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皇帝陛下は逃げられない 〜今日の皇帝陛下〜
しおりを挟む「オル……っ、オ……ルぅ…ぅっ!」
「ひゃぃ……? んく……っ、ん…ぅ」
椅子で喘ぐ皇帝陛下。その下で揺れる柔らかそうな銀髪。
「「「「「「………………………」」」」」」
じっとり据わった目の集中砲火。
そんな冷たい視線にさらされながら、アンドリューは大きく呻いてガタガタ身体を震わせた。
はーっ、はーっと激しく胸を上下し、軽く仰け反った状態で、未だ己のモノを咥える最愛を見下ろす。
嬉しそうに先端をしゃぶり、ねっとり絡めてくる赤い舌が艶めかしい。
「おぅ…ふっ、オル…… あっ!」
ちゅうっと鈴口を吸われ、アンドリューは思わず甘い声がもれた。
「気持ち悦かったですか? 陛下」
「……っ、ああ、上手だなあ、オルフェウス」
ばあっと煌めく無邪気な笑顔。
それに当てられ、涙が出そうなほど嬉しい皇帝陛下は、無意識に、わしゃわしゃとオルフェウスの頭を撫でている。
時間があると、アンドリューの膝にもたれにくるオルフェウスは、床に座り込んで彼の膝を枕やクッション代わりにし本を読んだり昼寝したり。ついでに時々悪戯したりと、相変わらずな無邪気っぷり。
そして狼の頃の馴染が抜けなく、少しでもアンドリューが反応を示すと悪戯を始める。
……平常心だ。俺ぇぇ。悪戯する隙を与えちゃならん。
そう念仏のように唱えても、最愛が傍らにおり、しかもぺったりと張り付いて寛いでいる状況で、男は昂らずにおられない。
しかも新婚だ。三十日に亘る禁欲生活の反動は凄まじく、オルフェウスの何気ない微笑み一つで盛れる皇帝陛下。
結果、アンドリューは毎回敗退し、オルフェウスの淫らな舌先に踊らされ、気持ちよく果てている。
……ま、いっか。オルも嬉しそうだし、俺も気持ち悦いし。
半分諦めかかったアンドリューを、正気に戻そうと奮闘する護衛騎士三人衆。
「陛下っ! しっかりしてくださいっ! これで良いわけないでしょうっ?! オルフェウス様をあのようにしたのは陛下なのですからっ! 真っ当な人間に戻して差し上げてくださいませっ!」
……何より我々が堪りませんってっ! 始終、ズボンをぱつんぱつんに膨らませるこちらの身にもなっていただきたいっ!! 中には若い者もいるのですっ! あんな妖艶なオルフェウス様を見せつけて、間違いでも起きたらどうするんですかっ!!
口にしたら、即たたっ斬られそうなことだけ脳内で叫び、真剣な面持ちですがる護衛騎士達。
「まあ、俺だって悩ましいオルを人に見せたくはないよ? でもさあ。……オルが望むなら、何でもしてやりたいし、やらせてやりたいし。……実際、めちゃくちゃ可愛くねぇ? 俺のを咥えてるオルフェウスって」
テレテレと惚気ける皇帝陛下。
それにギリギリ奥歯を噛み締め、護衛騎士のみならず、周囲の人々全てから放たれる殺気。
……んなこたぁ分かってんですよっ!! だからこそ、やめて欲しいって言ってるんですっ!! あの蕩けた眼差しで陛下のモノをしゃぶる姿に、トチ狂う者が出ないとも限らないって言いたくても言えないこっちの身にもなりやがれぇぇーっ!!
