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番人の話。
番人の話。
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ある、一人の『神』が生まれました。
彼女は、時の神が暴走した世界で生まれました。
万物を創造する神。
今は、何処にいるのか分からない神様。
砂漠の満月の夜に。
彼女は、倒れている男に言いました。
『貴方に託すわ』
誰でも良かったけれど、水もない砂漠で生きようともがく貴方に。
妖艶にその神は笑いました。
『何もないこの砂漠に、貴方が望む物を創ってあげる』
だから、私の願いも叶えてもらうわ。
その倒れている男は聞きました。
―何でしょうか。 と
『「時」から世界を守る存在を造りたいの』
人間じゃ駄目なのよ。「時」の神が嫌うから。
でも「神」はもう人間にも「時」の神にも関わりたくないから。
『だったら人と神の間に生まれた子どもなら良いでしょう?』
時の神が壊れない様に傍における人を。
その月夜の晩に、たった1日の月夜の晩に、その砂漠の砂は砂金へと変わりました。
これで男は世界を手に入れるでしょう。
そして、その男と「神」の間に生命が誕生しました。
遠い昔の夢の様な物語。
「そうして、生まれたのが俺なんだ」
その時に、右腕に刻まれた証。
だから、人間であって人間でない。
上手く言えないけれど、まぁ、君はもう聞いてくれてないみたいだから良いかな。
こんな理由で生まれた俺だから、化物って呼ばれても間違ってないのかもね。
うん。
これで君に話せる俺の話は終わりかな。
君の背中が、俺をはっきり拒絶しているから
すがすがしい気持ちでまた逃げれるね。
ありがとう。
君に会いたいと思って本当にごめんね。
君の純粋な魂に惹き付けられていたんだ。
助けてもらったあの「時」から。
君を探して彷徨っていた。
俺は泣きたくて、でも泣けなくて、もしかしたら無償で俺を助けてくれた貴方なら、俺に優しい言葉をくれるかなって思ってしまったんだ。
色を全て消すような眩しい光の君を。
あの、色のない世界で
――貴方だけのせいじゃないわ。
――泣いてもいいよ
って。
あの時みたいに笑って欲しかった。
そう、貴方に赦されたかった。
生まれ変わった貴方が、純粋な少女でとても嬉しかった。
けれど、やっぱり傷つけちゃったんだ。
自分をどんなに化物だと蔑みながら、
大罪を犯した化物だと卑下しながら、
赦されたいと願う、
自分に甘い弱い生き物なんだ。 俺は。
馬鹿だろ?
笑っちゃうだろ?
自分の犯した事を棚に上げて、
泣きたいなんて「夢」見るなんて。
お前の後ろに散った沢山の犠牲の花びらをしっかり見てみろよ。
でも、誰か俺の苦しみを半分理解してくれたらなって
心のどこかでは、まだ夢見てる。
本当に俺は醜い化物だよね。
―――――少女は耳を塞いで、目を瞑って、
声を殺して泣いていた。
震える肩は怯え、拒絶し絶望していた。
これが現実なんだ。
『君は本当に馬鹿だよね。わざと戦争の責任全部負っちゃってさ。この戦争は君一人が責任を負う必要はなかったのに』
そうかな?
でも、責任者がいなきゃ
この長い戦いは終わらないよ。
戦争を終らせるにはこれしかなかったんだ。
世界中が一致団結して敵である『俺』を探す。
これで世界は平和へと歩きだすんだ。
もう行くけれど、君との『時』は終わっちゃうけれども。
けれども最後に君に御礼を言わせて。
少しの間でもいい。
短い『時』の中で
俺は君の心の温もりに出会えたから。
少しでも君に笑ってもらえたから。
「俺の話を聞いてくれてありがとう。こんなに話をしたのは久しぶりなんだ」
ずっと昔、俺の買い取った機械の国で、何十年も主人の帰りを待つロボットがいた。
そのロボットに今の君のように話をして以来だったんだ。俺は、その機械に今の様に自分の話をした。
機械だから傷つかないかなって……でもそのロボットは最後に自分の話もしてくれたんだ。
死んでしまったご主人でも、一生ご主人だから、だからまた会える日を待ってるって。
その話を聞いていたら風が吹いたんだ。
もちろん、機械しかないあの国は、人工の風しか吹かないのに。
―――機械仕掛けの鉄の森の中で、
確かに吹いた緑の風……
そう。あれは確かに希望の風だった。
ロボットを優しく包みこむような。
俺はそんな風が、俺に吹いて欲しかった。
――俺はそんな風になりたかった。
泣いている君の為に。
―希望になりたかった。
君の笑顔しか見たくなかった。
誰も俺の話を聞いてくれなくて辛くて。
でも君は俺の話に夢中になって笑ってくれた。
もう誰も俺の声に耳を傾けてくれると思ってなかったのに。
ただ、話すだけて良かった。
聞いてくれるだけで。
だから、言うよ。
心を込めて。
「ありがとう」
元気でね。
――さようなら。一度も少女は俺を見ないまま、
俺は名残惜しげに歩き始めた。
『未練、あるくせに。無意識に探す程に会いたかったくせに』
ああ。確かに。
その通りで笑っちまうよ。
でも、人殺しだと分かって平気で話しかける方が変だろう?
少女なら俺を理解してくれるなんて思い上がり、
恥ずかしくって笑っちまうだろ?
こんな事で辛いとか弱音吐いてたら、化物達から逃げきれないよ。
だって俺はまだ、 『時』の神に比べれば、
瞬きをする瞬間程も生きていなければ、
あの人の孤独の欠片さえ、経験してないからさ。
満月が顔を出して、本当に夜に支配された時間。
神よ、
貴方が大木になってまで守りたかった大地を、
貴方が狂ってまで守ろうと誓った大地を、
破壊してしまった事を赦して下さい。
その罪は一生消えなくていい。
魂に刻まれて烙印を押して下さっても良いから。
だから、まだ戦争が終わらない限り、生き続けてさせて下さい。
間違った考えを戻す時間を下さい。
―さぁ どこに行こうか。
俺の居場所なんてあるのだろうか。
なんて、まだ少し卑しい期待を胸に抱きながら……
俺は出発するよ。
彼女は、時の神が暴走した世界で生まれました。
万物を創造する神。
今は、何処にいるのか分からない神様。
砂漠の満月の夜に。
彼女は、倒れている男に言いました。
『貴方に託すわ』
誰でも良かったけれど、水もない砂漠で生きようともがく貴方に。
妖艶にその神は笑いました。
『何もないこの砂漠に、貴方が望む物を創ってあげる』
だから、私の願いも叶えてもらうわ。
その倒れている男は聞きました。
―何でしょうか。 と
『「時」から世界を守る存在を造りたいの』
人間じゃ駄目なのよ。「時」の神が嫌うから。
でも「神」はもう人間にも「時」の神にも関わりたくないから。
『だったら人と神の間に生まれた子どもなら良いでしょう?』
時の神が壊れない様に傍における人を。
その月夜の晩に、たった1日の月夜の晩に、その砂漠の砂は砂金へと変わりました。
これで男は世界を手に入れるでしょう。
そして、その男と「神」の間に生命が誕生しました。
遠い昔の夢の様な物語。
「そうして、生まれたのが俺なんだ」
その時に、右腕に刻まれた証。
だから、人間であって人間でない。
上手く言えないけれど、まぁ、君はもう聞いてくれてないみたいだから良いかな。
こんな理由で生まれた俺だから、化物って呼ばれても間違ってないのかもね。
うん。
これで君に話せる俺の話は終わりかな。
君の背中が、俺をはっきり拒絶しているから
すがすがしい気持ちでまた逃げれるね。
ありがとう。
君に会いたいと思って本当にごめんね。
君の純粋な魂に惹き付けられていたんだ。
助けてもらったあの「時」から。
君を探して彷徨っていた。
俺は泣きたくて、でも泣けなくて、もしかしたら無償で俺を助けてくれた貴方なら、俺に優しい言葉をくれるかなって思ってしまったんだ。
色を全て消すような眩しい光の君を。
あの、色のない世界で
――貴方だけのせいじゃないわ。
――泣いてもいいよ
って。
あの時みたいに笑って欲しかった。
そう、貴方に赦されたかった。
生まれ変わった貴方が、純粋な少女でとても嬉しかった。
けれど、やっぱり傷つけちゃったんだ。
自分をどんなに化物だと蔑みながら、
大罪を犯した化物だと卑下しながら、
赦されたいと願う、
自分に甘い弱い生き物なんだ。 俺は。
馬鹿だろ?
