悪役令嬢に転生した18禁同人誌作家は破滅を回避するために奮闘する

神泉灯

文字の大きさ
50 / 94
三章・いきなりですが冒険編

ぶん殴ってやりたい

しおりを挟む
 わたしたちは試練の聖殿がある聖王国に到着した。
 そして聖王国を治める 聖姫さまが、聖王城にてわたしたちを出迎えてくれた。
「聖女さま、ようこそおいでくださいました」
 聖姫さまは わたしと同じ年齢の美少女だった。
 清楚系美少女といった感じ。
 なんか、聖姫さまのほうが聖女にふさわしいような気が。
 あのロリ女神、人選 間違えてない?
 それはともかく、聖姫さまは わたしが来たのを普通に喜んでいるようなのだけど、問題は周囲の人たち。
 大臣たちや騎士たちなど、なんか私に向ける視線が蔑んでいるというか、ハッキリ言って軽蔑の視線なのだ。
 なんで わたし、いきなり こんな目で見られてるの?
 大臣の一人が、わたしに嫌らしい軽蔑の眼差しで、
「聖女さまは なんでも王子に慰め者にされていたらしいですな。そんな穢れた体でよく表を出歩けますな。その顔の皮の厚さは、さすが聖女さまと言ったところですかな」
 まったく遠回しになっていない皮肉を繰り出してきた。
 そして周りの人たちからも、
「穢されたことを恥じていないのか。どんな神経をしているんだ」
「女神はなにか人間違いをされたのだ。こんな女が聖女など」
「こんな女など聖女にふさわしくない。聖姫さまこそふさわしい」
 物凄い皮肉を通り越して侮蔑の言葉が。
 そうだった。
 なんか 今まで気を遣ってくれる人ばっかりだったから忘れてたけど、この世界、穢された女って、被害者の方が軽蔑されちゃうような、前時代的な世界だった。
 なんか、嘘が やばいことになりそうな気配が。
 ど、どうしよう?
「おやめなさい!」
 聖姫さまが周囲の人たちを一喝すると、一瞬で静かになる。
「聖女さまへの無礼はわたしが許しません」
 そして聖姫さまは わたしに、
「申し訳ありません、聖女さま。
 この国は清らかなる者が尊重される傾向にあり、有り体に言えば処女信仰があるのです。ですので非処女、とくに未婚者の非処女への差別的偏見が強くて。
 どうか、この者たちの無礼をお許しください」
 と いって頭を下げてきた。
「い、いえ、いいんです。その、まあ、そういうこともあるかなーとは思ってましたし」
 なんか わたしのほうが謝りたくなってしまう。
 聖姫さまの方が聖女にふさわしいのは同感だし。
 卒業式の時の話、全部 大嘘だし。
 それにしても、大嘘ぶっこくときに非難される覚悟はしてたはずなんだけど、いざそれをされると、処女厨ってドン引きもんね。
 なんで男って処女にこだわるのかしら?
 中隊長さんもやっぱり気にしてるのかな?


 GISYAAAAA!!
 突然 その場に魔物が十体出現した。
 ハッキリ言って雑魚だけど、いきなりの出現に大臣さんたちとかがうろたえてパニック状態に。
「魔物だ! どこから侵入した!?」
「騎士よ! 早く倒せ!」
「聖姫さまを守るのだ!」
 騎士たちが戦おうとしているけど、非戦闘員が邪魔になって上手く戦えないでいる。
「中隊長さん!」
 わたしは中隊長さんに聖女の力を使い、中隊長さんは竜戦士に。
 続いて兄貴も雷電白虎に。
 二人が戦い、魔物はすぐに殲滅した。
 そして みんなも落ち着いたみたい。
 だけど、こんな所にまで魔物が出現するなんて。
 周囲からヒソヒソと話し声が。
「やらせだ。聖女を語る女がなにか仕掛けたんだ」
「ああ、聖女というのは嘘だ。聖女だと信じさせるために仕組んだ罠だ」
「聖姫さまを危険にさらすとは。ここで斬り捨てるべきだ」
 って、助けてあげたのに、感謝しないどころか、非難してる。
 処女厨ってここまでひねくれてるの。


「人間というのは身勝手なものですね。守ってくれたというのに、穢された身だというだけで偏見の目で見るのですから」
 唐突になんか意味ありげなセリフが聞こえて来た。
 声の方向を見ると、執事の姿をした人物がいた。
 でも、眼がおかしい。
 白い部分がなくて、全部 真っ黒。
 人間じゃない。
 魔物でもない。
 悪魔だ。
 神によって地獄に封印された堕天使。
 なんでこんな奴がこんな所に。
「私は大魔王様の執事を務める者。以後、お見知りおきを」
 聖姫さまが鋭い眼光を執事に向ける。
「大魔王は悪魔を召喚しているというのですか」
「ご安心ください。大魔王様に仕える悪魔は、私 一人。他の悪魔が現れることはありません」
「悪魔は代償によって働く。おまえはなにを代償としたのです?」
「それは大魔王様との契約上 教えられません。守秘義務がありますから」
 大魔王は悪魔と契約したってこと。
 そんなこと、下手したら魂を奪われて地獄に落とされるのに。
「私が今日 ここに伺ったのは、噂の聖女さまに会うため。そう、貴女に」
 悪魔はわたしに視線を向けた。
 その ねっとりとした視線に、わたしは怖気が走る。
 こいつ、セクハラ親父の同類だ。
 気持ち悪くて鳥肌が立ってしまった。
 ぶん殴ってやりたい。
 執事はいやらしい笑みを浮かべて、
「思った通りだ。貴女は素晴らしい。実に素晴らしい魂だ。欲しくてたまりません」
「って、わたしの魂を狙ってるの!?」
「おっと、脅かしてしまいましたね。ご安心を。今日の所は挨拶に参っただけ。貴女の力を見るために、魔物を使いましたが。
 本日は これでおいとまさせていただきます。では、近日中に また お会いしましょう」
 すると、執事の悪魔の姿が影に消えた。
 聖姫さまが険しい表情で、
「なんて恐ろしい。とても危険な悪魔です」
 わたしは同意する。
「そうですね。なんか、ぶん殴りたくなります」
 聖姫さまが虚を突かれたように、
「え? 殴る、ですか?」
「殴ってやりたくなりませんでした? なんか気持ち悪くて」
 聖姫さまはポカンとした表情だったけど、やがて微笑みを浮かべた。
「なぜ女神が貴女を聖女としたのか、分かったような気がします」
「どういう意味ですか?」
「いえ、いいんです。
 それより、試練の聖殿へ案内します。付いてきてください」
 聖姫さまは話を変えて、試練の聖殿へ案内するという。
 なんなんだろう?


 特にオチもなく続く……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした

ゆっこ
恋愛
 豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。  玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。  そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。  そう、これは断罪劇。 「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」  殿下が声を張り上げた。 「――処刑とする!」  広間がざわめいた。  けれど私は、ただ静かに微笑んだ。 (あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

処理中です...