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『 朧 』
『 朧 』
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「絵描きさんの絵、見たい!見たい! ねぇ、私の似顔絵はまだ描けないの?」
描けないよ。
下手したら一生。
だって、全て壊した俺が、綺麗な君を描けるはずないんだ。
描く資格なんて……ない。
「じゃあ、師匠さんと夫人を描いた絵はどこにあるの?」
可愛いらしく首をかしげる少女。
楽しいんだね。
岬から見える船を見て、心が踊って、とても嬉しいんだね。
全身から伝わるよ。君の純粋さが伝わってくる。
「とある戦争で、全部全~部消えちゃった」
音を立てて、幸せを壊して、師匠の時をぐちゃぐちゃにして、何もかも奪っちゃった。
全て、俺があの時、あの場所で、師匠達と共に笑いあってた事が、嘘のようで、笑えないんだ。
起きたら全て夢だった、ならどれだけ救われるかな……。
「戦争……」
楽しそうに笑っていた少女が悲しげに瞳を揺らした。
でもまた、俺の顔を真っ直ぐ見つめた。
「大丈夫だよ! 絵描きさん! 戦争は終わったんだよ! だって船が帰ってきたもん! もう全部消える事はないよ」
ね、と笑ってくれた。
でも、また風が吹いて、俺から彼女の笑顔を奪ってしまう。
もう空は薄暗く、月が顔をだす「時間」。
よりによって、今日は満月かぁ……。
闇に紛れても、満月ならば俺を、少女は見つけてしまうかもしれないね。
「絵描きさん。風、強いね……。船も港に止まってるみたいなのに動かないし……」
だから、まだ沢山物語聞かせて?
と、少女はねだる。
物語はもう聞かせてあげられないけれど、終末ならば、俺の正体ならば……。
どうか、正体を知っても君は傷つかないでね?
描けないよ。
下手したら一生。
だって、全て壊した俺が、綺麗な君を描けるはずないんだ。
描く資格なんて……ない。
「じゃあ、師匠さんと夫人を描いた絵はどこにあるの?」
可愛いらしく首をかしげる少女。
楽しいんだね。
岬から見える船を見て、心が踊って、とても嬉しいんだね。
全身から伝わるよ。君の純粋さが伝わってくる。
「とある戦争で、全部全~部消えちゃった」
音を立てて、幸せを壊して、師匠の時をぐちゃぐちゃにして、何もかも奪っちゃった。
全て、俺があの時、あの場所で、師匠達と共に笑いあってた事が、嘘のようで、笑えないんだ。
起きたら全て夢だった、ならどれだけ救われるかな……。
「戦争……」
楽しそうに笑っていた少女が悲しげに瞳を揺らした。
でもまた、俺の顔を真っ直ぐ見つめた。
「大丈夫だよ! 絵描きさん! 戦争は終わったんだよ! だって船が帰ってきたもん! もう全部消える事はないよ」
ね、と笑ってくれた。
でも、また風が吹いて、俺から彼女の笑顔を奪ってしまう。
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よりによって、今日は満月かぁ……。
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どうか、正体を知っても君は傷つかないでね?
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