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第3章 世界編
第94話 武術大会(4)
しおりを挟む全員がシシーの行動に目を丸くする。
「シ、シシー…?超級魔術は禁止じゃ…」
「…あ…」
「自分で使ってて気づいてなかったのか…」
アートが頭を抱える。
「シ、シシー選手!超級魔術の使用により失格にゃ!よって勝者アート選手!」
「「「………」」」
あまりにあっさりとした終わり方に全員が戸惑う。
「アート選手は2回戦の待機部屋へ、シシー選手はここで脱落となりますにゃ!」
「じゃあまたねシシー」
「またね…」
アートとシシーはお互い背を向け、反対方向へ歩いて行く。
「さぁーて、続いての試合は___」
◆◆◆
___ドサッ
俺の手から本がこぼれ落ちる。
久しぶりに見る赤い文字は過去のトラウマを思い出させた。
大切な仲間を助けられなかったあの絶望を…
「はぁ…はぁ…はぁ」
呼吸が荒くなる。
落ち着け…
「はぁ、はぁ、はぁ」
自分ではわかっているのに呼吸がどんどん荒くなる。
俺はもう一度本を掴み、赤い文字をよく見る。
〈アオ・サトラムを蘇生する。〉
「はぁはぁはぁ」
また誰かが死んでしまうのか…?
また仲間を助けられないのか…?
俺はまた___
「___イス!ルイス!ぼーっとしてどうしたのよ!」
「メリア…なんでもないよ。ちょっと考え事してただけ」
誰かが死ぬわけじゃないんだ…
何取り乱してるんだ俺は…
アオを助ける以外の選択肢があるのか?
それだとしてもアオを助けるに決まってる。
「1回戦第7試合目、メリア選手と025選手は会場へ起こしくださいにゃ!」
控え室に呼び出しのアナウンスが流れる。
あの2人は決着が着いたみたいだな。
やっぱりアートが戦術勝ちしたのかな?
「ルイス行ってくるわね!」
「あっ、メリア!」
メリアが会場へ向かおうとした時、俺は咄嗟に呼び止めた。
「どうしたのよ?」
「あ、えと……」
025に気をつけてと言おうとした時、言葉が出なかった。
これを教えたら予言書の内容を教えるのと同じこと。
つまり、025のことを教えることが出来ない。
「なんでもない!頑張れ!」
「ありがとう!頑張るわね!」
メリアは拳を握りしめ控え室を後にした。
その後ろを025が着いていき、やつの足取りは少しおぼつかない感じだった。
ほんとに危ないことが起きなければいいんだけどな…
◆◆◆
「ルイス行ってくるわね!」
「あっ、メリア!」
気合いを入れて会場へ向かおうとした時、ルイスが私を呼び止めた。
「どうしたのよ?」
「あ、えと……」
普段遠慮しないルイスが珍しく言葉が詰まってるけど、どうかしたのかしら?
「なんでもない!頑張れ!」
「ありがとう!頑張るわね!」
ルイスは何か言いたげだったけれど良かったのかしら?
本人がなんでもないって言うならあまり詮索はしないけど…
それよりも!
今は戦いのことに集中しなきゃだわ!
この025って人なんか少し不気味なのよね。
さっきからずっと観察してるけれど、1人でぶつぶつ何か言ってたり、今後ろを歩いている歩き方が少し変だったり…
それでも全力で勝ちにいくだけよ!
「よし!」
覚悟を決め、闘技場の上へ足を踏み入れる。
「それでは第1回戦7試合目、メリア選手対025選手…」
私と025が向かい合う。
「ぶつぶつぶつぶつぶつ…」
もう一体何なのよこの人!
少し不気味だしあまり強そうに見えないわ!
それに目立った武器も持ってないし、どうやって戦うんだろう…
素手だとしたら私の方が有利だわ!
早く終わらせて次へ進むわよ!
「始め!」
審判が手を下ろす。
「先手必勝!」
審判の手が下がると同時に、強く踏み込み025に接近する。
「はぁぁ!」
腰から素早く剣を抜き、突きの構えに入る。
「終わりよ!」
目にも止まらぬ速さで突きを繰り出す。
もちろん致命傷になると失格だから、狙うのは足。
それでもこの攻撃を食らえば戦闘を続行するのは難しい。
この勝負もらったわ!
「…【止まれ】」
「なっ!?」
剣先が025に触れる瞬間、急に身体が動かなくなる。
「…【吹っ飛べ】」
「うわっ!?」
急に身体が後ろへ引っ張られる。
まずい!
このままだと場外に出てしまうわ!
「くっ!」
剣を闘技場に突き刺し、場外に飛ばされないようギリギリ耐える。
「今のは職の能力なのかしら…?」
言葉を発するだけでその通りになる能力…
全くチート能力ね!
この戦いは少し骨が折れそうだわ!
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