逃がしませんっ! 〜身体から始まる奇妙な関係〜

一 千之助

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 それまでの日々 2

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「お仕置きだから。我慢するんだぞ? 睦月」

「ふぁっ、我慢させっ、るのっ、..........間違いだろうっ」

 ひぃひぃ泣きながら睦月は介護用ベッドに拘束されていた。枷のはまった両手を腹部に当てて。
 どうやら寝言で睦月は、誰かの名前を呼んだらしい。
 それを耳にした賢は激昂し、朝っぱらから睦月を朝立の餌食にして、緩んだ腹の中一杯に薬を呑ませたのだ。
 そして帰宅するまで我慢するよう脅し、絶対に解放されぬよう栓を捩じ込んで限界まで膨らませた。

 不味いなぁ。これじゃあ眠れない。体力が.....っ

 ふぅふぅと顔を赤らめ汗を浮かべる睦月。
 その悲惨な姿に劣情を覚え、賢は忙しなく呼吸をする睦月の唇を塞いだ。

「待って、ま.....っ、うっ、.....ひぅっ、んんっ」

 ねっとり深々と睦月の口内を貪り、ただでさえ荒かった彼の呼吸を根こそぎ奪い取って、悶絶する睦月の舌を賢は根本まで吸い上げる。

「俺らの事だけ考えて? 他の事なんか絶対に思い浮かべないで? お仕置きするから。いくらでも悦ばせてあげるから」

 ああ、そうだ。お仕置きされるたびに、俺は睦月に浮かれた。

 睦月に酷い事をされるのが嬉しくて、わざと彼を煽った。

 ねえ? 睦月。今、貴方もそうなんだろ?

 うっとりと息も絶え絶えな睦月を見つめ、そっと毛布をかけてやると賢は満足げな顔で大学に向かった。
 睦月と愛し合うため、賢は講義の殆どを午前中に詰めている。
 遅くとも一時には終わらせ、息を切らせて自宅へ帰宅する毎日だ。
 睦月に昼食を取らせて、仕方なく午後から講義に出る事もあるが、極力短時間で終わるよう努力していた。

 だから、その日も昼に帰宅する。

「睦月、ただいま」

「..........っ、おか.....っ」

 朦朧とした意識の中、睦月は胡乱げな眼で賢を見上げた。
 滑る汗が髪を張り付かせて艶かしい、言葉を紡げず戦慄く唇。それをしきりに舐める赤い舌が、賢の情欲を掻き立てる。

「はぁ.....、綺麗だね、睦月。まだ我慢出来る?」

 うっとりと睦月を見つめ、鬼畜な事をいう賢に、睦月は子供のよう嫌々をした。

「もっ、.....無理ぃぃ、たすけて? 賢ぅ」

 ポロポロと涙をこぼして、体内で暴れまわる薬に翻弄される睦月。
 そのか弱い嬌態に、賢は大きく喉をならした。
 賢に許されたくて、解放して欲しくて、一心に懇願する睦月。
 今、彼の脳裏には賢の事しかないだろう。

 悦いぃ.....っ、最高だよ、睦月。ずっと眺めていたいくらい、可愛いよっ!!

 拘束をとかれ、はぁはぁと息を荒らげつつ、睦月は賢にすがりつく。

「賢? もう、うぅ.....っっ、許して?」

 その扇情的な姿に悦に入り、賢は残忍に口角を歪めた。

「じゃあ、お薬でドライやってみようか? 上手に出来たら許してやるぜ?」

 興奮気味な賢の瞳が、どろりと獰猛な光を帯びる。

 それを見て、睦月が絶望的に顔を凍らせた。

 ああ、それだよ。堪らないね。俺だけを見て求める、その姿。もっと俺を感じて? 

「睦月を解放してあげられるのは俺だけだよ? 睦月は良い子だろう? さ、脚を開いて?」

 極悪な尿道用バイブに舌を這わせて、賢は小刻みに震える獲物を蕩けるような眼差しで見つめた。



「..........無理ぃ、賢、もぅ.....ぅぅっ」

 捩じ込まれたバイブのうねりで勃ち上がった睦月の陽根を、賢が愛おしそうに撫でている。
 一物が猛ると賢はバイブを止め、そのまま極まるよう睦月を責め立てていた。

「ほら、腹の中の薬にイカせてもらうんだ。出来るよね?」

 グルグルと音をたてる睦月の腹を撫で、臍のあたりを指でなぞり、賢は睦月の意識を腹部に集中させた。
 それにビクビク反応しつつ、睦月は悲鳴のような懇願を口にする。

「ゃっ、ゃぁああ、痛いぃぃ、賢、賢ぅっ!」

 すべらかな腹を大きく波打たせる薬。
 限界をこえて悶絶させられている睦月は、全身が仰け反るほどの愉悦に溺れている。

 ……あと一押しかな?

