【R18】悪役令嬢は元執事から逃げられない

夕日(夕日凪)

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本編

獣と確かめあう

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「本当の……愛の言葉……?」

マクシミリアンに言われたことが、ぼんやりした頭ではなかなか意味を成さない。
反芻し、ようやくそれを理解して……一気に顔に、朱が昇った。

「つまり……マクシミリアンは、わたくしを、愛しているの?」

震える声で訊ねると、彼は……恥ずかしそうに顔を赤くして横を向いた。
――――待って、どういう事なの。
あの馬車の出来事から、マクシミリアンの事が不可解だ不可解だと思ってばかりだったけれど……。

これが1番不可解だ。

「……愛してるなら……なんでこんな事」
「ビアンカは……私になど見向きもしないと思っていたので。体だけでも手に入れようと思いました。そして例え向けられるのが憎しみだけでも、貴女の気持ちが欲しいと」

……マクシミリアンは……随分極端な所があるらしい。
でも確かに前世を思い出す前のわたくしは……『愛している』なんて言われても犬ごときがと激怒し、罵り、彼の気持ちを踏みにじっただろう。
彼が何かの功績を残しシュラット侯爵家につり合う爵位を得てから婚姻を申し込むのも状況的に不可能だ。
普段の行いから王子に嫌われているとはいえ……わたくしは王子の婚約者だったから……。
だから彼はわたくしをなにも持たない身に堕とし、強引に手に入れたのだ。

「わたくし……貴方に好かれる事を……何一つしておりませんわ。むしろ憎まれる事しか」
「……我ながら、女性の趣味が悪いと思っています」
「わたくし、いいところなんて何一つないわ」
「そうですね。ビアンカは……良い所を探す方が難しいです」

マクシミリアンの言葉がさらりと心を抉る。
そう……わたくしになんて誰も見向きもしなかった。
苛烈で、卑怯で、嫉妬深くて、心が歪んでいて、見目だけが取り柄のわたくしなんかに。
――――そしてマクシミリアンも……離れて行った……と思っていた。
わたくしはそれが悔しくて、悔しくて、悔しくて、悲しくて。
マクシミリアンにわたくしから離れて欲しくなくて……彼に仕向けられたとはいえ罪を犯したのだ。

あれ……なんだ、わたくしも。

醜く歪みすぎて到底綺麗な気持ちではなかったけれど。
彼の事を……好きだったんじゃないの?

「――――っ……!」

……ああ、どうしよう。今になって気付くなんて。

気持ちに気付いた瞬間、触れ合ったままの肌が急に恥ずかしくなって、先程まで熱に浮かされていたようにやっていた行為の事を思い返していたたまれない気持ちになって。
マクシミリアンから離れたいと腕で彼の胸を押したけれど、彼は離してくれるはずもなくて、逆に抱き返されてしまった。

「どうしよう、マクシミリアン……わ……わたくし、わたくし」
「……ビアンカ?」

腕の中で丸まって赤くなってしまったわたくしを、マクシミリアンが怪訝そうな顔で見る。

「たった今、気付いてしまったのだけど。わたくしも……貴方の事……好きみたい」

震える唇でそう告げると、マクシミリアンに両手で顔を挟まれ無理矢理顔を上げさせられた。
彼の顔は……驚きと、喜びと、騙してるんじゃないかと疑う気持ちと……色々なものがないまぜになった表情を浮かべていた。

「……本当に?」
「……ほ……ほんと……みたい。やだ、どうしよう」

真っ赤になって涙目になり、彼からとにかく離れたくて手足をもがく。

「待って、待って。恥ずかしいの!心の整理をする時間を頂戴、お願いだから!」
「ビアンカ、逃げない下さい」

……すぐに抵抗は封じられて。
次の瞬間、歓喜の表情を浮かべた彼からの激しい口付けが降ってきた。
マクシミリアンは何度も何度も、わたくしの存在を確かめるかのように口付けをしてきて……その激しさに溺れそうになる。

「やっ……ほんとに、恥ずかしいの、だから待って……」
「あれだけ散々、恥ずかしい事をしたのに?」
「やっぁん!」

口付けをようやく躱して言葉を発したけれど、彼から甘く囁かれながら柔らかく耳を食まれ、思わず甘い声を漏らしてしまう。
しかし流されずに、心を鬼にして彼の顔を強く睨んだ。

「だって、恋をしたのも初めてなのよ?こんな……こんな恥ずかしい事ばかりじゃなくて、ちゃんとお話をしたり、その……好きだって言われたりしたいじゃない……」
「案外ロマンチストなんですね。しかし……ビアンカと私の仲で、今更お話ですか」

呆れた声音で言われて、涙目になってしまう。
そう……マクシミリアンは執事見習いの頃からわたくし付きだったから、互いに幼い子供の時から一緒に居たのだ。
でも彼との過去には、ちゃんとした交流や会話は無かったのだもの……主にわたくしのせいで。
だからこそ、ちゃんと話がしたいのに。
それにまだ『好き』ってちゃんと言われてないし、わたくしのどこが好きかも訊けていない。

それと……気になる事が一つ。

「……そうよ、貴方シュミナを本当に捨ててしまったの?わたくしを手に入れる為に他の女性の気持ちを利用するなんて……」
はいつの間にそんな綺麗事をおっしゃるように?」

マクシミリアンに言われて言葉に詰まる。
……以前のわたくしの所業を考えると……本当にどの口が言う、よね。

「……ビアンカは以前からあの女があの見目通りの綺麗な心の持ち主だと、何故か思っているようですが。あの女は王子や他の男にも人目も気にせず色目を使っていた淫売ですよ?そんな女に捨てただなんだと言われる筋合いは私にはありません」

マクシミリアンがにべもなく言う。
…………それは、乙女ゲームのシステム的に仕方ないところも……なんて言葉は心の奥に飲み込んだ。

「ビアンカ、せっかく想いが通じ合ったのですから……大人しく抱かれて下さい。お側に仕えている時からずっと……その生意気な口が何も言えなくなるくらいドロドロになるまで犯して快楽で満たして私の事しか考えてられないようにして毎日気絶するまで抱き潰して孕ませてやりたいと思っていたのは、心の底からの事実なので。もう我慢の限界なんです」

そう言ってマクシミリアンはまた、わたくしの上に圧し掛かってきた。
散々もうやったでしょう!?というわたくしの悲鳴に似た言葉は、彼の唇で邪魔された。
……わたくしは、とんでもない男に捕まってしまったのかもしれない。
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