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エピローグ
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「心に余裕ができるのに、『時』間がかかってしまったんだ」
心に余裕と愛情があるからこそ、君を思い出した。
俺とそっくりで愚かな工場の王子様。
急に、愛しい人が消えてしまったんだよね。
きっと、君は怖かったよね。
だって人魚さんに、嫌われる要素は有っても、
好かれる要素は何もなかったから、さ。
『ねぇ、大切な人が居なくなってから、今は何日目?』
顔は泣きすぎて目は赤く、
手の爪は、力強く握りしめた拳にくい込み、血を流し裸足の足は爪が割れ、足が擦りむけて、
『君も赤い化物みたいだね』
儚げに蹲る王子を見下ろして、そう言った。
――怒らないでね?
君の赤さは、他人の血じゃないからさ。
愚かな時間を、過ごした証明なんだよ。
『答えないなら当ててあげるよ。あの綺麗な人魚が居なくなって、1年と2ヶ月と数日だろ?』
王子は驚いて顔をあげた。
『君と俺は、笑っちまうぐらい似ているよ』
こんな愚かな時間を、過ごす所も。
でも、君に少しは懺悔したかったんだ。
俺が絵を描いたせいで、あの綺麗な人魚と二度と会えなくなってしまったから。
『だけど、彼女も傷ついて哀しんで、汚れていく事が怖かったんだから、君だけが泣くのは少し、ずるいよ』
だから、ね?
『君がもう「赤い化物」にならないと約束できるなら、人魚の絵画の場所を教えてあげるよ』
王子様は、泣きつかれて真っ赤な目を、バッと開いて、立ち上がった。
「――絵画?」
『うん、絵画。綺麗な人魚は、綺麗な思い出だけ持って、海に還ったよ』
涙を流しながら、でもとても幸せそうに。
『教えるから誓って。赤い化物にならないってさ』
そんなに、絶望の中を、ただ一人で生きないで。
彼女に会えるなら、「――誓います」
その言葉に、嘘も偽りもなかった。
『その場所に、君を飛ばすよ』
結局、愛する人も、国さえも守れなかった王子様。
大丈夫。
間違ったって、愚かで弱くて情けなくっても、きっと細やかな救いは訪れるよ。
『今から会う奴にもよろしくな』
世界一自分を可哀想と思いながら不格好に笑う、ちょっと芝居かかった口調の、赤い化物にさ。
近い未来、そいつには必要なくなるよ。
――絵画なんて。
そいつは、細やかな『短』い、けれど幸福な時間に出会えたから。
そして、俺は信じているよ。
この幸せがまだゴールではない事を。
まだ、途中である事を。
だから、この先、
この王子様が、この絵画を持ちながら生き続けるように、俺も、自分の犯した大罪と共に生き続けるよ。
自分の壊した時を、右腕に封印して少女の元で生き続けたいから。
心に余裕と愛情があるからこそ、君を思い出した。
俺とそっくりで愚かな工場の王子様。
急に、愛しい人が消えてしまったんだよね。
きっと、君は怖かったよね。
だって人魚さんに、嫌われる要素は有っても、
好かれる要素は何もなかったから、さ。
『ねぇ、大切な人が居なくなってから、今は何日目?』
顔は泣きすぎて目は赤く、
手の爪は、力強く握りしめた拳にくい込み、血を流し裸足の足は爪が割れ、足が擦りむけて、
『君も赤い化物みたいだね』
儚げに蹲る王子を見下ろして、そう言った。
――怒らないでね?
君の赤さは、他人の血じゃないからさ。
愚かな時間を、過ごした証明なんだよ。
『答えないなら当ててあげるよ。あの綺麗な人魚が居なくなって、1年と2ヶ月と数日だろ?』
王子は驚いて顔をあげた。
『君と俺は、笑っちまうぐらい似ているよ』
こんな愚かな時間を、過ごす所も。
でも、君に少しは懺悔したかったんだ。
俺が絵を描いたせいで、あの綺麗な人魚と二度と会えなくなってしまったから。
『だけど、彼女も傷ついて哀しんで、汚れていく事が怖かったんだから、君だけが泣くのは少し、ずるいよ』
だから、ね?
『君がもう「赤い化物」にならないと約束できるなら、人魚の絵画の場所を教えてあげるよ』
王子様は、泣きつかれて真っ赤な目を、バッと開いて、立ち上がった。
「――絵画?」
『うん、絵画。綺麗な人魚は、綺麗な思い出だけ持って、海に還ったよ』
涙を流しながら、でもとても幸せそうに。
『教えるから誓って。赤い化物にならないってさ』
そんなに、絶望の中を、ただ一人で生きないで。
彼女に会えるなら、「――誓います」
その言葉に、嘘も偽りもなかった。
『その場所に、君を飛ばすよ』
結局、愛する人も、国さえも守れなかった王子様。
大丈夫。
間違ったって、愚かで弱くて情けなくっても、きっと細やかな救いは訪れるよ。
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だから、この先、
この王子様が、この絵画を持ちながら生き続けるように、俺も、自分の犯した大罪と共に生き続けるよ。
自分の壊した時を、右腕に封印して少女の元で生き続けたいから。
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