逃がしませんっ! 〜身体から始まる奇妙な関係〜

一 千之助

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 それまでの日々

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「良い子にしていたか? 睦月」

「あ、おかえり賢」

 大学から帰ってきた賢は、睦月のベッド横に膝をつく。
 日がな一日眠っている睦月は、とろんとした顔で賢を見つめていた。
 夕方から夜半まで兄妹の調教を受ける睦月は常に疲労困憊。
 綺麗に洗われた後、地下のベッドで三人で眠り、翌日朝食を終えると、動けぬよう二階の介護用ベッドに拘束される。
 がっちりベルトに固定され、さらに手足を枷のついた鎖で繋がれ、寝返り一つ打てない格好で二人が帰宅するまで待つのだ。
 大抵、抜けない疲労から眠ってしまうのだが、それでもキツい事には変わりない。

 賢は睦月の拘束を解き、その股間から一物を取り出すと、差し込んでいたカテーテルを抜き出した。

「っっ、んっ」

 異物を引きずり出される不快感。

 睦月が微かな呻き声を上げると、賢の腹の奥から獰猛な劣情が湧き起こる。

 

「あんまり出してなくないか? 中に溜まってるだろう?」

 カテーテルの先の袋を見て量を確認すると、賢は抜き出しかけていたモノを再び捩じ込んだ。

「ひゃっ、ないっ、ないからっ!」

「本当にぃ? 嘘だったら、お仕置きだよ?」

 何度もカテーテルを動かして、賢は意地の悪い顔で睦月が痛がるのを堪能する。

「っっっ、ぁっ、賢っ! やめてっ? っぅうっんっ!」

 されるがままな睦月。拒絶を口にしつつも、ソレを止めようとはしない。
 下手に抵抗すると、その倍の行為がお仕置きとして待っている。
 涙眼で懇願する睦月に満足し、賢はようようカテーテルを抜いてくれた。

「可愛いね、睦月。今日は何を観ていたんだ?」

 睦月の手元に置かれたリモコン。ベッド横のテレビと繋がるソレは、DVDや年齢セーブのかかったネットなどに連携して観賞出来るようなっていた。

「映画と..... 歌? 昔の流行り歌を聴いてたかな」

 賢は履歴を確認し、小さく頷いた。

「本当みたいだな。これ好きなのか?」

 力ない睦月を抱きしめながら、賢はその歌を再生する。
 ずっと寝たきり拘束されている睦月の筋力は衰え、指先程度しか動かせない。

「特には..... ただ懐かしくてかけただけ」

 その一言で賢の瞳が剣呑に光った。

「懐かしいね。じゃ、それも上書きしよう」

「え?」

 訝る睦月を無視し、賢は今時な曲をかけた。

 ポップだが、重厚な響きのある独特な歌。

 そして睦月の陽根を握り締め、ゆっくりと扱き出す。

「この曲が終わるまでにイって? イケなかったら、お仕置きな」

「えっ? えぇ? ぅっ!」

 ようやく自由になった身体を、がっちり抱きしめられ、睦月は息が止まりそうだ。
 しかも、いきなり始まった調教。賢は待たないし、やりたいことは必ずやる。

「ひゃっ、まっ、賢ぅっ?!」

 激しく扱く容赦のない甥の手に、睦月は泣くしかない。
 睦月の脚を高く上げさせて、賢は空いた手で叔父の狭い窄まりをクルリと撫でる。

 毎日の調教で、ソコは何時でもトロトロだ。

 たいした愛撫も必要なく、睦月の蕾は賢の長い指を受け入れた。

「ふっ、ぁああっ、まさ.....っ、んんんっ!!」

 弱い中を刺激され、頭を振り乱して睦月は無理やり極まらされた。
 掌に感じる叔父の一物の脈動。うっとりとした眼差しで賢は己の猛る陽根を引き出し、指でほぐした睦月の蕾に捩じ込んだ。

「っつぁ、ぁぁあああっっ!!」

 窄まりを押し開き埋め込まれていく熱い猛りに、睦月は絶叫する。
 いきなり突き上げた時の、この嬌声が賢は好きだった。
 いくら毎日抉じ開けられていても、時間をおいた次の日の最初は、それなりの痛みがある。

 最初のソレを堪能するのが賢の日課だった。

 身体を割る一物に震える睦月。この痛みを与え、今、睦月の中を己の形に変えているという満足感。
 これに勝る幸福はない。前戯などしない。睦月は毎日、自分に犯されて泣けば良い。
 慣れた身体は激痛を感じながらも賢を受け入れ呑み込んでくれる。

 完全に睦月を支配下におく儀式。

 毎日与える激痛は、睦月の身体に賢を刻み込むだろう。腹の奥に鈍痛を感じるたびに、叔父は賢を思い出すはずだ。

 かつての自分がそうであったように。

 恍惚とした顔で、賢は痛みに慣れるまで睦月の中を激しく突き上げ続けた。

 これが合図。

 ひとしきり睦月を貪った賢は、叔父の休憩をかねて夕飯の用意をする。
 長々と串刺しにされた睦月は、ぐったりとベッドに沈んでいた。

 その忙しない呼吸や涙眼で真っ赤な顔が堪らない。

 いつでも、あの顔でいてほしい。

 今の睦月の頭の中は賢の事で一杯だろう。懐かしいとか、余分な事は考える余裕もあるまい。考えさせたくもない。

 睦月は俺らのことだけを考えていれば良い。

 陰惨に眼をすがめ、賢は帰宅した聡子と料理を交代し、またもや睦月を貪り始めた。





「ほら、睦月ぃ。食べて?」

 口先に運ばれた匙を、睦月は口に含む。

 食欲はないが、食べないと二人が心配するからだ。.....心配を通り越して、無理やり食べさせようと口移しに切り替わるので油断がならない。

「美味しいよ、聡子」

 自分で食べられないよう、再び睦月の両手を枷に繋ぎ、二人はせっせと睦月に給餌する。
 それなりに食べさせたあと、睦月が限界だと言うと二人は不承不承諦めた。

「すっかり食が細くなったな。もっと食べないと」

 やや不満顔な賢に微笑み、睦月は辛辣な嫌みを口にする。

「動いてないしね。御腹も減らないよ」

 途端に苦虫を噛んだような顔で賢が黙り込んだ。

 自覚はあるんだね。でも、駄目なんだろうね。

 束縛を通り越した緊縛。それで毎日がんじがらめにしておかないと、安心出来ない賢は、言われた言葉をスルーして食器を片付け始めた。
 賢にだって分かっているはずだ。これが異常なことくらい。

 睦月は、子供らに身を委ねた日を思い出す。



『睦月っ? どこだ、睦月っ!!』

 半狂乱になって自分を呼ぶ賢の声。

 上書きという調教の果で、いつも三人で寝ていた睦月は、ふと賢達より先に目が覚めた。ここしばらく調教で地下にこもりっぱなりだったのもあり、二人を起こさぬよう家に上がった睦月は、玄関から出て久々に外の空気を堪能する。
 朝露の滴る樹木が葉を光らせ、湿った空気が胸に心地好い。こういうのも何日ぶりか。
 
 山暮らしの特権だな。

 静謐な朝ぼらけ。そこにけたたましい音をたてて、賢が家中を駆け巡った。睦月の名を呼びながら。
 そして家の引き戸が、びしゃんっと大きく開かれ、怒りに打ち震える顔の賢が現れる。

『居たっ!! ……何やってんだよ、ああっ?!』

 ……え?

 獰猛に唸る甥っ子様はパン一で、靴も履かぬままズカズカと睦月に肉迫してきた。

『どこに行こうとしたんだ? 俺らを置いて? ああっ?』

『え? ちょ……っ! 痛っ!』

『こんな朝早くからこっそりと…… 逃げ出すつもりだったのか? どうやって? なあっ?!』

 睦月の腕を捻り上げ、魔神のごとき剣幕な甥っ子様。

『いや…… 久しぶりに早く目が覚めたから、外の空気を吸いに出ただけ……』

 おずおずと答えた睦月だが、賢は鼻白むように獰猛な笑みを浮かべた。

『は? そんなん信じられるかよ。睦月は大人だ。どこにでも逃げられる。でも無駄だから。車の鍵も隠してあるし、通帳やカードも俺らが持ってる。……起きる気力も出ないくらい責め立ててたのに。まだまだ俺らが甘かったんだな』

 そんなつもりでっ?!

 昼夜問わず濃厚に絡まるお子様達。元気溌剌な若者についていけない睦月は、たしかにここ数日、疲労困憊でベッドの住人になっていた。
 だがまさか、その裏に、睦月を逃さないための思惑があったとは。

『……逃さない。絶対に』

 狂気を孕んだ賢の凍った眼差し。

 ここに来てようやく、睦月は子供らの異常性に気がついた。そういった片鱗はそこここにあったのに、愛する可愛い子供達というフィルターが、彼の眼を曇らせていたのだ。

 平然と睦月の調教を受け入れた賢。

 遥を撃退するために奸計を用いた賢。

 そして、睦月を縛り付けるために妹すら差し出そうとした賢。

 遥の名を聞いて怒り狂い、睦月を躊躇なく暴いた賢。

 そのどれもが、普通でないと気づくべきだったのに。

 ………狂ってる。

 呆然とする睦月を家に引きずりこみ、賢は地下に繋いだ。長い鎖をつけて浴室やトイレには不自由なくし、にんまりと嗤う。
 
『愛してるよ、睦月』

 くすくす愉しげに細められた二人の眼。そこにじわりと滲む狂気。心の底から嬉しそうな賢と聡子を見て、睦月は恐怖より安堵を覚えた。
 こうして自分が従順なら、きっと二人は壊れない。万一、自分を失おうものなら、この二人がどうなってしまうのか予想もつかない。
 
 ……それくらいなら。

 愛する二人を守る為に、睦月は己を与えようと決意する。
 元々、こういった行為や方法を賢に教えてしまったのは自分だ。それがなくば、ここまで見事に監禁束縛などしなかっただろう。

 自業自得。睦月はそう思った。

 だが、それは間違いである。情報が飽和したこの御時世、別な理由を経由して、きっと賢は同じことをしでかしただろう。
 淫靡な行為があろうが無かろうが、二人を心から愛してくれる睦月に、彼らは執着する。そして似たような経緯を経て、睦月を閉じ込めたに違いないのだ。

 要らぬ罪悪感に苛まれながら、睦月は延々と己を二人に与え続けた。

 しかし、そういった執着には底がない。全てを与えられているにもかかわらず、二人の猜疑心は深まっていく。

 ある日、風呂を使っていた睦月は転んで怪我をした。大したことはなかったが、睦みでその痣を見つけた賢が怒り狂う。

『何したっ? なあっ?』

『お風呂っ、転んだだけっ』

 激しく睦月を揺さぶり、眼を剥く賢。

 それを聞いた賢は、自分達が学校などへ行っている間、睦月をベッドに拘束するようになる。生理現象を賄うためにカテーテルで処置する用意周到さ。

『漏らしてても構わないけど? おむつで済ましたい?』

 ……御免被る。

 今どき、ネットを使えば何でも手に入った。特殊な免許や許可が必要な物でない限り。そういった物でも金を積めば手に入る。
 医療用カテーテルは睦月も持っていた。それを無菌パウチに繋ぎ、賢はあられもない姿の叔父に満足げだ。

『これでもう、俺の知らないところで転んだりしないな。愛してるよ、睦月。痣なんかつくらせないから……』

 そう呟いて、賢は髪を撫でながら睦月に口づける。

 甘く蕩かす深い口づけ。

 ……まあ、大した実害もないし好きにさせよう。

 実際は、監禁、凌辱、調教、緊縛、しかも近親相姦という大したことのフルコースなのだが、過去のトラウマも手伝い、大したことへのボーダーラインが極端に高い睦月。
 そんな睦月が何でも受け入れてくれるため、どんどん要求を高めていく子供達。

 結果、今の睦月は動くことすら制限され、寝たきり病人みたいになっている。
 二人は睦月に何もさせない。食べることも入浴も、トイレすらつきっきりで世話をする。それを恥じらう睦月が可愛くて堪らないからだ。
 そしてまた睦月も、嬉しそうな二人の様子が愛しくて堪らなく、完全な悪循環が出来上がってしまった。
 
 何もせねば人間の身体は衰える。実際、一日の半分を拘束されて暮らす睦月は、指先を動かすのすら億劫だ。このままでは、遅かれ早かれ身体が内部から壊れる。
 だが、睦月が聞いた曲にすら嫉妬する賢にどう説明しても無駄だろう。お仕置きと称した調教が深まるだけ。

 さっきのように少し皮肉な言葉を投げるのが関の山。言われたことが耳に痛いのか、賢は無言で睦月に背中を向けて皿洗いしている。

 それに苦笑し、睦月は二人が食事している間、短い休憩をした。
 これから長い夜が始まるのだ。少しでも体力を回復しておかないと。
 ウトウトする睦月は、微かな恐怖を抱きつつも、偏執的な二人の愛情が心地好かった。

 どこまでも睦月を求める賢と聡子。

 監禁、緊縛、陵辱、調教。どれか一つでも一大事であるのに、その無限コンボを食らっている睦月は、なぜか痛痒もなく笑顔でいられた。二人が与えるものなら。二人が幸せになれるなら何でも嬉しい。

『『愛しているよ、睦月』』

 絶え間なく耳を舐めるように囁く二人。

 ああ、私もだ。愛しているよ、二人とも。

 こうして今日も淫猥な地下室に、睦月の甘い絶叫が響き渡る。

 至福の三人を邪魔する者は誰もいない。

 ..........今は。
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