 賢は睦月の前をはだけさせると、火照り赤くなった胸の頂をきゅっと摘まみ上げた。

「ひゃぁっ? 賢?」

 混濁しかかっていた睦月の意識が急速に覚醒する。

「仕方無いから手伝ってあげるよ。可愛い睦月のためだものね。お薬でも、こっちでも好きな方でイキなよ」

 そう言うと、賢は睦月の胸にしゃぶりつき、敏感な頂を責めまくる。

「ひっ! ダメっ、ぁぁあああっっ!」

 身悶え、狂ったかのように頭を振り乱し、睦月は極まった。
 足の指まで反らせてガクガク震える獲物の艶かしさに、賢は眼が眩む。
 己の手で自由自在な睦月を心から愛おしく思い、堪らない情欲が彼の腹に重く溜まっていった。

「あああ、もうぅぅ、可愛すぎるよ、睦月っ!!」

 ひくひく戦慄く睦月の陽根からバイブを抜き取り、賢はソレを深々と呑み込むと、尿道の奥まで吸い込むように激しくしゃぶる。

「きゃああああーーーっっ!」

 ドライでイッたばかりのソレは、吐き出せる悦びに容易く屈し、賢の喉の奥で一気に爆発した。
 びゅるびゅると噴き出す熱いモノを喉の奥に感じ、その余韻すら余すことなく呑み込んで、賢はようやく満足げに睦月を見下ろす。

「凄いね、睦月。お薬がそんなに悦かった? 立て続けにイッちゃうなんて若いねぇ。まだまだ愉しめそうだな」

 苦悶に寄せられた眉を撫でながら、賢は御機嫌で睦月を地下室の浴室へ運び、ようよう彼を解放した。
 もちろん、その後、念入りに賢の愛情を受け入れさせたのは言うまでもない。

 これにハマった賢が、お仕置きと称して度々エネマ放置を楽しむ未来を、憐れな睦月は知らなかった。





「睦月..... 痩せすぎじゃないか?」

 あれから暫くして、心配そうな賢に、睦月は言葉もない。

 誰のせいだ、誰のっ!!

 毎日、抱き潰され、監禁、緊縛生活。

 生理現象すら管理され、疲労困憊な身体を、お仕置きと称して休ませもしない。

 .....死ねる。比喩じゃなく、犯り殺されるかもしれない。

 絶倫、淫乱な上、やりたい盛りな十代達。

 止めようにも止まらないし、下手な抵抗は行為の激しさを煽る。
 実のところ、これでもまだマシなのだ。
 受け入れられないと感じた時の彼らは猛獣に変貌する。
 失神しても無理やり起こし、道具を駆使して、イカせまくられた恐怖を未だに睦月は覚えている。それこそ夜もすがら。

 あの時は死ぬかと思った。いや、軽く死んだ。殺された。

 ピクピク痙攣して動かなくなった睦月を満足げに見下ろして、心の底から幸せそうに微笑む二人。

「ああ。可愛い。こうして素直にされるがままな睦月は最高だよ。ようやく俺達のモノになった気がする。睦月、睦月」

 弛緩し、指一本動かせない睦月を大切そうに抱えて賢と聡子は眠りについた。

 その至福の笑顔に勝てない睦月である。

 しかし、心で諦めても身体は正直だ。

 度重なる激しい調教と、凄まじいお仕置きの毎日に睦月の身体は疲弊し、衰弱していく。
 それが命を脅かすにいたり、ようよう兄妹は睦月を失う恐怖を覚えた。 

 折れそうなほど痩せ細り、笑みも儚く、生気も薄い。

 どこからどう見ても病人である。

「どこか悪いんじゃないのかっ? 病院に行こう、睦月!」

 慌てて睦月を車にのせ、病院へ向かう賢。
 嫌々なのが丸分かりな顔だが、睦月の命にはかえられないと我慢しているのが微笑ましい。

 可愛いなぁ。大丈夫だよ、賢。ずっと傍にいるから。

 都合の悪い問診には沈黙し、弱った身体の諸症状のみを医師に答えた睦月。
 診断結果は食欲減退による栄養不良と、運動不足による筋力減少。重度のサルコペニアだ。
 散歩などして、ゆっくり身体を鍛え、栄養価の高い食事を心がけるように医師は言い、取り敢えず点滴と栄養剤などの薬を処方してくれる。
 睦月の思っていたとおりの診断だが、賢は憤り、家に帰ってから暴れまわった。

「睦月を外に出せだとっ? 出来る訳ないじゃないかっ!! 何かあったら、どうするんだっ!!」

 はーはーっと暴れまわった賢は、くしゃくしゃな泣き顔で睦月を見つめた。

「睦月、睦月っ! 家から出ないよな? ずっとここにいたいよなっ? なあっ?!」

 すがるような賢の姿は、昔と全く変わらない。

「ここにいたいよ? 歩くだけなら家の中でも出来るじゃない。安心して、賢」

 柔らかな睦月の笑顔に頷き、日に十分ほどの歩行訓練を賢は始めた。

 しかし睦月が歩けそうになると邪魔をして拘束する。

「.....歩けなくて良い。歩かないで。.....怖いよ、すごく」

 歩けるようになったら睦月がどこかに行ってしまうかもしれない。きっと誰かに拐われる。永遠に失ってしまう。
 病的な強迫観念。賢にもどうにもならない執着と葛藤。
 必死に睦月をベルトで固定しながら、声もなくホタホタと泣く賢。

 ホントに、もう。可愛いんだから、賢は。

「そうだね。歩けなくても困らないしね。賢が何でもやってくれるでしょ?」

 穏やかな笑顔の睦月に、大きく頷く賢。

 歪な愛情に溺れ、命のボーダーラインを越えたのを感じる睦月だが、それを黙ったまま、彼は二人に己を与え続けた。

 死んでもかまわない。ねぇ? 二人とも。私が君達をどれだけ愛してるか分かる? 大好きだよ。

 暴力的なまでに深い愛情を、叔父に叩きつける兄妹。

 貪欲なまでに深い愛情で、二人の要求を呑み込み続ける叔父。

 拗れ歪み、絡まりきった彼らの関係にメスが迫る。

 それは思いもよらぬ処から、思いもよらぬ効果を発揮する。

 執拗に絡まり、貪り合う三人は、そのメスの存在を未だ知らない。

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