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もののけ執事とお座敷少女4
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はふはふと豆乳鍋を口にした後に、冷えたビールをちびりと飲む。ビールの苦い風味と味噌の味の組み合わせは最高で、心を満足感で満たしてくれた。
「鍋とビールの組み合わせは至高ですね……。神様が作ったのかなぁ」
「神はそんなものは作っていませんよ」
夜音さんはぴしりと言い放つと、綺麗な箸使いでタラを解す。そして上品な仕草で口にした。彼の動作は、どれも綺麗だなぁ。そんな夜音さんの腰のあたりでふわりと揺れる尻尾は、柔らかくて気持ち良さそうだ。だけど、どうして六本もあるんだろうな。
座敷ちゃんはすごい勢いでニラを取皿に盛っている。どうやらお気に召したらしい。
「そう言えば、座敷ちゃんはどうして前の家を出ることになったの?」
「それは……」
ニラを口いっぱいに頬張っていた座敷ちゃんは、それをごくんと飲み込んだ後に暗い顔をした。
もしかして、訊いちゃいけないことを訊いてしまったのだろうか。
「もののけにもいろいろな事情があるんですよ。ずかずかと踏み込むなんて、無粋な人ですね」
ビールグラスを傾けながら、夜音さんが冷たい口調で言う。それを聞いて、私は大いに焦ってしまった。
私だって、失恋や仕事が減ったことを根掘り葉掘りされたら嫌だ。それと同じことをしてしまったのかもしれない。
「そ、そんなつもりは……! 座敷ちゃん、嫌なら話さなくていいから!」
「お姉ちゃん……」
座敷ちゃんの大きな瞳が、潤みながらこちらを見つめる。
彼女は私の手を強く握ると、なにかの祈りを込めるように自分の額に付けてから目を閉じた。
「いつか話すから。今は内緒でも、いい?」
「うん、内緒でいいよ」
私はそう答えると、座敷ちゃんは目を開けてほっとしたように表情を緩ませる。
そして何事もなかったかのように、豆乳鍋をまたぱくつきはじめた。それを見て、私は内心ほっとした。
「さて、そろそろシメにしますかね。残っている具材をぜんぶ拾ってしまってください」
「わかりました」
くったりとしたもやしや白菜をささっと取皿に取ってしまう。すると夜音さんは残りの汁が入った鍋を持って部屋を出て行った。シメのうどん、楽しみだなぁ。
「狐のご飯、美味しいね」
「そうだね、お仕事頑張れそう」
「あまり遅くなる前に寝てね?」
「うん、そうするよ」
……作業の進み次第だけれど。こればかりは自分でコントロールが効かないところがある。
一度詰まると三百文字書くのに延々と悩む……ということも、あり得るのだ。
「三時以降まで灯りが点いているようだったら、私が寝かしつけますよ」
どこから会話を聞いていたのか。夜音さんさんが現れると、鍋を私たちの前に置く。
白いお汁の中に浮いたうどんと、半熟の卵……! これはとても美味しそう。
それにしても……夜音さんの寝かしつけ?
「……寝かしつけ?」
「ええ。布団を敷いて、寝室まで連れて行って、貴女が寝るまでお説教です」
夜音さんはにこりと笑うと、おうどんをよそってくれた。
……なんとも、遠慮しておきたい寝かしつけだなぁ。夢見が悪そうである。
「鍋とビールの組み合わせは至高ですね……。神様が作ったのかなぁ」
「神はそんなものは作っていませんよ」
夜音さんはぴしりと言い放つと、綺麗な箸使いでタラを解す。そして上品な仕草で口にした。彼の動作は、どれも綺麗だなぁ。そんな夜音さんの腰のあたりでふわりと揺れる尻尾は、柔らかくて気持ち良さそうだ。だけど、どうして六本もあるんだろうな。
座敷ちゃんはすごい勢いでニラを取皿に盛っている。どうやらお気に召したらしい。
「そう言えば、座敷ちゃんはどうして前の家を出ることになったの?」
「それは……」
ニラを口いっぱいに頬張っていた座敷ちゃんは、それをごくんと飲み込んだ後に暗い顔をした。
もしかして、訊いちゃいけないことを訊いてしまったのだろうか。
「もののけにもいろいろな事情があるんですよ。ずかずかと踏み込むなんて、無粋な人ですね」
ビールグラスを傾けながら、夜音さんが冷たい口調で言う。それを聞いて、私は大いに焦ってしまった。
私だって、失恋や仕事が減ったことを根掘り葉掘りされたら嫌だ。それと同じことをしてしまったのかもしれない。
「そ、そんなつもりは……! 座敷ちゃん、嫌なら話さなくていいから!」
「お姉ちゃん……」
座敷ちゃんの大きな瞳が、潤みながらこちらを見つめる。
彼女は私の手を強く握ると、なにかの祈りを込めるように自分の額に付けてから目を閉じた。
「いつか話すから。今は内緒でも、いい?」
「うん、内緒でいいよ」
私はそう答えると、座敷ちゃんは目を開けてほっとしたように表情を緩ませる。
そして何事もなかったかのように、豆乳鍋をまたぱくつきはじめた。それを見て、私は内心ほっとした。
「さて、そろそろシメにしますかね。残っている具材をぜんぶ拾ってしまってください」
「わかりました」
くったりとしたもやしや白菜をささっと取皿に取ってしまう。すると夜音さんは残りの汁が入った鍋を持って部屋を出て行った。シメのうどん、楽しみだなぁ。
「狐のご飯、美味しいね」
「そうだね、お仕事頑張れそう」
「あまり遅くなる前に寝てね?」
「うん、そうするよ」
……作業の進み次第だけれど。こればかりは自分でコントロールが効かないところがある。
一度詰まると三百文字書くのに延々と悩む……ということも、あり得るのだ。
「三時以降まで灯りが点いているようだったら、私が寝かしつけますよ」
どこから会話を聞いていたのか。夜音さんさんが現れると、鍋を私たちの前に置く。
白いお汁の中に浮いたうどんと、半熟の卵……! これはとても美味しそう。
それにしても……夜音さんの寝かしつけ?
「……寝かしつけ?」
「ええ。布団を敷いて、寝室まで連れて行って、貴女が寝るまでお説教です」
夜音さんはにこりと笑うと、おうどんをよそってくれた。
……なんとも、遠慮しておきたい寝かしつけだなぁ。夢見が悪そうである。
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