一枚のコイン 〜変わるは裏表〜

一 千之助

文字の大きさ
40 / 102

 理不尽な接待 8

しおりを挟む

「おおおお……っ、これが私の……っ! 礼を言うぞ、グエンっ!!」

 翌日、祝福の泉で儀式を行ったロベルトも、可愛らしい卵を手に入れた。
 歓喜で沸き返る王宮。そんな満面の笑みのなか、一人仏頂面な源之助は、何とはなしに溜め息をつく。

 ……あと一人か。そっちにもどうせ卵が授かるだろうし、これで騒動は終わるかな。

 報酬を三人に吹っかけてやろうと意気込み、源之助はリヒャルトの後宮へと戻っていった。

 そして二番目の王子ラシャルトとも、ロベルトに負けじ劣らじな乱交をし、翌日、卵を得る。

 これで終わったと安堵する源之助。

 だが事は、ここからだった。



「は? 隣国からの要請?」

「……そうだ」

 苦虫を噛み潰しまくった顔でリヒャルトが説明するには、この国の王子兄弟が揃って卵得たことに驚愕した他の国が、源之助を貸してくれと頼んできたらしい。
 
 王家の子供の誕生だ。まだ生まれてないとはいえ、その発表はされる。それを耳にした他の国は、その卵を得たのが同じ妃であると知り、是非とも自国に招待したいと親書を送ってきた。
 その親書という物だろうか。リヒャルトの執務机には何十もの巻紙が置かれている。

 ……羊皮紙って奴かな? ここって普通の紙あるのに、あんなんも使うんだ?

 通常の植物紙と違い、羊皮紙は手間隙かけて丹念に作られる。しかも保存性抜群。なので、こういった国家間のやりとりに重用されていた。

「……私に宛てた招待だ。是非とも妃と共に……とな。そなた目当てが見え見えだ。着いたら即座に貸してくれと頼まれるであろう」

 ……はあん。なるほどね。

 あからさまな要請ではない。

 王家の兄弟が妃を貸し借りしたり譲渡するのは珍しいことではないが、さすがに他国の王族と共有はあり得ない。なので、国に招いて歓待し、それなりの利権を提示して便宜をはかってもらおうという画策なのだろう。
 実際、リヒャルトの兄達は乗り気らしい。難航していた国策や外交を一気に片付けられるチャンスだと。
 相手から有利な条件を引き出してこい、そのためなら一晩くらい貸してやれ。そのように言われたとか。

 ……わからなくはないな。地球でだって、そういうのは頻繁にあったし? まさに枕営業ってとこか。

 現代思考な源之助にも理解出来る理屈だ。今までの問答無用な理不尽よりは納得する。報酬も弾んでくれるだろうし、源之助に文句はない。

 そんな少年を一瞥して、文句たらたらな御仁は、頭を唸らせる。

 ……幼いのが徒になった。正室であれば、兄達に貸すことも、策略で他国に貸すこともなかったのに。側室では断りきれない。……クソぉぉぉっ!!

 一人、悶々とするリヒャルト。しかし彼は忘れている。彼自身が、同じ方法で源之助を取り上げたのを。

 その取り上げられた方でも、悶々とした二人が項垂れていた。



「……グエンの奴、王太子のお手つきになったって。聞いた端から、今度は卵ってっ! あいつ、どんだけやらかしてんだよぉぉーっ!!」

「……仕方ないさ。王家には逆らえん」

 陰鬱な面持ちで項垂れる二人。

 そんな二人の下に、閣下がやってきた。

「我が家の花嫁のご機嫌伺いに参った。息災か? 娶る日が楽しみだな」

 能天気そうに笑う閣下。

 閣下と呼べと言われたからそう呼んでいたリドル。本名も何も知らなかった。気にもならないから聞かなかった。その閣下が、まさか侯爵家の嫡男だったとは。



「アドルフ・ウェザゲルド。将軍を拝命する軍属にございます。お見知りおきを」

 商家を営むレン達は知っていた。名だたる功績をあげ、燦然と煌めく武功の将軍を。
 殿上人だ、その顔までは知らなかったが名乗られれば嫌でも分かる。……リドルですらも。

「閣下……って。マジで閣下だったの?」

「左様。そなた、全く気にしておらなんだな。そこも良かった。我の名声や富を知らず、惹かれず、貴族であろうとも膝を屈せず。毅然と周りを跳ね除け、孤高に嗤うそなたに我らは惚れたのだ」

 すこぶる良い笑顔の三兄弟。

 青天の霹靂過ぎて、リドルはもちろん、家族達すら気が遠くなった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

処理中です...