4 / 6
04:淑女は物理で語り合う
しおりを挟む
「手荒な真似はしたくありませんの」
レティシアが発した言葉は、か細くも凛として、大広間に響き渡った。
しかし、未来の王たる王太子の命令を受けた騎士たちには、それは悲鳴にも似た虚勢としか聞こえなかった。先頭に立っていた騎士――名をクリストフという――は、憫笑を浮かべながら、その細腕を掴み取ろうと無遠慮に手を伸ばす。公爵令嬢の柔肌を捕らえ、この茶番劇に終止符を打つ。その栄誉は自分がいただくのだ、と。
だが、彼の指先が瑠璃色のドレスの袖に触れることは、なかった。
触れる、その寸前。レティシアの身体が、ふわりと沈んだ。
それは、ワルツのステップで優雅に膝を折るカーテシーの初動のようだった。
しかし、次の瞬間、その動きは致命的な牙を剥く。
沈み込んだ勢いをそのまま利用し、彼女の体はコマのように鋭く回転。
クリストフの伸ばされた腕は、空を切るどころか、まるで蛇に巻き付かれるようにレティシアのしなやかな腕に絡め取られていた。
「えっ――」
クリストフが驚愕の声を上げる間もない。レティシアは、絡め取った彼の腕を支点に、流れるような動きで体勢を入れ替える。
軽鎧を着こんだ青年男性の身体が、いとも簡単にたたらを踏む。
レティシアがいかに豪胆でも、騎士の鎧の上から殴りつけることなどできない。
だからこそ、彼女が狙うのは鎧の継ぎ目部分。つまり、関節だった。
「ごめんあそばせ」
手首、肘、肩。人体の構造を知り尽くした者だけが可能な、完璧な角度と力。レティシアは流れるような美しい動作で、三つの関節を同時に極めた。
そして。
ゴキッ、と。骨と筋が悲鳴を上げる鈍い音が響く。
「ぐあああああっ!?」
鍛えられているはずの騎士が、虚勢を張る余裕もなく絶叫した。
レティシアはその反応を気に留めるでもなく、力の流れを支配し、翻弄する。
そうして。
屈強な騎士の身体が、まるで操り人形のように宙を舞った。
ドダァンッ!!
次の瞬間、騎士は床に叩きつけられていた。
レティシアは、彼の背中にハイヒールの踵を軽く乗せ、完全に動きを封じる。
その一連の動作は、ほんのわずかな時間のもの。
あまりに滑らかで、あまりに洗練された動き。
周囲の者たちは何が起こったのかすら正確に認識できなかった。ただ、ひとりの騎士が、悲鳴と共に床に転がったという事実だけが、目の前に横たわっていた。
「な、何をした!?」
「クリストフが……一撃で!?」
騎士たちが動揺し、包囲網に一瞬の隙が生まれる。
レティシアはそれを見逃さない。
彼女は、倒したクリストフの足を掴む。放り投げるように、力を込めて、自身の体と共に一回転。その遠心力で勢いよく、倒した騎士を前方へと滑らせた。
倒された仲間が第二、第三の騎士の足元を狙う障害物と化す。
騎士たちはつまずいて体勢を崩した。
もちろん、レティシアはその隙を見逃さない。
不安定な騎士たちの目の前へと静かに移動。
そして彼らの顔面に、寸分の狂いもなくドレスシューズの爪先を叩き込む。
「ぐぅっ」
「ぐはっ!!」
それは乱暴な蹴りではない。人体の急所である、こめかみや顎先を的確に捉える、芸術的なまでの「打撃」だった。
恐慌に駆られたのか、騎士のひとりがレティシアに殴り掛かる。相手が令嬢であるといった気遣いは微塵もない。ただ恐怖の対象を目の前から消す、という衝動的なものだった。
だがレティシアは、振り下ろされるその拳を、ひらりと身をかわして避ける。
「お戯れが過ぎますわよ。淑女の顔に、そのような無骨な拳を向けるものではございません」
そのまま相手の脇をすり抜ける瞬間。肘を折りたたみ、軽鎧の継ぎ目の隙間――脇腹の肋骨の下――肝臓の位置に、完璧な角度で叩き込んだ。
「ぐっ……ぉえ……っ」
騎士は声にならない呻きを漏らし、呼吸困難に陥ってその場に崩れ落ちた。内臓に直接響く衝撃は、外傷はなくとも、戦闘能力を根こそぎ奪い去る。
レティシアの戦い方は、舞踊だった。ワルツのステップで相手の攻撃半径から逃れ、タンゴのキレで急所に打撃を叩き込む。ドレスの裾が翻る様は、まるで戦場に咲いた瑠璃色の花のよう。ハイヒールで床を蹴る音が、楽団の止まった大広間に、美しくも恐ろしいリズムを刻んでいく。
「こ、この女、化け物か!?」
「囲め! 囲んで動きを封じろ!」
騎士たちは、ようやく目の前の令嬢がただの深窓の姫ではないことを悟った。彼らは恐怖を怒りで上書きし、複数で同時に襲いかかる。
四方から突き出される剣の鞘。
それは剣先で仕立てた柵のごとし。
逃げ場はない。
「ふふっ」
しかし、レティシアは慌てない。
彼女は、その場でふわりと跳躍した。
高く、ではない。テーブルの上に乗るための、優雅な跳躍だ。
近くにあった、料理が並べられた円卓の上に、猫のように軽やかに着地する。銀食器がカシャン、と心地よい音を立てた。
「まあ、見晴らしがよくなりましたわ」
彼女は、テーブルの上にあったローストビーフの塊を手に取ると、それを一番近くにいた騎士の顔面に投げつけた。熱い肉汁とグレイビーソースが騎士の顔面を直撃し、彼は「あつっ!?」と悲鳴を上げて視界を奪われる。
その隙に、レティシアはテーブルクロスを掴み、勢いよく引いた。皿、グラス、カトラリー、食べ物の全てが、雪崩を打って周囲の騎士たちに降り注ぐ。
「うおっ!?」
「ぐわっ!?」
「くそっ!!」
ひとりの令嬢を囲みながら、騎士団の間に悲鳴と混乱が広がる。
そのさなかに、彼女はテーブルから再び床へと舞い降りた。
「連携がなっておりませんわ。騎士団の訓練とは、その程度のものですの?」
彼女の口調は、どこまでも淑女のものだった。しかし、その言葉の内容と、彼女が繰り出す技のえげつなさのギャップが、見る者に異様な恐怖を与える。
ひとりの騎士が、恐怖を振り払うように剣を抜いた。真剣の輝きが、シャンデリアの光を反射してきらめく。
「武器の使用を許可する! 王太子に逆らう反逆者だ、斬り捨てても構わん!」
騎士団長代理の絶叫が響き、他の騎士たちも次々と剣を抜いた。会場から、令嬢たちの悲鳴が上がる。
もはやこれは、捕縛劇ではない。処刑だ。その始まりから、思わぬ展開を見せる一部始終を、アルフォンスとイザベラは、壇上で呆然と見つめていた。
「いったい、なぜこんなことに」
アルフォンスは、目の前の出来事が信じられなかった。あの、か弱く、淑やかだったはずのレティシアが、歴戦の騎士たちを素手でいなし、なぎ倒している。まるで悪夢のよう、いや悪夢そのものだ。
イザベラは、恐怖に顔を引きつらせていた。彼女の計画では、レティシアは泣きながら許しを乞い、無様に連行されるはずだった。こんな、怪物のような本性が隠されているなど、聞いていない。計算が根底から狂っている。まさか、騎士団の面々が剣を抜き、無手の令嬢に向かって本気で切り掛かるような事態になるとは思いもしなかった。
「危ないですわね、刃物は」
レティシアもさすがに余裕綽々とはいかない。気を引き締めねばなるまい。
新たに襲い掛かってくる長剣。彼女はそれを変わらぬステップで身体をわずかに逸らし、紙一重でかわしてみせる。
だがレティシアはまだ、経験が足りなかった。例え、巨大な熊を相手に臆することなく相撲が取れる胆力はあっても、剣を手に恐慌する人間の前に立つのは初めてのことだった。
つまり、相手が想像を超えた力を振るってくるという、火事場の馬鹿力のようなものを考慮していなかった。
騎士の振るった剣先が、彼女の頬を掠めたのだ。
肌には触れなかった。しかし、一筋の金髪がはらりと舞う。
レティシアは驚きの表情を浮かべた。
だがすぐに、己の未熟さを恥じる。
そして、彼女の瞳が、すっと細められた。
「わたくしの髪に、傷をつけましたわね?」
その声は、それまでのものとは明らかに違う。氷のように冷たい響きを帯びていた。斬りつけた騎士が、わずかにたじろいでしまう。
「母から譲り受けた、自慢の髪ですのよ」
次の瞬間、レティシアの動きの質が変わった。
それまでの「舞い」に、「狩り」の鋭さが加わったのだ。
彼女は、剣を振り下ろして体勢が崩れた騎士の腕の内側、関節の隙間に指を滑り込ませる。人体で最も繊細で、最も痛みを感じる神経が集中する場所。そこに、針を刺すような的確さで指圧を加えた。
「ぎぃやあああああっ!」
騎士は、腕が引き千切れるかのような激痛に絶叫し、剣を取り落とした。
レティシアはその剣を蹴り上げ、空中で柄を掴む。そのまま流れるような動きで、峰打ちを別の騎士の首筋に叩き込んだ。その騎士は白目を剥いて崩れ落ちる。
彼女は、武器を手にしても、決して刃を使わない。それは、彼女の中に残る最後の「淑女の嗜み」なのか、あるいは相手を殺さずに無力化する方が「面倒が少ない」という合理的な判断なのか。
「囲め! 囲んで動きを止めろ!」
騎士たちは、近接戦闘を諦め、距離を取って剣を構えた。幾本もの剣先がレティシアに向けられる。疑似的な槍衾を展開しているような形となる。
「まあ、綺麗な幾何学模様ですこと」
レティシアは、そんな絶望的な状においてですら、呑気に感想を述べた。
そして、誰もが予期しない行動に出る。
彼女は手にした長剣を、槍投げのように構え、騎士団長代理の足元めがけて思いきり投擲した。ヒュン、と風を切る音と共に、剣は大理石の床に突き刺さり、甲高い金属音を響かせる。
騎士たちの意識が、一瞬だけその剣に引きつけられた。
わずか、コンマ数秒の隙。
レティシアは、床を蹴った。向けられた剣先が連なる中の、最も密度の薄い場所へと。一直線に。
「愚かな!」
騎士たちは、自ら死地に飛び込んできた獲物を仕留めんと、剣を突き出す。
一瞬早く、レティシアは跳躍した。
そして、突き出された剣の腹へ華麗に着地し、足場にする。
突き出された一本の剣を踏み台にして跳ぶ。
さらにもう一本の剣の柄を掴んで身体を支え、まるで軽業師のように宙を舞う。
レティシアは美しく、ドレスのスカートをはためかせながら、剣でできた柵の上を、重力を無視して駆け抜けていった。
騎士たちは、頭上を舞う瑠璃色の幻影を、ただ呆然と見上げるしかない。
そして、彼女は囲んできた騎士たちの背後、完全に無防備になっていた騎士団長代理の目の前に、音もなく着地する。
「なっ――」
「ごきげんよう」
にこり、とレティシアが微笑んだ瞬間。
彼女の完璧なアッパーカットが、騎士団長代理の兜ごしに顎を打ち抜いた。
ゴォン、と鐘を突いたような鈍い音が響く。巨漢の身体はきりもみしながら宙を舞い、シャンデリアの鎖にぶつかって派手な音を立てて落下した。
決して、見間違いではない。騎士団長代理の巨体が、儚げな容貌の公爵令嬢の拳によって、宙を舞った。
「……」
それを最後に、音が止んだ。大広間は死んだように静まり返った。
聞こえるのは、倒れた騎士たちの呻き声と、レティシアの静かな呼吸音だけ。
床には、十数名の屈強な騎士たちが、折り重なるようにして転がっている。
その中心に、ドレスの裾を少しも乱さず、涼しい顔で立つひとりの令嬢。
その光景は、あまりに非現実的で。
悪夢的で。
圧倒的に美しかった。
バァンッッッ!!
