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不完全つがいは「待て」ができない
しおりを挟む「どうして……僕が……っ」
「泣くなよ、透真」
ぽろぽろと涙を流す同級生の男に溜め息を我慢しながら、深刻な響きにならないよう細心の注意を払って、慰めの言葉を吐く。
「フツー、泣くならおれの方だろ」
力ずくでひん剥かれた時にヨレたシャツ。その頼りない生地で隠れるか否かギリギリの首筋に、こいつに噛まれた痕がはっきりとあるのだから。
──ヒート事故当事者のαの方が泣くって……逆じゃね?
とはいえ、泣きたいこいつの気持ちもわからんではない。
こいつは一点の曇りもないエリート街道を進むはずだったαなのだ。成績良し、容姿良し、人当たりも良し。完璧な人生において、男Ωのヒート事故に巻き込まれかけたなんて汚点を残したくなかっただろう。
高校一年生ながら学校一の人気者、近隣の高校でも久慈透真の名前は知れ渡っているほどで。特に目立つことのないおれが、どうしてこいつと友達なのか謎、って顔をされることもしばしばだった。
それでも、不思議と気が合って、透真とおれは友達同士だった。それ以外に、なるはずなかったのに。
「駿……っ、ごめん……!」
切実な謝罪の言葉に、今のおれは返す言葉を持っていない。
──謝られても……いいよって言えないんだよなぁぁ。いや、怒ってるわけじゃなくて、言っていいのかわかんねぇから。
藤ヶ谷駿、高校一年生。βと信じて生きてきた人生が、いきなりΩルートに変更になったことに、さすがに混乱している真っ最中だ。自分の身に起こることとは思ってなかったから、ヒート事故マニュアルの対応例とか全然わからないのも仕方ないと許されたい。
目の前に自分よりも混乱している透真がいるから取り乱していないだけで、おれだって大混乱だ。だってΩの自覚とともに貞操の危機だったんだ、Ω人生の初っ端からハードすぎるだろ!?
──まあ、関わった人間は少ないから、おれが騒ぎ立てなけりゃ何事もなかったようになる、よな?
来るかもわからない発情期に備えて、発情抑制剤を持ち歩いていて本当によかった。自分の身に起こるとは想定してなかったけど。
βの両親から生まれた自分もきっとβだろうと思っていたから、抑制剤は誰かが予期せぬ発情期を迎えた際のフォロー用のお守りでしかなかった。まさかそれが自分の生命線になるなんて、人生何が起こるかわからない。
すぐに抑制剤を飲んだおかげで、首筋こそ噛まれたものの、友人だった男に突っ込まれる事態は避けられた。備えあれば憂いなしとはよく言ったものだと思う。
第一性である男女の他、人類がα、β、Ωの第二性をもっていることが判明して以来かれこれの月日が経つ。
人口の大半を占めるβは第二性として特筆する特徴をもたないが、 人口の一割もいないαとΩには第一性を覆すほど顕著な性質が現れる者が多いとされている。αは他者を率いるカリスマ性や優秀な遺伝子をもち、女性とΩを孕ませることができる。そしてΩはヒートと呼ばれる発情期をもち、男性とαの子を孕むことができる。
αがΩの首筋を噛むことでフェロモン器官に変化があるとかどうとかで、つがいという特別な結びつきの相手になるそうだ。つがいになると、互いのフェロモンにしか反応しなくなるのだとか──なんて、あやふやにしか説明できないが、第二性にまつわる身体の仕組みはまだ解明されていないことが多いので、これは別におれが不勉強だからというわけじゃない。
ともかく、おれも透真も男だけど、第二性がΩとαだったために、不幸にも唐突な発情期の影響を受け──透真はおれの首筋を噛み、つがいになってしまった、らしい。
「ごめん……」
透真はまだぐすぐすと鼻を鳴らしている。
「おう。おれも、暴れてごめんな。痛いだろ?」
必死に抵抗している間に、透真の身体をあちこち殴った記憶がある。緊急事態だったから正当防衛だと思うけど、こんなにしおれてる相手に冷たい顔もできなかった。そもそも、事故の直前まで、互いが一番の友達だと言っても過言じゃなかった相手だ。いきなり冷たくしたり嫌いになったりできるわけない。
「藤ヶ谷くん……その、性交しながら噛まれたわけじゃないから、つがいとしては成立していない可能性があって──」
「それって、どうやったらわかります?」
「バース科で詳しく検査してもらう必要があります。検査のためには事故報告書の提出が必須で……」
「あーー──」
手当てと状況確認をしてくれていた養護教諭からの言葉にすぐに食いついたけど、続けられた言葉に頭を抱えた。
だってさ、事故報告書が必須ってことは、透真の経歴に傷をつけるってことだ。
──一方的に被害者面できないんだよなぁ……。
透真にうなじを噛まれてつがいにされてしまったらしいおれは、今回の被害者だと言える。でも、おれの発情期に巻き込まれた透真もまた、被害者と言えなくもないはずだ。
発情期に入ったΩは、αにラットと呼ばれる発情期を誘発させてしまうのだ。つまり、おれがヒートにならなければ、透真がおれのうなじを噛むことはなかった。たられば話をしたところで過去が変わるわけじゃないけどさ。
第二性は中学二年の頃に受ける診断でだいたい確定される。人によっては第二性の発現が遅い場合や、一度診断された第二性から転化して別の第二性になる場合もあるらしいけれど、おれは「おそらくβだろう」という診断で自分の第二性が確定していると思っていた。
だから、第二性がαで確定済みの透真と二人きりになっても気にしなかった。だって、世の中大半の人間がβ性だ。自分がその「大半」から外れるような珍しいケースだなんて思うわけないじゃんか。
できれば透真のダメージを最小限にしたい、とおれが口を開くより速く、透真が養護教諭へ大きく頭を下げた。
「──っお願いします! 事故報告書、作成してください!」
「おい、透真?!」
おれは騒がないようにするつもりだったのに、当の本人が小さく収めようとする気がないみたいだ。
うなじは噛まれた。でも、突っ込まれるのは回避できているから。あまり大きな話にせずに済ませられる思ったんだけど。
──おれがヒート事故の対応に疎いだけ? これがフツーなのか?
Ω人生初心者、かつ混乱を引きずったままのおれにはわからない。
でも、養護教諭も透真の発言に頷くのを躊躇っている様子なので、たぶん透真の申し出は珍しいんだろう。
「駿の人生に関わることなのに、僕だけ何事もなかったことにはできないので……!」
養護教諭に重ねて頭を下げる姿に、おれは小さく息を呑んだ。
──ああ、もう、こいつは本当に……!
