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第3章 世界編
第89話 ダンジョンボス
しおりを挟む「これがボス部屋の扉!?」
いつものような扉とは全く異なり、これより先は危険だと呼びかけているようだった。
「ほんとに入るウキッ!?」
「行くよ」
俺は扉を開ける。
「ウホッウキッウホウキッ…」
聞き覚えのある鳴き声…
しかし、部屋の奥にいるのはものすごく巨大な何か。
モンキーコングのように見えるが、その身体は何十倍もある。
「あれは…ジャイアント…モンキーコング…ウキッ!?」
「なるほどな…」
さっきのやつでも十分厄介だったのに、それが何十倍にもなりやがったってことか。
下手したらドラゴンくらい強いんじゃないか?
これは少し骨が折れそうだな。
(時雨丸、疲れてるからなるべく早く終わらせたいんだけど、本気出せる?)
〈待っていたのじゃ!任せるのじゃ!!〉
(ありがとう時雨丸)
時雨丸を鞘から抜き、強く握り締めて構える。
「みんな巻き込まれないように気をつけて」
〈本気を出すのじゃ!〉
時雨丸から黒いオーラが溢れ出し、圧倒的な存在感を放つ。
「ウホ…ウホホ!?」
ジャイアントモンキーコングは時雨丸が視界に入った途端驚く。
「ウキウホ!ウホホウキキ!」
ジャイアントモンキーコングは焦ったようにこちらを目掛けて走り出す。
「動かないでくれるかな?【多重詠唱】【フリーズ】×10」
「ウホ!?」
【フリーズ】によってジャイアントモンキーコングの手足が地面と固定される。
普段なら小範囲の魔術だが、何重にも重ねればこの巨体だって止めることが出来る。
〈はぁぁぁぁ!!〉
「くっ…!」
今にも暴走してしまいそうな時雨丸を、俺は強く握り直す。
時雨丸から溢れ出すオーラを制御するのは難しく、耐えるのがやっとだった。
そのオーラは止まることを知らず、さらに時雨丸は力を増していく。
〈はぁぁぁ!主!限界じゃ!〉
「行くよ時雨丸…!
はぁぁぁぁ!!」
俺は力を振り絞り、ジャイアントモンキーコングに向けて時雨丸を振り下ろす。
本気の時雨丸から繰り出される一撃は一体どれほどの強さなのだろうか…
手に握るだけでとてつもないほどの強さを感じる。
「はぁぁぁぁ!!」
時雨丸を下まで振り下ろした時、最大まで力を引き出した刀身から黒いオーラの斬撃が放たれた。
「ウホッ!ウキキ…!!!」
時雨丸から放たれた斬撃は、数十メートルもあったジャイアントモンキーコングの巨体を軽々しく両断した。
「うっ…」
俺はよろけて地面に倒れる。
〈大丈夫なのじゃ?主!?〉
(少し力を使いすぎたかも…)
「ルイス!」
「ルイス大丈夫!?」
みんなが俺の元に駆け寄ってくる。
「少し疲れてるだけだよ…」
「私がおんぶしてあげようか?」
「大丈夫…」
それは嬉しいけど断らせて頂きます!
さすがにあのドキドキをもう1回味わったら死んじゃいそうだ。
「でも…意識が飛んだらお願いしようかな…」
魔力切れでそろそろ意識が朦朧としてきている。
意識が無くなった状態なら、ドキドキする心配もいらないからね!
「わかったわ!」
《初回クリアな為、クリア報酬が与えられます。
奥の祭壇にお進み下さい》
意識が朦朧としている中、ダンジョン攻略のアナウンスが流れる。
《レベルエンハンスダンジョンの攻略を確認しました。
追加で特別報酬が与え___》
俺の意識はアナウンスの中途絶えた。
◆◆◆
ライクリック王国のとある地下室にて…
「シベルト様、バイルス様を殺害したと思われる少年と接触しましたウキッ…」
「そうですか。それはご苦労でしたね」
その部屋には黒いコートに身を包んだ男と猿の獣人、ボッパーがいた。
「それで、強さの程はいかがでしたか?」
「…すごく強かったですウキッ」
「ほう?それは私よりもですかね?」
バイルスがボッパーを睨みつける。
空気が変わった。
返答を間違えでもすれば一瞬で噛み殺されてしまいそうな、そんな捕食者の目だ。
「シベルト様の方が___」
シベルト様の方がお強いです、そう口にしようとした時、ライクリックダンジョン攻略のことを思い出す。
ルイスがジャイアントモンキーコングに放ったあの一撃。
果たして、シベルトはあの一撃を耐えられるのだろうか…
ボッパーは心の中でそう考えた。
「___いえ、やつの必殺とも言える奥義を食らったら…」
ボッパーはシベルトの様子を伺いながら慎重に言葉を選ぶ。
「シベルト様でも無事ではいられないかもしれないですウキ…」
「そうですか…やはりレベルエンハンスだけでは足りませんか。しっかりと策を練ねばなりませんね。
引き続きやつらとの接触を測ってください。頼みましたよ」
「ウ…ウキッ!」
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