるな。

 しかし少年はそんな俺の考えなど気づくはずがなく、ニカッと屈託のない笑みを浮かべた。

「分かった。それなら、一緒に行く」

 こうして、俺は見知らぬ少年と共に街に向かうことにしたのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

処理中です...