聖女だった私

山田ランチ

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26 精霊の石

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時は少し遡り

 ブリジットが大精霊ウンディーネの寝床を訪れたのはその日が初めてだった。
 八年間、ウンディーネの姿を目にしたのは数える程度。それ位にこの住処でもウンディーネを目にするのは稀な事だと知ったのは、ここへきてから二年が過ぎた頃だった。最初に何度も会っていたのはネリーが言う通り、ウンディーネ自身がそれを望んでいたからからに他ならない。ウンディーネはほとんどの時間を寝床で過ごしているらしく、その身の回りの世話をしているのが妻達の役目のようだった。
 ウンディーネの寝床は大きな泉の中にある。しかし上から覗いて見ても澄んだ綺麗な水があるだけ。覗き込もうとすれば飲み込まれるようにどこまでも深かった。その泉にはウンディーネと妻達、もしくは許された者のみが入れるらしくネリー達精霊は入る事が出来ない。だから初めてウンディーネがブリジットを泉の中に連れて行くと言った時も、入る直前まで付いて行くとずっと駄々をこねていた。

 泉の前に来るとウンディーネは突然屈んで唇を重ねてきた。視界の端にさらりと動いた美しい髪が映る。突然の事で逃げる事も出来なかったが、反応する前にウンディーネの方から離れていく。それは恋人同士がするような情熱的なものではなく、ただ皮膚と皮膚が触れ合っただけの冷たいものだった。

「そう驚く事でもあるまい。まさか口づけが初めてとは言わないな? あの王子とも口づけくらいしていただろうに。それともあの神官とかな?」
「ッ! お戯れはお止め下さい!」

 しかしウンディーネは鼻で笑うと腰に手を回してきた。

「案ずるな。必要に迫られただけで深い意味はない。お前はまだ妻ではないからな」

 言葉の意味を聞き返す間もないままウンディーネは泉に足を浸けた。その瞬間、引き摺られるようにブリジットも泉の中に沈んでいく。縋るものがなくてウンディーネにしがみつくと、また鼻で笑われれたのを最後に二人の身体はとっぷりと水に浸かってしまった。

「大丈夫だから息をしてみろ」

 激しく首を振ってウンディーネにしがみつく腕に力を込める。溺れると思ったのも束の間、今さっきはっきりと聞こえた言葉に驚いた瞬間、吸い込んでしまったのは水ではなく空気だった。

「言っただろう、必要に迫られただけだと」
「……もしかして先程の口づけですか?」

 水の中だというのに息が出来、言葉が交わせる。

「それ以外に何がある? この泉は色々な場所と繋がっているから私から離れればどこぞの知らぬ場所に流されてしまうぞ」

 冗談でないのは分かる。ここは精霊の住処。そして今しがみついているのは精霊ウンディーネなのだ。

 身体はユラユラとたゆたうように沈んでいく。泉の上から見ると深淵のように見えた泉の中も、こうして中を通ってみると光が差し込む場所だった。泉の中は広く、魚達が通り過ぎ、時折横に攫うような水の流れがある。ウンディーネが抑えていてくれなければ、その流れに身体が持っていかれてしまっていたかもしれない。先程からの言動の全ては自分を守る為なのだと思い知らされるばかりだった。

「そろそろ私の寝所だ」

 真下を見て息を飲んだ。寝所と言っても家ではなく、すぐに寝台が目に入る。七、八人はゆうに眠れそうな大きな寝台には天蓋が掛けられ、それが唯一の目隠しともいえた。もちろん泉の中なのだから屋根などはいらないのかもしれない。それでも見渡す限り水の中というのも落ち着かない。ウンディーネが先に岩肌に足を着き、そのまま引き下ろされるように腕を掴まれた。

「ようこそ我が家へ」

 薄く青い光が道標のように揺らめいている。それは発光する海藻で、寝台まで照らしながら導くように配置されていた。そして光が途切れる場所に足を踏み入れた瞬間、水に絡め取られて重くなっていた身体は一気に開放され、飛び込むように中へと入っていた。とっさに振り向けばゆったりと藻が揺らめいている。見た目は何一つ変わらない。それでも空間が違うのだとなんとなく分かった。するとウンディーネは突然広い寝台の上にぽすりと倒れた。

「ウンディーネ様? どうなさいました?」

 顔を覗き込むが長い髪で隠れた表情は分からない。ゆっくり手を伸ばした所で後ろから強い声が飛んできた。

「またそうやって甘えて! 新しい妻を困らせてどうするつもりですか!」

 どこからか銀の脚付きのカップを盆に乗せて持ってきたのは、金の長い髪が美しい女性だった。ほっそりとした身体に沿ったドレスが体型の美しさを浮き彫りにしている。声に反応したウンディーネがのっそり顔を上げると、長い前髪の隙間からその顔を見て深い溜息をついた。

「……あっちに行っていろ」

 しかし女性はどんどん近づいてくるなり、ウンディーネの髪をさらりを撫でて顔が見えるようにした。

「ほらほらお嬢さんが困っていますよ。全くもう! ここに来るとぐうたら亭主になるんですから」
「うるさいぞ一番目! お前の顔は見たくないんだ」
「一番目? もしかしてウンディーネ様の奥様ですか?」

 興味の方が勝り、ブリジットは一番目と呼ばれた女性を見入ってしまった。

「そんなに見つめられてはくすぐったいね。あなたが新しい妻だね?」
「ブリジットと申します! あの、一番目というのはどういう事でしょうか?」
「旦那様は一番古い妻を一番目と呼ぶんだよ。名前を覚えるのが億劫なんだろうけれど私に言わせればただの怠慢だね。旦那として失格だろう?」

 答えに困ると、“一番目”はおかしそうに声を上げて笑った。

「それよりも旦那様、いつまでそうしているつもりなんです? もう儀式の準備は出来ていますよ」
「儀式?」
「さあ旦那様! 必要な事なのだからちゃんとして下さい」

 片膝を立てて気怠そうにし、顔は再び長い髪に覆われていた。

「全く、人間はどうしてそうせっかちなんだ」
「必要な事だからしているだけ。文句は言わないで下さい」

 “一番目”は起き上がったウンディーネの横に腰掛けると、当たり前のようにその頬に手を当てると唇を押し当てた。ブリジットは目の前で起きている事が理解できずにしばらく固まってから、勢いよく立ち上がった

「私やっぱり失礼します!」

 その時、開いている手で手首をがっちりと掴まれた。

「駄目よ、そこにいて」

 何を見せられているのか分からないまま、前触れもなく始まったその光景をただ唖然としながら見つめていた。

「ウンディーネ様、“一番目”様、これは一体なんなのでしょう……」
「魂移しだ」

 口づけの合間にウンディーネが答える。よくよく見ると、口づけの度に“一番目”の様子がおかしくなっているように思えた。手首を掴んでいる力が徐々に弱まっている。頬に回していた手から力が抜けてずるりと肩に落ちた。

「あの、ご説明頂けませんか? そうでないと居た堪れません」

 呆れたように吐いた吐息と共に艷やかな唇が離れる。僅かに開いた隙間から気怠い声が漏れた。

「この者は死に、お前が新たな妻となる」

 言葉の意味が理解出来ずに息を飲んだ後、唐突に八年前の事を思い出していた。

――新しい妻を迎えれば、古い妻が死ぬ。

 妻になる事は選ばず、ずっとここにいる事を選んでから八年。ここでの暮らしはそれなりに気に入っていた。それはネリーやテスラの存在が大きかった。変化はないがその代わりにあるのは、何者にも脅かされない心穏やかな日々。それが今破られようとしている。訳が分からないま気がつくと二人の間に割って入っていた。よく見ると二人の口元の周りには白い靄が浮遊している。それらはスゥ――とウンディーネの口に入って消えた。

「私はまだ妻になるとは言っていません」
「そうも言っていられなくなったのでな。承諾は結婚後じっくり取ってやる」
「そんなの酷いです! 私が妻になる事で“一番目”様がお亡くなりになるのであれば、私は妻になどなりたくありません!」
「大丈夫よ。こう見えても長い年月を生きてきたもの。それに、あなたがあの子の側にいてくれている聖女ならば、なおの事安心ね」
「あの子? まさかネリーの事ですか?」
「あの子達は私が育てた精霊の中でも群を抜いて変り者だわ。グリンは感情をうまく表す事が出来ないし、ネリーはその逆。二人で一つのような子達なのよ」
「ネリーはこの事を知っていて私にずっとついていたのですか?」
「そうよ、それが精霊の役割だからね。さああなたも運命を受け入れて」

 ブリジットの身体がやんわりと横に押される。軽く動いてから、力を入れてその場に留まった。

「さっきも言ったけれど私達も受け入れているから大丈夫。何も悲しむ事はないよ」

 最初にグリンに会った時は、新しい妻が来ればいずれテスラが死ぬ時が来る予感させてしまったから不機嫌なのだと思っていた。でもそうではなかったのかもしれない。まさに自分がグリンとネリーの母親代わりを死なせてしまう相手だと分かったから、あれ程までに不機嫌だったのだろう。

――母親代わりを殺す聖女がとうとう現れた。

 今ならあの時のグリンの気持ちが分かる気がした。

「……きっと二人とも寂しがると思います。出来る事なら生きていて欲しいと願っているんじゃないでしょうか」

 しかし“一番目”はブリジットの身体を強引に押すとウンディーネの唇に唇を押し当てた。

「ウンディーネ様! この儀式は絶対なのですか?」

 返事はない。ウンディーネは先程“一番目”が持ってきたグラスを掴もうとした所で、ブリジットはとっさにその中身を飲み干した。流石に唖然とした二人の視線がブリジットに向く。そしてウンディーネは苛々しげにブリジットを睨みつけた。

「小娘! 何をしている!」
「私も無関係ではありません! 何故こんな事をするのかせめて説明をしてください。そうでなければ到底受け入れられません!」
「旦那様、話してあげて下さい。私はもう一度準備をしてきますから」

 寂しそうにそう言うと、“一番目”は空いたグラスをブリジットの手の中から取り、離れていった。盛大な溜息と共にウンディーネはごろりと寝台に横になった。

「……申し訳ございません」
「謝るくらいならなぜ邪魔をした」
「それは“一番目”様に生きていて欲しかったからです。ネリーもグリンさんもきっと願っていると思います」
「あいつらは精霊だ。この事は随分前から知っているし、自分の番が来たくらいしにか思っていない」
「本当に、そうでしょうか。少なくともグリンさんは望んではいなかったように思います」
「……あればただの茶だ。鎮痛作用があるから飲んでも問題ないが、訳の分からない物を簡単に口にするでない」
「どこか痛むのですか?」

 するとウンディーネは掌で心臓の辺りをそっと撫でた。

「妻達の命を貰った後はどうしてもこの辺りが痛む。だからあの茶を飲むのだ」
「その痛みは、ウンディーネ様のお心が悲鳴を上げているのでありませんか?」

 すると再び盛大な溜息が返ってきた。

「私は高位の精霊だよ。力が弱まれば世界の均衡が崩れ、お前達の住む世界は邪気に飲まれてしまう」
「でも邪気は消えたはずです!」
「……本当の意味で邪気が消える事などありえない。人がいる所には必ず邪気が吹き溜まる。そうして何十年、何百年かけて大きくなった邪気は、ある時突然世界に現れる。お前が見たように、多種多様な姿を取ってな」
「それじゃあ私のしてきた事はなんだったんですか? あれだけ大変な思いをしても意味がなかったのでしょうか!」
「意味はあるぞ。少なくとも次の邪気の塊が現れるまでに束の間の平穏があるのだ。お前達にしてみれば長い年月になるだろう」
「ウンディーネ様は悲しくないんですか?」

 その時、一瞬だけ変化の乏しい表情が崩れた気がした。しかし“一番目”が戻ってきたのと同時にいつもの表情に戻ってしまう。“一番目”はにこりと笑うと寝台に上がった。

「あの! 再び邪気が姿を現した時にまた聖女が戦えばいいのでは?」
「私達が浄化してきた邪気の塊は、旦那様が力を抑えて弱らせた状態の邪気だよ。そもそも旦那様の力が弱まれば私達聖女の力ではどうしようも出来ないんだ」

 すると、頭をポンッと撫でられた。

「次の聖女もまた随分と優しい子のようですね。まあそうでなければ旦那様はお選びにならないでしょうけど。双子石があれば、あなたにこんな悲しい顔をさせずにいられたのに」
「失った物の事は口にするな」

 苛立ったウンディーネがそのまま“一番目”の手を引く。その身体にしがみつくように言った。

「双子石とはなんでしょうか!」
「なんでもない。お前は知らなくていい物だ」
「それならやはり私は妻にはなりません! ちゃんと話し合いが出来ない夫婦になどなりたくありません! 例えウンディーネ様でもこればかりは譲れませんから!」
「フフ、ハハッ! 面白い子だね。ネリーが懐くのも分かる気がするよ」
「お前が余計な事を言うからこんな事になるんだ」
「ちゃんと話して納得させてあげないと。これから長い時を共に過ごすんですからね」

 ウンディーネは長い髪を鬱陶しそうに掻き上げてから“一番目”の持ってきたグラスを乱暴に持ち上げた。そしてグラスの上で指をくるくる回し始めると、それに誘われるように液体が上がってくる。そしてグラスの上で液体はゆらゆらと形を変化させ始めた。すぐに液体は小指の先程の大きさの丸型になる。そして不思議な事に色も泉の深部のような深い青色に変化した。

「これが水の石。双子石ともいう。もうずっと昔に紛失し、今ではどこにあるのか分からない」
「これがあればウンディーネ様の力は増すんですか?」
「この石は精霊の力の結晶だよ。この石を失った事で旦那様の力は弱まってしまったんだ」
「それじゃあこの石を取り戻せば聖女の力を奪わなくても邪気を抑えられるのですか?」
「今よりはな。無くして随分経つから正直どこにあるのか分からん」

 すると、“一番目”の拳がウンディーネの頭上に落ちた。

「何をする!」
「意地悪を言うからですよ」

 不貞腐れたのか黙りを決め込むウンディーネから視線を外すと、“一番目”に向き合った。

「私が石を探してきます。だからこの儀式は待っていただけないでしょうか。私が邪気を消してからまだ八年です。まだ邪気はそう溜まってはいないはず。猶予はありますよね?」
「探してくると言ってもあなたはここから出られないんだよ。旦那様の妻になる以外はね」
「……私が妻になってもこの儀式は待って頂けるものでしょうか」
「いかがですか旦那様」

 不貞腐れていたウンディーネはごろりと横になると背中を向けてしまった。

「ウンディーネ様はそれで宜しいのですか? その胸の痛みが妻達を失う事を望まない証拠なのではありませんか!?」
「……石は城のどこかだ。あの石を奪っていった聖女はその後すぐに王族と結婚したから」
「石を奪っていった? 聖女がですか?」
「あとは好きにしろ。今は仮の妻という事で許してやる。期限は三ヶ月だ。それで戻らねばお前は死ぬ」
「分かりました。絶対に石を見つけ出して見せます」

 するとおもむろに起き上がったウンディーネは、頬に手を当てると口を寄せてきた。しかし触れる事はない。掴まれていた両頬が強めに押されて唇が開く。その瞬間、冷たい水のようなものが口に流れ込んできた。思わずゴクリと飲み込んでしまう。ウンディーネは何も言わずにまた背中を向けて寝てしまった。

「大精霊の加護を受けたあなたはこれで外の世界に出られるよ。他の者達がやっているように霧の向こうに向かいながら行きたい場所を思い浮かべてごらん。望む場所に行けるからね」

 ブリジットは頭を下げると寝所から出た。身体は勝手に浮遊していき、やがて泉から上がる事が出来た。




「ブリジット! 良かったやっと出てきた! 大丈夫? 変な事されなかった?」

 ぎゅうっと身体を抱き締められるその肩越しにテスラとグリンが目に入る。何も言わないグリンの目を真っ直ぐに見つめ返した。

「儀式はまだ終わっていません。今は一時中断です」

 グリンに笑って見せた。

「双子石を見つけに外の世界に戻ります。何か知っている事はありませんか?」

 怪訝そうにするグリンに変わって答えたのはネリーだった。

「双子石? もしかしてあの有名な石の事?」
「ネリーは何か知っているの?」
「んとね、あの石は確か泥棒に奪われちゃってそれっきりって事くらい。だから大事な物は人には見せてはいけないよって話だよね、グリン?」

 振り向きながら見上げたネリーの顔を押すように避けると、グリンは盛大な溜息を付いた。

「どうか儀式を全うして頂きたい」
「でもそんな事をしたら“一番目”様が……」
「承知の上だとは言われませんでしたか? 誰も死など恐れていません」
「それでもこのままではいつかまた邪気が現れてしまいます。その時、聖女では倒せなかったら? 私は凄く怖かったんです。邪気を前にしてもし自分が倒れたら、負けてしまったら守りたいと思っていた者達を全て失うのかと」
「だがウンディーネ様も探してきたのに見つからなかった物が、あなたに見つけられる訳がないでしょう」
「私なら城の深部にまで入れるかもしれません。諦めるのはまだ早いです。もし見つからなかったら大人しく儀式を見届けます。でもそれまで猶予をください」
「猶予も何も、ウンディーネ様がお許しになったのなら私が口を出す事ではありません」
「いってらっしゃい」

 テスラは多くは語らずに見送ってくれた。それでも瞳に溜まっている涙を見れば心配されている事くらい分かる。二人に頭を深く下げると霧に向かって歩き出した。その後をネリーが続く。ブリジットとネリーは固く手を繋ぎながら深い霧の中に足を踏み入れた。


「三ヶ月だなんてまた随分と短いんですね」

 後ろから横になるウンディーネの腕を撫で始めた“一番目”は、うっすらと目に涙を溜めて言った。

「ぎりぎりの期限だな。どちらにしても邪気が暴れ出したら私が行く。今回は聖女もいないのだから」
「選定にはまだ時間がかかりそうなのですか?」
「本人が拒絶している。私の声は届かない」
「そう……」

 “一番目”は後ろからウンディーネの身体を抱き締めた。

「あの者にはすまないが、力を失ってもなお聖女の働きをしてもらわねばならんようだな。器としてならまだ使えそうだ」
「旦那様が三ヶ月というのならそうなのでしょうね」
「それは分からん。いつの時も人の心など不思議に満ちているだろう」
「そうですね。だからこそあの娘に賭けたのでしょう?」

 返事はないが前に回した手の甲を冷たい手がするりと撫でて、握り締めた。
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