71 / 140
第3章 世界編
第71話 勝利と犠牲
しおりを挟む「【転移】」
「消えた!?」
俺は【転移】を使い、バイルスの背後を取る。
「どこにい___」
ボトッ
「…は…うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺は背後からバイルスの焼けただれた腕を切り落とした。
「(あのガキの実力を見誤っていたみたいだ…
片腕を失っては勝てない。ここは一旦退くべきか)」
俺のスピードはバイルスのスピードを遥かに上回っていた。
バイルスはそれを理解し、勝てないと踏んだのか森の奥へ逃げていく。
「殺す…【転移】」
俺は逃げるバイルスの背後に転移し、バイルスの脚を切り落とす。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!脚が…脚がぁぁぁ!!」
バイルスは脚を失いその場に崩れ落ちる。
「殺す…」
俺の理性は完全に制御できないところまで来ていた。
俺は感情のままに時雨丸を逆手に持ち替え振り上げる。
「アオの仇…」
「ま、待て…!話をしよう…!殺すのだけはやめてく___」
___ザクッ
俺はバイルスの胸に時雨丸を突き立てた。
「かはっ…」
バイルスは口から血を吐き出す。
「貴様…ティフィラス様は…お前を…許さな…い」
バイルスは最後の力を振り絞り言葉を発する。
「黙れ…」
ザクッ
「ぐぁ…!」
俺は時雨丸をバイルスの胸から抜きもう一度突き立てる。
「俺だってお前らを許さない」
ザクッ
「ぐぁ…」
ザクッ
「ぐ…」
感情のままに何度も何度もバイルスの胸に時雨丸を突き立てる。
ザクッ
「……」
段々とバイルスの声が聞こえなくなり、反応すらしなくなった。
ザクッ
「………」
〈主!こやつはもう死んでおる!〉
ザクッ
〈主!〉
「…っ!」
俺は今何を…
そうか…バイルスを殺したのか…
〈主!やっと気づいたんじゃな〉
「時雨丸…」
俺が意識を取り戻した頃には、既に魔力は底をつきかけていた。
「魔力が切れ…そうだ…」
バタンッ
〈主!?主!起きるのじゃ!主!〉
時雨丸が呼びかけている中、俺は魔力切れにより意識を失った。
◆◆◆
ある薄暗い地下にて…
「どこかにぃ、最強の魔物はいないかぁ?
ドラゴンは弱いからなぁ。悪魔とかどうだぁ?次はぁ、シベルトに悪魔を連れてきてもらおうかぁなぁ」
コンコンッ
不気味な男の部屋にノック音が響く。
「入れぇ」
「ティフィラス様報告致します。
ナンバーズの4thであるバイルス・コートが死亡致しました」
黒ずくめの男がティフィラスにバイルスの死を告げる。
「…死体はどうしたんだぁ?」
「ティフィラス様がお使いになるかと思い持ち帰った所存です」
「よくやったぁ。で、だれにやられたんだぁ?」
「偵察部隊の者によりますと、黒髪の小さい少年だとのことです」
「少年だとぉ?ガキにやられたのかぁ?」
「詳しいことは私どもにも…」
「まぁ、いい素材が手に入ったからなぁ。次はバイルスの死体を使ってキメラを作ってみようかなぁ。
ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ」
不気味な男は1人声高く笑った。
◆◆◆
「うっ…ここは…」
「ルイス!?ルイスが目を覚ましたわよ」
俺はうっすらと目を開ける。
「みんな…」
「良かった…ルイスまでも死んでしまったのかと思った…」
アートが泣きながら俺に抱きつく。
「心配かけて済まな…い…___」
俺はアートの言葉に違和感を感じた。
ルイスまでも死んでしまったのかと…?
までもって、他に誰か死んだみたいな言い方するな___っ!?
俺はまだ回復しきっていない身体を無理やり起こし、辺りを見渡す。
「アオはどうしたんだ?なんでここにいないんだ?」
「「「………」」」
俺の質問に全員が下を向いて黙り込む。
「…なぁ、冗談だよな?アオが死ぬはずないだろ?だって俺は運命を___………」
俺は感情のあまり予言書のルールを破りそうになり黙り込む。
「アオは今どこに…!?」
「アオは…もう…この世にはいないわ…」
「そんな…」
「ルイス、ごめん…アオを助けることが出来なかった…」
「アオは最後まで戦っていた…」
俺は現実を突きつけられ絶望した。
「アオ…アオ…アオ…うわぁぁぁぁぁ!!」
なんでだ!?俺は運命を変えたはずだ…
俺が弱いから?俺がもっと強ければアオは死なずに済んだのか?
運命を変える方法が間違っていたのか?
じゃあどうすればよかったんだよ…教えてくれよ!
俺は叫びながら自分の行動を悔やんだ。
「ふぅーすぅーふぅー…」
俺は深呼吸をして冷静さを取り戻す。
「悔やんでも仕方がない…
アオのことは今どうしているんだ?」
「一応アオの身体は、シシーの魔法で燃やして森のわかりやすい場所に埋めたわ…」
「そうか…俺を後でそこに案内してほしい」
「分かったわ」
いつも元気なメリアが分かりやすく落ち込んでいる。
辛いのは皆同じだ。
こんな状況になったのも全てデスティザークのせいだ。
「デスティザーク…」
俺はデスティザークへの思いに拳を握りしめる。
デスティザーク…絶対に許さない。
俺が必ず滅ぼしてやる…
俺はこの日、デスティザークを滅ぼすと誓った。
32
あなたにおすすめの小説
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。
しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。
全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。
超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!?
万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。
一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。
「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」
――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。
これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる