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祖母の家、そして怪奇な現象3
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扉のところにガムテープでメモを貼り付けて、私は商店へと向かった。
てくてくと祖母の家から歩くこと十分。店先に野菜や果物を置いた、小さな建物が見えてくる。
祖母と訪れていた商店は今もそこにちゃんとあって、私は少し嬉しくなった。
お店の中に入ると、店番をしていた五十代くらいのおばさんが視線を目をこちらに向ける。そして「いらっしゃい」とにっこりと笑いながら言った。
前に店番をしていたのは、祖母と同じくらいの年齢のおばあちゃんだった。私がこの商店を訪れたのは数年ぶりだし、その間に代替わりをしたんだろうな。
棚に並んだ多くはない商品を、流し見てみる。缶詰、お米、カレー粉、お肉など……種類は多くないけれど、あったら助かるものがそこには並んでいた。
お米とお肉、表にある野菜を何種類か、お茶の葉、そして基本的な調味料手に取って、レジへと向かう。すると……
「お姉さん、見ない人ねぇ」
おばさんが気さくな調子で声をかけてきた。
「はい、今日引っ越してきたばかりです。亡くなった祖母の家に住むことになって……」
「まぁ、どこのおうち?」
「えっと、ここから十分くらい離れた家で……」
祖母の家までの道を説明すると、おばさんは「あーあー!」とすぐに理解したという声を出した。
「一年くらい前に亡くなった、上笹さんのおうち! あのおばあちゃんのお孫さんなのねぇ」
「はい、そうなんです。へへ」
そう、上笹は祖母の名字だ。
「そうなのねぇ。お孫さんが家を継いでくれるのね」
「そ、そんな大げさなものでは……」
東京では近所で自分のことを話す……というシチュエーションに遭遇しないので、こういう返しでいいものかと内心ドキドキしながら会話をする。
……さっきガス会社のおじさんに訊きそびれたことを、このおばさんに訊いてみようかな。この近所のことに、詳しそうな気がするし。
「あ、あの」
「んーなに?」
「祖母が亡くなってから今までの間、家の管理をしてくれた方……とかはいるんでしょうか? もしいらっしゃるなら、お礼を言っておきたくて」
私の言葉を聞いたおばさんは、きょとんとして首を傾げた。そして頭の中にあるご近所データをひっくり返しているのか、目を閉じて考え込む表情になる。そしてしばらくしてから、ぱちりと目を開けた。
「そういう人はいないと思うわよ? ほら、あそこのおうち、ご近所からちょっと離れてるし。自分の家と一緒に手入れをするには、どこからもちょっと遠いものねぇ」
「あ……そうなんですね」
おばさんの話を聞いているうちに、心臓の音がドクドクと激しくなっていく。
訊かなきゃよかった。誰も来ていないのに綺麗になっている家なんてーーどんなホラーなの。
いや……でもこの人が知らないだけで、誰かが来ているのかもしれないし。うん、きっとそうだ!
「教えてくださって、ありがとうございます」
「いえいえ、また来てね」
手を振るおばさんにぺこりと頭を下げてから、家への道をのろのろと辿る。
「お、おばけとかじゃないよね」
ぽつりとつぶやいた自分の言葉に恐怖がかき立てられて、私は憂鬱な気持ちになってしまった。
てくてくと祖母の家から歩くこと十分。店先に野菜や果物を置いた、小さな建物が見えてくる。
祖母と訪れていた商店は今もそこにちゃんとあって、私は少し嬉しくなった。
お店の中に入ると、店番をしていた五十代くらいのおばさんが視線を目をこちらに向ける。そして「いらっしゃい」とにっこりと笑いながら言った。
前に店番をしていたのは、祖母と同じくらいの年齢のおばあちゃんだった。私がこの商店を訪れたのは数年ぶりだし、その間に代替わりをしたんだろうな。
棚に並んだ多くはない商品を、流し見てみる。缶詰、お米、カレー粉、お肉など……種類は多くないけれど、あったら助かるものがそこには並んでいた。
お米とお肉、表にある野菜を何種類か、お茶の葉、そして基本的な調味料手に取って、レジへと向かう。すると……
「お姉さん、見ない人ねぇ」
おばさんが気さくな調子で声をかけてきた。
「はい、今日引っ越してきたばかりです。亡くなった祖母の家に住むことになって……」
「まぁ、どこのおうち?」
「えっと、ここから十分くらい離れた家で……」
祖母の家までの道を説明すると、おばさんは「あーあー!」とすぐに理解したという声を出した。
「一年くらい前に亡くなった、上笹さんのおうち! あのおばあちゃんのお孫さんなのねぇ」
「はい、そうなんです。へへ」
そう、上笹は祖母の名字だ。
「そうなのねぇ。お孫さんが家を継いでくれるのね」
「そ、そんな大げさなものでは……」
東京では近所で自分のことを話す……というシチュエーションに遭遇しないので、こういう返しでいいものかと内心ドキドキしながら会話をする。
……さっきガス会社のおじさんに訊きそびれたことを、このおばさんに訊いてみようかな。この近所のことに、詳しそうな気がするし。
「あ、あの」
「んーなに?」
「祖母が亡くなってから今までの間、家の管理をしてくれた方……とかはいるんでしょうか? もしいらっしゃるなら、お礼を言っておきたくて」
私の言葉を聞いたおばさんは、きょとんとして首を傾げた。そして頭の中にあるご近所データをひっくり返しているのか、目を閉じて考え込む表情になる。そしてしばらくしてから、ぱちりと目を開けた。
「そういう人はいないと思うわよ? ほら、あそこのおうち、ご近所からちょっと離れてるし。自分の家と一緒に手入れをするには、どこからもちょっと遠いものねぇ」
「あ……そうなんですね」
おばさんの話を聞いているうちに、心臓の音がドクドクと激しくなっていく。
訊かなきゃよかった。誰も来ていないのに綺麗になっている家なんてーーどんなホラーなの。
いや……でもこの人が知らないだけで、誰かが来ているのかもしれないし。うん、きっとそうだ!
「教えてくださって、ありがとうございます」
「いえいえ、また来てね」
手を振るおばさんにぺこりと頭を下げてから、家への道をのろのろと辿る。
「お、おばけとかじゃないよね」
ぽつりとつぶやいた自分の言葉に恐怖がかき立てられて、私は憂鬱な気持ちになってしまった。
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