透真はいいやつだ。自分が得するように動くことだってできるのに、おれを犠牲にしようとしない。
自分が自分でなくなるような感覚に呑み込まれそうだった初めてのヒートも、一瞬にして様子を変えた透真のラットも、怖かった。自分たちに何が起こっているのかわからなくて混乱したし、それを小一時間引きずっていた。
──ラットのせいで、透真が知らない男になったみたいで戸惑ったけど……発情してなけりゃ、おれたちはおれたちだよな。
別人になったわけじゃない。当たり前の事実を改めて再認識して、少し気が楽になる。
──怖がらなくていい。だって、透真は優しいから。
ヒートの後、透真にさわることを躊躇っていた腕を思いきって伸ばす。おれと違ってしっかり筋肉のついた背中に手を添えた。
抑制剤が効いている今、さわってもお互いに様子がおかしくなったりすることはない。その「当たり前」を確認してほっとする。
自覚のあるなしにかかわらず周りを威圧するαが多い中、優柔不断とか押しが弱いとか言われたりすることもあったけど──透真は優しすぎるくらい優しいαで、一番仲良くしていたおれには特別優しかったから。巻き込んで申し訳ない気持ちもあるけど、透真の誠実な思いを無下にすることもできなくて、おれは透真の申し出を止められなかった。
***
そうして──連絡を受けて慌てて駆けつけてくれた両親とともに、病院のバース科で検査を受けた。
透真も付き添いたがってたけど、さすがに遠慮してもらった。おれの希望通り、学校ではヒート事故のことを伏せてもらってるはずだけど、何がきっかけで勘づかれるかわからない。一緒にバース科に付き添われたことを目撃されて噂になったりしたら、ヒート事故を連想するやつもいるかもしれないから。
学校を休んでいくつもの検査を終えて、久々の登校日。
「駿!」
数日ぶりに顔を合わせた透真は、なんというか、距離感がバグっていた。顔を合わせるなり、おんぶお化けのようにべったりくっつかれる。
「……なんか、近くないか? この前のことが周りに気づかれないように、極力今まで通り振るまってくれ、って言っただろ?」
離れろ、と強く言うほど嫌なわけじゃないけど、明らかに様子がおかしい。声をひそめてやんわりと透真を叱れば、腹の前に回された腕が渋々と離れていく。
「ごめん。でも、ずっと心配だったから。顔見たら我慢できなくなっちゃって。……会いたかったんだ」
「そ、うか……」
込められているのは友愛なのか、もっと別の何かなのかはわからないけど──切なげな声に、おれはちょっとだけ絆された。我ながらチョロい。
──だけどさ、透真との関係が変わるかも、って多少なりとも怖かったから。
おれを遠ざけようとしない透真に、すごくほっとしたし、嬉しかった。
でも、それを素直に口にするのも、顔に出すのも気恥ずかしくて、透真の視線を避けるように俯いてしまう。
「駿、どうした? 体調よくない? あっ、もしかして寒い? 僕のカーディガン羽織る?」
「ちょ……っ、平気! だから脱がなくていい!」
おれが頷くのを待たずにカーディガンを脱ごうとする透真を慌てて制止する。もともと優しいやつだったけど、甲斐甲斐しさが増した気がするのは、顔を合わせるのが久しぶりだから、ってだけではないだろう。
──やっぱ、この前のこと、気にしてるんだろうな。
気まずくなって疎遠になるよりマシだけど、罪悪感でこいつを縛りたくない、と思った。
「昼休みに、話そうぜ」
それだけ声をかけて、遠巻きに様子を窺っていた他の友達へと顔を向ける。渋々といった気配を感じたけど、透真もひとまず納得したようで、おれから友達のいる方へ身体の向きを変えた。友達相手だってのにSPみたいに張りつかれ方をするとは思わなくて、唖然としたけど。
ひとまず、大きな混乱やショックもなく学校に復帰できてよかったと思う。
***
「検査結果はそんなに悪いもんでもなかったぞ」
深刻そうな顔をしている透真に、まず結論から伝えることにした。
ただでさえ時間の限られた昼休み、周りの気にせず二人で話せるようにと、中庭のベンチまで移動してきたのだ。次の時間の移動時間と、話の合間に飯を食うことを考えれば、話はサクサク進めた方がいい。
「改めて……ごめん、駿の人生を台無しに──」
「謝罪はもう必要ねぇよ。事故だったんだ。な?」
「でも……」
「むしろこっちこそ巻き込んで悪かった」
「駿が謝ることないよ!」
「そりゃこっちのセリフだろ」
「だって……」
肩をすくめて溜め息を吐きながら思う。やっぱりこうなったか、と。
優しすぎるやつだから、「でも」と「だって」を繰り返して、ひたすらに謝ってくるのだ。連絡用アプリでも延々詫びごとが続いたので「検査で忙しいから、会った時にしろ!」と先送りにしてた分を、今浴びてるってワケ。いや、これ話進まねぇな?