誰もが息をのむなか、大広間の扉が勢いよく開かれた。騒ぎを聞きつけたのか、ひとりの壮年の男が飛び込んでくる。王宮騎士団を束ねる、ゲオルグ騎士団長その人だった。
彼は目の前の惨状――いや、彼の教え子が作り出した芸術作品を見て、一瞬目を見開いた後、頭を抱えた。
「お嬢様! また派手にやっておられる! 父君である公爵閣下に、わしはなんと報告すればよいのですか!」
その声は叱責しているようでありながら、どこか誇らしげな響きがあった。彼は、レティシアの規格外の実力を知る、数少ない人物のひとりだった。
「あら、ゲオルグ団長。ごきげんよう。皆様、少し運動不足のようでしたので、わたくしがお稽古をつけて差し上げましたのよ」
レティシアは、悪びれる様子もなく、優雅に答えた。
彼女は乱れた髪を一筋、指で梳いてかきあげると、ゆっくりと壇上へと歩を進める。転がる騎士たちを、まるで道端の小石のように、気にも留めず。
向かう先は、大広間の檀上。婚約者と聖女が立っている場所。一歩、また一歩と、彼女が近づくにつれ、アルフォンスとイザベラの顔から血の気が引いていく。
壇上にたどり着いたレティシアは、尻餅をついて震えているアルフォンスと、その後ろで失神寸前のイザベラを見下ろした。その瞳には、怒りも侮蔑もない。ただ、面倒な虫でも見るかのような、無関心があった。
「茶番は、もうおしまいですわよね。殿下?」
その声に、アルフォンスはびくりと身体を震わせた。
レティシアはそんな彼を意にも介さず、スカートの裾を優雅につまむと、深々と、完璧な淑女のカーテシーをしてみせた。それは、皮肉にも、彼女がこれまで演じてきた中で、最も美しいお辞儀だった。
「わたくし、レティシア・フォン・ベルンシュタイン。殿下による婚約者候補からの除外、謹んでお受けいたしますわ。つきましては、今後わたくしとベルンシュタイン家に対し、一切の関わりを持たぬよう、お願い申し上げます」
彼女は、静かにそう告げた。
それは、もはや願いではなく、決定事項の通告だった。
「それでは皆様、ごきげんよう」
レティシアは、くるりと背を向けた。
呆然と立ち尽くす貴族たち。
声も出せない王太子。
そして床に転がる騎士たち。
その異様な光景を後に、彼女は誰に止められるでもなく、悠々と大広間を去っていった。ハイヒールのコツ、コツ、という音が、まるでこの馬鹿げた断罪劇の終幕を告げるカーテンコールのように、いつまでも響いていた。
「ああ、疲れましたわ。早く帰って、お風呂に入りたいですわね……」
扉が閉まる直前、彼女が小さく呟いた言葉を聞いた者はいなかった。
-つづく-
レティシアが発した言葉は、か細くも凛として、大広間に響き渡った。
しかし、未来の王たる王太子の命令を受けた騎士たちには、それは悲鳴にも似た虚勢としか聞こえなかった。先頭に立っていた騎士――名をクリストフという――は、憫笑を浮かべながら、その細腕を掴み取ろうと無遠慮に手を伸ばす。公爵令嬢の柔肌を捕らえ、この茶番劇に終止符を打つ。その栄誉は自分がいただくのだ、と。
だが、彼の指先が瑠璃色のドレスの袖に触れることは、なかった。
触れる、その寸前。レティシアの身体が、ふわりと沈んだ。
それは、ワルツのステップで優雅に膝を折るカーテシーの初動のようだった。
しかし、次の瞬間、その動きは致命的な牙を剥く。
沈み込んだ勢いをそのまま利用し、彼女の体はコマのように鋭く回転。
クリストフの伸ばされた腕は、空を切るどころか、まるで蛇に巻き付かれるようにレティシアのしなやかな腕に絡め取られていた。
「えっ――」
クリストフが驚愕の声を上げる間もない。レティシアは、絡め取った彼の腕を支点に、流れるような動きで体勢を入れ替える。
軽鎧を着こんだ青年男性の身体が、いとも簡単にたたらを踏む。
レティシアがいかに豪胆でも、騎士の鎧の上から殴りつけることなどできない。
だからこそ、彼女が狙うのは鎧の継ぎ目部分。つまり、関節だった。
「ごめんあそばせ」
手首、肘、肩。人体の構造を知り尽くした者だけが可能な、完璧な角度と力。レティシアは流れるような美しい動作で、三つの関節を同時に極めた。
そして。
ゴキッ、と。骨と筋が悲鳴を上げる鈍い音が響く。
「ぐあああああっ!?」
鍛えられているはずの騎士が、虚勢を張る余裕もなく絶叫した。
レティシアはその反応を気に留めるでもなく、力の流れを支配し、翻弄する。
そうして。
屈強な騎士の身体が、まるで操り人形のように宙を舞った。
ドダァンッ!!
