「夢」探し

篠原愛紀

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「時」探し

記 憶

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両手を開くと薔薇が消えてしまっていた。

どうして――?

すると声がした。

真っ暗な空間に、突き刺さるような誰かの声がした。

大声で怒鳴るような叫び声がした。
両手の中から光が消えてゆく。



「やめろ!」

「やめるんだ……」
『やめろォォォ!』

闇の中をその叫び声が、突き刺さる光とともに闇を切り裂いた。
地響きの音の様に、重くとても大きな音がした。

辺りを煙が立ち込める。

「何? 今のは……」

爆発………?

爆発にしては大きすぎる……。

『何で……』

誰かの声がする。

私の頭上の高い高い上の方から。

『何でこんな……』

まだ砂埃で数センチ先も見えない。

『やめろって、言ったのに……』

――泣いているの?

その時風が吹いて、砂埃が少し薄くなった。

まだぼんやりしている頭上を見上げる。

「あ――っ」

ドクンッと胸が締め付けられた。

涙を溢すその彼を、私は知っている。

誰だか分からないけれど知っている。

知っているのに――……。

誰なのか、私のどんな知り合いなのか、私の「時」間を見つけなければ思い出せないの?

ずっと立ち尽くしていたその人は、空からフラフラと落ちてきてパタンと座りこんだ。

顔をあげようとはしなかった。

全身で震え、とても小さな存在に思えた。

煙や墨が辺りを覆いかくしていく。

私が勇気を出して、一歩歩きだそうとしたその時、私は腕を掴まれた。

振り返ると腕を掴んだ人は「時」の番人 だった。


「ここは駄目だよ。危ないから」

表情は相変わらず髪で隠れて分からないけれど、少し焦って見えた。

「それより! 私あの人知ってる気がする」

私は正面の蹲っているはずの人を指差した。

「あれ……!?」
「誰もいないね。どこにいるの? 人なんて」

さっきまで居た人は姿を消して変わりに荒れた大地は煙と墨で覆われ、崩壊して空は灰色になっていた。

「そんなことより言い忘れてたけど、『時』の果てにある『時』はもとは一体だった。壊れてバラバラになっちまってるだけでその壊れた『時』が終わりを待つ場所が『時』の果てなんだ」

スッとあたりが『時』の果ての空間になる。

薄暗い朝日が昇る前の様に静かで淋しい場所に。

「だからアンタが忘れた『時』は、『時』の果てに迷いこんだんだろう。終わりが来るその日の為にな」

私が忘れたなんて決めつけられて、少し悔しかった。

だって私は思い出そうと必死なのに。

こんな訳の分からない場所で頑張って踏ん張って立っているのに。

「ここのどこかにあるなら、どうやって見つけるの? 『時』って触れるの?どんな形してるの?」

私の言葉に『時』の番人は苦笑して首をかしげた。

「形じゃないんだよ………‥」

またフッと闇に包まれる。
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