21 / 140
第1章 転生編
第21話 Sランク冒険者
しおりを挟む俺は今受付嬢に連れられ、ギルドマスターの部屋に向かっている。
「ヘルバーさん、ギルドマスターってどんな人なんですか?」
「あの人は、すごく性格が悪い。
ずる賢いって言うか、めんどくさいタイプだ。
覚悟しといた方がいいぞ」
性格が悪いのか。
なんだか会いたくなくなってきたな。
でも、Sランク冒険者になるためにはギルドマスターに認めてもらわないと!
「着きました。
ギルドマスター、おふたりを連れてきました」
「入れ」
ドアの向こうから女性の声がする。
男性だと思っていたから女性の声がしてびっくりした。
受付嬢がドアを開ける。
ギルドマスター…一体どんな人なのだろうか。
「失礼します」
「俺も失礼する」
俺とヘルバーさんは部屋に足を踏み入れる。
そこには凛々しく待ち構える黒髪ロングの女性の姿があった。
「そこに座って」
俺とヘルバーは言われた通りに椅子に座る。
「私の名前はノア・ノワールですのっ」
ノアは先程の凛々しさからは考えられないような仕草で話す。
なんだか…可愛い…
「おいルイス!騙されるな!」
「っ!?俺は今何を…?」
「あら、残念っ」
「えっと…今何を?」
「ああ、ギルドマスターの職は『サキュバス 屈強級』だ。今されたのはサキュバスの能力、【魅了】だ。
これだからギルドマスターと話すのは嫌なんだよ」
「そんな事言わないでよ~ヘルバーちゃん」
俺もこの人と話すのついさっき嫌になったところだ。
あれをされるのは正直きつい。自分の中の制御が効かなくなってしまう。
考えるだけでも怖い…
「さてと、本題に入りますわ。
ヘルバー、この子の実力はSランク冒険者に値するのね?」
「ああ、十分に値する実力だ。
この年齢でここまで戦えるのは正直化け物だぜ」
「わかったわ。
では改めて、ルイストリア・フールをSランク冒険者として任命する!」
「これをどうぞ」
受付嬢が漆黒に輝くカードを俺に渡してくる。
これが、ギルドカード…
この深い漆黒…
Sランクの重みを感じる。
かっこいい!
「明日色々説明をするからまた来てちょうだい。
今日はもう遅いし帰って大丈夫よ」
「分かりました」
俺はギルドカードをしっかりとしまい、ギルドを後にした。
「ヘルバー、あなたが負けるなんて何年ぶりかしらね」
「ああ、正直負けるなんて思っていなかった。ましてや職を解放したのに…」
「あの子の素質はどう?」
「ああ、ありゃ化け物だな。人の領域じゃねぇ。
本人は自覚ないようだが相当なもんだ」
「でもいい勝負だったんでしょ?」
「今の話をしてるんじゃねぇ。
あいつは将来今よりもっともっと強くなる気がする」
「それは楽しみねっ」
「さーてと、家に帰りますかね!」
冒険者ギルドから出た俺は家に帰ろうとした…が。
「って、帰る場所ないじゃん!」
そう、俺は今日アスタリスト王国に着いたばっかであり、無一文である。
お金が無いから宿にも泊まれない。
今日は野宿確定か…
正直野宿は慣れている。
アシュー師匠との1年間ずっと野宿だったからね!
なんも心配いらないでしょ!
アスタリスト王国の外に出て、いい感じの場所を探した。
よし、ここで寝るか。
おやすみなさーい!
俺はいい感じの場所を見つけ眠りについた…が。
「ギャァァァ!クモ!」
小さな蜘蛛が俺の腕にくっつく。
「ギャァァァ!アリ!」
小さなアリが俺の足に登ってくる。
「ギャァァァ!イモムシ!」
小さなイモムシが俺の頭に落ちてくる。
アシュー師匠の時は何もいなかったのに…
そして俺はあることに気がつく。
そう、アシュー師匠と野宿したところは魔の森。つまり虫などが生息するには過酷すぎる環境だったのだ。
もう野宿なんて絶対に嫌だぁぁ!!
地獄の夜を何とか耐え抜き翌日…
全然寝れなかった…
もう野宿は嫌だ。お金を稼ごう。
ということで、俺はお金を稼ぐために冒険者ギルドに向かった。
俺は昨日と同じように冒険者ギルドのドアを開ける。
「おい、あれが噂の昨日出たSランクか…」
「なんでも、あのヘルバーさんを倒したって噂だぜ…」
「まじかよ…やべぇじゃん」
冒険者達が固まってひそひそと話す。
なんか…視線を感じるんですけど!?
俺なんかしちゃいました?
「パーティーに勧誘した方がいいんじゃない?」
「無理だよ…俺たちCランク冒険者のパーティーなんて興味無いさ」
「俺達も勧誘した方がいいんじゃねぇか?」
なんか…俺をパーティーに勧誘する話が上がってないか!?
俺の目的は家族を探すことであってパーティーメンバーを作る気はない。
「よっ!有名人!」
後ろから誰かに肩を組まれる。
「ヘルバーさん!
なんかすごい視線を向けられるんですけどこれどういうことですか?」
「お前がSランクになったからみんな気になるんだろ」
「Sランクってそんなにすごいのですか?」
「そりゃすごいさ。アスタリスト王国には今は2人しか居ない。そして昨日3人目が誕生した」
「えええ!?」
アシュー師匠やヘルバーさんみたいにSランク冒険者の人がぽんぽん出てくるから、結構人数いると思ったら2人?!?!
アシュー師匠は辞めたからあともうひとりいるってことか…
「まぁ、しばらくすれば収まるさ。
今日は依頼を受けに来たんだろ?
一緒に依頼を受けようぜ」
ヘルバーさんが一緒にいてくれれば頼もしい!
なんの依頼を受けようかなー?
俺が受ける依頼を迷っていると騎士が勢いよくドアを開けた。
「伝令!伝令!
ただいまアスタリスト王国に、魔物の群れが接近中!緊急で騎士団と合同討伐任務を募集します!
直ちに準備をし、1時間後に正門前に集合!」
騎士はそれだけ伝え慌てて去っていった。
「ルイス、これやろうぜ!」
「騎士団と合同…」
もしかしたらケインさんとかいるかな…?
ケインさんには色々と話したいことがあるからね…
「やりましょう!」
===================
最近作業が捗りまして、書き溜めができたので特別です!
今日はもう1話更新しちゃいましょう!
時間はいつも通り18時です~
13
あなたにおすすめの小説
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。
しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。
全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。
超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!?
万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。
一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。
「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」
――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。
これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる