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最終章 デスティザーク編
第133話 糸が切れる音
しおりを挟む「し、師匠!?!?!!!お前ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!」
ハリーが怒りのあまり剣を振り上げる。
「そんな剣、当たるわけが___なっ!?」
「逃がすわけ…ないだろ…!」
アシューは貫かれながらも、シベルトの腕を引きちぎる勢いで押さえ込む。
「離しなさい!」
「うぉぉぉぉ!!」
シベルトを押さえるアシューの力がますます強くなる。
「はぁぁぁ!!!」
ハリーがシベルトの首に狙いを定める。
「これじゃ本当に…!やめろ!離せ!このクソババアがぁ!!」
___スパッ
ハリーの剣がシベルトの首を斬り落とし、この戦いは幕を閉じた。
◆◆◆
「はぁ!やぁ!せい!」
「うわっ!おっとっと!ひっ!」
私が素早く放った突きを、マロンは間一髪で避ける。
私がレイピアを手にしてからは形成が逆転し、今は私のが優勢だ。
「いい加減!逃げてばかりじゃなくて!戦いなさいよ!」
「よっ!」
マロンが大きく後退する。
「全く勘弁してよねっ。反応速度も筋力もかなり上げてるのにさっ。才能が恐ろしいよっ」
「そう。それであなたはどうするのかしら?」
「うーんっ。やっぱり使うしかないかなっ」
「使うって何をよ?」
「これだよっ」
マロンが懐から赤い液体が入った注射器を取り出す。
「それは…まさか!?」
あの赤色…見たことがあるわ!
デスティザークの4thと戦った時に…名前は確か…
「ザークドロップス…」
「正解だよっ。でも満点じゃないかなっ」
マロンは自分の腕に注射器を刺す。
「これはザークドロップスなんかとは比べ物にならないほど強大な力を取り込めるんだっ。
これを…取り込んだら、副作用が凄いけど…その分力が…増幅する…んだっ…」
マロンの身体がみるみる大きくなる。
「う…グァ…アタマガ…」
マロンから発せられる声は人間の声とは思えないほど変化する。
「こんなのまるで魔物じゃない…!」
マロンの目からは光が消え、身体は元の数倍、筋肉も浮き上がるほどまで変化した。
「グゥォォォォォ!」
「凄い威圧感ね…」
ここまで強くなるなんて、薬ってものは恐ろしいわね…
私が持てる全ての力を使っても倒せるかどうか…
でも…ルイスのためにもやるしかないわよね!
「私も取っておきを見せてあげるわ!」
私はレイピアを鋭く構える。
レイピアから伝わってくる…
私に教えてくれるのね…最高の必殺技を…!
「グゥォォォォォ!」
マロンが勢いよく突進してくる。
「ここからがやっと最終ラウンドね!私の必殺技を見せてあげるわ!」
◆◆◆
「死ねぇぇ!」
「くっ…!【ファイアランス】!」
「当たらねぇなぁ」
俺が放った魔術をティフィラスは軽々と躱す。
「ひゃっはぁ!」
「くっ…!」
「どうしたんだぁ?受け流してばかりじゃなくて攻めてこいよぉ?」
「くそっ!」
家の中じゃ大規模な魔術は使えない…
かと言ってバレットやランス系を使っても、下手したら流れ弾がメリアに当たってしまうかもしれない…
隙を見て外に出たら着いてきてくれるだうか…
「【複合魔術】【ミスト】!」
メリアの方に被害が出ないように小規模の【ミスト】を放つ。
「何だこの霧はぁ?」
「悪いが逃げさせてもらう!」
「待ちやがれぇ!」
【ミスト】が消えた…今だ!
「外に逃げるのかぁ?」
俺は【ミスト】が消え、ティフィラスと目が合ったのを確認して外に出た。
よし!誘導はできそうだな。外なら魔術を使っても…っ!?
「この屋敷で爆発が起きたと報告があった!市民は近づかないように協力頼む!」
屋敷の外には騒動を聞きつけた騎士団が集まっており、市民の避難が行われていた。
「騎士団…!?」
ここは街の中…騒動があれば騎士団が駆けつけるのは当たり前だ。
ここで戦えば被害が起きくなってしまう…
どうにかティフィラスを街の外に誘導する方法は…
「逃げるなぁ!」
ティフィラスが扉を破って追ってくる。
無理やり誘導する方法はあるにはある…
「少し無茶だがやってみるか…」
「いい加減に死ねぇ!」
「【多重詠唱】【複合魔術】【ミスト】×10!」
「また逃げるのかぁ?」
「そして、【複合魔術】【サーチ】!」
霧で視界が遮られている中、ティフィラスの身体が光る。
「どこにいるん___」
ピタッ
「___少し着いてきてもらうぞ」
俺は背後から接近しティフィラス背中に触れる。
移動先は街の外…門の前辺りまで飛べば大丈夫だろうか…
「【転移】!」
俺とティフィラスの身体が光に包まれる。
よし!転移成功だ!これで思う存分戦えるぞ!
「おい貴様ぁどこに連れてきやがったぁ?」
「見てわかるだろ。市民に被害が出たらまずいからな。門の前まで転移させてもらっ___」
「___ルイス…?」
俺がティフィラスの問いに答えていると、後ろから聞き覚えのある声がした。
「その声は!父さ………ん……っ!?!?」
振り返った先には、シベルトと思われる死体、傷だらけのハリー、そしてハリーの腕の中には胸に大きな穴が空いたアシューの姿があった。
「あ…アシュー…師匠…?」
なんで父さんとアシュー師匠が…隣の死体はシベルト…あの時倒したはずじゃ…どうして…
そうか…こいつらの仕業か…
全てこいつらが悪い…
「全て…全て…お前らデスティザークのせいだ…」
その瞬間、俺の中の糸が切れる音がした…
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