脳内お花畑なケダモノに何を言っても無駄である。
こうなれば直談判と、庭の散策に出たオルフェウスに、彼らは切々懇願した。
「……というわけで、陛下には申せませんが、少し控えていただけると。本当に限界な者もけっこうおります」
しかし、無自覚、無頓着、天然全開なオルフェウスは首を傾げるだけ。
「それってどういう? 前も陛下と睦んでいたけど、誰も何も言わなかったよね? 急にどうしたのさ?」
「……それは貴方が狼だったのと、その狼が貴方と知らなかったからですっ! 今とは違いますっ!!」
「ん~? そういうもの?」
「そういうものですっ! 陛下に言おうものなら、首が飛ぶ者が出ますからっ! 比喩でなく物理でっ!!」
「ああ、それは良くないね。分かったよ。何か不味いみたいだね。ごめんね」
……理解しておられないようだが、こちらが困っているのは分かってくださった感じか。危ういけど助かったな。
はにかみながら微笑む麗人。
ほっと胸を撫で下ろした護衛騎士三人衆だが、これでやまないのが皇帝陛下。
翌日からオルフェウスが側に来なくなり、当然、陛下は訝しむ。とんとんと所在なげに頬を指先で叩き、ちらちら扉に視線を振りつつ、嘆息ばかり漏らしていた。
「……オルが足りない。誰か、オルを喚べ」
半日も持たずに最愛を求めるケダモノ様。
……せっかくオルフェウス様が控えてくださっても、これでは台無しだ。
「お仕事に気を利かせてくださったのでしょう。小休止でお呼びしますので」
「……このままでは仕事にも身が入らん。なぜに呼ばぬのだ? ……貴様、まさか」
毎度お馴染みになりつつある皇帝陛下の斜め上思考と壮絶な悋気。
今度は何を想像したのか知らないが、部屋の空気があっという間に急速冷凍されていく。
ざわっと波打つ不穏な雰囲気。静電気が肌を這い回るような不気味な感覚に背筋を凍らせ、護衛騎士が思わず固唾を呑んだ時。
「陛下、やっぱり来てしまいました。寂しくて」
お茶の用意を携えた侍従と共に、オルフェウスが満面の笑みで扉を開けた。
途端に霧散する不穏な空気。それどころが、突然、花びら付きな微風が舞い踊る。出どころは勿論、お花畑な陛下の脳内。
「オルぅ、やっと来たか」
両手を広げて最愛を迎え入れる皇帝陛下。
「ふふ、陛下のお仕事が終わるまで『待て』してますから。早く終わらせて迎えに来てくださいね?」
「ここに居たら良いじゃないか」
「待つのが楽しいのです。陛下が、いつ来られるのかワクワクしながら。……だから、ね?」
つ……っとアンドリューの唇を指先で撫でて、その指を自分の唇に寄せるオルフェウス。暗に色っぽい誘いを香らせる妻の姿は、鼻血が出そうなほど皇帝陛下を興奮させる。
「……すぐ終わらせる。うん、すぐ」
至極真面目な顔で答えるアンドリューが可愛くて、さらに柔らかな笑みがオルフェウスに浮かんだ。
「はい。お待ちしてます」
そう言ってお茶を終え、彼は静かに退室する。思わず惚けたままな護衛騎士に視線を流し、そっと指を唇の前に立てて。
……わざとか。何か起きたらいけないと、様子を見てくださっていたのか。
そして案の定、皇帝陛下の機嫌が悪くなったのを察知し、とりなしにきてくれたのだと察して、護衛騎士らは心からオルフェウスに感謝した。
うおおおぉぉっと、凄い勢いで仕事を片付ける皇帝陛下を、呆れたかのような半目で見守りながら。
淫らな獣を淫獣とかいうが、淫らで知恵ある獣は何と呼ぶべきだろう。
アンドリューの調教で妖艶に花開き、皇帝陛下すら手玉に取るオルフェウス。侯爵令息でもあった彼の采配は実に見事なものである。
そしてふと、護衛騎士は思いついた。
傾国の美女という表現が似合うかもしれないと。国の命運を司るファムファタル。その魅力に抗えず、国を傾けもすれば、男を奮いたたせる運命の女神にもなりえる存在。
……オルフェウス様に、ぴったりだな。
望めるならば、陛下の運命の女神でありますように。
祈るよう空を振り仰ぐ護衛騎士。しばらくして彼の予感は当たった。
国をあげて祝う新年パーティ。そこでオルフェウスは淫らで知恵ある獣の本領を如何なく発揮したのだ。
誰もが固唾を呑んで見守る中、後に伝説となる夜会が始まる。
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