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第3章 世界編
第62話 デスティザーク4th
しおりを挟む「その速さだと捕まるぞ」
俺の足が1匹の蛇に捕らわれる。
「くそっ!」
「【バインド】」
警備隊長の手から縄が出現する。
「やめろっ!離せ!」
俺は必死に抗うふりをする。
【バインドスネーク】と【バインド】がお互い相まって、俺の動きは完全に封じられる。
「参りました…」
俺は負けを認めた。
もちろん俺はこの戦いで本気は出さず、わざと負けたのだ。
本気を出さない理由…
それは、この戦いは勝つための戦いではなく、騙すための戦いだからだ。
「なかなかいい戦い方だった。
あとは細かいところの修正だ。守りに徹していても攻めなければ意味が無い。攻めに転換できるチャンスを見逃すな」
「ありがとうございました」
この戦いを通して、相手は俺の事をそれなりには戦える子どもだと錯覚しただろう。
それこそが俺の狙いだ。
なぜ俺がこのような行動を取ったか、後に分かるだろう。
「ルイスが負けるなんて珍しいわね!」
「あはは、本調子じゃなかったのかも」
「ルイスが警備隊長に勝つところを見れると思ったのにー」
その後はいつも通り訓練を行った。
「「ありがとうございました!!」」
「明日、私は他の体験者の試験がある。訓練が終わる頃には行けるだろうから待っててくれ」
「「分かりました!」」
明日は試験で遅れるのか…
警備隊長がデスティザーク4thということは間違いない。
つまり実験体、旅人の誘拐事件の犯人。
問題はどこで誘拐をしているのか。
俺の推理が正しければ恐らく明日行われる試験、すなわち森での魔物の討伐試験の際、誘拐を行っているはずだ…
これは怪しい臭いがする。
明日尾行して探ってみよう。
翌朝…
「お前たち、今日が最後の訓練だ。気合いを入れていけ!」
「「「はい!!!」」」
俺は朝から森の入口で警備隊長を待ち伏せしていた。
ちょうど今、警備隊長と体験者だと思われる数名が森の奥へ進んで行った。
「よし着いて行こう」
〈くれぐれも無理はよすのじゃよ〉
「気をつけるよ」
俺は気配を断ちながら慎重に備考を続ける。
「そろそろ魔物が出る頃だ。構えとけ」
「「「はい!!!」」」
いつ攫うつもりなのだろうか…
魔物との交戦中?
見た感じまだ攫う気はないみたいだが。
「魔物だ!オークが3体」
「僕は左のオークを!君は真ん中、あなたは右側を!」
「「了解!!」」
体験生がいい連携を見せ見事にオークを討伐する。
「よくやった。これで試験は合格だ」
「「「ありがとうございます!!!」」」
さすが1週間警備隊長に鍛えられた人達だ。
しかし、そんな人達を軽々と攫ってしまう警備隊長の実力は凄まじいものだ。
「褒美として、この近くに私の研究室があるんだ。そこでお茶を入れてやる」
「いいんですか!?」
「ありがとうございます!」
まさかそんな手口で誘い出していたとは!?
恐らく洞窟の研究室のことを言っているのだろう。
そこで攫うつもりだ!
「どうぞ」
「お邪魔します!」
洞窟の研究室に到着し、警備隊長は体験生を中に招き入れる。
このままだとあの人たちが危ない!
しかし…今の俺の実力では勝つことは出来ない…
向かっていったところで、返り討ちにされて俺まで実験体として捕まってしまうかもしれない…
強くなったと思ったが…ただ自惚れていただけだったのか…
「くそっ!」
俺はどうすることも出来ず、ただ洞窟の扉を見張っていた。
「今回は楽に進んだが、次の体験生はガキの割になかなか実力がある。実験体として封じ込めるのには骨が折れそうだ…」
しばらくすると、中から警備隊長のみが出てきて独り言を呟く。
俺が実力不足のせいであの人たちを救うことが出来なかった…
次の体験生とは恐らくメリア達のことを言っているのだろう。
最終試験まであと3日…
それまでに強くなってみんなを助けなければ!
その後は尾行が気づかれないよう家に戻り、強くなるための策を考えた。
「やっぱり早く強くなるなら、ダンジョンをクリアするのが1番だよな…」
前回はカインウェルダンジョンをクリアして【転移】を手に入れた。
もしかしたらまた新しい魔術を手に入れられるかもしれない。
神固有魔術が1つ増えるだけでも戦況は大きく変わるだろう。
それほど神固有魔術は優れている。
明日やるべき事が決まった。
明日、サルディニアダンジョンを攻略しよう。
みんなで攻略をしに行きたいところだが、みんなは訓練がある。
つまり、俺1人でのダンジョン攻略だ!
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