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クリスティーヌの本当の幸せ
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半年後。
現在の女王であるルナが二年後に生前退位をすると発表した。それに当たり、ルナの退位式や王太子ガブリエルの即位式、そして次期宰相等を決めなければならない。ユーグ、マリアンヌ、ディオンはそれぞれ希望の役職に就けるよう、必死に勉強していた。クリスティーヌも宮廷薬剤師だけでなく医務卿も目指すようになったので、ユーグ達と必死に勉強していた。そして猛勉強の甲斐があり、ユーグは次期宰相、マリアンヌは次期外務卿、ディオンは次期法務卿、クリスティーヌは宮廷薬剤師の試験に合格した上、次期医務卿の座も手に入れた。
そして今、宮廷薬剤師として働きながら、キトリーの下で次期医務卿としても活躍している。
そんなある日のこと。
ヌムール領に人が集まりとても盛り上がっていた。クリスティーヌとユーグの結婚式があるのだ。クリスティーヌもユーグもお互い多忙な中、ゆっくりと着実に結婚に向けて準備を進めていたのだ。
純白のドレス姿のクリスティーヌ。髪はシニョンに纏められ、ユーグからプレゼントされたエメラルドとスフェーンの髪飾りを着けている。純白のタキシード姿のユーグ。エメラルドのネクタイピンを着けている。お互い、相手の目の色の物を身に着けていた。牧師や家族・友人達、そして領民達に見守られながら、クリスティーヌとユーグは誓いのキスをした。
「お兄様、クリスティーヌ様、本当におめでとうございます。私はこの日を心待ちにしておりました」
まるで自分のことのように喜ぶマリアンヌ。次期外務卿として自信がついたのか、オドオドした様子ではなく堂々としていた。
「クリスティーヌ嬢、いや、ヌムール次期公爵夫人、そしてユーグ殿、ご結婚おめでとうございます。末永くお幸せに」
セルジュは微笑みながら二人を祝福する。
「お二人共、本当におめでとうございます」
ディオンも嬉しそうに笑っている。
「クリスティーヌ、ユーグ、結婚おめでとうございます。この場に立ち会えてとても嬉しく存じますわ。レミお兄様からも手紙を預かっております」
イザベルは二人にレミからの手紙を渡した。レミは三ヶ月前、ウォーンリー王国の王太女と結婚し、ナルフェック王国から出たのだ。イザベルも年が明けたらアリティー王国の王太子と結婚するので準備で忙しい中、クリスティーヌとユーグの結婚式に来てくれたのだ。
「お二人共、ご結婚おめでとうございます。女王陛下に代わりお祝い申し上げます」
アンドレはそう挨拶した。王太子ガブリエルが国王として即位したら王弟としての務めが始まる。
ルナとシャルルもクリスティーヌとユーグの結婚式に行きたかったらしいが、生前退位の準備や他の公務があったので来られないそうだ。
「クリスティーヌ、ユーグ、ご結婚おめでとうございます。この場にはおりませんが、夫のフランソワもお二人のことをお祝いしたいと言っていたので、今度是非メルクール領にお越しくださいね」
ルシールが凛とした笑みを浮かべる。やはりパンツドレス姿だ。一年前にフランソワと結婚し、次期メルクール家当主として忙しくしている。
「お二人共、この度は誠におめでとうございます。心からお祝い申し上げます」
ユルシュルは相変わらずお手本のような動作で、キリッとした笑みだ。黒のフォックスフレームの眼鏡のレンズがキラリと光る。
「お二人共、ご結婚おめでとうございます。それから、クリスティーヌ様、お聞きしましたわ。宮廷薬剤師になられた上に、次期医務卿だと。クリスティーヌ様は常に私の前にいらっしゃいますわ。私も、負けないように精進いたしますわ」
ベアトリスが力強く微笑んだ。
「ご結婚おめでとうございます。このようなおめでたい日に立ち会えたこと、嬉しく思います」
リーゼロッテが穏やかに微笑む。
ベアトリスとリーゼロッテは再びヌムール領に薬学を学びに来ていた。ちなみに、ベアトリスは少し前にネンガルド王国の公爵令息と結婚したようだ。リーゼロッテもガーメニー王国の侯爵令息と婚約をしたらしい。
