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13.懐かしの前世フード
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「マリナ……何だか振る舞いが綺麗になったな。あ、もちろん今までもよかったけれど何というか……余裕が出た感じがする」
マナーレッスンの効果があったようで、アルにそう褒められたマリナ。
「ありがとう、アル。……アルにそう言ってもらえて嬉しい」
マリナは頬をほんのり赤く染めて微笑んだ。
(エヴァンジェリン様の意図は分からないけれど、アルに褒められたというだけでカリスタ先生からのレッスンは十分意味があったように思えるわ)
マリナにとってそれくらいアルの言葉は絶大であった。
(本当、好きな人からの言葉って特別なのね)
マリナは目を閉じ、胸に手を当てた。
ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ
「マリナ様、今から時間あるかしら?」
放課後、またもやエヴァンジェリンがマリナのクラスにやって来た。今日のエヴァンジェリンはその艶やかなカールした銀髪を頭の高い位置で大きなお団子にしていた。
「ええ、ありますが」
若干視線がエヴァンジェリンの大きなお団子に行きつつ、マリナは頷いた。
「今日もエヴァンジェリン様のお部屋ですか?」
「いいえ、今日は厨房を使う許可が取れたの。是非マリナ様と作りたいものがあって。ヴィクターも誘っているのよ」
ワクワクと楽しそうに笑うエヴァンジェリン。
そこへアルが通りかかる。
「ああ、もしよろしければ、アル様もいかがです?」
妙案を思いついたような表情のエヴァンジェリン。
マリナは少しドキリとした。
「何やら楽しそうなことを考えているようですね。女性二人のお邪魔にならないなら、是非とも参加したいところです」
アルは眼鏡の奥のオレンジの目を細め、フッと笑った。
「まあ、よかったですわ。ヴィクターも誘ってありますので、これで男女のバランスが取れましたわね」
安心したようにふふっと笑うエヴァンジェリン。
マリナ達はエヴァンジェリンに連れられて厨房に向かうのであった。
ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ
「あら、ヴィクター、先に来ていたのね」
厨房には既にヴィクターがいた。
「まあね」
ヴィクターはエヴァンジェリンの姿を見ると優しく微笑んだ。そしてマリナ達に緑の目を向ける。
「ご機嫌よう、マリナ嬢。……アル殿も」
「ご機嫌よう、ヴィクター様」
マリナはニコリと当たり障りのない笑みだ。
ヴィクターはエヴァンジェリンの婚約者なので妙な誤解などは与えないようにしていた。
(だって私は他人の婚約者を略奪する趣味はないもの。そんなことをしたら破滅一直線でしょう)
「ご機嫌よう、ヴィクター殿」
アルもにこやかに挨拶をしていた。
「それでエヴァンジェリン様、今日は一体何をなさるのですか?」
マリナは聞いてみた。
「今日はマリナ様にとって馴染みがあるお菓子を作りますわ。アル様とヴィクターには馴染みがないかもしれませんが」
ふふっと笑うエヴァンジェリンは、人数分エプロンを用意していたらしく、マリナ達にエプロンを配る。
(私に馴染みのあるお菓子……? クッキーとかマドレーヌかしら? それともケーキとか?)