次の瞬間、騎士は床に叩きつけられていた。
レティシアは、彼の背中にハイヒールの踵を軽く乗せ、完全に動きを封じる。
その一連の動作は、ほんのわずかな時間のもの。
あまりに滑らかで、あまりに洗練された動き。
周囲の者たちは何が起こったのかすら正確に認識できなかった。ただ、ひとりの騎士が、悲鳴と共に床に転がったという事実だけが、目の前に横たわっていた。
「な、何をした!?」
「クリストフが……一撃で!?」
騎士たちが動揺し、包囲網に一瞬の隙が生まれる。
レティシアはそれを見逃さない。
彼女は、倒したクリストフの足を掴む。放り投げるように、力を込めて、自身の体と共に一回転。その遠心力で勢いよく、倒した騎士を前方へと滑らせた。
倒された仲間が第二、第三の騎士の足元を狙う障害物と化す。
騎士たちはつまずいて体勢を崩した。
もちろん、レティシアはその隙を見逃さない。
不安定な騎士たちの目の前へと静かに移動。
そして彼らの顔面に、寸分の狂いもなくドレスシューズの爪先を叩き込む。
「ぐぅっ」
「ぐはっ!!」
それは乱暴な蹴りではない。人体の急所である、こめかみや顎先を的確に捉える、芸術的なまでの「打撃」だった。
恐慌に駆られたのか、騎士のひとりがレティシアに殴り掛かる。相手が令嬢であるといった気遣いは微塵もない。ただ恐怖の対象を目の前から消す、という衝動的なものだった。
だがレティシアは、振り下ろされるその拳を、ひらりと身をかわして避ける。
「お戯れが過ぎますわよ。淑女の顔に、そのような無骨な拳を向けるものではございません」
そのまま相手の脇をすり抜ける瞬間。肘を折りたたみ、軽鎧の継ぎ目の隙間――脇腹の肋骨の下――肝臓の位置に、完璧な角度で叩き込んだ。
「ぐっ……ぉえ……っ」
騎士は声にならない呻きを漏らし、呼吸困難に陥ってその場に崩れ落ちた。内臓に直接響く衝撃は、外傷はなくとも、戦闘能力を根こそぎ奪い去る。
レティシアの戦い方は、舞踊だった。ワルツのステップで相手の攻撃半径から逃れ、タンゴのキレで急所に打撃を叩き込む。ドレスの裾が翻る様は、まるで戦場に咲いた瑠璃色の花のよう。ハイヒールで床を蹴る音が、楽団の止まった大広間に、美しくも恐ろしいリズムを刻んでいく。
「こ、この女、化け物か!?」
「囲め! 囲んで動きを封じろ!」
騎士たちは、ようやく目の前の令嬢がただの深窓の姫ではないことを悟った。彼らは恐怖を怒りで上書きし、複数で同時に襲いかかる。
四方から突き出される剣の鞘。
それは剣先で仕立てた柵のごとし。
逃げ場はない。
「ふふっ」
しかし、レティシアは慌てない。
彼女は、その場でふわりと跳躍した。
高く、ではない。テーブルの上に乗るための、優雅な跳躍だ。
近くにあった、料理が並べられた円卓の上に、猫のように軽やかに着地する。銀食器がカシャン、と心地よい音を立てた。
「まあ、見晴らしがよくなりましたわ」
彼女は、テーブルの上にあったローストビーフの塊を手に取ると、それを一番近くにいた騎士の顔面に投げつけた。熱い肉汁とグレイビーソースが騎士の顔面を直撃し、彼は「あつっ!?」と悲鳴を上げて視界を奪われる。
その隙に、レティシアはテーブルクロスを掴み、勢いよく引いた。皿、グラス、カトラリー、食べ物の全てが、雪崩を打って周囲の騎士たちに降り注ぐ。
「うおっ!?」
「ぐわっ!?」
「くそっ!!」
ひとりの令嬢を囲みながら、騎士団の間に悲鳴と混乱が広がる。
そのさなかに、彼女はテーブルから再び床へと舞い降りた。
「連携がなっておりませんわ。騎士団の訓練とは、その程度のものですの?」
彼女の口調は、どこまでも淑女のものだった。しかし、その言葉の内容と、彼女が繰り出す技のえげつなさのギャップが、見る者に異様な恐怖を与える。
ひとりの騎士が、恐怖を振り払うように剣を抜いた。真剣の輝きが、シャンデリアの光を反射してきらめく。
「武器の使用を許可する! 王太子に逆らう反逆者だ、斬り捨てても構わん!」
騎士団長代理の絶叫が響き、他の騎士たちも次々と剣を抜いた。会場から、令嬢たちの悲鳴が上がる。
もはやこれは、捕縛劇ではない。処刑だ。その始まりから、思わぬ展開を見せる一部始終を、アルフォンスとイザベラは、壇上で呆然と見つめていた。
「いったい、なぜこんなことに」
アルフォンスは、目の前の出来事が信じられなかった。あの、か弱く、淑やかだったはずのレティシアが、歴戦の騎士たちを素手でいなし、なぎ倒している。まるで悪夢のよう、いや悪夢そのものだ。
イザベラは、恐怖に顔を引きつらせていた。彼女の計画では、レティシアは泣きながら許しを乞い、無様に連行されるはずだった。こんな、怪物のような本性が隠されているなど、聞いていない。計算が根底から狂っている。まさか、騎士団の面々が剣を抜き、無手の令嬢に向かって本気で切り掛かるような事態になるとは思いもしなかった。
「危ないですわね、刃物は」
レティシアもさすがに余裕綽々とはいかない。気を引き締めねばなるまい。
新たに襲い掛かってくる長剣。彼女はそれを変わらぬステップで身体をわずかに逸らし、紙一重でかわしてみせる。
だがレティシアはまだ、経験が足りなかった。例え、巨大な熊を相手に臆することなく相撲が取れる胆力はあっても、剣を手に恐慌する人間の前に立つのは初めてのことだった。
つまり、相手が想像を超えた力を振るってくるという、火事場の馬鹿力のようなものを考慮していなかった。
騎士の振るった剣先が、彼女の頬を掠めたのだ。
肌には触れなかった。しかし、一筋の金髪がはらりと舞う。
レティシアは驚きの表情を浮かべた。
だがすぐに、己の未熟さを恥じる。
そして、彼女の瞳が、すっと細められた。
「わたくしの髪に、傷をつけましたわね?」
その声は、それまでのものとは明らかに違う。氷のように冷たい響きを帯びていた。斬りつけた騎士が、わずかにたじろいでしまう。
「母から譲り受けた、自慢の髪ですのよ」
次の瞬間、レティシアの動きの質が変わった。
それまでの「舞い」に、「狩り」の鋭さが加わったのだ。
彼女は、剣を振り下ろして体勢が崩れた騎士の腕の内側、関節の隙間に指を滑り込ませる。人体で最も繊細で、最も痛みを感じる神経が集中する場所。そこに、針を刺すような的確さで指圧を加えた。
「ぎぃやあああああっ!」
騎士は、腕が引き千切れるかのような激痛に絶叫し、剣を取り落とした。
レティシアはその剣を蹴り上げ、空中で柄を掴む。そのまま流れるような動きで、峰打ちを別の騎士の首筋に叩き込んだ。その騎士は白目を剥いて崩れ落ちる。
彼女は、武器を手にしても、決して刃を使わない。それは、彼女の中に残る最後の「淑女の嗜み」なのか、あるいは相手を殺さずに無力化する方が「面倒が少ない」という合理的な判断なのか。
「囲め! 囲んで動きを止めろ!」
騎士たちは、近接戦闘を諦め、距離を取って剣を構えた。幾本もの剣先がレティシアに向けられる。疑似的な槍衾を展開しているような形となる。
「まあ、綺麗な幾何学模様ですこと」
レティシアは、そんな絶望的な状においてですら、呑気に感想を述べた。
そして、誰もが予期しない行動に出る。
彼女は手にした長剣を、槍投げのように構え、騎士団長代理の足元めがけて思いきり投擲した。ヒュン、と風を切る音と共に、剣は大理石の床に突き刺さり、甲高い金属音を響かせる。
騎士たちの意識が、一瞬だけその剣に引きつけられた。
わずか、コンマ数秒の隙。
レティシアは、床を蹴った。向けられた剣先が連なる中の、最も密度の薄い場所へと。一直線に。
「愚かな!」
騎士たちは、自ら死地に飛び込んできた獲物を仕留めんと、剣を突き出す。
一瞬早く、レティシアは跳躍した。
そして、突き出された剣の腹へ華麗に着地し、足場にする。
突き出された一本の剣を踏み台にして跳ぶ。
さらにもう一本の剣の柄を掴んで身体を支え、まるで軽業師のように宙を舞う。
レティシアは美しく、ドレスのスカートをはためかせながら、剣でできた柵の上を、重力を無視して駆け抜けていった。
騎士たちは、頭上を舞う瑠璃色の幻影を、ただ呆然と見上げるしかない。
そして、彼女は囲んできた騎士たちの背後、完全に無防備になっていた騎士団長代理の目の前に、音もなく着地する。
「なっ――」
「ごきげんよう」
にこり、とレティシアが微笑んだ瞬間。
彼女の完璧なアッパーカットが、騎士団長代理の兜ごしに顎を打ち抜いた。
ゴォン、と鐘を突いたような鈍い音が響く。巨漢の身体はきりもみしながら宙を舞い、シャンデリアの鎖にぶつかって派手な音を立てて落下した。
決して、見間違いではない。騎士団長代理の巨体が、儚げな容貌の公爵令嬢の拳によって、宙を舞った。
「……」
それを最後に、音が止んだ。大広間は死んだように静まり返った。
聞こえるのは、倒れた騎士たちの呻き声と、レティシアの静かな呼吸音だけ。
床には、十数名の屈強な騎士たちが、折り重なるようにして転がっている。
その中心に、ドレスの裾を少しも乱さず、涼しい顔で立つひとりの令嬢。
その光景は、あまりに非現実的で。
悪夢的で。
圧倒的に美しかった。
バァンッッッ!!
