95 / 140
第3章 世界編
第95話 武術大会(5)
しおりを挟むこの勝負もらったわ!
「…【止まれ】」
「なっ!?」
剣先が025に触れる瞬間、急に身体が動かなくなる。
「…【吹っ飛べ】」
「うわっ!?」
急に身体が後ろへ引っ張られる。
まずい!
このままだと場外に出てしまうわ!
「くっ!」
剣を闘技場に突き刺し、場外に飛ばされないようギリギリ耐える。
「今のは職の能力なのかしら…?」
言葉を発するだけでその通りになる能力…
全くチート能力ね!
この戦いは少し骨が折れそうだわ!
◆◆◆
「025ちゃん頑張ってるかなっ?」
マロンがこっそりと観客の中に忍び込む。
「おい!なんだ今の能力!」
「何もしていないのにぶっ飛ばしたぞ!?」
不思議な力に観客が湧く。
「ふふんっ!」
025ちゃんの力は苦労して磨き上げたんだからねっ!
元々の能力は『念話師 有能級』だったけど、薬の力で能力を引き上げたんだよねっ!
念話に相手の行動意思を乗せて送ることによって一時的に操れるんだっ!
でもひとつだけ未完成なところがあってー…
実は殺意のコントロールがままならないんだよねっ。
だからもしかしたら相手を殺しちゃうかもなー…
そうなったらまた新しいのを作ればいいんだけどねっ!
満足いく実験結果が出るまで、せいぜい頑張って欲しいなっ!
◆◆◆
この戦いは少し骨が折れそうだわ!
同じやり方でやっても同じように吹っ飛ばされてしまうだけ。
まずは打開策を練るところからよ!
「はぁぁ!」
斜めに走りながら少しづつ接近する。
「【縮地】!」
一定距離まで近づいた後、【縮地】で瞬間的に移動し後ろへ回り込む。
「…【進め】」
「あっ!」
025は自分に能力を使い身体を前へ移動させる。
それによりメリアの剣は空を斬った。
「そーゆーのもありなのね!でももうわかったわ!」
さっきは前から詰めたら私が吹き飛ばされた。
でも今は後ろへ回り込んだら自分に能力を使った。
つまり、相手を視界に捉えてないと使用できないってことよね!
それなら話は簡単よ!
「次で決めるわ!」
メリアは剣を鞘に収める。
私が新しく手に入れた技、見せてあげるわ!
「【縮地】!」
鞘にしまった剣の柄を握りながら【縮地】で背後に接近する。
「からの【居合斬り】!」
柄から剣が素早く抜かれる。
そしてその勢いのまま剣を振る。
「…【止まれ】」
「どうして!?後ろからなら___」
ザクッ
「「「は…???」」」
その場を見ていた全員がその光景に呆然とした。
「おいおいおい!」
「こりゃ不味くねぇか…?」
「今何が…」
観客席が段々と騒がしくなる。
「かはっ…あんた…何をして…」
メリアが血を吐き崩れ落ちる。
「うっ…」
痛みに耐えながらも、自分のお腹へと視線を向ける。
「私…もう…助からない…のかな…」
メリアのお腹には1つの短剣が深く突き刺さっていた。
「だ、第1試合7試合目、025選手の失格により勝者はメリア選手にゃ!」
審判が慌てた様子で試合を終わらし、025は兵士2人に腕を捕まれどこかへと連れ去られていく。
「急いで『治癒魔術師 屈強級』を呼んで来るのにゃ!」
「わっ、私『治癒魔術師 屈強級』です!ちっ、治療します!【ハイヒール】!」
兎の獣人がメリアのお腹に手を添えて魔術を唱える。
「傷が深い…!もっ、もう一度使用します!【ハイヒール】!【ハイヒール】!」
【ハイヒール】を使用する事に傷口は少しづつだが塞がっていった。
「とっ、とりあえずは大丈夫だと思います!」
「メリア選手、次の試合は続行不可能ということでよろしいですかにゃ?」
「ええ…大丈夫よ…」
あー、次ルイスと戦いたかったな…
けど、傷もふさがったし助かってよかった…
なんだか助かったって思ったら気が抜けてきちゃった。
傷は治ったけどまだ痛むし、少し休もうかな…
私の意識はそこで途絶えた。
◆◆◆
「あちゃー、やっぱりダメだったかー…」
観客席で見ていたマロンが頭を抱える。
戦闘に特化させすぎて知能を削ったのが間違いだったのかな?
ルールもあんまり理解していなかったみたいだしっ。
それにあの短剣って僕が護身用に持たせた遅延毒の短剣だよね?
それじゃああの子はもう助からないかー。
生きていればいい実験材料になったと思ったのになっ。
でも、後ろに目をつけるのは正解だったみたいだねっ!
ピントを合わせるのに苦労していたけど、2回目はうまく見えたみたいだっ。
ザークドロップスを使った感じとか他にも色々試したいことあったんだけどなっ。
まぁ、初挑戦にしてみては上出来な方かなっ?
「やることなくなっちゃったしかーえろっ!」
マロンは次の実験のことを考えながら、呑気に闘技場を去っていった。
21
あなたにおすすめの小説
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。
しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。
全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。
超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!?
万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。
一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。
「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」
――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。
これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる