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執事のお嬢様開発日記
執事のお嬢様開発日記6
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暖かな秋の日差しが差す公園のベンチでお嬢様を横抱きにして膝に乗せ、ぎゅっとその細い腰を抱きしめる。婚約者同士なので人目を気にせずにこういうことができるのがとても幸せだ。
通りすがりの人々が時折ちらりとこちらに目を向けるが私が睨むと慌てたように逸らす。今の私は従僕の服装なので、とても奇異な光景に見えるのだろう。
「いい天気ね、マクシミリアン……」
心地よい外気に眠気を呼び起こされているのか。お嬢様はその青の瞳を閉じたり開いたりし、微睡みながらそう言った。そんな様子が愛おしくて私はお嬢様の白い頬に頬ずりをする。
「お嬢様、このまま寝てもいいのですよ?」
「でも……せっかくのデート……」
甘えるように言いながらお嬢様は上目遣いでこちらを見上げた。本当に彼女は愛らしい。今すぐ寮へ帰りこのか細い体を貪りたくなる気持ちを抑え、私は紳士に微笑んでみせた。私は時と場合をちゃんとわきまえる従僕なのだ。
……これは少しばかり誇張だな。
正直に言うとようやく手に入れた愛おしい少女に尽きない情欲をぶつけてしまい、機嫌を損ねてしまうことはとても多い。だから近頃はちゃんと自制をせねばと気をつけているのだ。
――私は『待て』ができる犬でありたい。
そうでなければお嬢様に嫌われてしまう。それだけは避けたいのだ。
「二人でのんびり過ごすのも、立派なデートですよお嬢様」
薄桃色の唇にそっと指を当てながら囁くと、彼女は蕩けるような笑みを見せる。
「そうね、マクシミリアン。じゃあ少しだけ……寝てしまってもいいかしら」
そう言うとお嬢様は甘えるように私の胸に頬をすり寄せながら銀色の睫毛が縁取る瞳を閉じて、小さな寝息を立て始めた。
無防備に眠るお嬢様の華奢な体を抱きしめながら過ごす時間に、得も言われぬ幸福感が湧く。ああ、私は幸せ者だ。
出会った瞬間、彼女に魂が引き寄せられたような強烈な感覚を覚え。一瞬で恋に落ちた。
だけどお嬢様は……あくまで『主人』としての強固な一線を引き私をその線の内側に入れようとしなかった。学園生活が始まり物理的な距離が近づいたことを利用して、少し強引にその一線に侵入し……両想いになれたのは最近のことだ。
私は――彼女を、大事にしたいと思っている。
そうは思いながらもこの美しすぎる銀色の小鳥を誰にも見せないように閉じ込めてしまいたいと、そんな醜い感情に突き動かされそうになる時もある。
けれどそれをしてしまえばお嬢様は変わってしまうだろう。そんなことは……あってはならないのだ。
「お嬢様……」
囁きながら眠る少女の唇に唇を合わせる。触れるだけの口づけなのに甘く痺れるような心地よさと愛おしさが体中に沸き上がった。
「愛しています」
頬に口づけ、瞼に口づけ。呪いのように彼女に愛を囁く。
無垢な表情で眠る少女は呪いに気づかないまま浅い寝息を立てながら眠り続けた。
☆★☆
「起こしてくれても、いいじゃない……!」
すっかり茜色になった空を見上げながらお嬢様が頬を膨らませ不服そうに言う。その様子がおかしくて私は思わず吹き出してしまう。するとじろり、と湖面の色の大きな瞳で睨まれてしまった。
その怒りの表情すらも愛おしいと思う気持ちを包み隠して、私は真面目くさった顔で一つ咳払いをした。
「申し訳ありません、お嬢様。とても気持ちよさそうに寝ていたものですから。起こすのが忍びなくて」
「でも! せっかくのデートだったのに……やっぱり寝るんじゃなかったわ。マクシミリアンと恋人らしく過ごしたかったのに……」
彼女はそう言いながら帰りたくないと言わんばかりに私にしがみついてきた。王都の治安はいいとはいえ、お嬢様は侯爵家のご令嬢だ。なにかがあってはならないし、そろそろ寮に帰したい時間だが……。
「ではなにか食べてから帰りますか? 魚介が美味しいと評判のリストランテあるそうですよ」
「いいの? マクシミリアン!」
お嬢様はぱっと表情を華やがせる。このお顔が見たくて私はついお嬢様を甘やかしてしまうのだ。
「私もお嬢様との……デートをもう少ししたいので」
「嬉しい、大好きよ! マクシミリアン」
私の首にかじりつくようにして抱きつくお嬢様の華奢な体を抱きしめ返し、その背中を優しく撫でた。鼻先をくすぐる淡い花の香りは彼女によく似合っている。
……けれど私の好みの香りをつけて欲しい気持ちもあるな。プレゼントをしたらつけてくれるだろうか。
今度はシュミナの力に頼らず、自らの感性だけで選ぼう。
「では、行きましょうか」
彼女を地面に下ろしてベンチから立ち上がると私は手を差し出した。嬉しそうにそれを握り、お嬢様は可憐に微笑む。そのまま手を引いて歩き出そうとするが、お嬢様はなぜかその場から動かない。
「お嬢様?」
「あのね、マクシミリアン。わがままをきいてくれて、ありがとう。その……」
そう言ってお嬢様は少しもじもじとする。そして私を手招きした。内緒話をするような形を彼女が片手で作るのでそれに耳を寄せると……。
「今夜はマクシミリアンのわがままも……きいてあげるわ」
恥ずかしそうに頬を染めて、お嬢様はそう囁いた。
……お嬢様は可憐な天使で、そして小悪魔だ。
通りすがりの人々が時折ちらりとこちらに目を向けるが私が睨むと慌てたように逸らす。今の私は従僕の服装なので、とても奇異な光景に見えるのだろう。
「いい天気ね、マクシミリアン……」
心地よい外気に眠気を呼び起こされているのか。お嬢様はその青の瞳を閉じたり開いたりし、微睡みながらそう言った。そんな様子が愛おしくて私はお嬢様の白い頬に頬ずりをする。
「お嬢様、このまま寝てもいいのですよ?」
「でも……せっかくのデート……」
甘えるように言いながらお嬢様は上目遣いでこちらを見上げた。本当に彼女は愛らしい。今すぐ寮へ帰りこのか細い体を貪りたくなる気持ちを抑え、私は紳士に微笑んでみせた。私は時と場合をちゃんとわきまえる従僕なのだ。
……これは少しばかり誇張だな。
正直に言うとようやく手に入れた愛おしい少女に尽きない情欲をぶつけてしまい、機嫌を損ねてしまうことはとても多い。だから近頃はちゃんと自制をせねばと気をつけているのだ。
――私は『待て』ができる犬でありたい。
そうでなければお嬢様に嫌われてしまう。それだけは避けたいのだ。
「二人でのんびり過ごすのも、立派なデートですよお嬢様」
薄桃色の唇にそっと指を当てながら囁くと、彼女は蕩けるような笑みを見せる。
「そうね、マクシミリアン。じゃあ少しだけ……寝てしまってもいいかしら」
そう言うとお嬢様は甘えるように私の胸に頬をすり寄せながら銀色の睫毛が縁取る瞳を閉じて、小さな寝息を立て始めた。
無防備に眠るお嬢様の華奢な体を抱きしめながら過ごす時間に、得も言われぬ幸福感が湧く。ああ、私は幸せ者だ。
出会った瞬間、彼女に魂が引き寄せられたような強烈な感覚を覚え。一瞬で恋に落ちた。
だけどお嬢様は……あくまで『主人』としての強固な一線を引き私をその線の内側に入れようとしなかった。学園生活が始まり物理的な距離が近づいたことを利用して、少し強引にその一線に侵入し……両想いになれたのは最近のことだ。
私は――彼女を、大事にしたいと思っている。
そうは思いながらもこの美しすぎる銀色の小鳥を誰にも見せないように閉じ込めてしまいたいと、そんな醜い感情に突き動かされそうになる時もある。
けれどそれをしてしまえばお嬢様は変わってしまうだろう。そんなことは……あってはならないのだ。
「お嬢様……」
囁きながら眠る少女の唇に唇を合わせる。触れるだけの口づけなのに甘く痺れるような心地よさと愛おしさが体中に沸き上がった。
「愛しています」
頬に口づけ、瞼に口づけ。呪いのように彼女に愛を囁く。
無垢な表情で眠る少女は呪いに気づかないまま浅い寝息を立てながら眠り続けた。
☆★☆
「起こしてくれても、いいじゃない……!」
すっかり茜色になった空を見上げながらお嬢様が頬を膨らませ不服そうに言う。その様子がおかしくて私は思わず吹き出してしまう。するとじろり、と湖面の色の大きな瞳で睨まれてしまった。
その怒りの表情すらも愛おしいと思う気持ちを包み隠して、私は真面目くさった顔で一つ咳払いをした。
「申し訳ありません、お嬢様。とても気持ちよさそうに寝ていたものですから。起こすのが忍びなくて」
「でも! せっかくのデートだったのに……やっぱり寝るんじゃなかったわ。マクシミリアンと恋人らしく過ごしたかったのに……」
彼女はそう言いながら帰りたくないと言わんばかりに私にしがみついてきた。王都の治安はいいとはいえ、お嬢様は侯爵家のご令嬢だ。なにかがあってはならないし、そろそろ寮に帰したい時間だが……。
「ではなにか食べてから帰りますか? 魚介が美味しいと評判のリストランテあるそうですよ」
「いいの? マクシミリアン!」
お嬢様はぱっと表情を華やがせる。このお顔が見たくて私はついお嬢様を甘やかしてしまうのだ。
「私もお嬢様との……デートをもう少ししたいので」
「嬉しい、大好きよ! マクシミリアン」
私の首にかじりつくようにして抱きつくお嬢様の華奢な体を抱きしめ返し、その背中を優しく撫でた。鼻先をくすぐる淡い花の香りは彼女によく似合っている。
……けれど私の好みの香りをつけて欲しい気持ちもあるな。プレゼントをしたらつけてくれるだろうか。
今度はシュミナの力に頼らず、自らの感性だけで選ぼう。
「では、行きましょうか」
彼女を地面に下ろしてベンチから立ち上がると私は手を差し出した。嬉しそうにそれを握り、お嬢様は可憐に微笑む。そのまま手を引いて歩き出そうとするが、お嬢様はなぜかその場から動かない。
「お嬢様?」
「あのね、マクシミリアン。わがままをきいてくれて、ありがとう。その……」
そう言ってお嬢様は少しもじもじとする。そして私を手招きした。内緒話をするような形を彼女が片手で作るのでそれに耳を寄せると……。
「今夜はマクシミリアンのわがままも……きいてあげるわ」
恥ずかしそうに頬を染めて、お嬢様はそう囁いた。
……お嬢様は可憐な天使で、そして小悪魔だ。
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