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05:新たなる面倒事の始まり
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あの前代未聞の卒業記念パーティーから、数日が過ぎた。
ベルンシュタイン公爵邸は、表向きはいつもと変わらぬ静寂に包まれている。だがその内部では、ある種の嵐が吹き荒れていた。いや、正確には、嵐が過ぎ去った後の、奇妙な凪の状態にあった。
「レティシア。お前は、本当に……本当に、わしの自慢の娘だ!」
卒業パーティーの日の夜。レティシアは、父であるベルンシュタイン公爵に書斎へと呼び出された。お叱りの言葉を受けるかと思いきや、開口一番そう言われながら力強く抱きしめられた。
武門の誉れ高い公爵は、娘が王宮騎士団を素手で半壊させたという報告を聞き、怒るどころか感涙にむせぶ。
「父様、苦しゅうございます……」
「おお、すまんすまん。しかし、見事だ! あのひ弱な若造どもに、我がベルンシュタイン家の血の何たるかを思い知らせてやったようだな! 特に、あのゲオルグの奴の報告書にあった『舞うような体捌きからの完璧な掌底』という一文! 目に浮かぶようだ!」
興奮冷めやらぬ父とは対照的に、母である公爵夫人は違う意味でむせび泣いた。常識ある令嬢は騎士団を相手に立ち回りなどしない、という至極真っ当な理由で。レティシアはその後きっかり一時間、母から淑女の品格と振る舞いについて涙ながらのお説教を受けることになった。
「わたくしが、どれだけ貴女を完璧な淑女に育てようと努力してきたか……! それなのに、貴女という子は! パーティ会場で騎士団をなぎ倒す令嬢が、世界のどこにおりますか!」
「申し訳ございません、母様。ですが、ドレスは汚さぬよう、細心の注意を払いましたのよ」
「そういう問題ではございません!」
しかし、その叱責の声も後半になるにつれて色合いが変わっていく。
「……それで、相手に怪我はなかったのでしょうね?」
「ええ、手加減はいたしましたわ」
「そう、それなら……まあ、少しは……」
と、母の口ぶりは歯切れが悪くなっていく。
結局のところ、母もまた娘の無事を喜んでいた。加えて武を誇るベルンシュタインの公爵夫人として、理不尽に立ち向かった娘の気骨を、内心では誇らしく思っているのだった。
さて。
両親からの賞賛とお小言、さらに追加で誉め言葉を受けたレティシア本人は、自室の天蓋付きベッドの上で、大の字になっていた。
「ああ、疲れましたわ……」
四肢を投げ出し、天井の豪華な装飾をぼんやりと眺める。肉体的な疲労は、とうにない。あるのは精神的な疲労感だ。面倒事に巻き込まれ、それを排除するために、さらに面倒なことをしでかしてしまった。その自己嫌悪にも似た徒労感が、ずしりと彼女を包み込んでいた。
「もう、王宮関係の面倒事はこりごりですわ」
窓の外では、小鳥がさえずっている。あのパーティーでの出来事が、まるで遠い夢の中の出来事のように感じられた。婚約は破棄され、自由の身になった。これからは、誰に気兼ねすることなく、庭の木に登り、裏山を探検し、うららかな日差しの下で昼寝ができる。そう、平穏な日常が、ようやく戻ってきたのだ。
レティシアは、そう信じて疑わなかった。
―・―・―・―・―・―・―・―
同じ頃、王宮では、まったく別の種類の嵐が吹き荒れていた。
玉座の間。国王ランドール三世は、ゲオルグ騎士団長から提出された詳細な報告書を読み、玉座を揺らさんばかりに大笑いしていた。
「ぶはははは! 面白い! 実に面白いではないか、ゲオルグ!」
「はあ……。陛下、これは笑い事では……」
ゲオルグは、苦虫を噛み潰したような顔をして答える。自分の部下たちが、たったひとりの少女に赤子の手をひねるようにあしらわれたのだ。騎士団長としての面目は丸潰れである。
「何を言うか! これは、我が国の未来にとって、望外の吉報だぞ!」
国王は報告書を掲げるようにして、その中の一文を指差した。
「『対象は、一切の刃物を使用せず、人体の急所を的確に打撃、あるいは関節を制することで、全対象を殺傷することなく、完璧に無力化した』。これだ! この一文に、すべてが詰まっておる!」
国王は、玉座から立ち上がると、興奮した様子で部屋を歩き回る。
「力があるだけの蛮族ではない。力を完璧に制御し、目的を遂行するための最適な手段を選択できる知性。そして何より、ドレスを汚さぬという、その美学! 実に素晴らしい! 素晴らしいじゃじゃ馬ではないか!」
べた褒めであった。常識的な貴族令嬢という存在からは何段階もかけ離れているレティシアに対して、国王は言葉の限りの賞賛を送る。もっとも、それを聞いたとしても素直に喜べるかどうかは疑問ではあるが。
「あの愚息アルフォンスには、もったいなさすぎる器だ。王太子妃などという、窮屈な鳥かごに収まっていていい人材ではない。あの力、あの胆力……活かさぬ手はないだろう」
「陛下……? まさか……」
国王は、ニヤリと、悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべた。
ゲオルグの脳裏に、嫌な予感がよぎる。国王がこういう顔をした時はいつもろくなことにならない。
「よし、決めたぞ! ゲオルグ、すぐに勅命の準備をせよ!」
―・―・―・―・―・―・―・―
平穏な日々が戻ってきたと信じていたレティシア。そんな彼女の元に王宮からの使者が訪れたのは、王が報告を受けて大爆笑をしてから三日後のことだった。
侍女が恭しく銀の盆に乗せて運んできたのは、国王の印である獅子の紋章が刻まれた、豪奢な封蝋で封をされた一通の親書。
「……王宮から? わたくし宛に?」
レティシアは、眉をひそめた。もう関わることはないと思っていた。
アルフォンス殿下からの謝罪の手紙だろうか。
いや、あのプライドの高い殿下が、そんなことをするはずがない。
では、一体なんだろう。
胸騒ぎを覚えながらも、彼女はペーパーナイフで丁寧に封を切る。中から現れた上質な羊皮紙には、力強く、流麗な筆跡でこう記されていた。
『レティシア・フォン・ベルンシュタイン嬢へ
先の卒業記念パーティにおける、貴殿の勇壮なる武勇伝、誠に天晴れであった。その類稀なる武勇と、冷静沈着なる判断力は、王太子妃という器に収まるには、あまりにも大きすぎる。
よって、ここに勅命を下す。
貴殿を、国王直属護衛官、特別遊撃部隊『ロイヤル・フィスト(王の拳)』の初代隊長に任命する。
これは、我が国の暗部を払い、王家の敵を秘密裏に排除するための、影の部隊である。貴殿のその規格外の力は、国の光を守るための、最も鋭き刃となるであろう。
これは決定事項であり、拒否権はない。
三日後、王宮に出仕し、直接余から任務の説明を受けるように。
追伸:執務室は、見晴らしの良い東塔の最上階を用意させた。木登りにはちょうどよかろう。
国王 ランドール三世』
レティシアは親書を読み終えると、そのままの姿勢で固まった。時間が止まったかのように微動だにしない。不敬と分かっていながらも、なんだこれは、と思わずにいられない。
「………………」
しばし、沈黙。
やがて、彼女の口から、か細い、この世の終わりのような声が漏れた。
「……いちばん、面倒なことになりましたわね」
婚約破棄によって手に入れたはずの自由。木登り、猪追い、お昼寝。彼女のささやかな、しかし何物にも代えがたい平穏な日常は、幻のように消え去った。
その代わりに与えられたのは、国王直属の秘密部隊の隊長という、想像を絶するほど面倒くさそうな役職。国の暗部を払う? 王家の敵を排除? そんな、物語の中のような大役を、なぜ自分が? そう思わずにはいられない。
しかも、追伸の一文。
『木登りにはちょうどよかろう』
国王は、すべてお見通しなのだ。自分の本性も、望みも、すべてを知った上で、掌の上で転がしている。これでは、逃げ場がない。
レティシアは、ふらふらと窓辺に歩み寄った。窓の外には、どこまでも広がる青空と、ベルンシュタイン公爵家が誇る広大な庭園が見える。いつもなら、あの木に登ろうか、あの茂みを探検しようか、と心が躍るはずの光景が、今は灰色に見えた。
「はぁ……」
今日一番、いや、人生で一番深いため息が、彼女の唇から漏れた。
面倒事を避けるために、淑女を演じてきた。
理不尽な面倒事を排除するために、一度だけ本性を現した。
その結果、国家規模の、最大級の面倒事を押し付けられることになった。
人生とは、なんと皮肉なものだろう。
「………………」
しかし、彼女はレティシア・フォン・ベルンシュタイン。武門の血を受け継ぐ、不屈のじゃじゃ馬令嬢である。いつまでも、めそめそしてはいられない。
レティシアは窓枠に手をつくと、ぎゅっと拳を握りしめた。その瞳に、再び闘志の光が宿る。
「……こうなったら、やけくそですわ」
どうせやらなければならないのなら、最短距離で、最も効率的に、さっさと終わらせてしまえばいい。国の暗部だろうが王家の敵だろうが、すべてまとめて、この拳で叩き伏せ、無理やりにでも平穏な時間を作り出してみせる。
「まずは、あの悪趣味な国王陛下に、一発お見舞いするところから始めなければなりませんわね」
不敵な笑みを浮かべた彼女の顔は、もはや猫を被った淑女のものではなかった。それは、新たなる戦場へと赴く、最強の戦士の顔だった。
―・―・―・―・―・―・―・―
こうして、お転婆令嬢・レティシアの、まったく平穏ではない新たなる戦いが幕を開けた。
彼女は平穏な日常を取り戻すことができるのか。
心置きなく木登りができる日は、果たしていつになるのだろうか。
それは、まだ誰にも分からない。
-つづく?-
ベルンシュタイン公爵邸は、表向きはいつもと変わらぬ静寂に包まれている。だがその内部では、ある種の嵐が吹き荒れていた。いや、正確には、嵐が過ぎ去った後の、奇妙な凪の状態にあった。
「レティシア。お前は、本当に……本当に、わしの自慢の娘だ!」
卒業パーティーの日の夜。レティシアは、父であるベルンシュタイン公爵に書斎へと呼び出された。お叱りの言葉を受けるかと思いきや、開口一番そう言われながら力強く抱きしめられた。
武門の誉れ高い公爵は、娘が王宮騎士団を素手で半壊させたという報告を聞き、怒るどころか感涙にむせぶ。
「父様、苦しゅうございます……」
「おお、すまんすまん。しかし、見事だ! あのひ弱な若造どもに、我がベルンシュタイン家の血の何たるかを思い知らせてやったようだな! 特に、あのゲオルグの奴の報告書にあった『舞うような体捌きからの完璧な掌底』という一文! 目に浮かぶようだ!」
興奮冷めやらぬ父とは対照的に、母である公爵夫人は違う意味でむせび泣いた。常識ある令嬢は騎士団を相手に立ち回りなどしない、という至極真っ当な理由で。レティシアはその後きっかり一時間、母から淑女の品格と振る舞いについて涙ながらのお説教を受けることになった。
「わたくしが、どれだけ貴女を完璧な淑女に育てようと努力してきたか……! それなのに、貴女という子は! パーティ会場で騎士団をなぎ倒す令嬢が、世界のどこにおりますか!」
「申し訳ございません、母様。ですが、ドレスは汚さぬよう、細心の注意を払いましたのよ」
「そういう問題ではございません!」
しかし、その叱責の声も後半になるにつれて色合いが変わっていく。
「……それで、相手に怪我はなかったのでしょうね?」
「ええ、手加減はいたしましたわ」
「そう、それなら……まあ、少しは……」
と、母の口ぶりは歯切れが悪くなっていく。
結局のところ、母もまた娘の無事を喜んでいた。加えて武を誇るベルンシュタインの公爵夫人として、理不尽に立ち向かった娘の気骨を、内心では誇らしく思っているのだった。
さて。
両親からの賞賛とお小言、さらに追加で誉め言葉を受けたレティシア本人は、自室の天蓋付きベッドの上で、大の字になっていた。
「ああ、疲れましたわ……」
四肢を投げ出し、天井の豪華な装飾をぼんやりと眺める。肉体的な疲労は、とうにない。あるのは精神的な疲労感だ。面倒事に巻き込まれ、それを排除するために、さらに面倒なことをしでかしてしまった。その自己嫌悪にも似た徒労感が、ずしりと彼女を包み込んでいた。
「もう、王宮関係の面倒事はこりごりですわ」
窓の外では、小鳥がさえずっている。あのパーティーでの出来事が、まるで遠い夢の中の出来事のように感じられた。婚約は破棄され、自由の身になった。これからは、誰に気兼ねすることなく、庭の木に登り、裏山を探検し、うららかな日差しの下で昼寝ができる。そう、平穏な日常が、ようやく戻ってきたのだ。
レティシアは、そう信じて疑わなかった。
―・―・―・―・―・―・―・―
同じ頃、王宮では、まったく別の種類の嵐が吹き荒れていた。
玉座の間。国王ランドール三世は、ゲオルグ騎士団長から提出された詳細な報告書を読み、玉座を揺らさんばかりに大笑いしていた。
「ぶはははは! 面白い! 実に面白いではないか、ゲオルグ!」
「はあ……。陛下、これは笑い事では……」
ゲオルグは、苦虫を噛み潰したような顔をして答える。自分の部下たちが、たったひとりの少女に赤子の手をひねるようにあしらわれたのだ。騎士団長としての面目は丸潰れである。
「何を言うか! これは、我が国の未来にとって、望外の吉報だぞ!」
国王は報告書を掲げるようにして、その中の一文を指差した。
「『対象は、一切の刃物を使用せず、人体の急所を的確に打撃、あるいは関節を制することで、全対象を殺傷することなく、完璧に無力化した』。これだ! この一文に、すべてが詰まっておる!」
国王は、玉座から立ち上がると、興奮した様子で部屋を歩き回る。
「力があるだけの蛮族ではない。力を完璧に制御し、目的を遂行するための最適な手段を選択できる知性。そして何より、ドレスを汚さぬという、その美学! 実に素晴らしい! 素晴らしいじゃじゃ馬ではないか!」
べた褒めであった。常識的な貴族令嬢という存在からは何段階もかけ離れているレティシアに対して、国王は言葉の限りの賞賛を送る。もっとも、それを聞いたとしても素直に喜べるかどうかは疑問ではあるが。
「あの愚息アルフォンスには、もったいなさすぎる器だ。王太子妃などという、窮屈な鳥かごに収まっていていい人材ではない。あの力、あの胆力……活かさぬ手はないだろう」
「陛下……? まさか……」
国王は、ニヤリと、悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべた。
ゲオルグの脳裏に、嫌な予感がよぎる。国王がこういう顔をした時はいつもろくなことにならない。
「よし、決めたぞ! ゲオルグ、すぐに勅命の準備をせよ!」
―・―・―・―・―・―・―・―
平穏な日々が戻ってきたと信じていたレティシア。そんな彼女の元に王宮からの使者が訪れたのは、王が報告を受けて大爆笑をしてから三日後のことだった。
侍女が恭しく銀の盆に乗せて運んできたのは、国王の印である獅子の紋章が刻まれた、豪奢な封蝋で封をされた一通の親書。
「……王宮から? わたくし宛に?」
レティシアは、眉をひそめた。もう関わることはないと思っていた。
アルフォンス殿下からの謝罪の手紙だろうか。
いや、あのプライドの高い殿下が、そんなことをするはずがない。
では、一体なんだろう。
胸騒ぎを覚えながらも、彼女はペーパーナイフで丁寧に封を切る。中から現れた上質な羊皮紙には、力強く、流麗な筆跡でこう記されていた。
『レティシア・フォン・ベルンシュタイン嬢へ
先の卒業記念パーティにおける、貴殿の勇壮なる武勇伝、誠に天晴れであった。その類稀なる武勇と、冷静沈着なる判断力は、王太子妃という器に収まるには、あまりにも大きすぎる。
よって、ここに勅命を下す。
貴殿を、国王直属護衛官、特別遊撃部隊『ロイヤル・フィスト(王の拳)』の初代隊長に任命する。
これは、我が国の暗部を払い、王家の敵を秘密裏に排除するための、影の部隊である。貴殿のその規格外の力は、国の光を守るための、最も鋭き刃となるであろう。
これは決定事項であり、拒否権はない。
三日後、王宮に出仕し、直接余から任務の説明を受けるように。
追伸:執務室は、見晴らしの良い東塔の最上階を用意させた。木登りにはちょうどよかろう。
国王 ランドール三世』
レティシアは親書を読み終えると、そのままの姿勢で固まった。時間が止まったかのように微動だにしない。不敬と分かっていながらも、なんだこれは、と思わずにいられない。
「………………」
しばし、沈黙。
やがて、彼女の口から、か細い、この世の終わりのような声が漏れた。
「……いちばん、面倒なことになりましたわね」
婚約破棄によって手に入れたはずの自由。木登り、猪追い、お昼寝。彼女のささやかな、しかし何物にも代えがたい平穏な日常は、幻のように消え去った。
その代わりに与えられたのは、国王直属の秘密部隊の隊長という、想像を絶するほど面倒くさそうな役職。国の暗部を払う? 王家の敵を排除? そんな、物語の中のような大役を、なぜ自分が? そう思わずにはいられない。
しかも、追伸の一文。
『木登りにはちょうどよかろう』
国王は、すべてお見通しなのだ。自分の本性も、望みも、すべてを知った上で、掌の上で転がしている。これでは、逃げ場がない。
レティシアは、ふらふらと窓辺に歩み寄った。窓の外には、どこまでも広がる青空と、ベルンシュタイン公爵家が誇る広大な庭園が見える。いつもなら、あの木に登ろうか、あの茂みを探検しようか、と心が躍るはずの光景が、今は灰色に見えた。
「はぁ……」
今日一番、いや、人生で一番深いため息が、彼女の唇から漏れた。
面倒事を避けるために、淑女を演じてきた。
理不尽な面倒事を排除するために、一度だけ本性を現した。
その結果、国家規模の、最大級の面倒事を押し付けられることになった。
人生とは、なんと皮肉なものだろう。
「………………」
しかし、彼女はレティシア・フォン・ベルンシュタイン。武門の血を受け継ぐ、不屈のじゃじゃ馬令嬢である。いつまでも、めそめそしてはいられない。
レティシアは窓枠に手をつくと、ぎゅっと拳を握りしめた。その瞳に、再び闘志の光が宿る。
「……こうなったら、やけくそですわ」
どうせやらなければならないのなら、最短距離で、最も効率的に、さっさと終わらせてしまえばいい。国の暗部だろうが王家の敵だろうが、すべてまとめて、この拳で叩き伏せ、無理やりにでも平穏な時間を作り出してみせる。
「まずは、あの悪趣味な国王陛下に、一発お見舞いするところから始めなければなりませんわね」
不敵な笑みを浮かべた彼女の顔は、もはや猫を被った淑女のものではなかった。それは、新たなる戦場へと赴く、最強の戦士の顔だった。
―・―・―・―・―・―・―・―
こうして、お転婆令嬢・レティシアの、まったく平穏ではない新たなる戦いが幕を開けた。
彼女は平穏な日常を取り戻すことができるのか。
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それは、まだ誰にも分からない。
-つづく?-
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