「夢」探し

篠原愛紀

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番人の話。

……答え

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「絵描きさん!」

その声はとても澄んでいた。

俺の心の一番奥に届く程に、澄んでいて綺麗で存在感があった。

でも、振り返るのが怖くて少し躊躇しちまった。

少女の顔を見るのが怖かったんだ。

少女は息を切らして、この満月の夜、俺を追いかけてきてくれたんだ。

息が落ち着いてきた少女は、静かに言った。

「ごめんなさい」

俺は驚いて躊躇する事なく振り返った。

少女の顔は、涙で溢れていた。

その涙を拭う事なく、俺の元に走ってきてくれていたんだ。
でも俺は、こんな時でも笑っちまった。

よく分からないけれど笑えた。

「絵描きさん、笑うの下手くそだなって思ってたの。変だなって」

少女は、やっと瞳に溜まった涙を手の平で拭いはじめた。

その肩はまだ震えていたけれど。

「沢山、沢山人を殺したって聞いて本当にとても怖かったの。嫌いって嘘つきだって顔も見たくなくなったの。」

たどたどしく、上手く言葉を整理できなくても、真っ直ぐに見つめてくれながら。

「でも、お話は、物語はとても楽しかったし優しかったから、だから絵描きさんも本当は怖かったのかなって思ったの」

少女の言葉に俺は目を見開いた。
心臓がドクンと波打った。

「なんで旅をするのかなって、なんで楽しい話をするのかなって、考えてみたら」

私もそうだから、絵描きさんもそうなのかなって……

「私も友達がお墓に眠ってしまった時に、辛い事が悲しくて忘れようと沢山思い出を思い出したもん」

――ここでだから、絵描きさんも誰かのそばに居たくて旅をして悲しいから楽しい話をしてたんなら私に嫌われたくなくて居なくなろうとしたんなら

「人に嫌われるのが怖いんだって思ったのだから絵描きさんの言葉、全部は無理でも信じてみようと思ったの」「間違いに気付いてくれるまで叫び続けるなら、絵描きさんはもう間違わないよね?」

一歩、震えながら少女は近づいた。

満月の光が、少女を優しく照らしながら……

「戦争なんて大嫌いだし、人を殺すなんて絶対いや私はずっとそう思い続けるよ」

だから絵描きさんも戦争は止めてって間違わないでって叫び続けて。

「よく分からないけれど不思議な『時』の力で破壊じゃなくて守ってほしい」

だから、戦争が嫌いだって寂しく笑ったのは嘘じゃないよね?

絵描きさんも、そうだって信じて良いよね?

すがりながら強い眼差しで少女は俺に言った。

情けない……。

本当に情けないよ 俺は。

少女に返答したくて音を言葉にしたくても、喉が震えて音が出ない。
伝えたい言葉が溢れすぎてきて、それが言葉ではなく、雫として溢れそうで、俺は全身で震えていた。

ずっとずっと探していたんだ。

情けない、化物だった浅ましい俺の希望という名の『 』を。

俺の心に溜まった汚いものを、君は流し出してくれる。

――――あぁ。 本当にありが……
「いたぞっ! 化物王子が!」
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