45 / 56
「時」探し
誓 い
しおりを挟む
「大丈夫。多分、僕と西の国の王子は同じだよ。
戦争なんて止めたいはずなんだ」
だから、貴方が帰ってくるって信じてたの。
でも帰って来ないなら私は剣を握り、正義と言う旗を掲げる。
未来永劫、西の国の王子を赦さない。
逃げ続ける限り。
ーーーー
全身に銀色の鎧を身に纏い、白馬に乗った騎士が私に尋ねた。
「こんな瓦礫の山の国に、女一人で何をしている?」
私は、砂漠の砂のように降り積もった灰の上に、膝を浸けて座ってしまっていた。
また気づいたら、時を飛んで知らない場所に来てしまっていたんだ。
「女一人じゃ生きていけない国だ。わたしが保護しよう」
白馬に乗ったまま、冑を脱いだその人は、
とても凛々しい女の人だった。
全身を銀の鎧で身に纏った兵士達が、道を開けながら彼女へお辞儀をすると、片膝を立てて座りだした。
私と彼女の間に一本道を作ったゲートみたいに。
「怪しい者ではないから安心しろ。わたしは東の国の王子の妻であり、亡き王子の後を継いで国を守っている者だ」
勝気に笑うと剣を抜いた。
「この国は、わたしが預かった。復興はわたしが行う。何十年掛かっても必ず。」
―――あの化物の代わりに、なと、冷たい渇いた声で言った。
彼女は、朝から晩まで指揮をとり、復興作業に取り組んでいた。
建物は全て瓦礫。地面は灰の砂山。
誰もいない国の、死んだような町。
「お前、名前は何と申す?」
私も微力ながら地面の灰を集めていたが、
彼女に呼び出され、食事をとる事にした時だった。
上手く説明は出来ないが、記憶がないことと西の国の王子を探していることこの2つだけは説明した。
すると、彼女の強くて優しい瞳は、闇の様に暗く濁った。
「西の国の王子なら、国を捨てて逃げ出したよ。オーバードライブの日に、な」
あれからもう半年経ったが、彼は今も逃げ続けているらしい。
「傲った汚い人間だった。嫌、違う」
あんな奴は人間じゃない、と言った。
化物だと。
「化物……ですか?」
「化物だ。人間ではない」
断言できる、とまで言った。
「そもそも、この世界が2つに割れた戦争もあの王子のせいだ」
全身で拒絶しながら、全身で憎みながら、彼女の目は燃えるような怒りが支配していた。
「王子の父である王が言ったのだよ。『楽園』に王子は行った事がある、とな」
楽園……?
銀色の世界であの人が言ってた楽園…?
「あいつらは傲っていた。『楽園』に行ける者こそが、この世界の唯一の王だと」
それに賛成し崇める者たち、それに異議を唱え対抗する者たち長い、とてつもなく長い戦いだった。
「自分が生まれたせいで起こった戦争から、あの王子は逃げ出したんだ」
最低なバケモノ。
「戦争を嬉々と実行する者を、お前は同じ人間だと思えるのか」
彼女は威張りながら、憤りながらも冷静に言った。
「わたしは無理だ。同じ人間だと思いたくない。あいつらは化物だ」
私は答えられなかった。
西の国の王子が、嬉しそうにしていたとは思えなかったから。
私は、あの「時」の、彼の叫び声をしっかり覚えているから。
あの時の、あの場所で、誰も自ら進んで戦争してた人なんていなかったから。
「こんな、多くの人の命を奪って、住む国も奪ってなのに責任からは逃れるなんて、なんて浅ましく卑しい化物かと、わたしは憤りを感じている」
反論、したかった。
なのに、それは全て事実。
なのに私は、反論したかったんだ。
記憶もないくせに、私は、彼のあの日を庇いたくて堪らないんだ。
私の醜いエゴだとしても。
こんな瓦礫の山と灰の砂だけの国の、王子様……。
何故、こんな姿になった国を置いて逃げているのだろう?
会わなきゃ、と思うのに、私は恐れている。
会った後の終末を……。
「まぁ、女子には詰まらん話だったな。気にするな」
困った様に笑うと、長い髪を纏めていたゴムを外した。
2、3回、頭を振って髪を整えながら、今日は終わりにしようと言って立ち上がった。
彼女の肩は細く、肌は透き通る様に白く、後ろ姿は消えてしまいそうに儚げなのに、彼女は逃げない。
西の国の復興までやってのけている。
東の国の戦士達が彼女を心配しながらも、指揮に従うのは納得できた。
彼女は弱いながらも強く凛々しく美しい。
もう灰の砂と瓦礫を、月が優しく照らす時間になった。
東の国の人達は、それぞれ簡易のテントをはり、中に入っていった。
私は、彼女が帰るのをテントの中で待っていたけれど、中々帰って来ないので、様子を見に外に出た。
月の光しか差さない闇夜に、彼女は立っていた。
瓦礫の上で、空を見上げて、その瞳は強く、凛とした眼差しだった。
「……月が綺麗だな」
後ろを振り向かずに彼女は言った。
私に言ったようにも、独り言にも聞こえた。
「この国の者たちは、月の光がこんなに綺麗と知らなかったんだろうな……」
静かにそう言うと唇をかんで何かに耐えていた。
「月が綺麗だということ、月の光が柔らかく辺りを照らす事を忘れてしまっていたから……」
だから、こんな無惨な瓦礫になったんだ、と。
「事が起こった後に気づいても遅いのに」
もっと、もっともっと、なんで早く気付かなかったのだ、と彼女は、問う。
それはこの国の人だったのか、自分に、だったのか。
「この月の下、瓦礫の上で、わたしは誓わずにはいられない」
「誓う?」
彼女の表情があまりに思い詰めて、それでいて真摯だったから、だから私は知らずにはいられなかった。
「馬鹿で優しすぎた私の夫にだ。優しさだけでは、戦争で生きれる訳ないんだ」
なのに―…あの人は最後まで、ずっと…ずっと……。
「皆、誰だって戦争なんてしたくない、と話せば分かるはずだって、それがわたしの夫の考え方だった」
甘い、愚かな考え。
馬鹿だな、と力なく、笑って。
「自分の力を誇示する奴も世界に沢山溢れている。力でねじ伏せる奴だって沢山だ。夫の目から見る世界よりも、
世界は汚いから」
欲に塗れて、力に溺れて、権力に傲って世界を上から見下ろして。
「夫は、あの日、西の国の王子に話を聞いてもらいに行ってたんだ。夫の声が、西の国の王子に届いたのかは、誰も知らないけどな」
――信じたくなかった。
こんなにも、沢山の命を奪って、沢山の幸せを壊して、逃げてしまった王子、を私は思い出さなければいけないなんて。
傍観している今だけど、記憶を思い出したら、私も加害者かもしれないから。
だから、信じたくなかった。
今の全ての現実を。
「だから、誓うんだ。わたしは王子が理想とした甘い考えが成立する世の中を創る事を」
静かに彼女の瞳は燃えていた。夫を誰よりも尊敬し、生涯を共にすると約束し、傍にいたいと願い続けて。
「だから、西の国の王子が逃げ続ける限り、世界は奴を許さない。わたしが赦させない」
夫の意思を受け継ぎつつ、わたしはこの国の責任を化物にとらせたい。だって、化物には夫の気持ちは届かなかった。
夫が帰ってこないなら、それが答えだろ。
わたしが剣を抜き、正義という旗を抱え、夫の妻という地位というマントで身を守り、退治、する。
赦してはいけない。
絶対、に。
大切な人を失って辛いはずなのに、彼女は歩き続けるんだね。
以前、左右の翼の色が異なる神が言ってた通りだ。
片目で見る汚い世界を嘆きながらも、その姿勢を信じていた神の。
国を、一言で消した「化物」と恐れる存在に。
でも悲しい。
「それじゃあ、違うかもしれません。貴方の旦那さんが理想とする世界とは」
「なぜだ……?」
一瞬、目を光らせながらも冷静さを保ちつつ、私を見た。
「貴方が、旦那さんの意思を受け継ぐなら、貴方が西の国の王子を説得することが良いと思うんです」
だって、貴方の旦那さんは、戦争を望んではいないのなら、世界中で西の国の王子と争う事も望まないんじゃないのかな。
「拙い考えだな。わたしは説得する気はない、傲った相手が話を聞くはずないだろうしな。詰まらない、くだらない」
「でも」
ザワッ
月の光しか存在しない闇夜に、風を切り裂くような喚声が辺りを包んだ。
風が、灰を空に舞い上がらせ、月の光を濁らせる。
「王女様――!」
彼女を呼ぶ、東の国の兵士の声がする。
「どうしたのだ」
彼女はこの暗闇で迷わずに走りだした。
私も彼女の後を追う。
「西の国の王子を見つけました!」
彼女が息を呑み、走るのを止めた。
全身で震えながら、目を赤く光らせながら、唸るように声を絞り出した。
「どこにいる」
「城跡に倒れていました。怪我をしている模様ですが兵士達が暴走して、収集がつきません」
月の光だけが頼りの、この暗い夜の時間に、西の国の王子を捕らえ、復讐する為に沸き上がる喚声。
あぁ、またあのメロディが聴こえてくる……
何故…?
哀しそうに歌うの…?
アナタハダレナノ?
どこから、この歌は聴こえてくるの?
狂った様に同じメロディで。
「殺せぇ!」
ハッと現実に還った。
まだ、歌は聴こえてくるけれど…。
そんな微かな歌声よりも、はっきりと聞こえるんだ。
人を罵る声が。
人を殴る重い音。
人々が人を、化物と呼ぶ声が。
「やめて―――!」
西の国の王子を、何重にもなって人々が取り囲んでいた。
人々の手には、各々の武器が握られていた。
「やめて! お願い!」
必死で人々を掻き分けて、私はただひたすらに、王子の元に駆け寄った。
戦争なんて止めたいはずなんだ」
だから、貴方が帰ってくるって信じてたの。
でも帰って来ないなら私は剣を握り、正義と言う旗を掲げる。
未来永劫、西の国の王子を赦さない。
逃げ続ける限り。
ーーーー
全身に銀色の鎧を身に纏い、白馬に乗った騎士が私に尋ねた。
「こんな瓦礫の山の国に、女一人で何をしている?」
私は、砂漠の砂のように降り積もった灰の上に、膝を浸けて座ってしまっていた。
また気づいたら、時を飛んで知らない場所に来てしまっていたんだ。
「女一人じゃ生きていけない国だ。わたしが保護しよう」
白馬に乗ったまま、冑を脱いだその人は、
とても凛々しい女の人だった。
全身を銀の鎧で身に纏った兵士達が、道を開けながら彼女へお辞儀をすると、片膝を立てて座りだした。
私と彼女の間に一本道を作ったゲートみたいに。
「怪しい者ではないから安心しろ。わたしは東の国の王子の妻であり、亡き王子の後を継いで国を守っている者だ」
勝気に笑うと剣を抜いた。
「この国は、わたしが預かった。復興はわたしが行う。何十年掛かっても必ず。」
―――あの化物の代わりに、なと、冷たい渇いた声で言った。
彼女は、朝から晩まで指揮をとり、復興作業に取り組んでいた。
建物は全て瓦礫。地面は灰の砂山。
誰もいない国の、死んだような町。
「お前、名前は何と申す?」
私も微力ながら地面の灰を集めていたが、
彼女に呼び出され、食事をとる事にした時だった。
上手く説明は出来ないが、記憶がないことと西の国の王子を探していることこの2つだけは説明した。
すると、彼女の強くて優しい瞳は、闇の様に暗く濁った。
「西の国の王子なら、国を捨てて逃げ出したよ。オーバードライブの日に、な」
あれからもう半年経ったが、彼は今も逃げ続けているらしい。
「傲った汚い人間だった。嫌、違う」
あんな奴は人間じゃない、と言った。
化物だと。
「化物……ですか?」
「化物だ。人間ではない」
断言できる、とまで言った。
「そもそも、この世界が2つに割れた戦争もあの王子のせいだ」
全身で拒絶しながら、全身で憎みながら、彼女の目は燃えるような怒りが支配していた。
「王子の父である王が言ったのだよ。『楽園』に王子は行った事がある、とな」
楽園……?
銀色の世界であの人が言ってた楽園…?
「あいつらは傲っていた。『楽園』に行ける者こそが、この世界の唯一の王だと」
それに賛成し崇める者たち、それに異議を唱え対抗する者たち長い、とてつもなく長い戦いだった。
「自分が生まれたせいで起こった戦争から、あの王子は逃げ出したんだ」
最低なバケモノ。
「戦争を嬉々と実行する者を、お前は同じ人間だと思えるのか」
彼女は威張りながら、憤りながらも冷静に言った。
「わたしは無理だ。同じ人間だと思いたくない。あいつらは化物だ」
私は答えられなかった。
西の国の王子が、嬉しそうにしていたとは思えなかったから。
私は、あの「時」の、彼の叫び声をしっかり覚えているから。
あの時の、あの場所で、誰も自ら進んで戦争してた人なんていなかったから。
「こんな、多くの人の命を奪って、住む国も奪ってなのに責任からは逃れるなんて、なんて浅ましく卑しい化物かと、わたしは憤りを感じている」
反論、したかった。
なのに、それは全て事実。
なのに私は、反論したかったんだ。
記憶もないくせに、私は、彼のあの日を庇いたくて堪らないんだ。
私の醜いエゴだとしても。
こんな瓦礫の山と灰の砂だけの国の、王子様……。
何故、こんな姿になった国を置いて逃げているのだろう?
会わなきゃ、と思うのに、私は恐れている。
会った後の終末を……。
「まぁ、女子には詰まらん話だったな。気にするな」
困った様に笑うと、長い髪を纏めていたゴムを外した。
2、3回、頭を振って髪を整えながら、今日は終わりにしようと言って立ち上がった。
彼女の肩は細く、肌は透き通る様に白く、後ろ姿は消えてしまいそうに儚げなのに、彼女は逃げない。
西の国の復興までやってのけている。
東の国の戦士達が彼女を心配しながらも、指揮に従うのは納得できた。
彼女は弱いながらも強く凛々しく美しい。
もう灰の砂と瓦礫を、月が優しく照らす時間になった。
東の国の人達は、それぞれ簡易のテントをはり、中に入っていった。
私は、彼女が帰るのをテントの中で待っていたけれど、中々帰って来ないので、様子を見に外に出た。
月の光しか差さない闇夜に、彼女は立っていた。
瓦礫の上で、空を見上げて、その瞳は強く、凛とした眼差しだった。
「……月が綺麗だな」
後ろを振り向かずに彼女は言った。
私に言ったようにも、独り言にも聞こえた。
「この国の者たちは、月の光がこんなに綺麗と知らなかったんだろうな……」
静かにそう言うと唇をかんで何かに耐えていた。
「月が綺麗だということ、月の光が柔らかく辺りを照らす事を忘れてしまっていたから……」
だから、こんな無惨な瓦礫になったんだ、と。
「事が起こった後に気づいても遅いのに」
もっと、もっともっと、なんで早く気付かなかったのだ、と彼女は、問う。
それはこの国の人だったのか、自分に、だったのか。
「この月の下、瓦礫の上で、わたしは誓わずにはいられない」
「誓う?」
彼女の表情があまりに思い詰めて、それでいて真摯だったから、だから私は知らずにはいられなかった。
「馬鹿で優しすぎた私の夫にだ。優しさだけでは、戦争で生きれる訳ないんだ」
なのに―…あの人は最後まで、ずっと…ずっと……。
「皆、誰だって戦争なんてしたくない、と話せば分かるはずだって、それがわたしの夫の考え方だった」
甘い、愚かな考え。
馬鹿だな、と力なく、笑って。
「自分の力を誇示する奴も世界に沢山溢れている。力でねじ伏せる奴だって沢山だ。夫の目から見る世界よりも、
世界は汚いから」
欲に塗れて、力に溺れて、権力に傲って世界を上から見下ろして。
「夫は、あの日、西の国の王子に話を聞いてもらいに行ってたんだ。夫の声が、西の国の王子に届いたのかは、誰も知らないけどな」
――信じたくなかった。
こんなにも、沢山の命を奪って、沢山の幸せを壊して、逃げてしまった王子、を私は思い出さなければいけないなんて。
傍観している今だけど、記憶を思い出したら、私も加害者かもしれないから。
だから、信じたくなかった。
今の全ての現実を。
「だから、誓うんだ。わたしは王子が理想とした甘い考えが成立する世の中を創る事を」
静かに彼女の瞳は燃えていた。夫を誰よりも尊敬し、生涯を共にすると約束し、傍にいたいと願い続けて。
「だから、西の国の王子が逃げ続ける限り、世界は奴を許さない。わたしが赦させない」
夫の意思を受け継ぎつつ、わたしはこの国の責任を化物にとらせたい。だって、化物には夫の気持ちは届かなかった。
夫が帰ってこないなら、それが答えだろ。
わたしが剣を抜き、正義という旗を抱え、夫の妻という地位というマントで身を守り、退治、する。
赦してはいけない。
絶対、に。
大切な人を失って辛いはずなのに、彼女は歩き続けるんだね。
以前、左右の翼の色が異なる神が言ってた通りだ。
片目で見る汚い世界を嘆きながらも、その姿勢を信じていた神の。
国を、一言で消した「化物」と恐れる存在に。
でも悲しい。
「それじゃあ、違うかもしれません。貴方の旦那さんが理想とする世界とは」
「なぜだ……?」
一瞬、目を光らせながらも冷静さを保ちつつ、私を見た。
「貴方が、旦那さんの意思を受け継ぐなら、貴方が西の国の王子を説得することが良いと思うんです」
だって、貴方の旦那さんは、戦争を望んではいないのなら、世界中で西の国の王子と争う事も望まないんじゃないのかな。
「拙い考えだな。わたしは説得する気はない、傲った相手が話を聞くはずないだろうしな。詰まらない、くだらない」
「でも」
ザワッ
月の光しか存在しない闇夜に、風を切り裂くような喚声が辺りを包んだ。
風が、灰を空に舞い上がらせ、月の光を濁らせる。
「王女様――!」
彼女を呼ぶ、東の国の兵士の声がする。
「どうしたのだ」
彼女はこの暗闇で迷わずに走りだした。
私も彼女の後を追う。
「西の国の王子を見つけました!」
彼女が息を呑み、走るのを止めた。
全身で震えながら、目を赤く光らせながら、唸るように声を絞り出した。
「どこにいる」
「城跡に倒れていました。怪我をしている模様ですが兵士達が暴走して、収集がつきません」
月の光だけが頼りの、この暗い夜の時間に、西の国の王子を捕らえ、復讐する為に沸き上がる喚声。
あぁ、またあのメロディが聴こえてくる……
何故…?
哀しそうに歌うの…?
アナタハダレナノ?
どこから、この歌は聴こえてくるの?
狂った様に同じメロディで。
「殺せぇ!」
ハッと現実に還った。
まだ、歌は聴こえてくるけれど…。
そんな微かな歌声よりも、はっきりと聞こえるんだ。
人を罵る声が。
人を殴る重い音。
人々が人を、化物と呼ぶ声が。
「やめて―――!」
西の国の王子を、何重にもなって人々が取り囲んでいた。
人々の手には、各々の武器が握られていた。
「やめて! お願い!」
必死で人々を掻き分けて、私はただひたすらに、王子の元に駆け寄った。
0
あなたにおすすめの小説
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
烏の王と宵の花嫁
水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。
唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。
その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。
ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。
死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。
※初出2024年7月
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
白苑後宮の薬膳女官
絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。
ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。
薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。
静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる