蔦葛物語

DENNY喜多川

文字の大きさ
30 / 54

第十五夜 暴かれた秘密 後編

しおりを挟む
「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」
 の歌で知られる藤原道長は、自分の娘を三代の天皇に続けて嫁がせ、自分の孫を後一条天皇として即位させた。まさに、人臣位を極めた人物である。
 だが、今の道長は、まだ権力の階段に足をかけたばかりの若者であった。


 
 その人は、半ば強引に押し入ってきた。
「わしは定子の叔父じゃ。姪の顔を見に来て、何が悪い」
 清少納言さまが私に囁く。
「藤原道長さまよ。いけ好かないヤツ」
 そして道長さまの前に立ちはだかると、
「いかに叔父・姪の間柄とは言え、定子さまは中宮にあらせられます。無礼にございましょう」
 しかし道長さまは、清少納言さまを無視して、私に歩み寄ってきた。
「そなたが噂の蔦葛か」
 いったいどんな噂を聞いているのか。
「では今日はそなたにしよう」
 ひょい、と私を抱きかかえると、そのまま局を出て行く。
 慌てて拾が追ってきた。


 人気のない部屋に、私は押し込まれた。
「そなたに相談がある。何、悪い話ではない。定子の局で話されていることを、時々、わしに教えてくれるだけでよいのだ。礼ははずむ」
 と、拾が走り込んできた。
「奥方さまに無礼はなりませぬぞ!」
 けなげに、道長さまと私の間に立ちはだかる。が、所詮は子供の力、あっさりと道長さまに転がされる。
「ではまず、そなたから頂くとしよう」
 あっという間に、拾が裸にむかれ、私は声を上げそうになるのを、辛うじて押さえた。
「男……だと……?」
 一瞬、怪訝な表情を浮かべた道長さまだったが、そのまま拾を組み敷いて、拾の後ろを貫いた。
 私は息を呑んだ。
「後宮に男を連れ込む女は、清少納言だけではなかったのだな。この秘密を押さえておれば、そなたはわしに逆らえまい」
 苦痛に顔を歪めながらも、拾は必死で苦痛の声をこらえている。やがて、
「うほっ!」
 達したのか、道長さまが、拾の尻から離れた。
「よいな。時々、私の元へ報告に来い。こいつも連れてな」
 ぐったりと倒れた拾と、それを呆然と見ている私を残して、道長さまが歩み去って行った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...