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第一章:二人の出会い
episode-9
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時刻を見ると約束の時間が近づいていた。
「もうそろそろだな。」
ローブを身につけ魔導研究所を出た俺はいつに無く浮き足立っていたように思う。俺が帰ったあとのパーティーで彼女が婚約破棄をした事を聞いた時、衝撃を受けた。
何故か魔導研究所の研究員達がいい意味での彼女の噂をしているのをよく聞いていたせいか、彼女が皇子の負担になる様な性格ではないと確信していたからだった。だからまさか彼女の父であるアレク将軍に警護を任された時は正直チャンスだと思ったのだ。
本当の彼女を知るチャンスを…。
転移魔法で来た彼女の家は、小さい頃俺が育った家より断然に大きく見あげなければ全体像が掴めないほどだった。
呼び鈴を押すと、マチルダというメイドが出てきた。
「ようこそいらっしゃいました魔導師長様。お嬢様をお呼びしますので客間でお待ちください。客間まではこの者がお連れ致します。」
すると隣に控えていた若手のメイドが前へ出、促すように先頭を歩いていく。
「分かった。」
マチルダに返事をし、大人しくついて行った先で紅茶を飲みながら少し待つと、
「申し訳ありません!」
バタン!と勢いよく開いた扉から彼女が駆け足でこちらに謝ってきた。筆頭貴族のお嬢様が他人に駆け足で駆け寄るなどご法度のはずだ。それを気にせず相手のことを考えたであろう行動は、俺の中で好感度が上がった。
「大丈夫ですよ。さぁ、行きましょうか」
そうして俺達は色々な話をしながら精霊の森へと足を進めて行った。
「着きましたよ。」
転移魔法で森を抜け、湖へ着いたとき彼女は俺の胸を掴んできゅっと目を瞑っていた。正直その姿が可愛くてずっと見ていたい気もしたが理性でなんとかそれを抑える。
「ありがとうございます。」
そっと地面に降りた彼女は辺りを見回し、何回も綺麗だと言って暫く風景を見入っていました。
「いいえ、それよりここにはなにか目的があったのでは?」
そう言うと彼女ははっとした様子で急いで魔力の流れを目に集中させていた。実は俺には既に彼女の周りで話しまくる多すぎるくらいの精霊が見えていたが精霊達に、
「ハミィガミエルヨウニナルマデイワナイデ!」
と言われてしまったので言えなかった。
ぱちっと目を開けた彼女の表情はころころ変わり、
「魔導師長様!見えましたわ!」
そう嬉嬉としていう彼女を見ていると、不意に古い文献で見た「愛し子」という存在を思い出した。愛し子とは、精霊から過剰な保護を受けておりもしも愛し子が大きな不快や悲しみを感じるとそれを感じさせた本人に呪いという形でもって還す。という絶対的な力を持つ者と書いていたと思う。例えば、愛し子がこのラインズ帝国に被害を受けそれを負の感情として捉えた時、それは帝国の滅亡を意味するものと言ってもいいだろう。
「ハミィ嬢、もしかして貴女は、、」
その先の言葉は精霊達遮られ、言えはしなかったがむしろその方がいいのかもしれないと思った。彼女の性格を見れば暖かい家族の元で育ったのはよく分かる。しかし筆頭貴族の娘である以上、大抵の不満やストレスを溜め込んでいるのは明らかだ。しかもあんな事件があったのに、余計に感情を抑えるようなことをして欲しくはなかった。
「今はまだ、俺が見ていれば大丈夫…か。」
精霊と楽しそうに歩く彼女が、この後精霊に化けた魔物に干渉され意識をなくすなど、この時の俺は全く予想もしていなかった。
「もうそろそろだな。」
ローブを身につけ魔導研究所を出た俺はいつに無く浮き足立っていたように思う。俺が帰ったあとのパーティーで彼女が婚約破棄をした事を聞いた時、衝撃を受けた。
何故か魔導研究所の研究員達がいい意味での彼女の噂をしているのをよく聞いていたせいか、彼女が皇子の負担になる様な性格ではないと確信していたからだった。だからまさか彼女の父であるアレク将軍に警護を任された時は正直チャンスだと思ったのだ。
本当の彼女を知るチャンスを…。
転移魔法で来た彼女の家は、小さい頃俺が育った家より断然に大きく見あげなければ全体像が掴めないほどだった。
呼び鈴を押すと、マチルダというメイドが出てきた。
「ようこそいらっしゃいました魔導師長様。お嬢様をお呼びしますので客間でお待ちください。客間まではこの者がお連れ致します。」
すると隣に控えていた若手のメイドが前へ出、促すように先頭を歩いていく。
「分かった。」
マチルダに返事をし、大人しくついて行った先で紅茶を飲みながら少し待つと、
「申し訳ありません!」
バタン!と勢いよく開いた扉から彼女が駆け足でこちらに謝ってきた。筆頭貴族のお嬢様が他人に駆け足で駆け寄るなどご法度のはずだ。それを気にせず相手のことを考えたであろう行動は、俺の中で好感度が上がった。
「大丈夫ですよ。さぁ、行きましょうか」
そうして俺達は色々な話をしながら精霊の森へと足を進めて行った。
「着きましたよ。」
転移魔法で森を抜け、湖へ着いたとき彼女は俺の胸を掴んできゅっと目を瞑っていた。正直その姿が可愛くてずっと見ていたい気もしたが理性でなんとかそれを抑える。
「ありがとうございます。」
そっと地面に降りた彼女は辺りを見回し、何回も綺麗だと言って暫く風景を見入っていました。
「いいえ、それよりここにはなにか目的があったのでは?」
そう言うと彼女ははっとした様子で急いで魔力の流れを目に集中させていた。実は俺には既に彼女の周りで話しまくる多すぎるくらいの精霊が見えていたが精霊達に、
「ハミィガミエルヨウニナルマデイワナイデ!」
と言われてしまったので言えなかった。
ぱちっと目を開けた彼女の表情はころころ変わり、
「魔導師長様!見えましたわ!」
そう嬉嬉としていう彼女を見ていると、不意に古い文献で見た「愛し子」という存在を思い出した。愛し子とは、精霊から過剰な保護を受けておりもしも愛し子が大きな不快や悲しみを感じるとそれを感じさせた本人に呪いという形でもって還す。という絶対的な力を持つ者と書いていたと思う。例えば、愛し子がこのラインズ帝国に被害を受けそれを負の感情として捉えた時、それは帝国の滅亡を意味するものと言ってもいいだろう。
「ハミィ嬢、もしかして貴女は、、」
その先の言葉は精霊達遮られ、言えはしなかったがむしろその方がいいのかもしれないと思った。彼女の性格を見れば暖かい家族の元で育ったのはよく分かる。しかし筆頭貴族の娘である以上、大抵の不満やストレスを溜め込んでいるのは明らかだ。しかもあんな事件があったのに、余計に感情を抑えるようなことをして欲しくはなかった。
「今はまだ、俺が見ていれば大丈夫…か。」
精霊と楽しそうに歩く彼女が、この後精霊に化けた魔物に干渉され意識をなくすなど、この時の俺は全く予想もしていなかった。
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