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もののけ執事とお座敷少女11
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私はノートパソコンを寝室へと引っ張り込んで、座敷ちゃんの様子を見ながらメールの返信や明日の作業の下調べなどをはじめた。だけど先ほどの座敷ちゃんの言葉がどうしても気になってしまい、なかなか集中できない。
――捨てないで。
座敷ちゃんが発した、あの切実な響きを纏った言葉はなんだったのだろう。
私はため息をつくとざらりとした感触の壁に寄りかかった。こういう壁ってたしか『砂壁』って言うんだっけ。この昔ながらの独特な風合いが私は嫌いではない。
目を閉じて、座敷ちゃんの過去に思いを馳せる。
彼女は誰かに捨てられたのかな。だからこんなになるまで必死に頑張って、私には捨てられまいとしてるんだろうか。だけど……『座敷童子』が捨てられるなんてシチュエーションは想像がつかない。
座敷童子というのは居着いた家に富をもたらすけれど、座敷童子が家を去るとその家は没落するという、とても有名な『もののけ』だ。祀ってありがたがるならともかく、捨てるなんてふつうならありえないはず。
「……一人で考えても、答えが出るわけないか」
私は思考を打ち切って瞼を開いた。
座敷ちゃんが回復したら、どうにかして話を聞かないとな。こんなふうに無茶を続けられたら心配だし。
そんなことを考えていると、ふわりといい匂いが漂った。
これは間違いようがない……カレーの香りだ。
匂いを嗅ぎながら『ぐるる』とお腹を鳴らしていると、隣室の襖がカラリと開く音がした。
「芽衣様、ご飯ですよ」
続けて、静かな声がかけられる。
「夜音さん、ありがとうございます」
声のトーンを落としつつでお礼を言って、私は部屋を移動した。
「座敷童子の様子は?」
「まだ熱があるみたいで……」
「……そうですか」
夜音さんの問いに座椅子に腰を掛けつつで返事をする。彼はそれを聞いて小さく息を吐いた。夜音さんも座敷ちゃんが心配なんだろうな。
「わぁ……!」
座卓に乗った料理に目を向けて、私は思わず感嘆の声を上げた。
茄子、人参、玉ねぎ、パプリカ、じゃがいも、ブロッコリー――野菜がふんだんに入ったカレーがそこにはあった。赤米、黒米、押し麦などが入った雑穀米とよく合いそうだ。そして、お肉は挽き肉や牛肉ではなく……
「……角煮?」
「あちらで作ったものが余っていたので入れてみました。合わないことはないと思いますよ」
コロコロと四角に切られた豚肉を見て首を傾げていると、夜音さんが補足する。彼はあちらでも料理をするらしい。そうじゃないと、こんなに手慣れたものは作れないか。
「お茶もどうぞ」
コトリと座卓に置かれたのは、ミルクティーらしいものだ。しかしカップからは、紅茶ではない香ばしい香りがした。
「ほうじ茶ミルクティーです。ほうじ茶にはビタミンCが多く含まれているので、肌にもいいです」
夜音さんはそう言うと、にこりと笑った。
……なるほど。説明を聞いて自分の肌をついひと撫でしてしまう。
アラサーなのだから、もっと肌にも気を使わないとなぁ……
――捨てないで。
座敷ちゃんが発した、あの切実な響きを纏った言葉はなんだったのだろう。
私はため息をつくとざらりとした感触の壁に寄りかかった。こういう壁ってたしか『砂壁』って言うんだっけ。この昔ながらの独特な風合いが私は嫌いではない。
目を閉じて、座敷ちゃんの過去に思いを馳せる。
彼女は誰かに捨てられたのかな。だからこんなになるまで必死に頑張って、私には捨てられまいとしてるんだろうか。だけど……『座敷童子』が捨てられるなんてシチュエーションは想像がつかない。
座敷童子というのは居着いた家に富をもたらすけれど、座敷童子が家を去るとその家は没落するという、とても有名な『もののけ』だ。祀ってありがたがるならともかく、捨てるなんてふつうならありえないはず。
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そんなことを考えていると、ふわりといい匂いが漂った。
これは間違いようがない……カレーの香りだ。
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「芽衣様、ご飯ですよ」
続けて、静かな声がかけられる。
「夜音さん、ありがとうございます」
声のトーンを落としつつでお礼を言って、私は部屋を移動した。
「座敷童子の様子は?」
「まだ熱があるみたいで……」
「……そうですか」
夜音さんの問いに座椅子に腰を掛けつつで返事をする。彼はそれを聞いて小さく息を吐いた。夜音さんも座敷ちゃんが心配なんだろうな。
「わぁ……!」
座卓に乗った料理に目を向けて、私は思わず感嘆の声を上げた。
茄子、人参、玉ねぎ、パプリカ、じゃがいも、ブロッコリー――野菜がふんだんに入ったカレーがそこにはあった。赤米、黒米、押し麦などが入った雑穀米とよく合いそうだ。そして、お肉は挽き肉や牛肉ではなく……
「……角煮?」
「あちらで作ったものが余っていたので入れてみました。合わないことはないと思いますよ」
コロコロと四角に切られた豚肉を見て首を傾げていると、夜音さんが補足する。彼はあちらでも料理をするらしい。そうじゃないと、こんなに手慣れたものは作れないか。
「お茶もどうぞ」
コトリと座卓に置かれたのは、ミルクティーらしいものだ。しかしカップからは、紅茶ではない香ばしい香りがした。
「ほうじ茶ミルクティーです。ほうじ茶にはビタミンCが多く含まれているので、肌にもいいです」
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……なるほど。説明を聞いて自分の肌をついひと撫でしてしまう。
アラサーなのだから、もっと肌にも気を使わないとなぁ……
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