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「オスカー様のお言葉は……本当に熱烈ですね」
「ああ、なんと言っても大事な番だからな! マリーン嬢が嫌でなければ、これからも言葉で好意を伝えさせてくれ!」
どんな顔をしたものかと思案したあとに真顔で告げれば、オスカーは得意げな顔で胸を張りつつそう返してきた。しかし次の瞬間には、その表情は不安に満ちたものとなる。
「その。遊びに来ても……いいのだよな? こ、好意を伝えるのも迷惑ではないか?」
そして、おずおずと上目遣いでマリーンを見ながらそう訊ねた。そんなオスカーの様子に、マリーンの母性本能がきゅっと締めつけられる。
(本当に……可愛い方)
オスカーは幼く、マリーンから見て愛らしすぎる。だからどれだけ口説かれても、男性恐怖症となっているマリーンが『怖い』と感じることもない。
──それはオスカーにとって僥倖でもあり、不幸でもあるのだろう。
オスカーが成長すれば、それも変わっていくのかもしれないが。
(オスカー様は、大人になったらどんな青年になるのかしら)
今でさえこんなにも人目に立つ美少年なのだ。きっと誰もが目を瞠り褒めそやすような美青年となるのだろう。
「マリーン嬢?」
想像の翼を飛ばしていたマリーンに、オスカーが怪訝そうな顔で声をかける。マリーンは慌てて口を開いた。
「ぜひいらしてください。好意を伝えることも、過度でなければ問題ないです。私たちは『お友達』ですものね」
「そ、そうだな。友達だ」
『友達』という言葉に、オスカーはぺしょりと耳を下げる。しかし次の瞬間には、めげずに口を開いた。
「どれくらいのペースでの来訪なら、マリーン嬢の迷惑ではないだろうか」
「ふふ。暇を持て余しておりますから、いつでも遊びに来てくださいな」
マリーンの立場は『隠居生活』に近いものだ。日々は本を読み、刺繍をし、茶を飲んでいるうちに穏やかに過ぎていく。そこにオスカーの来訪が加わると、どのようなものになるのだろうか。想像してみると、それは悪いもののようには思えなかった。
……子供が生まれれば、忙しくなるだろうが。それはまだ先の話だ。
「そ、そうか! それは嬉しいな!」
オスカーはぱっと表情を明るくすると、ぴるぴると小さな耳を震わせる。そんな彼の様子に……マリーンの手は自然に小さな耳へと伸びていた。オスカーはその手を見て、マリーンが触れやすいように頭をそっと下げる。
「あ、失礼を……!」
はっと我に返り手を途中で止めると、顔を上げたオスカーが眉を下げて残念だという顔で見つめてくる。
「触れて、くれないのか?」
「触れていいのですか?」
「……当たり前だ。マリーン嬢に触れられることが、嫌なわけがない」
「ふふ。じゃあ、少しだけ」
ふたたび手を伸ばし、赤く柔らかな毛に覆われた耳を撫でる。するとオスカーは、長いまつ毛を伏せて気持ちよさげに息を吐いた。
「……頭も」
「頭もですか?」
「……子供っぽいだろうか」
「いいえ!」
耳を撫でる手を髪へと移動し、柔らかな髪を優しく撫でる。すると綺麗な顔が、少しだらしなく笑み崩れた。
そんなオスカーを見て口元を緩ませながら頭や耳を撫でていると、主人の様子を心配したジャクリーンが部屋を訪れ……。
「あら。ずいぶんと仲良くなったんですねぇ」
と、目を丸くされてしまうのだった。
「ああ、なんと言っても大事な番だからな! マリーン嬢が嫌でなければ、これからも言葉で好意を伝えさせてくれ!」
どんな顔をしたものかと思案したあとに真顔で告げれば、オスカーは得意げな顔で胸を張りつつそう返してきた。しかし次の瞬間には、その表情は不安に満ちたものとなる。
「その。遊びに来ても……いいのだよな? こ、好意を伝えるのも迷惑ではないか?」
そして、おずおずと上目遣いでマリーンを見ながらそう訊ねた。そんなオスカーの様子に、マリーンの母性本能がきゅっと締めつけられる。
(本当に……可愛い方)
オスカーは幼く、マリーンから見て愛らしすぎる。だからどれだけ口説かれても、男性恐怖症となっているマリーンが『怖い』と感じることもない。
──それはオスカーにとって僥倖でもあり、不幸でもあるのだろう。
オスカーが成長すれば、それも変わっていくのかもしれないが。
(オスカー様は、大人になったらどんな青年になるのかしら)
今でさえこんなにも人目に立つ美少年なのだ。きっと誰もが目を瞠り褒めそやすような美青年となるのだろう。
「マリーン嬢?」
想像の翼を飛ばしていたマリーンに、オスカーが怪訝そうな顔で声をかける。マリーンは慌てて口を開いた。
「ぜひいらしてください。好意を伝えることも、過度でなければ問題ないです。私たちは『お友達』ですものね」
「そ、そうだな。友達だ」
『友達』という言葉に、オスカーはぺしょりと耳を下げる。しかし次の瞬間には、めげずに口を開いた。
「どれくらいのペースでの来訪なら、マリーン嬢の迷惑ではないだろうか」
「ふふ。暇を持て余しておりますから、いつでも遊びに来てくださいな」
マリーンの立場は『隠居生活』に近いものだ。日々は本を読み、刺繍をし、茶を飲んでいるうちに穏やかに過ぎていく。そこにオスカーの来訪が加わると、どのようなものになるのだろうか。想像してみると、それは悪いもののようには思えなかった。
……子供が生まれれば、忙しくなるだろうが。それはまだ先の話だ。
「そ、そうか! それは嬉しいな!」
オスカーはぱっと表情を明るくすると、ぴるぴると小さな耳を震わせる。そんな彼の様子に……マリーンの手は自然に小さな耳へと伸びていた。オスカーはその手を見て、マリーンが触れやすいように頭をそっと下げる。
「あ、失礼を……!」
はっと我に返り手を途中で止めると、顔を上げたオスカーが眉を下げて残念だという顔で見つめてくる。
「触れて、くれないのか?」
「触れていいのですか?」
「……当たり前だ。マリーン嬢に触れられることが、嫌なわけがない」
「ふふ。じゃあ、少しだけ」
ふたたび手を伸ばし、赤く柔らかな毛に覆われた耳を撫でる。するとオスカーは、長いまつ毛を伏せて気持ちよさげに息を吐いた。
「……頭も」
「頭もですか?」
「……子供っぽいだろうか」
「いいえ!」
耳を撫でる手を髪へと移動し、柔らかな髪を優しく撫でる。すると綺麗な顔が、少しだらしなく笑み崩れた。
そんなオスカーを見て口元を緩ませながら頭や耳を撫でていると、主人の様子を心配したジャクリーンが部屋を訪れ……。
「あら。ずいぶんと仲良くなったんですねぇ」
と、目を丸くされてしまうのだった。
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