5 / 26
第1章~レグヌム王国~
胸騒ぎ
しおりを挟む
エバンはレギナを城まで護衛し終え帰宅すると、剣とマントを立てかけるやベッドにその体を投げうった。レギナの言葉が表情がぐるぐると頭の中を駆け回る。
――これは覚悟していたはずだ。
そう自分にい聞かせても心のざわつきは収まらなかった。きっと疲れているんだと、半ば無理に自分を納得させて目を閉じて眠りにつく。
目が覚めるとあたりはすっかり暗くなってしまっていた。いつもなら夕飯を食べ終わる時間だったが、寝ていたためあまり空腹感は感じていなかった。何より落ち着かない。
(外で夜風にでも当たろう。)
エバンは薄手のマントだけ羽織り家を出た。
====================================
日中は賑やかだった街も今では静寂に包まれていた。風が吹けば木の葉がすれる音が鮮明に聞こえてくる。薄明るい街灯がエバンを照らす。ほんの少し寒い空気の中、エバンはベンチに腰を下ろした。何をするわけでもなく、ただ、ぼーっと夜空を見上げる。
(明日も仕事がある――。そろそろ帰ろう。)
広場の時計を見る限り小一時間ほど過ごしてしまったようだ。結局何か解決したわけではないが、何時までもこうしているわけにはいかない。立ち上がって背伸びをする。
(しかし本当に静かだな。普段なら野良犬や野良猫の鳴き声の一つでもあるのに。)
それは後から思えばこれから起きる出来事の前触れだったのかもしれない。だが、その時エバンは気づくはずもなかった。特段思うこともなく家路につく。
―― 一方、それとほぼ同時刻にレグヌム王国に不審な影が忍び寄っていた。
====================================
エバンが家に入り玄関でマントを脱ごうと手をかけた瞬間、家のチャイムが鳴る。
(誰だこんな時間に?)
扉の取っ手に手を伸ばそうとした瞬間、大きなノック音が鳴り響いた。
「エバン分隊長!いらっしゃいますか!!」
その時間にはあまりにもそぐわない焦りと不安が混じった大きな声に、エバンはただならぬことが起きたと悟る。
「どうした!?」
扉を開けてエバンの目に飛び込んできたのは、汗だくになっている鎧姿の自分の部下だった。
「敵襲です!!すぐにご準備を!!」
――敵襲だと?誰が?何のために?
目の前の騎士に聞きたいことは山ほどあるが、それは後回しだ。
「分かった、移動しながら現状を説明しろ!」
剣を手に取り、家のそばにつけている馬に颯爽とまたがる。
「まずは城の方へ!現在、スドルフ団長が王の護衛についております!」
スドルフ隊長がいるならレグヌム王は取り合えず大丈夫だろう。となると心配は――。
「敵は何処の者だ?レギナ姫には誰か護衛についているのか?」
「敵の正体は確認できておりません、レギナ姫にはお付きの2名のみかと・・・。」
エバンと並走しながら騎士が応える。
「・・・お前は他の第七騎士団員に敵兵を城外へ出さないようにと伝えろ!レギナ姫は私が何とかする!」
「はっ!」
エバンの目をしっかりと見てから、騎士は城の裏手にある詰所に向かう。エバンも騎士が分かれるのを横目で確認し、さらに速度を上げて城内に向かった。
====================================
城門の前では門番が倒れていた。血が出ていないあたり、気絶しているだけか。馬から飛び降り城中に入ると剣がかち合う金属音があちらこちらから鳴り響いていた。エバンは剣を抜き、いつでも戦える体制でレギナの職務室に向かう。
(城内なのにこの暗さ・・・明かりをやられたか。)
城の中は夜中でもある程度見えるようにランプが必ず灯されている。しかし、エバンが確認できた範囲ではランプは全て割られていた。幸いなことに先程まで薄暗い外に出ていたエバンは目が慣れていたため、敵の姿を認識するのにそう苦労はしなかった。
(こいつら―ー。)
敵は鎧と剣を身に着けていた。それはどの国の騎士であれ一般的だろう。違うのはそれを身に着けている相手自身。パッと見は人間に近い姿をしていたが、皮膚は茶色く古い気のような色をしており、骨と皮だけのような肉付きであった。さながら化け物という言葉が当てはまった。
「ヴオォォォ・・・」
戦場を走り抜けようとしたエバンに何人かの敵が気付き、うめき声のような咆哮を挙げてエバンに切りかかる。
「邪魔だ、どけっ!」
敵の斬撃を躱し、鎧の合間から剣を通し急所を切り裂く。血というには黒すぎる液体がそこから溢れ、剣に付着する。エバンに切られ崩れ落ちる味方を気に掛ける素振りもなく、周囲の敵がこれぞとばかりにエバンに襲い掛かる。
「――っ!!」
敵の動きは決して早いというものではなかった。一方で、エバンが驚いたのはその力強さだった。その姿からは予想もしなかった重い攻撃がエバンを襲う。
(なんていう・・・。鎧の上からでも引き裂かれそうだ!)
敵兵のしわの入った細い腕から振り下ろされた斬撃は、エバンの剣を通じてその振動を腕にあたえる。何とか剣を落とさぬよう軽く剣の柄を持ち直す。腕はに少し痺れてしまったが、今はそんなことを気にかけている場合ではない。ここはもういつもの城内ではなく戦場なのだ。エバンは敵との動きの差を突いて先攻し敵兵を切り裂いて進む。
(無事で、どうか無事で――!!)
エバンはレギナの執務室に一目散に突き進んでいった。
――これは覚悟していたはずだ。
そう自分にい聞かせても心のざわつきは収まらなかった。きっと疲れているんだと、半ば無理に自分を納得させて目を閉じて眠りにつく。
目が覚めるとあたりはすっかり暗くなってしまっていた。いつもなら夕飯を食べ終わる時間だったが、寝ていたためあまり空腹感は感じていなかった。何より落ち着かない。
(外で夜風にでも当たろう。)
エバンは薄手のマントだけ羽織り家を出た。
====================================
日中は賑やかだった街も今では静寂に包まれていた。風が吹けば木の葉がすれる音が鮮明に聞こえてくる。薄明るい街灯がエバンを照らす。ほんの少し寒い空気の中、エバンはベンチに腰を下ろした。何をするわけでもなく、ただ、ぼーっと夜空を見上げる。
(明日も仕事がある――。そろそろ帰ろう。)
広場の時計を見る限り小一時間ほど過ごしてしまったようだ。結局何か解決したわけではないが、何時までもこうしているわけにはいかない。立ち上がって背伸びをする。
(しかし本当に静かだな。普段なら野良犬や野良猫の鳴き声の一つでもあるのに。)
それは後から思えばこれから起きる出来事の前触れだったのかもしれない。だが、その時エバンは気づくはずもなかった。特段思うこともなく家路につく。
―― 一方、それとほぼ同時刻にレグヌム王国に不審な影が忍び寄っていた。
====================================
エバンが家に入り玄関でマントを脱ごうと手をかけた瞬間、家のチャイムが鳴る。
(誰だこんな時間に?)
扉の取っ手に手を伸ばそうとした瞬間、大きなノック音が鳴り響いた。
「エバン分隊長!いらっしゃいますか!!」
その時間にはあまりにもそぐわない焦りと不安が混じった大きな声に、エバンはただならぬことが起きたと悟る。
「どうした!?」
扉を開けてエバンの目に飛び込んできたのは、汗だくになっている鎧姿の自分の部下だった。
「敵襲です!!すぐにご準備を!!」
――敵襲だと?誰が?何のために?
目の前の騎士に聞きたいことは山ほどあるが、それは後回しだ。
「分かった、移動しながら現状を説明しろ!」
剣を手に取り、家のそばにつけている馬に颯爽とまたがる。
「まずは城の方へ!現在、スドルフ団長が王の護衛についております!」
スドルフ隊長がいるならレグヌム王は取り合えず大丈夫だろう。となると心配は――。
「敵は何処の者だ?レギナ姫には誰か護衛についているのか?」
「敵の正体は確認できておりません、レギナ姫にはお付きの2名のみかと・・・。」
エバンと並走しながら騎士が応える。
「・・・お前は他の第七騎士団員に敵兵を城外へ出さないようにと伝えろ!レギナ姫は私が何とかする!」
「はっ!」
エバンの目をしっかりと見てから、騎士は城の裏手にある詰所に向かう。エバンも騎士が分かれるのを横目で確認し、さらに速度を上げて城内に向かった。
====================================
城門の前では門番が倒れていた。血が出ていないあたり、気絶しているだけか。馬から飛び降り城中に入ると剣がかち合う金属音があちらこちらから鳴り響いていた。エバンは剣を抜き、いつでも戦える体制でレギナの職務室に向かう。
(城内なのにこの暗さ・・・明かりをやられたか。)
城の中は夜中でもある程度見えるようにランプが必ず灯されている。しかし、エバンが確認できた範囲ではランプは全て割られていた。幸いなことに先程まで薄暗い外に出ていたエバンは目が慣れていたため、敵の姿を認識するのにそう苦労はしなかった。
(こいつら―ー。)
敵は鎧と剣を身に着けていた。それはどの国の騎士であれ一般的だろう。違うのはそれを身に着けている相手自身。パッと見は人間に近い姿をしていたが、皮膚は茶色く古い気のような色をしており、骨と皮だけのような肉付きであった。さながら化け物という言葉が当てはまった。
「ヴオォォォ・・・」
戦場を走り抜けようとしたエバンに何人かの敵が気付き、うめき声のような咆哮を挙げてエバンに切りかかる。
「邪魔だ、どけっ!」
敵の斬撃を躱し、鎧の合間から剣を通し急所を切り裂く。血というには黒すぎる液体がそこから溢れ、剣に付着する。エバンに切られ崩れ落ちる味方を気に掛ける素振りもなく、周囲の敵がこれぞとばかりにエバンに襲い掛かる。
「――っ!!」
敵の動きは決して早いというものではなかった。一方で、エバンが驚いたのはその力強さだった。その姿からは予想もしなかった重い攻撃がエバンを襲う。
(なんていう・・・。鎧の上からでも引き裂かれそうだ!)
敵兵のしわの入った細い腕から振り下ろされた斬撃は、エバンの剣を通じてその振動を腕にあたえる。何とか剣を落とさぬよう軽く剣の柄を持ち直す。腕はに少し痺れてしまったが、今はそんなことを気にかけている場合ではない。ここはもういつもの城内ではなく戦場なのだ。エバンは敵との動きの差を突いて先攻し敵兵を切り裂いて進む。
(無事で、どうか無事で――!!)
エバンはレギナの執務室に一目散に突き進んでいった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話
トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる