賽は指から零れ落ち

あのにめっと

文字の大きさ
9 / 11

9 (完)

しおりを挟む
 数日後、理性を取り戻した僕は頭を抱えた。言っただろう?僕は誘発剤を使った時以外、発情ヒートしていた間のことは全部覚えている。あれから当然のように発情期に入り、河原と僕はずっとセックスをしていた。それはまあいい。毎度のことだし、αとΩにはよくあることだ。だけど僕はずっと砂糖を吐きそうなくらいベッタベタに河原に甘えまくっていた。今までの反動が来たからって欲しがりすぎだろ、僕。
 河原も僕を際限なく甘やかすから良くない。最初なんで発情ラット起こしてるのに理性あるんだって思ってたけど、もしかしてあいつ発情してたからあんな感じだったのか?‪今までが無理してたのかな?‪「ずっとこうしたかった」って言ってたしそうなんだろうな。α‬にしては珍しいけど、元から尽くすタイプだったしな。あれは…まあ、悪くなかったかも、しれない。

 そんな河原はまだ寝ている。僕だけが悶えてるのは不公平だと思って軽く鼻をつまむと、河原はしばらくもぞもぞした後ゆっくり目を開けた。
「ああ、起きましたか。おはようございます」
 …起きてもけろっとしてるな!!
「なんか、ずるい」
「ん?もしかして照れてます?可愛かったですよ、すごく」
 河原も照れくさいのか顔を赤くしながらそれでもにやにやと笑ってこっちを見てくる。なんだその余裕。
「あんな感じじゃなくていいから、普段ももっと甘えてください。プレイの時も僕に何か遠慮してるでしょ?我慢しなくていいんですよ」
 頭を撫でてくる手が暖かい。僕は思わず目を細めた。
「分かった。覚悟しておいてね」
「…もしかしてまだ上があるとか言いませんよね?」
「うーん?内緒!」
「こっわ…」

 結局、「僕と河原は運命のつがいじゃなかったけど、偶然にも・・・・僕があそこで発情事故を起こしたため僕達は自分達が運命の番だと勘違いした」ということになった。
「それでも僕達は運命的な巡り合わせをしたわけで、それは運命の番よりも強固なものだと信じています」とは河原の言葉。全てを仕組んだ僕が言えたことじゃないけど、よく言えるよね。
 もちろん怪しむ声はあったけど、僕と河原の2人で捻り潰した。そもそも時間が経ちすぎてるし、河原が被害を否定しているんだから確かめようもない。
 本物の運命の番さんの方は、たまたまこっちに旅行しに来ただけで家は僕達の住んでるところからかなり離れているらしい。お互い一安心である。

 数年後、2人して育児に悪戦苦闘することになるんだけど、それはまた別のお話。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

彼は当て馬だから

藤木みを
BL
BLです。現代設定です。 主人公(受け):ユキ 攻め:ハルト

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...