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14.マリナが望むこと
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早速調理開始ということで、エプロンを着用したマリナ達。
マリナはピンク色のまっすぐ伸びた髪を後ろで一つにまとめた。
「まあ調理といっても、ほとんど私が開発した魔道具を使うのですが」
エヴァンジェリンは得意げな表情で魔道具を取り出す。
ジャガイモの芽を取り除いたり、皮を剥く魔道具。ジャガイモを薄くスライスする魔道具。素揚げする時に油が派手に跳ねないようジャガイモの水分を抜く魔道具。
ポテトチップス作り用に色々と取り揃えられている。
「エヴァンジェリン嬢、随分と限定的な使い方の魔道具を開発しましたね」
アルは感心しながらも、やや苦笑していた。
「ええ。仲のいい方々と一緒にポテチを作るのは転生してからの目標でしたから」
心底楽しそうな表情のエヴァンジェリン。
(ややマニアックな目標ではあるけれど、楽しそうなエヴァンジェリン様は可愛いわね。楽しく精一杯生きている感じだわ)
マリナはそんなエヴァンジェリンを見て妹を見守るかのような表情になった。
「そうですか。……エヴァンジェリン嬢、この調理用の魔道具、他のものも調理可能なように改良はできますか? それが可能ならば民達の生活の質も向上するはずですが」
アルはエヴァンジェリンが開発した魔道具をじっくりと見てそう提案した。
「確かにそうですわね。これから改良してみますわ」
エヴァンジェリンは目を輝かせて頷いた。
魔道具開発も好きだということが伝わってくる。
「エヴァンジェリンは次から次へとすごい魔道具を開発するから僕もその才能には驚かされてばかりなんだ」
ヴィクターがコソッとマリナに呟く。
「そうなのですね」
マリナはエヴァンジェリンを見てふふっと微笑んだ。
その後はエヴァンジェリンから魔道具の使い方を教えてもらい、ポテトチップスを作るマリナ達。
(一応前世では実家暮らしだったけれど、両親不在の時は簡単な料理くらいならしたわね。何だか懐かしいわ。……と言っても、エヴァンジェリン様が開発した魔道具を使うだけだから料理をしている感覚ではないのだけれど)
マリナは前世を懐かしみ、目の前の使い方が限定的なのにも関わらずやたらと高性能な魔道具を見ていた。
「マリナ嬢、スライスを頼む」
ヴィクターから芽を取り除き皮を剥かれたジャガイモが渡される。
「分かりました」
マリナはエヴァンジェリンが開発した魔道具でジャガイモをスライスした。使い勝手がよく、流れるようにジャガイモをスライスすることができる。
「マリナ、スライスしたジャガイモ貸してくれ。水分飛ばすから」
「分かったわ。お願いね、アル」
マリナはボールに入ったかなりの量のスライスされたジャガイモをアルに渡した。
アルは魔道具を手際よく作動させてジャガイモの水分を抜く。
「エヴァンジェリン嬢、できました」
アルが程よく水分が抜けたジャガイモを揚げる担当のエヴァンジェリンに渡す。
「さあ、いよいよ揚げるわよ」
エヴァンジェリンが真紅の目を輝かせてジャガイモを油に入れる。
「エヴァンジェリン、その持ち方は火傷するから」
ヴィクターはエヴァンジェリンが火傷をしないよう細心の注意を払い、味付けの調味料を用意する。
ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ
「完成しましたわ!」
見事な四人の連携プレーにより、カラッと揚がったポテトチップスが完成した。
エヴァンジェリンは真紅の目をキラキラと輝かせていた。
「これがポテトチップス……美味しそうだな」
「確かに、見た目からパリパリとした食感がイメージできる」
アルとヴィクターははできあがったポテトチップスをまじまじと見つめている。
「何だか懐かしいわね。今回も味にバリエーションがあるから食べるのが楽しみだわ」
マリナはふふっと微笑んだ。薄紫の目はワクワクした様子だ。
「早速いただきましょう!」
今すぐに食べたいという気持ちが全面に出ているエヴァンジェリン。
マリナはその様子を見て優しく薄紫の目を細めた。
「そうですね、食べちゃいましょう。色々な味があるから迷いますが、ここはやっぱりオーソドックスな塩味から行きます」
「ええ、やっぱり初めは塩味よね、マリナ様」
マリナとエヴァンジェリンは塩味のポテトチップスに手を伸ばした。
パリッとした食感、ジャガイモ本来の旨みと程よい塩加減。
「ああ、これです。前世でも食べたこの感覚、懐かしい」
「そうね。私も入院時の密かな楽しみが蘇った感じよ。あの背徳感は堪らないわね。あ、コンソメもいただきましょう」
マリナもエヴァンジェリンも美味しさと懐かしさでうっとりとした表情だ。
アルとヴィクターはそんな彼女達を優しく見守りながらポテトチップスに手を伸ばす。
「これは……初めての食感、新感覚のものだ……。この梅味というやつも、酸味と塩加減が絶妙」
アルは梅味のポテトチップスをじっくりと味わっていた。
「この青海苔ってやつは、香りが不思議だね。だけど癖になる」
ヴィクターは青海苔と塩で味付けされたポテトチップスを気づけば何枚も食べていた。
協力してくれた厨房のシェフ達にもポテトチップスを食べてもらったところ、食べやすさや味のバリエーションなどが大ウケしているようだ。
マリナ達のポテトチップス作りは賑やかで和気藹々としていた。
他愛のない話で盛り上がる中、マリナはふとアル、エヴァンジェリン、ヴィクターの表情を見る。
全員楽しそうな笑みだ。マリナも自然に楽しそうな笑みがこぼれる。
(そうよ。私はこんな風な、仲間と楽しく過ごせる学園生活を送りたかったのよ。『光の乙女、愛の魔法』のヒロインであるマリナに転生した時は、攻略対象と恋愛できるかもってワクワクしたけれど、結局私が望むのは憧れの王子様との恋愛よりも、気心知れた仲間と何気ない話を楽しむ方が大事だわ。それに……)
マリナはアルに目を向ける。
(アルは悪意ある噂に流されず、私を見てくれた。課題だって懸命に取り組んでいたし……私に優しくしてくれたわ。入寮日にいきなり絶縁宣言してきた攻略対象の王太子達よりも、アルの方が魅力的よ)
マリナは薄紫の目を優しく細め、口角を上げた。
「ん? マリナ、どうかしたか?」
マリナの視線に気づいたアルは不思議そうに首を傾げている。
「ああ、何でもないわ」
マリナは少し頬を赤く染め、目の前のポテトチップスを口に運ぶのであった。
(こういう時間を大切にしたいわね)
マリナの心は満たされていた。
その様子を見ていた者がいた。
(何よ、あれ……)
ふわふわとした長い黒髪にカナリアイエローの目の、儚げで庇護欲そそる見た目の令嬢だ。マリナにいきなり絶縁宣言をした王太子エドワードの婚約者、イーリス・シャーマナイトである。
イーリスは心底面白くなさそうな表情だ。
(何であんなに楽しそうなのよ……!? 既に負けたヒロインがあんなに楽しそうだなんてありえないわ! それに学年主席だなんて……! しかも前世がどうのとか言っていたからあのヒロインも転生者ね。悪役令嬢も)
マリナに対して嫉妬のような感情が沸々と湧き上がるイーリス。
(私はゲームに登場しないモブとはいえ『光の乙女、愛の魔法』の世界に転生したのだから、悪役令嬢エヴァンジェリンなんかよりも上手く立ち回って攻略対象のエドワード様達を先回りしてヒロインから奪って美味しい思いをして誰よりも幸せになるはずなのに……! 他の奴らはそれを悔しげに見るのがお似合いなのに……!)
ギリリと歯を食いしばり、カナリアイエローの目は鋭くマリナを睨んでいた。
イーリスも転生者なのだ。
(ますばマリナ、あんたからよ)
イーリスはニヤリと口角を上げてほくそ笑んだ。
マリナはピンク色のまっすぐ伸びた髪を後ろで一つにまとめた。
「まあ調理といっても、ほとんど私が開発した魔道具を使うのですが」
エヴァンジェリンは得意げな表情で魔道具を取り出す。
ジャガイモの芽を取り除いたり、皮を剥く魔道具。ジャガイモを薄くスライスする魔道具。素揚げする時に油が派手に跳ねないようジャガイモの水分を抜く魔道具。
ポテトチップス作り用に色々と取り揃えられている。
「エヴァンジェリン嬢、随分と限定的な使い方の魔道具を開発しましたね」
アルは感心しながらも、やや苦笑していた。
「ええ。仲のいい方々と一緒にポテチを作るのは転生してからの目標でしたから」
心底楽しそうな表情のエヴァンジェリン。
(ややマニアックな目標ではあるけれど、楽しそうなエヴァンジェリン様は可愛いわね。楽しく精一杯生きている感じだわ)
マリナはそんなエヴァンジェリンを見て妹を見守るかのような表情になった。
「そうですか。……エヴァンジェリン嬢、この調理用の魔道具、他のものも調理可能なように改良はできますか? それが可能ならば民達の生活の質も向上するはずですが」
アルはエヴァンジェリンが開発した魔道具をじっくりと見てそう提案した。
「確かにそうですわね。これから改良してみますわ」
エヴァンジェリンは目を輝かせて頷いた。
魔道具開発も好きだということが伝わってくる。
「エヴァンジェリンは次から次へとすごい魔道具を開発するから僕もその才能には驚かされてばかりなんだ」
ヴィクターがコソッとマリナに呟く。
「そうなのですね」
マリナはエヴァンジェリンを見てふふっと微笑んだ。
その後はエヴァンジェリンから魔道具の使い方を教えてもらい、ポテトチップスを作るマリナ達。