「いや、まじで、結果は悪くねぇんだよ。Ωになったけど、ざっくり言うと、ほぼβみたいなもんらしいし」
「え……?」
キリがないので透真の謝罪をぶった切って話すことにした。
おれの「βみたいなもん」という言葉に透真は怪訝な顔をしている。それもそうだろう。他の相手はどうでも、透真だけは、おれをΩと認識できるはずだ。
検査の結果次第ではめちゃめちゃ責任を感じそうな気がしてならなかったので、「透真のエリート街道の邪魔しないように、いい結果であってくれよ!」と祈りまくっていたが、どうやらおれの思いは通じたみたいなのだ。
「なんつったかな……。フェロモン器官はつがいがいるΩたちと同じらしいから、つまりつがいのαにしか反応しないんだってさ。で、発情に関わる機能が不完全の可能性が高いとかなんとか? 経過を診てみないとはっきりしないけど、ヒートがすごく軽そうなんだと」
おれのΩフェロモンは不完全につがっちまった透真にだけ届く、らしい。
でも、Ωとしては未熟というか、身体が出来上がりきってない状態で、挿入もなくうなじだけ噛まれたことで、発情に関わる機能が覚醒しきってない状態ということだった。
だから、今まで通りのβのような生活ができるはずだ、というのがバース科の先生の見立てである。
「でも、今の『いい結果』の状況は、透真の傍にいると維持できないらしくてさ」
「そん、な……」
「透真が悪いってわけじゃなく、身体の仕組みの問題だからな?」
ショックを受けている様子の透真に、一応念押ししておく。
先生の予想では、つがいの傍に居続けるとΩとしての発情機能が覚醒していくだろうとのことだった。
つがいとともにいると、意識的にでも無意識にでも、フェロモンを交わすことになるらしい。Ωになりたてのおれにはピンとこないけど。第二性にまつわる生理現象は不思議が多いので、そんな話もあるのか、って感じだ。
「で、親と話したんだけどさ。転校した方がいいなって話になって」
「駿……」
深刻になりすぎないようにしたおれの明るい声とは対照的に、透真の声は今まで耳にしたことがないくらいしおれていた。
「ごめんな。これが一番丸く収まるからさ」
両親と今後について話し合って、もう決めたんだ、と透真に丁寧に伝えた。
両親は、おれがΩとして生きていきたいならそうしてもいい、と言ってくれたけど──その選択肢を選べなかった。両親もβだし、おれ自身もずっとβとして生きてきたから。Ωとして生きる覚悟なんてあるわけなかった。
ほぼβのようなものなら、βとして生きていきたい。
そのために最適な選択肢が、転校して、透真と距離をとる生き方だった。
──つがいのαを好きで好きで仕方なくてΩになりたかった、とかなら新しい人生を楽しめるのかもしれないけど、そういう気持ちはないしなぁ。
愛とか恋とか、誰かをそういう気持ちで好きになったことがないからわからないけど。少なくとも今のおれにとって、透真は友達で、それ以上の感情はない。
友達なのに、いや、友達だから──ヒートで誘惑したとかラットで襲いかかったとか、そういう気まずさを抱えたままで傍にいたくなかった。
「……駿は、僕のつがいにならないの?」
「事故なんだから、あんなんで一生もんのつがい決めるのおかしいだろ」
そもそもおれはΩとして生きるつもりはない、っていう大前提が透真の中からすっぽ抜けてるみたいだけど──罪悪感で透真を縛りたくなかったから、おれはキッパリと言いきった。ごちゃごちゃ言っても言葉が届かない気がしたから。
──あれで一生決めるなんて、だめだろ。
だって、透真はエリート街道を進んでいくべきαだ。ほぼβみたいなおれが、透真とつがいなんておかしいだろ。
身体を繋げてないおれたちはつがいとしては不完全で、透真側のつがいへの結びつきはほぼないはずだ、とバース科の先生には言われている。だから、透真にはおれとの事故はなかったことにしてもらえればという思いだった。
「でも、僕は──」
責任をとりたい、とか言うのかもしれない。透真はいいやつだから。
──でも、ごめんな。言わせてやれねぇわ。
「罪悪感でおれにこだわるのはやめろよ?」
先回りして続く言葉を封じると、透真が悲しげに眉をひそめた。
透真は周りから望まれる言葉を言うのが得意だ。友達付き合いが長いおれが、一番それを知ってる。だから、周りの期待に応えすぎて、こいつは自分のほしいものや本当にやりたいことに蓋をしがちだってことも、もちろん知ってる。
──αにしては、優しすぎるっつーか、押しが弱いっつーか。そういう透真だから、好きだったんだけど。
友達としてなら、他の誰とも比べられないくらい大事だし、好きなんだよな、ってはっきりわかるのに。自分のせいで苦しそうな顔してるの見たくないって思うのに。
不完全ながらもつがいである相手に、おれはそれ以外の感情を見つけられない。
──好きで好きで仕方ない、って気持ちになれる自信がまったくないから。こんなおれより、透真がしあわせになれる相手がいるだろ。
自分が離れることで、事故の記憶や透真の罪悪感が薄まって、こいつが今より明るい顔できりゃいいな──。そんなことをぼんやり思っていたおれの前で、透真はズゥンと肩を落としている。表情がありえないほど暗い。爽やかの代名詞みたいなこいつが、こんな顔するのはだめだろ、とおれは慌てた。
「駿がいないと、寂しい……」
「べ、別に透真を嫌いになるとか友達止めるとかじゃねぇから。な? 連絡アプリのIDは変えねぇし、縁が切れるわけじゃねぇよ?」
想像していたよりダメージを受けている透真に心が痛んでしまって、おれは「学校変わって、直接会わなくなるだけだ」と慰める羽目になった。えーー、こいつこんなに湿っぽかったっけ? こいつの寂しさを、早く誰か埋めてやってほしい。候補はすぐに思い浮かばないけど。
「……いきなり音信不通にならない?」
「そんな友達甲斐のないこと、しない、ぞ?」
内心ギクッとしたものの、自分もさっき先回りしたからお互い様だな、と呑み込んで頷いた。連絡用アプリを消すのはやめておこう。
「離れても、僕は駿が大事なままだから、忘れないでほしい」
「あー、うん。おれも……たぶん、そう。うん……」
まっすぐな言葉に照れてしまって、ごにょごにょと言葉を濁す。おれは自分も透真もどっちも大事だから、離れた方がいいと思う気持ちと同じくらい、離れたくない。上手く言えないけど、なんとなく伝わっててほしい、と思った。
「困ったことあったら一番に頼って」
「……そんな日が来ればな。頼むわ」
真剣な視線に、ぎこちないながらしっかりと首肯を返した。
*******
──なーんてやり取りが大昔にあったんだけど……これって、まだ有効なやつなのかな。
野次馬に混じって燃え上がる炎を見つめながら、「マジかよ……」と溜め息を吐いた。燃えているのは自分の住んでいるアパートだ。スマホで映像を撮ってるやつは、無関係だからそんなことができるんだよな……なんてまともに働かない頭でぼんやりと考える。
マジかよ、えっ、現実……? 新卒で入社したばかり、家具家電を揃えて引越ししてすぐで金がないんですけど……? 一日働いて、疲れて帰ってきたら、家が燃えてる? 何の冗談?
現実を受け入れられずにしばらく虚無の時間を過ごしたが、自分は五体満足で生きてる以上、人生は続く。フリーズ状態から少しでも早く復活して、手続きやらなんやらこなさなきゃいけない。
「とりあえず当面の寝床……通勤のこと考えたら実家は論外だし、同期はまだそこまでの仲じゃないし、友達も頼れない……」
友達はみんな働き始めてから忙しくしていて、たまに連絡をとっても「新しい環境に馴染むのが大変だ」ってしんどそうな様子のやつばかりだ。
──いや、唯一……家もほどほどの距離で、連絡もまめにとってて、しんどそうな様子を微塵も感じさせないやつはいるけど。
思い浮かんだのは──高校を転校して以来顔を合わせていないけど、いまだに連絡を取り合っている透真の姿だった。
写真を送り合う習慣がないから、高校の時の姿でしかイメージできないけど。
直接会わない分、互いに近況を報告し合うことが多いせいか、顔を合わせて交流する友達より相手の事情に詳しかったりすることもあるぐらいだ。就活やその他もろもろでしんどい時、透真とのやり取りで元気をもらったり支えられたりしたことは数知れない。
顔を合わせなくても、透真はおれの中ですごく大きな存在になっていた。──だけど、それはおれが勝手に思ってるだけで、透真の方にはおれより大事な存在ができてたりするかもしれない。
──大昔に、「一番に頼って」って言われたけど……どうする?
透真を頼るのが一番現実的だけど、甘えていいのかわからず途方に暮れていると、携帯がメッセージを受信して震えた。
『駿の家のあたりが燃えてるって速報見たんだけど、大丈夫?』
心配してくれるメッセージに、おれは泣きそうな心地で『大丈夫じゃない……』と返事をして、とつとつと事情を伝え──『行くとこないなら、今すぐうちにおいで』と招かれたのだった。
***
「駿!」
数年ぶりだけど、透真の声だとすぐにわかった。携帯画面に表示していた地図アプリから、声の主へと視線を向ける。マンションの玄関まで迎えに出てくれたらしい透真は、当然だけど記憶の中の姿より大人になっていた。
「透真……?」
高校時代の面影があることはわかるのに、戸惑うような声を上げてしまったのは──駆け寄ってくる人物がすごく格好よかったからだ。
高校時代も整っていた顔立ちはより精悍なものになっていて、でも色素の薄い髪と眼がやわらかい印象も醸し出しているから近寄りがたさはない。何よりおれを安心させるために浮かべているであろう微笑みが優しくて、透真だなと実感できて、ほっとした。
「うん。久しぶり。会えて嬉しい」
明るい声に、胸がぐっと詰まる。
おれもだ。透真に会えて、嬉しかった。
じわり、と身体の芯が潤うような、足りなかったものが満たされて溢れ出すような感覚がある。混乱と緊張でいっぱいだった心が緩んだんだろうか。
「大変だったね」
「……ごめんな、急に」
連絡用アプリで途切れず言葉を交わしていたのに、直接会うのが久しぶりすぎて距離感がわからない。正面から透真の顔を見れなくて、おれは視線を彷徨わせる。
──何でこんなに落ち着かないんだろう。
火事に見舞われて気が立ってるからか。それにしたって、こんな風にどきどきしてるのおかしくないか? さっきまでは「これからどうしよう」って不安でいっぱいだったのに、透真に会えてほっとして……ほっとしたはずなのに、足元がおぼつかない。
「うちにおいでって言ったのは僕の方だよ? 気にしないで。駿に頼ってもらえて嬉しい」
透真の優しく響く声が一瞬遠のいて聞こえた。
──なんか、身体、変かも……?
フェロモンも薄いし発情期もほぼないから、βみたいなもんだとして生きてきた。身体の変化がないかバース科で定期的に診察を受けることはあっても、透真と離れてからの生活の中で、自分の第二性を意識することは少なかったのに。
『発情期は身体が火照って、つがいと繋がりたくて切なく疼くからね』
バース科の先生から聞いたことのある説明が頭の中をぐるりと回る。
今の自分の状態が、その入り口に当てはまるんじゃないかと戸惑った。今まで、透真と離れてる間はこんな状態になったことはないから断定はできないけど。
──やっぱり、会うのはまずかったかも──。
会えて嬉しいけど、ずっと会いたかったけど──自分が自分でなくなるような感覚に呑み込まれていきそうで怖くて、おれは透真から離れようと一歩下がる。行き先なんて他に思い浮かばないのに。
その動きをよろめいたと判断したのか、透真はおれの身体にしっかりと腕を回した。
「あ……」
「気づくのが遅れてごめん。疲れてるよね? 家に入ろう?」
肩を抱かれてマンションの部屋へ促される。拒む隙も逃げる余地もないスマートさだった。
──っていうか、肩抱かれてるし、近ぇし……っ。
他の友達相手なら特に気にすることもないのに、透真が相手だってだけで、どうしようもなく意識してしまう。
手が大きい。腕が力強い。支えようとしてくれる優しさが嬉しい。昔は気づかなかったけど、透真はすごくいい匂いがする──。
エレベーターに揺られ、部屋までの廊下を歩きながら、おれの頭の中は透真のことでいっぱいだった。地に足がついてるのが不思議なくらい、久々に会えた透真に、向けられる優しさにおれは浮かれた。
──でも、この優しさをおれが受け取っていいのか?
玄関のドアをくぐったところで、ふと、冷水を浴びせられたような自問が湧く。
だって透真はエリート街道を進んでいくべきαだ。ほぼβみたいなおれが、透真とつがいなんておかしいだろ。
昔から、その思いは変わらない。透真にはもっと相応しい相手がいるはずだ。だから──離れたくない、けど、離れた方がいい。透真を自分の事情に巻き込んでこれ以上迷惑をかけたくないから。
透真に特別な相手がいるかも、と想像するとどうしてか胸が重くなるけど。
靴を脱ぐのにもたつくおれをじっと待ってくれている透真に、もう一度「ごめんな」と謝る。
「住むとこ見つけてすぐ出てくからさ」
「ずっといてくれていいよ。むしろいてほしい」
せめて一晩だけ、非常事態だから許してほしい。そんな思いで振り絞った言葉は、あっさりとやわらかく受け止められ、甘やかな言葉で包まれる。そのまま甘えてしまいたい気持ちをこらえて、おれは苦く笑った。
「でも、ほら、悪いだろ。お前の恋人とかつがいとか──」
「いないよ」
返事に少しだけ怯えながら紡いだ言葉は、きっぱりとした声に否定される。
「え? 透真ぐらい格好よかったらいないわけ──」
「僕のつがいは、駿しかいないよ」
何を言われたのか、一瞬よくわからなかった。じわじわと言葉の意味を理解するとともに、心臓が騒ぎ出す。
「おれは、透真のつがいじゃ、ねぇだろ……」
反射で反論したけど、勢いもなく弱々しい声になってしまった。
──だって、嬉しい、って思ったから。
透真につがいだと思われていることを、喜んでしまった自分に気づいた。
「駿のフェロモンがわかるのは僕だけなのに?」
続けられた言葉にギクリとする。不完全つがいについて詳しく話してなかったはずなのに。「ほぼβみたいなもん」って雑な説明で納得したんじゃなかったのか。
動揺が顔に出たらしいおれに透真が苦笑している。
「こぼれ聞いた情報をヒントに自分で調べたんだ。離れてる間、駿が一人でしんどい思いしてたら嫌だったし……僕以外の誰かが駿のフェロモンを堪能してたらって想像すると気が気じゃなかったから」
Ωとして身体が覚醒しきってないおれのフェロモンなんて誰もわかるわけないのに、と思ったおれの考えを見透かしたみたいに「抑制剤を飲んでてもわかるよ」と透真の声が降ってきた。
「抑制剤って、何で……」
「だって、会いたくて会いたくて仕方なかった大事なつがいにやっと会えるんだよ? いきなり理性を飛ばさないように、抑制剤は必要でしょ」
透真が言葉を重ねれば重ねるほど、こいつにとってのおれはつがいのΩだと認識されているのが伝わってきて混乱する。
腕を引かれる。つんのめりながらも靴は脱げて、透真の胸の中に飛び込んだようなかたちになった。まるで離したくないと言うかのように、逞しい腕にしっかりと抱き込まれている。
何で?と、頭の中は疑問符でいっぱいなのに、心臓が痛いくらいに脈打って歓喜を訴えてくる。
「ずっと……どうして駿のヒートだけ我慢できなかったんだろう、って考えてたんだ。他のΩの子のヒートフェロモンを浴びたことも何度もあるのに。あの時──衝動的に駿のうなじを噛んだ時のこと、後悔しない日はなかった。最後までモノにしてれば、もっとちゃんとつがいになって、駿とずっと一緒にいられたのに、って自分勝手なことばっかり考えてたよ」
「は……?」
透真の語る言葉がすんなりと理解できなくて、おれはポカンと口を開けた。
──なんか、事故そのものをなかったことにしたいっていうより、中途半端に終わったのが気に食わない、みたいなこと言ってないか? 優しすぎて周りの声を優先させがちな透真が? おれにだけ?
「駿が好きだったから、駿のフェロモンにだけ反応したし、我慢できなかったんだって気づいた」
熱のこもった言葉に、強くなった腕に、壊れそうな勢いで心臓が跳ねる。驚いて、でもそれを上回る嬉しさで胸がいっぱいだった。自分の感情なのに、どうしてそんな反応をするのかわからなくて混乱する。
「お、おれの第二性がわかったの、ヒート事故を起こしたあの時なのに……っ?」
それまでは友人の男同士でしかなかったはずだ、と呆然と呟けば、「そうだね」とおれの言葉を受け止めてから「でも」と透真は言葉を続ける。
「でも、好きだったんだ。優柔不断な僕を叱りつけてくれたり、自信持てって励ましてくれたり、優しいところが」
そんなことを言ったかあまり覚えていない。怪訝な顔で記憶を辿るおれに、「駿にとっては特別じゃないことでも、ぼくには響いたんだよ」と透真が笑った気配がする。
「昔から、僕を都合よく利用しようとするやつが多くて……でも駿だけは僕が損をしないように、嫌な気持ちにならないように、っていつも気にかけてくれてて。駿がいたから、駿の優しさを見習おうって思えた。駿が僕の道しるべなんだよ。だから、駿がずっと特別で、大事。今も、昔も、駿だけ」
まるで宝物を語るみたいに、透真が大事に言葉を紡いでいるのがわかって、胸がきゅうきゅうと痛む。苦しいのに、その痛みはとびきり甘い。
「離れてからずっと、会いたくて会いたくて仕方なかった。駿から会いにきてくれて、今日どれだけ嬉しかったかわかる? 駿にとっては大変な状況だから喜ぶのは不謹慎だけど……僕はずっと、こんな日がくるのを待ってたんだ」
「透真……」
ぶつけられる思いの丈に果てがない。透真の口からは次から次へと言葉が溢れてきて、受け止めるだけで精一杯のおれはまともに言葉を返せなかった。
「駿はあの時のことを事故って言うけど、一生もののつがいを、僕は無意識に選んでたよ。駿と僕にあんなことが起こったのは、身体が心に反応したんだと思うから」
『事故なんだから、あんなんで一生もんのつがい決めるのおかしいだろ』
罪悪感で自分に縛りつけたくなくて突き放した時の言葉を思い出す。よかれと思っての言動だったけど、あの時もう少し話し合うべきだったのかもしれない、と過去の行動を反省した。
「βとして生きていきたいっていう駿の気持ちを尊重したかったから、転校して会わなくなってっていうのを我慢してたけど……ずっと寂しかったよ。ずっと、会いたかった」
「……おれだって、寂しくないわけじゃなかった」
あまりにもまっすぐな言葉を向けられすぎて、おれもつられて本音をこぼす。「駿……!」と感激したようにおれの名前を呟く透真の声がとてつもなく甘い。
「でも、Ωとして生きる覚悟は……あの時のおれにはどうしてもできなかった……」
「わかってるよ。ヒート事故の噂が立ったりして駿が苦しむことになるのは僕も嫌だったから」
透真が心配した通り、ヒート事故を起こしたΩに向けられる世間の目は冷たい。
可哀想なΩ。発情期を制御できない、だらしないΩ。最悪なのは、ヒート事故を狙って起こした、玉の輿目当ての恥知らず──αには資産家が多いから、実際の相手のαの経済状況がどうであろうと、そんな噂がつきまとう。
「……周りに冷たい目を向けられるのも嫌だったけど……透真に、噂を信じられたら嫌だって思った」
身体が未成熟な時分はヒートの周期が安定しない。初めての発情ならなおさら予測不能で、狙って起こせるものじゃない。それを、信じてほしかったけど──信じてもらえるかわからなかったから、最初から期待することを諦めた。
「それに、透真をおれの事情に巻き込みたくなかった。罪悪感で縛りつけたくなかった。他の誰とも比べられないくらい、透真が大事だったから」
「……巻き込まれたかったよ、僕は。駿になら、何されたっていいんだ。駿が傍にいないことに比べたら、何も怖くない」
穏やかな響きなのに、その声には生半可じゃない覚悟が滲んでいる。
──自惚れだったら恥ずいけど……透真って、もしかして、おれが想像してるよりおれのこと好き……? みたいな?
この短時間で向けられた数々の言葉から察すると、そんな風に思えてくる。それを肯定するかのように、おれを抱きしめている透真の腕の力が強くなる。
「好き。好きだよ、駿」
「おれは──」
熱を感じる声に、同じ言葉を返したかった。でも、透真のまっすぐな想いに、言葉だけ真似をするなんてしちゃいけないと思ったから──。
「……おれは、好きとか、恋とか、わからない」
申し訳なさで苦しくなりながら、おれは素直な気持ちを語る。
「でも、透真に特別な相手がいるかもって想像したらなんか重たい気持ちになったし、透真につがいだって思われてたのは嬉しかったし、好きって言われるのも……嬉しい」
透真の背中にそろそろと腕を回して抱きしめ返す。今のおれにできる精一杯と、率直な気持ちだった。
ふふっと上機嫌に透真が笑みをこぼす。
「駿、それ、僕のこと好きって言ってるみたい」
しあわせそうな声で指摘されて──それはストンと腑に落ちた。
「そうか……、おれ、透真のこと好きだったのか……」
「駿……っ!」
正体不明の感情に名前がついて、おれは嬉しくなる。
安心するのに落ち着かないとか、胸が痛くて苦しいのに甘いとか、それらが全部恋だったとすれば納得できる。できる、けど──。
「自覚したら、ドキドキが強くなって苦しい……」
赤くなってそうな顔を見られたくなくて、透真の胸に額を押し当てた。「え、かわいー……。駿、そんなこと言うんだ?」と透真は嬉しそうな声を降らせてくる。
「βでもΩでも、駿が駿ならそれでいいんだ。でも、僕のΩになってくれたらすごく嬉しいなぁ」
少しだけ甘えるような響きが滲む声に、ぐらりとよろめきそうになる。おれの気持ちを優先させようとしてくれることも、その上で自分の望みを伝えてくれることも。
──自分がどうしたいか、言えるようになったんだな。
優しすぎて、自分の望みを呑み込んでばかりだった透真が──大人になったらからなのか、おれに関わることだからなのかはわからないけど──強い意思を見せてくれている。おれへの気持ちがそれだけ大きいみたいに思えて、ちょっと照れる。けど、めちゃめちゃ浮かれてしまう。
──おれだって、そうなれたら嬉しい。
事故のすぐ後は、透真を巻き込みたくなかったから、Ωとして生きることを考えられなかったけど──今なら、透真は巻き込まれたがってるし、αとΩのつがいとして生きていく道もあるのかも、と思えた。自分たちの関係に前向きになれる気がする。
「おれは──、……?!」
昔は話し合えなかった分、これからはなるべく言葉を惜しまないようにしよう、と思った矢先、身体の芯が熱を上げた気がした。どろりと後孔が潤む感覚におれは静かに混乱する。ずっと、ほぼβみたいなものとして生きてきたおれは、そこが濡れるようなヒートを体験したことがなかったから。
「駿?」
透真の心配そうな声すら、理性が溶けていくのを加速させる。耳元で聞こえるつがいの声はなんて甘いんだろう、と脳が少しずつ痺れていく。
『発情期は身体が火照って、つがいと繋がりたくて切なく疼くからね』
バース科の先生から聞いたことのある説明を、初めて実感を伴って理解できた。
全身が熱くなっていて、息が上がる。頭がどんどんぼんやりしてくる。自分の意思に関係なくぬかるむ後孔に、透真がほしくてたまらなくなってきた。
「透、真……っ」
「駿、ヒートがきてる?」
小さく喉を鳴らしながら、透真が確認の声を上げる。抑制剤を飲んでいてもつがいのフェロモンはわかるんだったっけと、ぼんやりした頭で考えた。
──そうだ、よくせいざい……っ。
今の状況を脱する手段を思い立つけれど、本能が「それじゃ嫌だ」と訴えてくる。透真の家に持ち込んだわずかな荷物の中に、抑制剤ももちろん用意してあるのに、透真の腕を払いのけて抑制剤へ手を伸ばすことがどうしてもできない。
「透真ぁ……っ」
苦しい。恋しい。抱きしめられてるだけでもしあわせなはずなのに、足りない。もっと欲しい──そんな思いでいっぱいで、おれは情けなくも透真に助けを求めた。透真を抱きしめる腕に縋るように力を込める。
「駿。ねえ、大事に抱くから、抱かせてほしい」
ヒートにあてられて理性をなくしてるわけじゃない、抑制剤でまともなはずの透真が、おれに乞うた。
おれが苦しんでるから助けてやるんだ、なんて上から目線ではなくて。あくまで決定権をおれに委ねてくれるのは、おれの意思を無視しないようにしてくれているんだろう。おれを大事に想ってるから、そうしてくれてるんだ。
──そんな透真だから、好きになった。そんな透真だから……こいつのΩになりたいって、心が叫んでる。
「……抱いてほしい。ヒートで苦しいからだけじゃなくて、おれは透真とちゃんとつがいになりたい。不完全なつがいじゃいやだ」
つがいの成立には発情期が大きく関係するらしい。一方が発情期に入っていても、もう一方が抑制剤を飲んでいたら、挿入時にうなじを噛まれてもつがいになる可能性は低いんだとか聞いたことがある。
だから今回、抑制剤を服薬済みの透真に抱かれてうなじを噛まれても、つがいが成立する可能性は皆無に近い。それでも──今後その関係を望んでいるのだと、今好きなαに抱かれたいのだと、伝えたかった。
きっと伝わったのだと思う。おれを抱きしめていた透真の腕がほどけたと同時、抱きかかえるためのそれへと変わった。
Ωとはいえおれはれっきとした男だし華奢でもない。なのに、透真は成人男性一人を軽々抱え上げて、迷いない足取りで闊歩する。
行き先は、うっすら察していたけど寝室で。ベッドに下ろされたおれは、恋しい男の手によって衣服を次々に剥ぎ取られていく。
恥ずかしさよりも繋がりたい気持ちの方がずっとずっと強くて、脱がしてくる透真に積極的に協力したし、逆に透真の服を脱がすためにボタンを外したり引っ張ったりもした。おれの服はそこそこ丁寧に脱がせていくくせに、透真は自分の服を脱ぎ捨てるような勢いで床に投げていく。
真っ裸でも格好いいってすげぇな、こいつ、と透真の肉体美にちょっと、いや、だいぶ見惚れたのは秘密だ。
「駿、すごくいい匂いがする」
剥き出しになった肌のあちこちにキスを落としながら、透真がおれのフェロモンを堪能するように深く息を吸い込む。自分のフェロモンのにおいは自分でわからないけど、おれも鼻をひくつかせた。
「透真も……フェロモン? もっと欲しい……」
フェロモンと思わしきいい匂いが透真から香ってくるけど、抑制剤の効果で薄まっている。それが不満で、おれは抗議するように透真の首筋に噛みついた。
「ふふ。駿が噛んじゃうんだ? 求められてるみたいで嬉しいな」
ヒートで切羽詰まってるおれとは対照的に、ほのぼのとした様子で透真が笑う。随分余裕じゃねぇか、と悔しくなって、何度も何度も噛んでやった。
「……『みたい』じゃなくて、事実そうだよ」
「っ! っ抑制剤飲んでてよかった……!! ラット入ってたらむちゃくちゃに突っ込んでたかも……! 大事に抱きたいって言ったじゃん、煽んないでほんと……!!」
「お前がおれを大事にしようとしてくれてんのはもうわかってる、から……おれが欲しがってるって、お前もちゃんとわかれ……っ」
「っ、もう、駿ってほんと……あーーーー、好き、かわいい、好き……!!」
不貞腐れた声で文句を言ってたら、透真の発する匂いが増した。興奮が強くなったのかもしれない。さすがに気恥ずかしくてまじまじと目を向けないようにしてるけど、透真の分身がさっきチラ見した時より大きくなった気がするし。
つかαのアレってやっぱデケェんだな。ヒートでだいぶ理性が溶けてたけど、凶悪的なサイズ感を前に、ちょっとだけ冷静さが戻ってきて未知の体験への恐怖心が湧いてくる。
今さら逃げる気はないけど、ゆっくりと押し倒されて背中からベッドに沈む。覆い被さられて、透真を見上げることになった。「抱かれる」感が強まってきたことに、なんだかじわじわ恥ずかしくなってくる。
いや、望んでたし嬉しさもあるんだけどさ、恥ずかしいのはどうにもできないっつーか。だってずっとβとして生きてきたから、いまさらΩって、柄じゃないんだよ。
「……透真じゃなかったら、Ωになってもいいって、絶対考えられなかったよな」
頭の中で呟くだけだった思いが、うっかり口からこぼれていた。「え、あれ?」と発言した本人たるおれが慌てていると、透真の薄茶色の眼がギラギラと光る。
「僕も駿しか考えられないよ」
甘い響きを紡いだ唇が落ちてきた。唇を吸われ、薄く開いた口の中に、熱い舌が入ってくる。溺れそうなくらい甘いキスにくらくらする。
──おれ、人生で初キスなんだけど、透真はなんか慣れてないか?
