「夢」探し

篠原愛紀

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番人の話。

……垣間見

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今日は満月の夜なんだ。

分かってるよ。
早く帰らなきゃって思ってるの。

でも動かないの。

体が石みたいに動かないの。

ねぇ、お墓に眠っている大好きなお友達。

今の素敵な物語を話した絵描きさん、あなたの命を奪った人なんだって。


満月が雲に隠れちゃった。

でも船から沢山声がした。

帰ってきているのかもしれない。

お帰りって言わなきゃ!

パパもお兄ちゃんも、私の大切な家族だもん。

『あのッ』
後ろから声、がした。走り駆け寄ってくる人の声が。

動きたくないのに、私はゆっくり後ろを振り返った。
ちょっと不機嫌になっちゃったけど。

『私を覚えてますか?』

振り返ったら、女の人がいた。

必死で私を見つめてくる。

……なんでそんなに見つめるの?

とても焦った早口で。

でも私が振り返ったら固まっちゃった。

とても困った顔してた。

ちょっとママに似ているかもしれない。

「お姉さん、だれ?」

私は涙を拭くのを忘れて、いきなり現れたお姉さんに聞いた。


お姉さんは私の言葉を聞いて、目を見開き、瞬きも忘れて座りこんだ。

とても悲しそうに。

――覚えてますか?

何を?

私はお姉さん知らないよ。

そのまま、お姉さんは消えちゃったけど…

でも、動かないと思った私の体は動けた。

多分、動かなかったのは自分に甘いからだ。

だったら絵描きさんは?

一番自分に甘い絵描きさんは
どうして歩けるんだろう。

どうして歩いて旅を続けるんだろう。

私が一番嫌いな戦争。
嫌いって言ったのに嘘だった人。

とても憎むべきの人。

今はもう絵描きさんなんて考えたくない。

でも涙が止まらないんだ。

何でだろう?
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