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武士道とエロス(1)
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男達の恋「衆道」を通して語る江戸の心性史。殿と小姓、義兄弟など、男同士の恋は武士の社会に溶け込んだおおらかなものだった。彼らの「絆」の意味と変容を新視点から捉え直し、江戸という時代を照射する。
男どうしの恋の道、衆道は“武士道の華”。美少年の争奪、衆道敵討、義兄弟の契り。江戸の風俗大革命で喪われていく「性」の煌き。武士たちの愛と絆を通して日本男性史を書きかえる。
以上、amazon内容紹介より
みなさん、こんにちは。
前回、神聖売春について取り上げましたが、今回は男色についてお話したいと思います。
小学生の頃、あくまで子供向けの漫画やゲームで無邪気に信長カッコいいとか思っていました。しかし、中学生になり様々な書籍に手を出すようになると、信長と蘭丸など色々と知るようになります。なんともいえない、裏切られたような気持ち・・・。
正直、オカマ、ゲイというと平成生まれの私のような世代はどうしても『クレヨンしんちゃん』が最初に思い浮かぶのではないでしょうか。今でこそなくなりましたが、当時のクレしんにはオカマキャラが頻繁に登場し、最初は意味も分からず笑っていました。実際、クレしん映画の初期5作のうち4作には敵側、味方側にオカマキャラが重要な役割として出てきます。
『アクション仮面VSハイグレ魔王』
ラスボスのハイグレ魔王がオカマ
『ブリブリ王国の秘宝』
敵の幹部ニーナ、サリーがオカマ(二人は後に改心)
『雲黒斎の野望』
味方の春日吹雪丸はオカマではなく、逆に男装する少女でした。
『ヘンダーランドの大冒険』
ラスボスがマカオ、ジョマというオカマ魔女
『暗黒タマタマ大追跡』
ローズ、ラベンダー、レモンという珠由良(たまゆら)ブラザーズが野原家の味方として登場、そして物語の核心である魔神ジャークもオカマでした。ちなみに序盤で野原一家はオカマバーに行きます。
もちろんテレビシリーズ、原作マンガの方にも笑いの対象としてオカマが出てきます。
ですから、やはりオカマという笑われるものが、男らしさのシンボルであった武士、その長である信長と重なることに大きな戸窓いを感じたのを覚えています。
前置きが長くなりましたが、今回の筆者も信長に違和感を感じたそうです。
著者は、少年の頃、有名な「藤吉郎の草履取り」を気持ち悪く感じたそうです。
信長に気にいられて、秀吉が出世街道を突っ走る第一歩であります。男の肌で温められた草履を主人に履かせる、しかもその男は猿やハゲねずみと呼ばれるほどの醜男。自身の経験に照らし合わせるとたしかに気持ち悪いですね。例えば、寒い日に部活の後輩が懐から「手袋温めときました」と差し出してきたら。何だ、コイツ?と思いますよね。また、私はあまりそう思いませんが、イスが前の人に温められて嫌だなという人もいるわけですね。人の体温を感じるのはちょっと嫌なものです。
「皮膚接触的で濃厚な人間関係」を忠義として表現されることに、筆者は違和感を感じ、男色など知らなかったが、そこに性的な感じを抱き、嫌悪したということだそうです。
塩野七生氏も同様にこのエピソードに性の匂いを感じ、
「秀吉は、藤吉郎の時代から、信長に惚れこんでいたのではないだろうか。惚れこむというよりも、愛していたのではないだろうか」
さらに、森蘭丸への少年愛ではなく男同士の愛情関係のほうが当時の主流ではと述べて、
「ぞうりをふところに入れて暖めるのは、誠実な下僕の奉仕を完全に超えている。信長はなま暖かいぞうりを足の裏に感じながら、藤吉郎の愛も感じていたのではないだろうか」
と推測を吐露しています。
しかし、この話は史実ではなく、寛政九年(1797)から享保二年(1802)にかけて刊行された『絵本太閤記』に初めて出るエピソードで、それ以前の『川角太閤記』にも『甫庵太閤記』(ともに17世紀の作品)には出てきません。
ただ履物を温める話はある種のあるあるであったようであります。
『武野燭談』という書物には三代将軍徳川家光の草履の話ができてきます。
家光は寵愛する重澄という男の屋敷にお忍びで夜這いしていました。これを知った酒井忠勝は将軍に万一のことがあってはならぬと密かに後をつけ、事が済むまでその屋敷の木陰に隠れて家光の帰りを待っていたのです。
それが続いたある日、寒さ厳しい夜のこと、家光が毎度の通りその屋敷に入っていた後、忠勝はそっと見守っている主君の草履を懐で温め、事が終わりでてくる寸前で元の場所に置き、隠れました。家光は温もりに気づいたが忠勝ではなく、重澄の配慮かと思いそのまま帰途つきました。しかし、同じことが何度か続いたので家光は重澄に問うと、彼ではありません。そこでようやく忠勝の心遣いに気づき、彼を召して礼を述べたところ、自身の軽々しき行動を諌められてしまったそうです。家光は忠勝の忠節に涙を流して感謝し、以後夜這いをしなくなったそうな。
なるほど、主君を諌めるにはタイミングが肝心という話でしょうか。忠勝が止めなされと忠告したところで、うるさいやつだなと家光に睨まれるだけです。しかし、このように先に感謝を引き出しておくことで、言葉が主君に届くように演出する重要性を説いているように思えます。
家光が男色を好んだことは様々な記録にあり、女に興味がなかったからこそ春日局は子をもうけるために大奥をつくらねばならなかったほどです。
じつは信長の草履よりも家光の草履の方が先に成立し世間的に知られていたようです。秀吉の出世話をよりおもしろく伝える新ネタとして既に有名なエピソードを付け加えられたということです。
筆者は酒井忠勝の行動に、家光へのある種の思いを見出しています。それは寵愛を受ける重澄よりも自分の方が主君家光のことを慕っているんだという思いです。それを深夜のボディーガード、草履の温もりとして行動にうつしていると。忠勝の行動にはなんとも恋愛的ないじらしさがあり、現代人の目には奇異に映ります。
実は忠という感情には恋が不可分であり、それが時代が下るにつれ恋は剥がされていったのです。こうした武士社会におけるメンタリティーの変化は、人間関係というものを歴史的に考察する上で欠かせないものなのです。
男どうしの恋の道、衆道は“武士道の華”。美少年の争奪、衆道敵討、義兄弟の契り。江戸の風俗大革命で喪われていく「性」の煌き。武士たちの愛と絆を通して日本男性史を書きかえる。
以上、amazon内容紹介より
みなさん、こんにちは。
前回、神聖売春について取り上げましたが、今回は男色についてお話したいと思います。
小学生の頃、あくまで子供向けの漫画やゲームで無邪気に信長カッコいいとか思っていました。しかし、中学生になり様々な書籍に手を出すようになると、信長と蘭丸など色々と知るようになります。なんともいえない、裏切られたような気持ち・・・。
正直、オカマ、ゲイというと平成生まれの私のような世代はどうしても『クレヨンしんちゃん』が最初に思い浮かぶのではないでしょうか。今でこそなくなりましたが、当時のクレしんにはオカマキャラが頻繁に登場し、最初は意味も分からず笑っていました。実際、クレしん映画の初期5作のうち4作には敵側、味方側にオカマキャラが重要な役割として出てきます。
『アクション仮面VSハイグレ魔王』
ラスボスのハイグレ魔王がオカマ
『ブリブリ王国の秘宝』
敵の幹部ニーナ、サリーがオカマ(二人は後に改心)
『雲黒斎の野望』
味方の春日吹雪丸はオカマではなく、逆に男装する少女でした。
『ヘンダーランドの大冒険』
ラスボスがマカオ、ジョマというオカマ魔女
『暗黒タマタマ大追跡』
ローズ、ラベンダー、レモンという珠由良(たまゆら)ブラザーズが野原家の味方として登場、そして物語の核心である魔神ジャークもオカマでした。ちなみに序盤で野原一家はオカマバーに行きます。
もちろんテレビシリーズ、原作マンガの方にも笑いの対象としてオカマが出てきます。
ですから、やはりオカマという笑われるものが、男らしさのシンボルであった武士、その長である信長と重なることに大きな戸窓いを感じたのを覚えています。
前置きが長くなりましたが、今回の筆者も信長に違和感を感じたそうです。
著者は、少年の頃、有名な「藤吉郎の草履取り」を気持ち悪く感じたそうです。
信長に気にいられて、秀吉が出世街道を突っ走る第一歩であります。男の肌で温められた草履を主人に履かせる、しかもその男は猿やハゲねずみと呼ばれるほどの醜男。自身の経験に照らし合わせるとたしかに気持ち悪いですね。例えば、寒い日に部活の後輩が懐から「手袋温めときました」と差し出してきたら。何だ、コイツ?と思いますよね。また、私はあまりそう思いませんが、イスが前の人に温められて嫌だなという人もいるわけですね。人の体温を感じるのはちょっと嫌なものです。
「皮膚接触的で濃厚な人間関係」を忠義として表現されることに、筆者は違和感を感じ、男色など知らなかったが、そこに性的な感じを抱き、嫌悪したということだそうです。
塩野七生氏も同様にこのエピソードに性の匂いを感じ、
「秀吉は、藤吉郎の時代から、信長に惚れこんでいたのではないだろうか。惚れこむというよりも、愛していたのではないだろうか」
さらに、森蘭丸への少年愛ではなく男同士の愛情関係のほうが当時の主流ではと述べて、
「ぞうりをふところに入れて暖めるのは、誠実な下僕の奉仕を完全に超えている。信長はなま暖かいぞうりを足の裏に感じながら、藤吉郎の愛も感じていたのではないだろうか」
と推測を吐露しています。
しかし、この話は史実ではなく、寛政九年(1797)から享保二年(1802)にかけて刊行された『絵本太閤記』に初めて出るエピソードで、それ以前の『川角太閤記』にも『甫庵太閤記』(ともに17世紀の作品)には出てきません。
ただ履物を温める話はある種のあるあるであったようであります。
『武野燭談』という書物には三代将軍徳川家光の草履の話ができてきます。
家光は寵愛する重澄という男の屋敷にお忍びで夜這いしていました。これを知った酒井忠勝は将軍に万一のことがあってはならぬと密かに後をつけ、事が済むまでその屋敷の木陰に隠れて家光の帰りを待っていたのです。
それが続いたある日、寒さ厳しい夜のこと、家光が毎度の通りその屋敷に入っていた後、忠勝はそっと見守っている主君の草履を懐で温め、事が終わりでてくる寸前で元の場所に置き、隠れました。家光は温もりに気づいたが忠勝ではなく、重澄の配慮かと思いそのまま帰途つきました。しかし、同じことが何度か続いたので家光は重澄に問うと、彼ではありません。そこでようやく忠勝の心遣いに気づき、彼を召して礼を述べたところ、自身の軽々しき行動を諌められてしまったそうです。家光は忠勝の忠節に涙を流して感謝し、以後夜這いをしなくなったそうな。
なるほど、主君を諌めるにはタイミングが肝心という話でしょうか。忠勝が止めなされと忠告したところで、うるさいやつだなと家光に睨まれるだけです。しかし、このように先に感謝を引き出しておくことで、言葉が主君に届くように演出する重要性を説いているように思えます。
家光が男色を好んだことは様々な記録にあり、女に興味がなかったからこそ春日局は子をもうけるために大奥をつくらねばならなかったほどです。
じつは信長の草履よりも家光の草履の方が先に成立し世間的に知られていたようです。秀吉の出世話をよりおもしろく伝える新ネタとして既に有名なエピソードを付け加えられたということです。
筆者は酒井忠勝の行動に、家光へのある種の思いを見出しています。それは寵愛を受ける重澄よりも自分の方が主君家光のことを慕っているんだという思いです。それを深夜のボディーガード、草履の温もりとして行動にうつしていると。忠勝の行動にはなんとも恋愛的ないじらしさがあり、現代人の目には奇異に映ります。
実は忠という感情には恋が不可分であり、それが時代が下るにつれ恋は剥がされていったのです。こうした武士社会におけるメンタリティーの変化は、人間関係というものを歴史的に考察する上で欠かせないものなのです。
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