「夢」探し

篠原愛紀

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「時」探し

再 び

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ハチミツの、甘い匂い。

オムレツもあるかなぁ……。でも、まだベッドで眠っていたいの。

そうしたら、お兄ちゃんが呆れた顔で起こしに来るの。

『起きろ。学校に遅刻するぞ』

分かってるけど まだまだ眠たいの。

まだ眠らせて。私、まだあの人のこと、何も思い出せてないのよ。

ーーー


今のは、夢?

上も下もない空間で、垣間見のような瞬きの夢を見た。

懐かしい匂いと懐かしい声だった。

あぁ、はやく思い出さなきゃ。
ぐにゃり、と『時』が曲がる

うねって、曲がってぼんやりと何かが見えてきた。

何かが、いた。

小さなお墓の前で座っている女の人が見えた。

ちゃんとした『時』の空間ではなかったけれど、たとえまたあの女の人の夢の中だったとしても会えただけで良かった。

「あの、私を覚えてますか?」

駆け寄りながら、彼女に近づくよりもはやく、焦って声をかけてしまった。

ゆっくりその人は振り返っていく。

これでやっと「私」の『時』が分かるかも。
 そんな期待は、振り返った女の人容姿で絶望に変わる。

ゆっくり振り返った人は10にも満たない少女だった。
目元は赤く、腫れていて少し怒っているようにも見えた。

その少女はたどたどしい口調で『お姉さん、だれ?』ときいてきた。

――お姉さん、だれ?

 その言葉に力が抜けたように座り込んだ。
あぁ、身動きができない程の絶望。

それ、を知るために貴方に会いたかったのに。
貴方が大人になったころに。
ねぇ、私ってだれなの?
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