誰もが息をのむなか、大広間の扉が勢いよく開かれた。騒ぎを聞きつけたのか、ひとりの壮年の男が飛び込んでくる。王宮騎士団を束ねる、ゲオルグ騎士団長その人だった。
彼は目の前の惨状――いや、彼の教え子が作り出した芸術作品を見て、一瞬目を見開いた後、頭を抱えた。
「お嬢様! また派手にやっておられる! 父君である公爵閣下に、わしはなんと報告すればよいのですか!」
その声は叱責しているようでありながら、どこか誇らしげな響きがあった。彼は、レティシアの規格外の実力を知る、数少ない人物のひとりだった。
「あら、ゲオルグ団長。ごきげんよう。皆様、少し運動不足のようでしたので、わたくしがお稽古をつけて差し上げましたのよ」
レティシアは、悪びれる様子もなく、優雅に答えた。
彼女は乱れた髪を一筋、指で梳いてかきあげると、ゆっくりと壇上へと歩を進める。転がる騎士たちを、まるで道端の小石のように、気にも留めず。
向かう先は、大広間の檀上。婚約者と聖女が立っている場所。一歩、また一歩と、彼女が近づくにつれ、アルフォンスとイザベラの顔から血の気が引いていく。
壇上にたどり着いたレティシアは、尻餅をついて震えているアルフォンスと、その後ろで失神寸前のイザベラを見下ろした。その瞳には、怒りも侮蔑もない。ただ、面倒な虫でも見るかのような、無関心があった。
「茶番は、もうおしまいですわよね。殿下?」
その声に、アルフォンスはびくりと身体を震わせた。
レティシアはそんな彼を意にも介さず、スカートの裾を優雅につまむと、深々と、完璧な淑女のカーテシーをしてみせた。それは、皮肉にも、彼女がこれまで演じてきた中で、最も美しいお辞儀だった。
「わたくし、レティシア・フォン・ベルンシュタイン。殿下による婚約者候補からの除外、謹んでお受けいたしますわ。つきましては、今後わたくしとベルンシュタイン家に対し、一切の関わりを持たぬよう、お願い申し上げます」
彼女は、静かにそう告げた。
それは、もはや願いではなく、決定事項の通告だった。
「それでは皆様、ごきげんよう」
レティシアは、くるりと背を向けた。
呆然と立ち尽くす貴族たち。
声も出せない王太子。
そして床に転がる騎士たち。
その異様な光景を後に、彼女は誰に止められるでもなく、悠々と大広間を去っていった。ハイヒールのコツ、コツ、という音が、まるでこの馬鹿げた断罪劇の終幕を告げるカーテンコールのように、いつまでも響いていた。
「ああ、疲れましたわ。早く帰って、お風呂に入りたいですわね……」
扉が閉まる直前、彼女が小さく呟いた言葉を聞いた者はいなかった。
-つづく-
15
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢のスローライフ
きゅちゃん
ファンタジー
帝国最高学府ロイヤル・アカデミーで「金糸の蛇」と恐れられ、王太子の婚約者の座を狙う冷酷な悪役令嬢として名を馳せたエレノア・グランツェント。しかしある日、前世の記憶が蘇り、自分が乙女ゲームの悪役令嬢であること、そしてこのままでは破滅エンドが待っていることを知る。
婚約破棄からの国外追放、あるいは死罪——。最悪の結末を回避するため、エレノアは誰もが予想しなかった選択をする。権力争いと虚飾に満ちた帝都の社交界から身を引き、辺境にある自家の領地「銀風の谷」で静かに暮らすことを決意したのだ。
「こんな生き方もあったのね」
かつての冷徹な悪役令嬢は、豊かな自然に囲まれた領地で少しずつ変わり始める。養蜂場の立ち上げ、村の子供たちへの読み聞かせ、季節の収穫祭——。忙しくも心穏やかな日々の中で、エレノアは初めて本当の自分と向き合い、人々との絆を育んでいく。
しかし、彼女の新しい生活は長くは続かないかもしれない。帝都からの思わぬ来客、過去の因縁、そして領地を狙う勢力の影。エレノアの平穏なスローライフは、時に小さな波乱に見舞われる。
前世と今世、二つの人生経験を持つエレノアは、悪役令嬢としての知略と新たに芽生えた優しさを武器に、自分だけの幸せを見つけることができるのか——。
これは、自分の運命を自分の手で書き換えようとする、ある悪役令嬢の新しい物語。
各話完結型で贈る、悪役令嬢のスローライフストーリー。帝都の喧騒を離れ、辺境の領地で見つけた本当の幸せとは——
転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す
RINFAM
ファンタジー
なんの罰ゲームだ、これ!!!!
あああああ!!!
本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!
そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!
一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!
かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。
年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。
4コマ漫画版もあります。
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
「君は悪役令嬢だ」と離婚されたけど、追放先で伝説の力をゲット!最強の女王になって国を建てたら、後悔した元夫が求婚してきました
黒崎隼人
ファンタジー
「君は悪役令嬢だ」――冷酷な皇太子だった夫から一方的に離婚を告げられ、すべての地位と財産を奪われたアリシア。悪役の汚名を着せられ、魔物がはびこる辺境の地へ追放された彼女が見つけたのは、古代文明の遺跡と自らが「失われた王家の末裔」であるという衝撃の真実だった。
古代魔法の力に覚醒し、心優しき領民たちと共に荒れ地を切り拓くアリシア。
一方、彼女を陥れた偽りの聖女の陰謀に気づき始めた元夫は、後悔と焦燥に駆られていく。
追放された令嬢が運命に抗い、最強の女王へと成り上がる。
愛と裏切り、そして再生の痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!
処刑された悪役令嬢、二周目は「ぼっち」を卒業して最強チームを作ります!
みかぼう。
恋愛
地方を救おうとして『反逆者』に仕立て上げられ、断頭台で散ったエリアナ・ヴァルドレイン。
彼女の失敗は、有能すぎるがゆえに「独りで背負いすぎたこと」だった。
ループから始まった二周目。
彼女はこれまで周囲との間に引いていた「線」を、踏み越えることを決意した。
「お父様、私に『線を引け』と教えた貴方に、処刑台から見た真実をお話しします」
「殿下、私が貴方の『目』となります。王国に張り巡らされた謀略の糸を、共に断ち切りましょう」
淑女の仮面を脱ぎ捨て、父と王太子を「共闘者」へと変貌させる政争の道。
未来知識という『目』を使い、一歩ずつ確実に、破滅への先手を取っていく。
これは、独りで戦い、独りで死んだ令嬢が、信頼と連帯によって王国の未来を塗り替える――緻密かつ大胆なリベンジ政争劇。
「私を神輿にするのなら、覚悟してくださいませ。……その行き先は、貴方の破滅ですわ」
(※カクヨムにも掲載中です。)
悪役令嬢の役割を演じきり、婚約破棄で自由を手に入れた私。一途な騎士の愛に支えられ、領地経営に専念していたら、元婚約者たちが後悔し始めたようで
黒崎隼人
ファンタジー
「悪役令嬢」の断罪劇は、彼女の微笑みと共に始まった――。
王太子に婚約破棄を突きつけられた侯爵令嬢エルザ・ヴァイス。乙女ゲームのシナリオ通り、絶望し泣き叫ぶはずだった彼女が口にしたのは、「その茶番、全てお見通しですわ」という、全てを見透かすような言葉だった。
強制された役割から自ら降りたエルザは、王都の悪意を背負いながら、疲弊した領地へと帰還する。そこで彼女を待っていたのは、世間の冷たい目と、幼い頃に救った孤児――騎士レオン・ベルナールの変わらぬ忠誠心だった。
「あなたが悪役などであるはずがない」。彼の言葉に導かれ、エルザは己の才能と知性を武器に、領地の改革に乗り出す。一方、シナリオから外れた王都では、王太子ルキウスやヒロインのリアナが、抱える違和感と罪悪感に苦しんでいた。
しかし、エルザを陥れようとする新たな陰謀が動き出す。果たしてエルザは、自らの人生を切り開き、本当の幸せを掴むことができるのか? そして、ゲームの呪縛から解き放たれた者たちの運命は――。
これは、悪役令嬢という仮面を脱ぎ捨て、真実の愛と自己実現を手にする、美しくも力強い逆転の物語。あなたもきっと、彼女の選択に心を揺さぶられるでしょう。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
婚約破棄された令嬢ですが、帳簿があれば辺境でも無双できます ~追い出した公爵家は、私がいないと破産するらしい~
Lihito
ファンタジー
公爵令嬢アイリスは、身に覚えのない罪で婚約破棄され、辺境へ追放された。
だが彼女には秘密がある。
前世は経理OL。そして今世では、物や土地の「価値」が数字で見える能力を持っていた。
公爵家の帳簿を一手に管理していたのは、実は彼女。
追い出した側は、それを知らない。
「三ヶ月で破産すると思うけど……まあ、私には関係ないわね」
荒れ果てた辺境領。誰も気づかなかった資源。無口な護衛騎士。
アイリスは数字を武器に、この土地を立て直すことを決意する。
——追い出したこと、後悔させてあげる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる