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理不尽な接待 8
しおりを挟む「おおおお……っ、これが私の……っ! 礼を言うぞ、グエンっ!!」
翌日、祝福の泉で儀式を行ったロベルトも、可愛らしい卵を手に入れた。
歓喜で沸き返る王宮。そんな満面の笑みのなか、一人仏頂面な源之助は、何とはなしに溜め息をつく。
……あと一人か。そっちにもどうせ卵が授かるだろうし、これで騒動は終わるかな。
報酬を三人に吹っかけてやろうと意気込み、源之助はリヒャルトの後宮へと戻っていった。
そして二番目の王子ラシャルトとも、ロベルトに負けじ劣らじな乱交をし、翌日、卵を得る。
これで終わったと安堵する源之助。
だが事は、ここからだった。
「は? 隣国からの要請?」
「……そうだ」
苦虫を噛み潰しまくった顔でリヒャルトが説明するには、この国の王子兄弟が揃って卵得たことに驚愕した他の国が、源之助を貸してくれと頼んできたらしい。
王家の子供の誕生だ。まだ生まれてないとはいえ、その発表はされる。それを耳にした他の国は、その卵を得たのが同じ妃であると知り、是非とも自国に招待したいと親書を送ってきた。
その親書という物だろうか。リヒャルトの執務机には何十もの巻紙が置かれている。
……羊皮紙って奴かな? ここって普通の紙あるのに、あんなんも使うんだ?
通常の植物紙と違い、羊皮紙は手間隙かけて丹念に作られる。しかも保存性抜群。なので、こういった国家間のやりとりに重用されていた。
「……私に宛てた招待だ。是非とも妃と共に……とな。そなた目当てが見え見えだ。着いたら即座に貸してくれと頼まれるであろう」
……はあん。なるほどね。
あからさまな要請ではない。
王家の兄弟が妃を貸し借りしたり譲渡するのは珍しいことではないが、さすがに他国の王族と共有はあり得ない。なので、国に招いて歓待し、それなりの利権を提示して便宜をはかってもらおうという画策なのだろう。
実際、リヒャルトの兄達は乗り気らしい。難航していた国策や外交を一気に片付けられるチャンスだと。
相手から有利な条件を引き出してこい、そのためなら一晩くらい貸してやれ。そのように言われたとか。
……わからなくはないな。地球でだって、そういうのは頻繁にあったし? まさに枕営業ってとこか。
現代思考な源之助にも理解出来る理屈だ。今までの問答無用な理不尽よりは納得する。報酬も弾んでくれるだろうし、源之助に文句はない。
そんな少年を一瞥して、文句たらたらな御仁は、頭を唸らせる。
……幼いのが徒になった。正室であれば、兄達に貸すことも、策略で他国に貸すこともなかったのに。側室では断りきれない。……クソぉぉぉっ!!
一人、悶々とするリヒャルト。しかし彼は忘れている。彼自身が、同じ方法で源之助を取り上げたのを。
その取り上げられた方でも、悶々とした二人が項垂れていた。
「……グエンの奴、王太子のお手つきになったって。聞いた端から、今度は卵ってっ! あいつ、どんだけやらかしてんだよぉぉーっ!!」
「……仕方ないさ。王家には逆らえん」
陰鬱な面持ちで項垂れる二人。
そんな二人の下に、閣下がやってきた。
「我が家の花嫁のご機嫌伺いに参った。息災か? 娶る日が楽しみだな」
能天気そうに笑う閣下。
閣下と呼べと言われたからそう呼んでいたリドル。本名も何も知らなかった。気にもならないから聞かなかった。その閣下が、まさか侯爵家の嫡男だったとは。
「アドルフ・ウェザゲルド。将軍を拝命する軍属にございます。お見知りおきを」
商家を営むレン達は知っていた。名だたる功績をあげ、燦然と煌めく武功の将軍を。
殿上人だ、その顔までは知らなかったが名乗られれば嫌でも分かる。……リドルですらも。
「閣下……って。マジで閣下だったの?」
「左様。そなた、全く気にしておらなんだな。そこも良かった。我の名声や富を知らず、惹かれず、貴族であろうとも膝を屈せず。毅然と周りを跳ね除け、孤高に嗤うそなたに我らは惚れたのだ」
すこぶる良い笑顔の三兄弟。
青天の霹靂過ぎて、リドルはもちろん、家族達すら気が遠くなった。
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