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第3章 世界編
第116話 ダンジョンボス
しおりを挟むパメリアダンジョンの難易度はそれほど高いわけでもなく、一人一人が活躍し、順調にボス部屋に近づいていた。
ちなみに俺は何もしてない…だってボス戦での仕事があるからね!
みんなに任せる感じになっちゃったけれど、確実にみんな成長している。
魔術の威力が上がったとかスピードが速くなったとかいう訳ではなく、細かい判断や技術が磨かれてきている。
全く頼もしい仲間だな!
そして俺たちは各々の責務を全うし、難なくボス戦までたどり着くことが出来た。
「じゃあ後はルイス頼んだよ!」
「作戦通り僕たちは後ろで見てるね」
「…任せた…」
「任された!」
俺は俺の責務を全うするために、1人でボス部屋の扉を開けた。
カツッカツッカツッ
部屋の奥で硬い何かが地面に当たっている。
カツッカツッカツッ
周りの焚き火がやがて辺りを照らし、音の正体が明らかになる。
「これは魔物なのか!?」
そこには魔物とは思えないほど巨大な鉱石があった。
「これはギガメタルゴーレムだね。
本では見たことがあるけど、こんなに巨大なんだね…」
「どれだけ大きくても魔術には弱いらしいから、ルイスの魔術なら余裕だね!」
思ったよりも大きいな…
これはただの魔術じゃやりきれない気がしてきた。
「みんなちょっと下がってて」
「わかった」
「…ん…逃げる」
「ルイスが下がってって言う時は、ほんとに危ないかもしれない時だもんね!」
「アオ!そんなことは…」
無いかもしれないな…
シベルトと戦った後に新たに創った魔術を試すつもりだ。
超級魔術を2つも組み合わせてるだけあって、威力が全く想像がつかない。
「行くぞ…!」
炎魔術最強の技【ヘルフレイム】、風魔術最強の技【テンペスト】。
この2つを複合させる!
「溶けて無くなれ!【複合魔術】【インフェルノサイクロン】!」
ギガメタルゴーレムの足元に1本の火柱が上がり、あらゆる物を溶かす。
あまりの温度の高さに陽炎が発生する。
「うっ!」
なんだ…これ…!
ボスは確実に倒した。
しかし、1つの危機的状況に直面する。
ボス部屋という密閉された空間でとてつもなく高温な魔術を使ったことにより、ボス部屋の中はもはや竈と化していた。
これはまずいぞ…!
温度が高すぎて熱が伝わってくる…
肌が焼けそうだ…!
「ルイス大丈夫!?」
「…熱い…」
後ろの皆は端にいるからか、まだ火傷するほどの熱を感じていないようだな。
早くこの火を何とかしなければ!
「消えろ!【フリーズ】!」
俺の手から放たれた冷気は火柱に向かって飛んでいく。
しかし___
「溶かされた!?」
くそっ!【フリーズ】ひとつじゃ消せないか!
「それならこれでどうだ!【多重詠唱】【フリーズ】×10!」
先程とは比べ物にならないほどの冷気が火柱へ一直線に進む。
やがて冷気は火を丸ごと包み、氷の塊へと変化させた。
「はぁ、はぁ、はぁ、何とか凌げた…」
まさか【インフェルノサイクロン】がこんなに強い技だったなんて…
危うく死にかけたぞ…
こりゃ、室内やダンジョン内で使うのは禁止だな。
「みんな大丈夫だった?」
「僕たちは大丈夫だったけど…っ!?ルイス腕が!?」
アオが俺の焼けただれた腕を見て目を丸くする。
「ああ…少し火傷したくらいだ…」
幸い、火傷した箇所は右腕の先の方だけだ。
かといって、軽傷とは言い難い程焼けただれている。
「これは重度な火傷だ…早く治療しないとさらに悪化してしま___」
《___初回クリアな為、クリア報酬が与えられます。
奥の祭壇にお進み下さい》
ダンジョン攻略のアナウンスが流れる。
「とりあえずここを早く出よう!」
「そうだな!」
俺たちは急いで祭壇へ向かう。
《クリア報酬が与えられます》
祭壇が強く光る。
痛い…手が痛い…
だんだんと痛みが強くなってきてる…
俺は火傷していない左手で『神の欠片』を手に取る。
《報酬の受け取りが完了したので帰還致します》
身体が光に包まれ地上に帰還する。
「ルイス大丈夫!?」
「ここから治療所までは15分程かかるはず…それじゃ間に合わない…!」
アートが俺を背負い、治療所目掛けて走る。
「うっ…」
痛い…!今にも気が失いそうだ…!
いっその事、気を失った方が耐えれるか…?
左手に握られている『神の欠片』に目をやる。
ええい!ここはアートたちを信じることにしよう!
俺は瓶の蓋を開け、神々しい液体を飲み干す。
「アート…頼んだ…」
「ルイス!?」
俺はアートにおんぶされながら、意識を失った。
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