「私達の門出を祝ってくださりありがとうございます。これからクリスティーヌと二人でヌムール領を盛り上げるだけでなく、ナルフェック王国の為に力になれたらと思っております」
ユーグは微笑みながら堂々としていた。ヘーゼルの目は未来を見据えてキラキラと輝いている。
「皆様、本当にありがとうございます。私も、ユーグ様と共に歩み、ナルフェック王国やヌムール領の為に微力ながらお力添え出来たらと存じております」
クリスティーヌは凛と咲くピオニーのようだ。そしてエメラルドの目はユーグと同じように、未来を見据えてキラキラと輝いていた。
「クリスティーヌ、あの方々にもご挨拶に行こうか」
家族や友人、そして主要な客人に挨拶が終わった後、ユーグはある方向を示した。
そこにはジゼル達とその家族がいた。二人の希望で招いたのだ。ゲオルギーはニッと笑ってクリスティーヌ達に手を振っている。
「久し振りだね、ゴーシャ」
ユーグが砕けた笑みになる。
「ゴーシャ様、お久し振りでございます」
クリスティーヌもふふっと笑う。
「ああ、久し振りだな。ユーグ、クリスティーヌ嬢ちゃん、結婚おめでとう」
ゲオルギーはアシルス帝国に帰国し、アンリの店の手伝いをしていた。料理の腕は一級品だ。
「クリスティーヌさん、ユーグさん、ご結婚おめでとうございます。お招きありがとうございます」
「お二人さん、おめでとう。わざわざありがとな」
ジゼルとアンリは嬉しそうに微笑んでいた。
フョードルとミーリツァからもお祝いの言葉をもらった。二人共ナルフェック語が少し上達していた。
クリスティーヌとユーグは嬉しそうに微笑んでいた。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
クリスティーヌとユーグが結婚して二年が経過したある日のこと。
ユーグは血相変えて必死に走ってヌムール城へ向かっていた。
「旦那様、こちらでございます」
ヌムール城に到着し、家令のが示した部屋に駆け込む。慌てていたので扉をノックすることも忘れていた。
「クリスティーヌ!」
その瞬間、二つの産声が聞こえた。
クリスティーヌが双子を出産したのだ。
「ユーグ……様、たった今、産まれましたわ」
クリスティーヌは微笑んだ。出産によりぐったりしていたので弱々しい笑みだったが、健康状態には異常がないと医師から判断された。
「ありがとう! クリスティーヌ!」
ユーグはクリスティーヌを勢いよく抱きしめた。しかし、それをキトリーに咎められた。
「ユーグ、クリスティーヌはたった今出産したばかりで体のダメージが大きい。そんなに勢いよく抱きついてはいけないよ」
呆れ気味のキトリー。
「すまない、クリスティーヌ」
「いえ、お気になさらないでください、ユーグ様」
まだ弱々しい笑みだった。
その時、扉がノックされる。
「旦那様、奥様、先程から部屋の外で大旦那様がソワソワしたご様子でいらっしゃいます。お部屋に入れても大丈夫でしょうか?」
扉越しにヌムール家の家令が遠慮気味に聞いた。
「クリスティーヌ、父上を入れて大丈夫だろうか?」
「ええ、構いませんわ」
その答えを聞くと、マルセルが部屋に入る。
「クリスティーヌさんも、産まれてきた子供も無事なんだね」
マルセルはホッとしていた。
「お義父様、ありがとうございます」
「マルセル、今はクリスティーヌをゆっくり休ませてあげよう。もう隠居したのだから、孫と過ごす時間はたくさんあるんだ」
「ああ、そうだねキトリー」
キトリーとマルセルは部屋を出た。
実は一年前にキトリーはヌムール家当主を退き、ユーグに家督を譲ったのだ。当初ユーグはヌムール家当主の役割と宰相の役割を両立するのに四苦八苦していたが、今では慣れたものだ。クリスティーヌは家庭教師から上級貴族並みのことを学んでいたので、公爵夫人として問題なく切り盛り出来ていた。今は出産の為休んでいるが、宮廷薬剤師や医務卿としてバリバリ仕事もしている。
「クリスティーヌ、本当にありがとう。出産お疲れ様。君と産まれてきた子供達が無事で本当によかった」
ユーグはクリスティーヌの手を握る。ヘーゼルの目から涙を零しながら微笑んでいた。
「私も、この子達を産めたことを嬉しく思います」
