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第3章 世界編
第70話 神の怒り
しおりを挟む「これを取り込んだ私には誰も勝てやしない!
【バインドスネーク】!」
バイルスの手から放たれた【バインドスネーク】は、以前見た時よりも素早く、巨大なものだった。
「【ヘルフレイム】!」
俺は縄を焼き尽くそうと【ヘルフレイム】を放つ。
しかし___
「なっ!?」
【バインドスネーク】は【ヘルフレイム】をものともせず突き進んでくる。
「まずい!」
【バインドスネーク】は俺に絡みつき離さない。
「終わりだ」
目の前にはバイルスが剣を振りかぶっている姿が映る。
避けられない…
【転移】を使おうとしても、唱えている間に斬られる。
これを食らったら致命傷は避けられないだろう。
俺はここで終わるのか?
アオを助けたとしても俺が死んだら意味ないだろ!
あの予言書を読めるのは俺しか居ないのだから…
「死にたくない…」
バイルスの剣が俺を斬りつけようとした時___
「ルイス!」
俺の前に1人の少女が盾になった…
「は…?」
「うそ…」
「どうして…!」
予想だにしなかった出来事に全員が唖然とする。
盾となった少女は肩から腹にかけて血を流して倒れた。
俺の前には血を流して倒れている銀髪の女性がいる。
「ア…オ…?」
「そんな…アオ…!」
「しっかりするんだアオ!」
自分の身を身を挺して俺を守った少女はアオだった。
「ルイ…ス…」
アオは今にも途切れそうな声で俺に手を伸ばす。
「アオ…なんで…なんで来たんだ…!」
「ルイスが危ないって思って…私、直感はよく当たるんだよね…あはは…」
アオは口から血を吐きながら悲しく笑う。
「アオ…ありがとう。
君は最高の仲間だ…これからもずっと…」
俺はアオの手をそっと握りしめる。
「メリア、アート、シシー、アオのこと頼めるか?」
「でも、傷の損傷具合を見るに僕達じゃ助けることは___」
「傍にいてやってくれ…」
「わかったわ…」
俺はメリア達3人にアオの傍にいるよう指示をする。
「アオ、少し待っててな…」
俺はそう告げると立ち上がりバイルスの方に身体を向ける。
「…許さない……」
俺の感情は表すにはあまりにも単純なものだった。
ただひとつ、あの女、バイルス・コートを生かしておく訳には行かない。
俺がこの手で必ず殺す…
「どうした?1人で向かってくるのか?
お前らでは私に勝つことが出来ないとなぜ分からない?」
実は、俺は人を殺すのは初めてでは無い…
盗賊に襲われればもちろん身を守る為に殺すこともある。
ヨカフの時も…
しかし、こんなに殺意を抱いて相手を殺そうとするのは初めてだ。
でも何故だろう…
これが正しいことのような気がする。
「お前だけは絶対に許さない…神固有魔術【神の怒り】…」
俺は怒りに任せ神固有魔術【神の怒り】を唱えた。
ドクンッ___
心臓が熱い…
今にも飛び出しそうな勢いで振動しているのが伝わる。
許さない…
俺の心の声が暴れている。
許さない…殺す…
理性が段々と薄れていく。
「どうした?神固有魔術?【神の怒り】?そんな魔術聞いたこともないぞ。
窮地に追い込まれておかしくなったか?」
「殺す…」
俺の頭の中はバイルスを殺すという考えしかなかった。
「殺す…殺す…殺す!!」
俺は勢いよくバイルスに向かって走り出す。
「そんなに私をころ___っ!?」
【神の怒り】を使った俺のスピードはバイルスが想像もできないほど上昇していた。
「なんだその速さは!?」
バイルスは間一髪で俺の攻撃を避ける。
「【転移】」
「消えた!?」
俺は【転移】を使い、バイルスの背後を取る。
「どこにい___」
ボトッ
「…は…うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺は背後からバイルスの焼けただれた腕を切り落とした。
「(あのガキの実力を見誤っていたみたいだ…
片腕を失っては勝てない。ここは一旦退くべきか)」
俺のスピードはバイルスのスピードを遥かに上回っていた。
バイルスはそれを理解し、勝てないと踏んだのか森の奥へ逃げていく。
「殺す…【転移】」
俺は逃げるバイルスの背後に転移し、バイルスの脚を切り落とす。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!脚が…脚がぁぁぁ!!」
バイルスは脚を失いその場に崩れ落ちる。
「殺す…」
俺の理性は完全に制御できないところまで来ていた。
俺は感情のままに時雨丸を逆手に持ち替え振り上げる。
「アオの仇…」
「ま、待て…!話をしよう…!殺すのだけはやめてく___」
___ザクッ
俺はバイルスの胸に時雨丸を突き立てた。
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