マリナはお菓子と言われるものを片っ端から想像した。
「食材や味付け用の調味料もガーネット公爵家の力で取り寄せたのよ」
得意げな表情のエヴァンジェリン。
(大きな権力を持っているのなら、もっと大きなことに使ってもいいのに……とは思ったけれど、大きな権力は使い方一つで破滅の道も見えるわね。エヴァンジェリン様の公爵家の権力の使い方はある意味では正しいのかもしれないわ)
マリナはクスッと笑った。
「エヴァンジェリン、もったいぶらないで何を作るか教えてくれないか? アル殿も待っていることだし」
ヴィクターが苦笑する。しかしその緑の目は、愛おしげにエヴァンジェリンを見つめていた。
「そうね。では発表いたしますわ。……これから、ポテトチップスを作りますの!」
エヴァンジェリンがそう宣言し、パチンと指を鳴らすと協力してくれるらしい厨房のシェフ達がテーブルに掛けられていた長い布をめくる。
そこにはジャガイモや油や塩など、ポテトチップスの材料が準備されていた。
味付け用には塩だけでなくコンソメ、青海苔、梅などバリエーションが豊富である。
「ポテトチップス……! 確かに転生して以来全く食べていませんでした……!」
マリナは薄紫の目を大きく見開いた。
(この世界はヨーロッパ風だから、お菓子もクッキーとかケーキが多いのよね。しかも上品なやつ。ジャンクなものは久しく食べていなかったわ。あのパリパリとした食感、バラエティ豊富な味、懐かしいわね)
マリナは懐かしそうに薄紫の目を細めた。
「私、ポテトチップスが作れると知って、いても立ってもいられなくなったの! 前世小学校時代は入院中、母が用事でお見舞いに来られない時は父と兄が母に内緒でポテトチップスやジャンクフードをしこたま買って来てくれたのよ。前世ではそれがとても楽しみだったわ。バレて母に怒られるのだけど」
懐かしげに真紅の目をキラキラと輝かせるエヴァンジェリン。ジャンクフードは前世の彼女のささやかな楽しみだったらしい。
「エヴァンジェリン嬢、ポテトチップスとは何でしょう?」
アルはきょとんとした様子だ。
「やはりアル様には馴染みがありませんでしたか」
「エヴァンジェリン、ポテトチップスは僕も知らないなあ」
ヴィクターも材料を見ながら首を傾げている。
「ヴィクターもなのね。では説明するわ」
エヴァンジェリンは得意げに微笑み説明を始める。
「ポテトチップスとは薄くスライスしたジャガイモを素揚げしたお菓子ですのよ。ポテチと略されることもありますわ。パリパリとした食感でジャガイモ本来の味も楽しめますし、色々な味付けでも楽しめますの」
マリナにとっては久々とはいえ前世で慣れ親しんだ食べ物だ。
(前世でも無性にポテチが食べたくなってスーパーやコンビニで買った記憶があるわね)
マリナは前世に思いを馳せた。
「というわけで、早速作って参りましょう!」
満面の笑みで真紅の目を輝かせているエヴァンジェリン。
彼女の声を皮切りに、ポテトチップス作りが始まった。
マナーレッスンの効果があったようで、アルにそう褒められたマリナ。
「ありがとう、アル。……アルにそう言ってもらえて嬉しい」
マリナは頬をほんのり赤く染めて微笑んだ。
(エヴァンジェリン様の意図は分からないけれど、アルに褒められたというだけでカリスタ先生からのレッスンは十分意味があったように思えるわ)
マリナにとってそれくらいアルの言葉は絶大であった。
(本当、好きな人からの言葉って特別なのね)
マリナは目を閉じ、胸に手を当てた。
ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ
「マリナ様、今から時間あるかしら?」
放課後、またもやエヴァンジェリンがマリナのクラスにやって来た。今日のエヴァンジェリンはその艶やかなカールした銀髪を頭の高い位置で大きなお団子にしていた。
「ええ、ありますが」
若干視線がエヴァンジェリンの大きなお団子に行きつつ、マリナは頷いた。
「今日もエヴァンジェリン様のお部屋ですか?」
「いいえ、今日は厨房を使う許可が取れたの。是非マリナ様と作りたいものがあって。ヴィクターも誘っているのよ」
ワクワクと楽しそうに笑うエヴァンジェリン。
そこへアルが通りかかる。
「ああ、もしよろしければ、アル様もいかがです?」
妙案を思いついたような表情のエヴァンジェリン。
マリナは少しドキリとした。
「何やら楽しそうなことを考えているようですね。女性二人のお邪魔にならないなら、是非とも参加したいところです」
アルは眼鏡の奥のオレンジの目を細め、フッと笑った。
「まあ、よかったですわ。ヴィクターも誘ってありますので、これで男女のバランスが取れましたわね」
安心したようにふふっと笑うエヴァンジェリン。
マリナ達はエヴァンジェリンに連れられて厨房に向かうのであった。
ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ
「あら、ヴィクター、先に来ていたのね」
厨房には既にヴィクターがいた。
「まあね」
ヴィクターはエヴァンジェリンの姿を見ると優しく微笑んだ。そしてマリナ達に緑の目を向ける。
「ご機嫌よう、マリナ嬢。……アル殿も」
「ご機嫌よう、ヴィクター様」
マリナはニコリと当たり障りのない笑みだ。
ヴィクターはエヴァンジェリンの婚約者なので妙な誤解などは与えないようにしていた。
(だって私は他人の婚約者を略奪する趣味はないもの。そんなことをしたら破滅一直線でしょう)
「ご機嫌よう、ヴィクター殿」
アルもにこやかに挨拶をしていた。
「それでエヴァンジェリン様、今日は一体何をなさるのですか?」
マリナは聞いてみた。
「今日はマリナ様にとって馴染みがあるお菓子を作りますわ。アル様とヴィクターには馴染みがないかもしれませんが」
ふふっと笑うエヴァンジェリンは、人数分エプロンを用意していたらしく、マリナ達にエプロンを配る。
(私に馴染みのあるお菓子……? クッキーとかマドレーヌかしら? それともケーキとか?)