(一応前世では実家暮らしだったけれど、両親不在の時は簡単な料理くらいならしたわね。何だか懐かしいわ。……と言っても、エヴァンジェリン様が開発した魔道具を使うだけだから料理をしている感覚ではないのだけれど)
マリナは前世を懐かしみ、目の前の使い方が限定的なのにも関わらずやたらと高性能な魔道具を見ていた。
「マリナ嬢、スライスを頼む」
ヴィクターから芽を取り除き皮を剥かれたジャガイモが渡される。
「分かりました」
マリナはエヴァンジェリンが開発した魔道具でジャガイモをスライスした。使い勝手がよく、流れるようにジャガイモをスライスすることができる。
「マリナ、スライスしたジャガイモ貸してくれ。水分飛ばすから」
「分かったわ。お願いね、アル」
マリナはボールに入ったかなりの量のスライスされたジャガイモをアルに渡した。
アルは魔道具を手際よく作動させてジャガイモの水分を抜く。
「エヴァンジェリン嬢、できました」
アルが程よく水分が抜けたジャガイモを揚げる担当のエヴァンジェリンに渡す。
「さあ、いよいよ揚げるわよ」
エヴァンジェリンが真紅の目を輝かせてジャガイモを油に入れる。
「エヴァンジェリン、その持ち方は火傷するから」
ヴィクターはエヴァンジェリンが火傷をしないよう細心の注意を払い、味付けの調味料を用意する。
ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ ʚ♡ɞ
「完成しましたわ!」
見事な四人の連携プレーにより、カラッと揚がったポテトチップスが完成した。
エヴァンジェリンは真紅の目をキラキラと輝かせていた。
「これがポテトチップス……美味しそうだな」
「確かに、見た目からパリパリとした食感がイメージできる」
アルとヴィクターははできあがったポテトチップスをまじまじと見つめている。
「何だか懐かしいわね。今回も味にバリエーションがあるから食べるのが楽しみだわ」
マリナはふふっと微笑んだ。薄紫の目はワクワクした様子だ。
「早速いただきましょう!」
今すぐに食べたいという気持ちが全面に出ているエヴァンジェリン。
マリナはその様子を見て優しく薄紫の目を細めた。
「そうですね、食べちゃいましょう。色々な味があるから迷いますが、ここはやっぱりオーソドックスな塩味から行きます」
「ええ、やっぱり初めは塩味よね、マリナ様」
マリナとエヴァンジェリンは塩味のポテトチップスに手を伸ばした。
パリッとした食感、ジャガイモ本来の旨みと程よい塩加減。
「ああ、これです。前世でも食べたこの感覚、懐かしい」
「そうね。私も入院時の密かな楽しみが蘇った感じよ。あの背徳感は堪らないわね。あ、コンソメもいただきましょう」
マリナもエヴァンジェリンも美味しさと懐かしさでうっとりとした表情だ。
アルとヴィクターはそんな彼女達を優しく見守りながらポテトチップスに手を伸ばす。
「これは……初めての食感、新感覚のものだ……。この梅味というやつも、酸味と塩加減が絶妙」
アルは梅味のポテトチップスをじっくりと味わっていた。
「この青海苔ってやつは、香りが不思議だね。だけど癖になる」
ヴィクターは青海苔と塩で味付けされたポテトチップスを気づけば何枚も食べていた。
協力してくれた厨房のシェフ達にもポテトチップスを食べてもらったところ、食べやすさや味のバリエーションなどが大ウケしているようだ。
マリナ達のポテトチップス作りは賑やかで和気藹々としていた。
他愛のない話で盛り上がる中、マリナはふとアル、エヴァンジェリン、ヴィクターの表情を見る。
全員楽しそうな笑みだ。マリナも自然に楽しそうな笑みがこぼれる。
(そうよ。私はこんな風な、仲間と楽しく過ごせる学園生活を送りたかったのよ。『光の乙女、愛の魔法』のヒロインであるマリナに転生した時は、攻略対象と恋愛できるかもってワクワクしたけれど、結局私が望むのは憧れの王子様との恋愛よりも、気心知れた仲間と何気ない話を楽しむ方が大事だわ。それに……)
マリナはアルに目を向ける。
(アルは悪意ある噂に流されず、私を見てくれた。課題だって懸命に取り組んでいたし……私に優しくしてくれたわ。入寮日にいきなり絶縁宣言してきた攻略対象の王太子達よりも、アルの方が魅力的よ)
マリナは薄紫の目を優しく細め、口角を上げた。
「ん? マリナ、どうかしたか?」
マリナの視線に気づいたアルは不思議そうに首を傾げている。
「ああ、何でもないわ」
マリナは少し頬を赤く染め、目の前のポテトチップスを口に運ぶのであった。
(こういう時間を大切にしたいわね)
マリナの心は満たされていた。
その様子を見ていた者がいた。
(何よ、あれ……)
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