おれと離れてる間にどういう経験をしてようと透真の自由なんだけど、なんか腹が立った。──いや、違うな、透真の過去の相手たちに嫉妬した。
ほぼβみたいなもんっていっても、おれは第二性がΩだったから。転校先の高校でも、大学でも、職場でも、それを打ち明けてもいいと思えるほどの誰かに出会わなかったし、自分の身体がどうなるか不安もあって、恋愛方面にはずっと腰が引けてた。だから、ぜんぶ透真が初めてだ。
経験がないから、ちゃんとできてるのかわからない。とにかく必死で、透真のキスに応える。
「念のため、ほぐすね」
「あ……っ」
透真の宣言に、ビビる気持ちと期待が半々でぶつかって声が出た。だって仕方ねぇじゃん、初めてなんだし!
ヒートが軽かったおれは、自慰と言えば前を扱くだけだった。男ΩがΩとして性行為に及ぶ時に後孔を使うのは知っていたけど、正真正銘指も入れたことがない。だって怖いじゃん。必要に駆られなけりゃ、そこは本来出口でしかない場所なわけだし。
「ひっ、ぅ……っ」
ぬぷ、と指が差し込まれて、身体が小さく跳ねる。けど、思っていたより痛くない。どころか、それじゃ足りなくて、もっと欲しくなってしまった。
「しっかり濡れてる……大丈夫そうでよかった。駿の中、熱くて気持ちよさそう……一生懸命うねって、指をぎゅうぎゅうしてくるの、かわいー……」
透真がうっとりした声を上げて、慎重な動きで指を増やしてきた。質量を増した異物感が気になったのは一瞬のことで、気を逸らすために落とされるキスに夢中になっているうちに、おれの後孔は透真の指に慣れたらしかった。
さらに指が増やされたことにも気づかなかったのは透真のキスが上手いからなのか、おれが気持ちよさにぼんやりしすぎていたのか、それともΩとしての本能が身体に影響したのか。何にせよ、おれの後孔は、いつの間にか透真の指を三本呑み込むほどになっていた。
「透、真ぁ……っ」
キスの息継ぎの合間におれのαに呼びかける。空腹の時にちょっとしたものをつまみ食いして、より飢えを自覚するように──指を咥えることを知った身体は、身体の奥の切ない疼きを強烈に意識させられている。
「ん、もう、僕もいっぱいいっぱいだから。挿れるね」
額になだめるようなキスを落とした透真が、指を引き抜き、おれの膝を折り曲げた。熱く猛った切先を突きつける。しっかり熟れたおれのΩの部分は、待ちわびていたαの情熱を悦んで呑み込んでいく。
「あ……っ、あ、あ、あ、あああ……ッ! い、っい……! きもちぃ……っ!」
「ん、……っふ、駿の中、すご……」
肉壁を擦り上げながら透真の分身が奥へ奥へと入ってくる。そのたびにおれの喉からは甘い声が漏れた。自分のそんな声を耳にするのは恥ずかしいからできれば出したくないんだけど、押し出されるようにこぼれてしまう。なにこれ、ずっと気持ちいいし、ずっと足りなかったものが埋めてもらえたみたいに、満足感がすごい。ずっとすごい。
おれの負担を軽減しようとゆっくり腰を進めてくれていた透真が、やがて動きを止めた。
「はーーー……、全部、入ったよ」
気持ちよさに夢中になってる間に、おれの身体は透真の分身を一番奥まで呑み込めたらしい。
こんなん入らねぇだろと思うぐらいデカい透真のアレを呑み込んでるだけあって、内臓が押し上げられてるんだろうか。腹いっぱいって感じがする。腹が苦しい時にそうするように、おれは無意識に自分の腹をそろそろと撫でた。すると、呑み込んでる透真の分身の圧迫感が強くなる。何で。
「ごめん。駿がかわいくて……っ」
ジトっと見上げると透真が苦しげに顔をしかめた。
「謝んなくて、いいけど……ちょっとだけ、まって……」
「動き、たい……っ」
「待てって……、じんわり、きもちぃけど、まだ──」
埋められて、満たされて──だから、しあわせな心地とじんわりとした気持ちよさはあるけど、圧迫感にはまだちょっと慣れない。馴染むまで待っとけ、と荒い吐息とともにこぼせば、透真がおれ以上に荒々しい呼吸をしながら唸る。
「駿の中、とろとろで……っ、むり、気持ちいい、すぐ出そ……っ」
「ちょ、ま……ッ! ん、あっ、あっあっ、腰振ん、なぁっ! ひあッ、うっ、あッ、ああっ!」
おれの腰を掴んで透真が腰を揺らし始めた。とちゅとちゅと遠慮がちに振り始めたと思ったら、おれの奥を穿つように勢いがつき始め、やがてストロークが大きく激しい律動へと変わる。
「駿っ! 駿っ! はぁ……っ! かわい……! 僕の、駿……っ!」
「落ち着けっ、てぇっ……! 透真っ!」
「むり、気持ちぃ……! 駿っ、はぁ……っ、駿! 駿!!」
「ばっ、か……っ! あっ、まっ、身体へん! イッ、い、い、あッ、イッてる、イッたから、まッ……あああッ!!」
「あーーー……っ、締まる、駿、すごい、えっち……っ、かわいくて、気持ちよくて、最高……っ」
貪られるようない勢いで揺さぶられ、いっそ苦しいぐらいの快感で全身が痺れていった。頭の中が白く明滅するような強烈な気持ちよさが波のようにおれの理性を浚っていく。一際大きな波に浚われて、大きく身体を震わせて絶頂したはず、なんだが──おれの後孔が強く締まっても、勢いが少し衰えこそしたものの透真の律動は止まらなかった。
「駿っ、駿っ、かわいい……っ、僕の、駿っ!」
「透真っ、待て、って、言っ……ああッ!」
自分のチンコから射精したのかしてないのかすらわからないくらいぐちゃぐちゃに揺さぶられ続けて、快感に身体が溶ける。透真が止まらないから休ませてもらえない。気持ちいいところからずっと降りられない。おれは悲鳴のような甘い声をこぼし続け、長年おれへの想いを拗らせ続けていたつがいαの情欲を受け止め続けたのだった。
***
「抑制剤飲んでてアレなのか? 今までもそうだったのか?」
どうやら気を失っていたらしいおれが意識を取り戻してまず最初にしたことは、透真への説教だった。
「何度も待てって言ったよな?」
ヒートによって普段と違う状態の自分じゃなくて、何で抑制剤を飲んでいたはずの透真が暴走するんだ、と顔をしかめれば、透真がベッドの上で土下座した。
「童貞が暴走してすみませんでした……」
「ど……? え、は?」
耳を疑った。え? 童貞? 格好よく成長したエリート街道まっしぐらのαが? キスも慣れた風だったのに? 過去の相手たちがいるはずだと勝手に思い込んで嫉妬してたけど、そんな相手はいなかった? マジかよ?