マリナはお菓子と言われるものを片っ端から想像した。
「食材や味付け用の調味料もガーネット公爵家の力で取り寄せたのよ」
得意げな表情のエヴァンジェリン。
(大きな権力を持っているのなら、もっと大きなことに使ってもいいのに……とは思ったけれど、大きな権力は使い方一つで破滅の道も見えるわね。エヴァンジェリン様の公爵家の権力の使い方はある意味では正しいのかもしれないわ)
マリナはクスッと笑った。
「エヴァンジェリン、もったいぶらないで何を作るか教えてくれないか? アル殿も待っていることだし」
ヴィクターが苦笑する。しかしその緑の目は、愛おしげにエヴァンジェリンを見つめていた。
「そうね。では発表いたしますわ。……これから、ポテトチップスを作りますの!」
エヴァンジェリンがそう宣言し、パチンと指を鳴らすと協力してくれるらしい厨房のシェフ達がテーブルに掛けられていた長い布をめくる。
そこにはジャガイモや油や塩など、ポテトチップスの材料が準備されていた。
味付け用には塩だけでなくコンソメ、青海苔、梅などバリエーションが豊富である。
「ポテトチップス……! 確かに転生して以来全く食べていませんでした……!」
マリナは薄紫の目を大きく見開いた。
(この世界はヨーロッパ風だから、お菓子もクッキーとかケーキが多いのよね。しかも上品なやつ。ジャンクなものは久しく食べていなかったわ。あのパリパリとした食感、バラエティ豊富な味、懐かしいわね)
マリナは懐かしそうに薄紫の目を細めた。
「私、ポテトチップスが作れると知って、いても立ってもいられなくなったの! 前世小学校時代は入院中、母が用事でお見舞いに来られない時は父と兄が母に内緒でポテトチップスやジャンクフードをしこたま買って来てくれたのよ。前世ではそれがとても楽しみだったわ。バレて母に怒られるのだけど」
懐かしげに真紅の目をキラキラと輝かせるエヴァンジェリン。ジャンクフードは前世の彼女のささやかな楽しみだったらしい。
「エヴァンジェリン嬢、ポテトチップスとは何でしょう?」
アルはきょとんとした様子だ。
「やはりアル様には馴染みがありませんでしたか」
「エヴァンジェリン、ポテトチップスは僕も知らないなあ」
ヴィクターも材料を見ながら首を傾げている。
「ヴィクターもなのね。では説明するわ」
エヴァンジェリンは得意げに微笑み説明を始める。
「ポテトチップスとは薄くスライスしたジャガイモを素揚げしたお菓子ですのよ。ポテチと略されることもありますわ。パリパリとした食感でジャガイモ本来の味も楽しめますし、色々な味付けでも楽しめますの」
マリナにとっては久々とはいえ前世で慣れ親しんだ食べ物だ。
(前世でも無性にポテチが食べたくなってスーパーやコンビニで買った記憶があるわね)
マリナは前世に思いを馳せた。
「というわけで、早速作って参りましょう!」
満面の笑みで真紅の目を輝かせているエヴァンジェリン。
彼女の声を皮切りに、ポテトチップス作りが始まった。
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