クリスティーヌはユーグの手を握り返す。その力はまだ弱々しかった。
クリスティーヌの隣では、二人の赤ん坊が眠そうにしている。男女の双子だ。二人共、双子の新生児の中では大きい方である。男児はブロンドの髪にヘーゼルの目、女児はアッシュブロンドの髪にヘーゼルの目だ。
「ユーグ様、この子達の名前はどうなさいますか?」
「うーん……そうだな……」
ユーグは少し考える。
そして考えた末、ある人物達が浮かび上がった。
「この子達には、自分の幸せを掴み取れるような人になって欲しい。だから……ジョルジュとアンリエットはどうだろうか?」
「ジョルジュとアンリエット……もしかして、ジゼル叔母様達にあやかろうとしているのでございますね」
クリスティーヌはふふっと笑った。ジョルジュはゲオルギーのナルフェックでの名前、アンリエットはアンリの女性系だ。
「その通りだ。兄のように慕っていた侯爵令息のあったかもしれない姿、そして自分の幸せを選び取ったジゼルさん達の姿が思い浮かんだんだ。だけど、ジゼルという名前はクリスティーヌのミドルネームだからね」
「左様でございますか。では、男の子の方は、ジョルジュ・ユーグ・ド・ヌムールにいたしましょう」
「あ、ミドルネームは父上の名前にしようと思う。私が産まれた時、祖父がミドルネームは自分の名を使ってくれとわがままを言ってね。だから私の名ではなく、父上の名を入れてあげたい」
ユーグはクスッと笑った。
「かしこまりました。では、この子はジョルジュ・マルセル・ド・ヌムールでございますね」
クリスティーヌはふふっと笑った。
「こっちの女の子は、アンリエット・クリスティーヌ・ド・ヌムールにしようと思っている。どうかな?」
「ミドルネームに私の名前でございますか。少し恥ずかしいです」
「クリスティーヌのように、真っ直ぐ目標に向けて頑張れる子になって欲しいと思ったんだ」
真っ直ぐで優しげな笑みのユーグ。クリスティーヌは頬を赤らめる。
「分かりました。では、アンリエット・クリスティーヌ・ド・ヌムールにいたしましょう」
「ありがとう、クリスティーヌ」
ユーグはそっとクリスティーヌにキスをした。
クリスティーヌとユーグは幸せそうに微笑んでいた。
現在の女王であるルナが二年後に生前退位をすると発表した。それに当たり、ルナの退位式や王太子ガブリエルの即位式、そして次期宰相等を決めなければならない。ユーグ、マリアンヌ、ディオンはそれぞれ希望の役職に就けるよう、必死に勉強していた。クリスティーヌも宮廷薬剤師だけでなく医務卿も目指すようになったので、ユーグ達と必死に勉強していた。そして猛勉強の甲斐があり、ユーグは次期宰相、マリアンヌは次期外務卿、ディオンは次期法務卿、クリスティーヌは宮廷薬剤師の試験に合格した上、次期医務卿の座も手に入れた。
そして今、宮廷薬剤師として働きながら、キトリーの下で次期医務卿としても活躍している。
そんなある日のこと。
ヌムール領に人が集まりとても盛り上がっていた。クリスティーヌとユーグの結婚式があるのだ。クリスティーヌもユーグもお互い多忙な中、ゆっくりと着実に結婚に向けて準備を進めていたのだ。
純白のドレス姿のクリスティーヌ。髪はシニョンに纏められ、ユーグからプレゼントされたエメラルドとスフェーンの髪飾りを着けている。純白のタキシード姿のユーグ。エメラルドのネクタイピンを着けている。お互い、相手の目の色の物を身に着けていた。牧師や家族・友人達、そして領民達に見守られながら、クリスティーヌとユーグは誓いのキスをした。
「お兄様、クリスティーヌ様、本当におめでとうございます。私はこの日を心待ちにしておりました」
まるで自分のことのように喜ぶマリアンヌ。次期外務卿として自信がついたのか、オドオドした様子ではなく堂々としていた。
「クリスティーヌ嬢、いや、ヌムール次期公爵夫人、そしてユーグ殿、ご結婚おめでとうございます。末永くお幸せに」
セルジュは微笑みながら二人を祝福する。
「お二人共、本当におめでとうございます」
ディオンも嬉しそうに笑っている。
「クリスティーヌ、ユーグ、結婚おめでとうございます。この場に立ち会えてとても嬉しく存じますわ。レミお兄様からも手紙を預かっております」
イザベルは二人にレミからの手紙を渡した。レミは三ヶ月前、ウォーンリー王国の王太女と結婚し、ナルフェック王国から出たのだ。イザベルも年が明けたらアリティー王国の王太子と結婚するので準備で忙しい中、クリスティーヌとユーグの結婚式に来てくれたのだ。
「お二人共、ご結婚おめでとうございます。女王陛下に代わりお祝い申し上げます」
アンドレはそう挨拶した。王太子ガブリエルが国王として即位したら王弟としての務めが始まる。
ルナとシャルルもクリスティーヌとユーグの結婚式に行きたかったらしいが、生前退位の準備や他の公務があったので来られないそうだ。
「クリスティーヌ、ユーグ、ご結婚おめでとうございます。この場にはおりませんが、夫のフランソワもお二人のことをお祝いしたいと言っていたので、今度是非メルクール領にお越しくださいね」
ルシールが凛とした笑みを浮かべる。やはりパンツドレス姿だ。一年前にフランソワと結婚し、次期メルクール家当主として忙しくしている。
「お二人共、この度は誠におめでとうございます。心からお祝い申し上げます」
ユルシュルは相変わらずお手本のような動作で、キリッとした笑みだ。黒のフォックスフレームの眼鏡のレンズがキラリと光る。
「お二人共、ご結婚おめでとうございます。それから、クリスティーヌ様、お聞きしましたわ。宮廷薬剤師になられた上に、次期医務卿だと。クリスティーヌ様は常に私の前にいらっしゃいますわ。私も、負けないように精進いたしますわ」
ベアトリスが力強く微笑んだ。
「ご結婚おめでとうございます。このようなおめでたい日に立ち会えたこと、嬉しく思います」
リーゼロッテが穏やかに微笑む。
ベアトリスとリーゼロッテは再びヌムール領に薬学を学びに来ていた。ちなみに、ベアトリスは少し前にネンガルド王国の公爵令息と結婚したようだ。リーゼロッテもガーメニー王国の侯爵令息と婚約をしたらしい。
「私達の門出を祝ってくださりありがとうございます。これからクリスティーヌと二人でヌムール領を盛り上げるだけでなく、ナルフェック王国の為に力になれたらと思っております」
ユーグは微笑みながら堂々としていた。ヘーゼルの目は未来を見据えてキラキラと輝いている。
「皆様、本当にありがとうございます。私も、ユーグ様と共に歩み、ナルフェック王国やヌムール領の為に微力ながらお力添え出来たらと存じております」
クリスティーヌは凛と咲くピオニーのようだ。そしてエメラルドの目はユーグと同じように、未来を見据えてキラキラと輝いていた。
「クリスティーヌ、あの方々にもご挨拶に行こうか」
家族や友人、そして主要な客人に挨拶が終わった後、ユーグはある方向を示した。
そこにはジゼル達とその家族がいた。二人の希望で招いたのだ。ゲオルギーはニッと笑ってクリスティーヌ達に手を振っている。
「久し振りだね、ゴーシャ」
ユーグが砕けた笑みになる。
「ゴーシャ様、お久し振りでございます」
クリスティーヌもふふっと笑う。
「ああ、久し振りだな。ユーグ、クリスティーヌ嬢ちゃん、結婚おめでとう」
ゲオルギーはアシルス帝国に帰国し、アンリの店の手伝いをしていた。料理の腕は一級品だ。
「クリスティーヌさん、ユーグさん、ご結婚おめでとうございます。お招きありがとうございます」
「お二人さん、おめでとう。わざわざありがとな」
ジゼルとアンリは嬉しそうに微笑んでいた。
フョードルとミーリツァからもお祝いの言葉をもらった。二人共ナルフェック語が少し上達していた。
クリスティーヌとユーグは嬉しそうに微笑んでいた。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
クリスティーヌとユーグが結婚して二年が経過したある日のこと。
ユーグは血相変えて必死に走ってヌムール城へ向かっていた。
「旦那様、こちらでございます」
ヌムール城に到着し、家令のが示した部屋に駆け込む。慌てていたので扉をノックすることも忘れていた。
「クリスティーヌ!」
その瞬間、二つの産声が聞こえた。
クリスティーヌが双子を出産したのだ。
「ユーグ……様、たった今、産まれましたわ」
クリスティーヌは微笑んだ。出産によりぐったりしていたので弱々しい笑みだったが、健康状態には異常がないと医師から判断された。
「ありがとう! クリスティーヌ!」
ユーグはクリスティーヌを勢いよく抱きしめた。しかし、それをキトリーに咎められた。
「ユーグ、クリスティーヌはたった今出産したばかりで体のダメージが大きい。そんなに勢いよく抱きついてはいけないよ」
呆れ気味のキトリー。
「すまない、クリスティーヌ」
「いえ、お気になさらないでください、ユーグ様」
まだ弱々しい笑みだった。
その時、扉がノックされる。
「旦那様、奥様、先程から部屋の外で大旦那様がソワソワしたご様子でいらっしゃいます。お部屋に入れても大丈夫でしょうか?」
扉越しにヌムール家の家令が遠慮気味に聞いた。
「クリスティーヌ、父上を入れて大丈夫だろうか?」
「ええ、構いませんわ」
その答えを聞くと、マルセルが部屋に入る。
「クリスティーヌさんも、産まれてきた子供も無事なんだね」
マルセルはホッとしていた。
「お義父様、ありがとうございます」
「マルセル、今はクリスティーヌをゆっくり休ませてあげよう。もう隠居したのだから、孫と過ごす時間はたくさんあるんだ」
「ああ、そうだねキトリー」
キトリーとマルセルは部屋を出た。
実は一年前にキトリーはヌムール家当主を退き、ユーグに家督を譲ったのだ。当初ユーグはヌムール家当主の役割と宰相の役割を両立するのに四苦八苦していたが、今では慣れたものだ。クリスティーヌは家庭教師から上級貴族並みのことを学んでいたので、公爵夫人として問題なく切り盛り出来ていた。今は出産の為休んでいるが、宮廷薬剤師や医務卿としてバリバリ仕事もしている。
「クリスティーヌ、本当にありがとう。出産お疲れ様。君と産まれてきた子供達が無事で本当によかった」
ユーグはクリスティーヌの手を握る。ヘーゼルの目から涙を零しながら微笑んでいた。
「私も、この子達を産めたことを嬉しく思います」
クリスティーヌはユーグの手を握り返す。その力はまだ弱々しかった。
クリスティーヌの隣では、二人の赤ん坊が眠そうにしている。男女の双子だ。二人共、双子の新生児の中では大きい方である。男児はブロンドの髪にヘーゼルの目、女児はアッシュブロンドの髪にヘーゼルの目だ。
「ユーグ様、この子達の名前はどうなさいますか?」
「うーん……そうだな……」
ユーグは少し考える。
そして考えた末、ある人物達が浮かび上がった。
「この子達には、自分の幸せを掴み取れるような人になって欲しい。だから……ジョルジュとアンリエットはどうだろうか?」
「ジョルジュとアンリエット……もしかして、ジゼル叔母様達にあやかろうとしているのでございますね」
クリスティーヌはふふっと笑った。ジョルジュはゲオルギーのナルフェックでの名前、アンリエットはアンリの女性系だ。
「その通りだ。兄のように慕っていた侯爵令息のあったかもしれない姿、そして自分の幸せを選び取ったジゼルさん達の姿が思い浮かんだんだ。だけど、ジゼルという名前はクリスティーヌのミドルネームだからね」
「左様でございますか。では、男の子の方は、ジョルジュ・ユーグ・ド・ヌムールにいたしましょう」
「あ、ミドルネームは父上の名前にしようと思う。私が産まれた時、祖父がミドルネームは自分の名を使ってくれとわがままを言ってね。だから私の名ではなく、父上の名を入れてあげたい」
ユーグはクスッと笑った。
「かしこまりました。では、この子はジョルジュ・マルセル・ド・ヌムールでございますね」
クリスティーヌはふふっと笑った。
「こっちの女の子は、アンリエット・クリスティーヌ・ド・ヌムールにしようと思っている。どうかな?」
「ミドルネームに私の名前でございますか。少し恥ずかしいです」
「クリスティーヌのように、真っ直ぐ目標に向けて頑張れる子になって欲しいと思ったんだ」
真っ直ぐで優しげな笑みのユーグ。クリスティーヌは頬を赤らめる。
「分かりました。では、アンリエット・クリスティーヌ・ド・ヌムールにいたしましょう」
「ありがとう、クリスティーヌ」
ユーグはそっとクリスティーヌにキスをした。
クリスティーヌとユーグは幸せそうに微笑んでいた。
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