笑っちゃうだろ?
自分の犯した事を棚に上げて、
泣きたいなんて「夢」見るなんて。
お前の後ろに散った沢山の犠牲の花びらをしっかり見てみろよ。
でも、誰か俺の苦しみを半分理解してくれたらなって
心のどこかでは、まだ夢見てる。
本当に俺は醜い化物だよね。
―――――少女は耳を塞いで、目を瞑って、
声を殺して泣いていた。
震える肩は怯え、拒絶し絶望していた。
これが現実なんだ。
『君は本当に馬鹿だよね。わざと戦争の責任全部負っちゃってさ。この戦争は君一人が責任を負う必要はなかったのに』
そうかな?
でも、責任者がいなきゃ
この長い戦いは終わらないよ。
戦争を終らせるにはこれしかなかったんだ。
世界中が一致団結して敵である『俺』を探す。
これで世界は平和へと歩きだすんだ。
もう行くけれど、君との『時』は終わっちゃうけれども。
けれども最後に君に御礼を言わせて。
少しの間でもいい。
短い『時』の中で
俺は君の心の温もりに出会えたから。
少しでも君に笑ってもらえたから。
「俺の話を聞いてくれてありがとう。こんなに話をしたのは久しぶりなんだ」
ずっと昔、俺の買い取った機械の国で、何十年も主人の帰りを待つロボットがいた。
そのロボットに今の君のように話をして以来だったんだ。俺は、その機械に今の様に自分の話をした。
機械だから傷つかないかなって……でもそのロボットは最後に自分の話もしてくれたんだ。
死んでしまったご主人でも、一生ご主人だから、だからまた会える日を待ってるって。
その話を聞いていたら風が吹いたんだ。
もちろん、機械しかないあの国は、人工の風しか吹かないのに。
―――機械仕掛けの鉄の森の中で、
確かに吹いた緑の風……
そう。あれは確かに希望の風だった。
ロボットを優しく包みこむような。
俺はそんな風が、俺に吹いて欲しかった。
――俺はそんな風になりたかった。
泣いている君の為に。
―希望になりたかった。
君の笑顔しか見たくなかった。
誰も俺の話を聞いてくれなくて辛くて。
でも君は俺の話に夢中になって笑ってくれた。
もう誰も俺の声に耳を傾けてくれると思ってなかったのに。
ただ、話すだけて良かった。
聞いてくれるだけで。
だから、言うよ。
心を込めて。
「ありがとう」
元気でね。
――さようなら。一度も少女は俺を見ないまま、
俺は名残惜しげに歩き始めた。
『未練、あるくせに。無意識に探す程に会いたかったくせに』
ああ。確かに。
その通りで笑っちまうよ。
でも、人殺しだと分かって平気で話しかける方が変だろう?
少女なら俺を理解してくれるなんて思い上がり、
恥ずかしくって笑っちまうだろ?
こんな事で辛いとか弱音吐いてたら、化物達から逃げきれないよ。
だって俺はまだ、 『時』の神に比べれば、
瞬きをする瞬間程も生きていなければ、
あの人の孤独の欠片さえ、経験してないからさ。
満月が顔を出して、本当に夜に支配された時間。
神よ、
貴方が大木になってまで守りたかった大地を、
貴方が狂ってまで守ろうと誓った大地を、
破壊してしまった事を赦して下さい。
その罪は一生消えなくていい。
魂に刻まれて烙印を押して下さっても良いから。
だから、まだ戦争が終わらない限り、生き続けてさせて下さい。
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