「初めてだったし、ずっと好きだった駿をやっと抱けるって思ったら、イメージトレーニングに妄想してた駿より現実の駿の方が何十倍も何百倍のかわいくて、興奮して止まれなくなっちゃって……ごめんなさい」
呆然とするおれに、透真は哀れっぽい声で謝ってくる。
もし透真が抑制剤を飲んでなかったら──ただでさえ「待て」ができなかった初体験に、αの発情期の効果も加わってたらどうなったんだろう、とゾッとした。
でも、あんなに暴走するくらいおれのこと好きなのかこいつ、と思えば、ちょっとかわいく思えてしまうし、許したくなるあたり、おれはチョロい。でも、しかめっ面を簡単に解くのもよくないな、と意識的に顔を保つ。おれの顔色を窺いながらそろそろと頭を上げた透真はしおれた表情だ。
「……火事の対応とか、いろいろやらなきゃいけないことあるんだけど」
「代わりに手続きできることは僕がするし、最大限手伝うよ!」
急なヒートと、自分も抱かれたいと望んだ事実がある以上、多少は仕方がないとはいえ、透真の暴走っぷりは予想外すぎたのだ。
抱き潰されてる場合じゃないんだけど、という恨みを込めた言葉には、張り切った声が返ってきた。おれの体力や気力を奪ってしまった分以上に働いてくれそうだ。それなら、まあ、いいか。
おれの中では釣り合いがとれたので、しかめっ面を引っ込めれば、透真の顔が希望を得たように輝いた。
「火事関係以外のことも、手続きするし……っ!」
「そっちは、まあ……うん」
前のめり気味の透真から目を逸らしながらおれは曖昧に頷く。
透真が言いたいのは、つがい関係の手続きだろう。結婚とかそういうこと。透真だけに手続きさせるわけにもいかないし、勢いで済ますのもなんかなぁとか、縁が遠いと思ってたことがいきなり目の前に迫ってきたんだから一息入れる時間ぐらいいるだろ、とか思うんだけどな?
「つがいになりたいって駿も言ってくれたよね? なるよね?」
「あーあーあー、言ったよ、なるよ。なかったことにしねぇっつの」
ヒシっと手を握って縋りつかれなくても、前言撤回しねぇわ。
「そんな覚悟で、抑制剤よりヒート解消えっちを選ばねぇわ。ばか」
「……っ駿!」
「うわ待ておい盛るな! ヤリ過ぎを反省したんじゃなかったのか!」
「はぁっ、だって、駿が、覚悟決めるくらい僕のこと好きって……!」
──言ってない、が、間違ってはいない。
なんだかんだ、おれだって透真と想い合えている現状に浮かれてるのだ。覆いかぶさってくるつがいを蹴り飛ばすこともできず、でも大人しくされるがままになるのは悔しくて透真の首筋を噛めば、「かわいいっ!」とさらに燃え上がられた。何でだ。
──とりあえず、自覚できたのが社会人になってからでよかった。
透真から身体中のあちこちにキスを落とされながら、おれはぼんやり考える。
親の庇護下だった高校生の時に恋心を自覚してたら、いろんなものを放り出してつがいに溺れていた可能性がある。今ですらまともに自制が利かない。
──でも、今なら、自分で決めていいから。
大人になったから、どうなりたいかを自分で選べる。
今選ぶのは、もう少しだけ透真とイチャイチャする、って選択肢な。だって、こいつ「待て」できねぇみたいだし。
「駿……、駿……っ、僕のつがい、かわいい、大好きだよ」
「ん……っ、あ、おれも……」
唇も、触れてくる手も、降ってくる声も何もかもが甘い。幸福感とともにそれを受け止めて、おれからも透真にキスを捧げて、あちこち触れる。しあわせそうに笑うなぁ、こいつ。その顔見てるだけで嬉しくなる。
お互いに、童貞喪失(おれの場合は処女喪失か?)したばかりの覚えたてだからか、ただただお互いへの気持ちが溢れすぎてるのか、それとも──つがいになる条件を満たさずに不完全なつがいのままだから所有欲が満たされずに燃え上がってるのか。
可能性挙げてみたけど、全部なきにしもあらずだな。特に最後のやつは可能性濃厚な気がする。第二性の本能は、いつもおれたちの理性を吹っ飛ばしまくりだからさ。
──ほんと面倒な体質で……でも、そのおかげで気づけた しあわせもあるし……愛しいな。
完全につがいになったら所有欲が満たされて落ち着くんだろうか。それとも独占欲が増してひどくなるんだろうか。わからないことだらけだけど──。
「大好き、駿。ずっと一緒にいようね」
第二性に振り回されても、「待て」ができてもできなくても、今の自分たちは同じ気持ちで二人で生きていくことを選べるから。遠回りしたけど、これからはきっと大丈夫だろう。透真への想いを信じながらおれは大きく頷いて、大事なつがいにキス贈った。
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